食ひしばる歯のなくなりし燗ざまし
萱
亀田虎童子
199804
燗つけば子の呼びにくる雁の夜
鷹羽狩行
狩
199811
よいことのあった日も一人燗の酒
平井奇散人
船団
199902
燗徳利持ち馴れし医師暮靄垂れ
丸山海道
海道全句集
199910
あぶれ蚊に燗徳利の温きかな
菊地恵子
酸漿
200001
波郷忌のほど好き燗となりにけり
水原春郎
馬醉木
200002
燗酒に笑ひだしたる身のどこか
岩田育左右
遠嶺
200003
燗酒やすこし棘ある句の批評
小川匠太郎
狩
200012
初鮭の振舞酒は父の燗
皆川盤水
春耕
200111
燗冷し鍋にひと口つぎにけり
河合笑子
あを
200112
燗はじめ越中氷見の人と酌む
能村研三
沖
200201
湯豆腐のことこと煮えて燗もよし
松田欽吾
雨月
200202
旅の夜の仲間と交はす燗の酒
片山茂子
遠嶺
200203
青竹の燗酒空ける熾明り
森津三郎
京鹿子
200205
燗酒や口に吸ひつく萩茶碗
谷合青洋
酸漿
200205
萩焼のぐい呑み軽し燗の酒
谷合青洋
酸漿
200205
燗を人肌に頼みて夜の秋
太田寛郎
狩
200209
凌霄の日差し燗熟してきたり
斎藤棹歌
沖
200209
久々に一燗処暑の夕べかな
伊沢山?ウ瓏
酸漿
200210
神代の欅と交す燗の酒
小宮山勇
遠嶺
200302
手付かずの青饅で飲む燗冷まし
左官治郎
鴫
200306
芽独活和へ夕べに早き燗支度
竹内龍
濱
200307
あるだけの言葉とび交ひ燗の酒
大木千鶴子
雲の峰
200401
冬蠅のきて舐めてをり燗冷まし
今瀬剛一
対岸
200402
燗酒や父に似る人見つめをり
鎌倉喜久恵
あを
200403
燗冷まし己戒しむこと多し
鈴木實
百鳥
200404
深川や蕎麦を待つ間の燗の酒
内田稔
遠嶺
200405
絢燗と潮を弾きてさくら鯛
泉田秋硯
苑
200407
こがらしや燗徳利の胴回り
風間史子
鴫
200502
蕗味噌に箸も軽やか燗の酒
滝沢伊代次
万象
200502
日本の浮沈語りて燗の酒
馬場三枝子
集
200503
院長は幼なじみや燗の酒
堀内康男
帆船
200503
燗酒をご苦労さまと言ひ添へて
内田稔
遠嶺
200504
炉辺放談燗徳利は口すぼめ
西川織子
馬醉木
200504
屏風絵のごと絢燗と山桜
服部珠子
雨月
200507
燗の酒不眠症を言い訳に
芝宮須磨子
あを
200601
雪女生まる日屋台の燗微温し
禰寝瓶史
京鹿子
200602
友ありて妻の程よき燗の酒
荻野照
遠嶺
200604
燗酒や独りゐてただ独り酔ふ
糸川草一郎
百鳥
200604
燗に家路せかされをりにけり
稲畑汀子
ホトトギス
200608
父子草活けるあの日の燗徳利
山元志津香
八千草
200608
人肌の燗や父恋ふ鯷漬
山田夏子
雨月
200702
武雄忌の燗一合の蕎麦屋酒
能村研三
沖
200801
耕二忌の黒千代香で酌む燗焼酎
能村研三
沖
200801
絢燗と紅葉且つ散る浜離宮
中村悦子
峰
200801
良き燗に味一際の雪見酒
牧原佳代子
酸漿
200804
帰国せし子と交しけり燗の酒
難波篤直
璦
200804
ぬる燗の好きなお人よ女正月
ことり
六花
200901
独り住み同士の姉妹燗の酒
能勢栄子
璦
200902
蕩けそうな大間鮪や燗の酒
金井香ル
苑
200903
相槌を打つもほどほど燗の酒
塩路五郎
璦
200903
斑雪山の深くにありし昼の燗
浜口高子
火星
200906
矢切てふ渡しを継ぎて燗の酒
村上克哉
笹
201001
灰掻いてどんどの熾に竹の燗
山田六甲
六花
201002
とんとんと話がすすみ燗の酒
遠藤和彦
遠嶺
201003
筍を心待ちして酒の燗
柴田靖子
槐
201007
花冷に燗付け直す老夫婦
近藤てるよ
酸漿
201007
冷酒の人燗(かん)の人不死男の忌
鷹羽狩行
狩
201008
燗酒の湯の沸く音や居待月
山田春生
万象
201012
相撲甚句を流すちゃんこ屋燗の酒
森下康子
璦
201102
燗酒の旨さ長子と痛飲す
小林一榮
末黒野
201103
ぬる燗や急降下せる春の雪
森理和
あをかき
201104
燗酒やひとりで祝ふ誕生日
難波篤直
璦
201105
絢燗の踊りと言ふに目借どき
佐藤淑子
雨月
201112
木枯やひとりは燗のすぐ冷めて
高島鷄子
馬醉木
201202
薬缶より燗酒注ぐ屋台かな
きくちきみえ
やぶれ傘
201203
燗酒をまず調のへる妻の留守
米田文彦
かさね
201204
焼きトンの香りよきかな燗の酒
丸山酔宵子
かさね
201301
燗ぬるう仏と酌める風の音
浜口高子
火星
201304
時かけて燗の一合宵えびす
蘭定かず子
火星
201304
聞き流すことも処世や燗の酒
塩路五郎
璦
201402
夫と子の狭間に燗の冷えにけり
奥田順子
火星
201403
風邪に効くとて注がれたる焙り燗
佐藤山人
鴫
201404
初夢や燗酒馳走在りし日よ
水谷直子
京鹿子
201405
人肌の燗こそよけれ月今宵
梅村すみを
沖
201411
燗酒や放つて置いてほしい夜
石田きよし
鴫
201503
燗酒に食前食後なかりけり
森岡正作
沖
201503
和解への一助燗酒香の物
山口ひろよ
鴫
201504
末枯れもほどほどがよし酒は燗
鴨下昭
峰
201504
蕗味噌や厨に夫の燗支度
中村ふく子
璦
201504
鮒鮓を頂く絢燗たる仏間
青木朋子
空
201510
夜焚火に燗して供すかつぽ酒
田代民子
空
201603
燗よりも冷がよろしと夜の長き
東野鈴子
雨月
201604
夕されば一句ひねりて燗を待つ
田中信行
槐
201605
鮨詰めを更につめ合ひ燗冷まし
風間史子
鴫
201607
ぬる燗のまだあたたかし良夜かな
井上石動
あを
201610
波郷忌や黄瀬戸でぐいと燗の酒
山下健治
春燈
201702
引力や燗酒好きな者同志
濱上こういち
鴫
201704
鉄瓶のひと肌の燗花疲れ
足立良雄
鴫
201707
徳利の首を越えたる燗の酒
きくちきみえ
やぶれ傘
201711
雨まじり雪降る燗はみづから付く
定梶じょう
あを
201804
熱燗や夫婦無口の差向ひ
友田悠子
末黒野
201805
熱燗や聞きしに勝るいごつそう
千原叡子
ホトトギス
201805
熱燗や牧水しのぶ一人旅
三羽永治
集
201811
熱燗や命をかけることもなく
高橋将夫
槐
201902
父と子の胸襟ひらく燗の酒
有松洋子
槐
201902
熱燗や妻への愚痴も一寸だけ
谷口一献
六花
201902
熱燗や歯に衣着せぬ仲間うち
黒滝志麻子
末黒野
201903
河童らと熱燗一本もう一本
竹中一花
槐
201903
夜ふたりみたり来燗の酒となす
田中臥石
末黒野
201904
熱燗や句会の後の置酒款語
懸林喜代次
春燈
201904
熱燗や父子の会話長々と
田部富仁子
鴻
201905
熱燗や二軒目のママ姉に似て
小田嶋野笛
末黒野
201905
夫あらば熱燗乞はる寒さかな
杉崎妙子
鴻
201905
熱燗や干物あぶっておらが春
澤田蔦惠
船団
201906
花冷や燗を酌み合ふ玻璃の内
伊藤鴉
末黒野
201907
鮟肝と熱燗常陸の旅はじめ
酒井たかお
集
201907
お互ひに視線合はさず人肌燗
谷口一献
六花
201911
熱燗や静寂の夜を過ごすとす
谷口一献
六花
202001
燗熱く古漬茄子に母想ふ
小張昭一
春燈
202001
熱燗の手酌がすすむ屋台かな
柴崎甲武信
京鹿子
202002
北陸の魚のきときと燗熱し
宮内とし子
沖
202002
熱燗や落ちる涙と冷や汗と
谷口一献
六花
202003
誤嚥して燗酒撒き散らかしてをり
谷口一献
六花
202003
熱燗や自慢話に尾鰭つく
岡田ちた子
雨月
202003
熱燗を注ぐ手に燃ゆるネイルかな
谷口一献
六花
202003
熱燗や渡れぬ鳥に仲間ゐて
田中信行
槐
202003
泣いてゐる横顔のあり燗熱し
高倉和子
空
202006
熱燗は歯に沁み喉沁み胃に沁む
谷口一献
六花
202012
熱燗や誰に気兼ねをするでなく
高橋将夫
槐
202102
燗酒や養生語録耳に溜め
近藤牧男
春燈
202103
熱燗は手酌構はず納めの座
五十嵐貴子
末黒野
202103
熱燗や人生訓の味な人
山中志津子
京鹿子
202104
燗熱し右に倣へに逆らひて
井尻妙子
京鹿子
202104
燗漫へ梅一輪のプレリュード
飯田久美子
末黒野
202105
噎するほど熱燗の燗熱くして
梅田武
末黒野
202105
熱燗に酔ひマーラーに酔うてをり
稲畑廣太郎
ホトトギス
202112
雲見てゐた方がおとうと燗熱し
井上菜摘子
京鹿子
202112
熱燗の鮎のしっぽをふうと吹く
赤座典子
あを
202202
熱燗に旅の姉妹や時止まり
有賀鈴乃
末黒野
202203
島二つ沖に燗酒熱うせよ
水谷はや子
鴻
202203
熱燗やつい反対のことを言ふ
高橋将夫
槐
202204
熱燗にのりそこねたる猪口ひとつ
吉田悌子
京鹿子
202204
熱燗や火宅の沙汰を振り払ふ
元橋孝之
京鹿子
202204
熱燗に酔うて愉快や里訛
丹羽武正
京鹿子
202204
熱燗の冷め御開きとまだならず
湯川雅
ホトトギス
202205
2022年12月28日
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