また風が鳴らす卒塔婆糸桜
皆川盤水
春耕
199905
鵜の潜く水面ゆれをり糸ざくら
沢聰
馬醉木
199906
観音のすがたに夜の糸桜
鷹羽狩行
狩
199906
暁闇の揺るると見しは糸桜
和田和子
馬醉木
199907
糸桜そよぎの中の器量好し
井沢ミサ子
京鹿子
199907
絲桜一花に騒ぐ鯉の群
沢坂芳山
京鹿子
199909
ゆらぎつつ日をいとふかに糸桜
阿部ひろし
酸漿
200005
色も香も空ときそはず糸ざくら
阿部ひろし
酸漿
200005
糸ざくらふと角隠おもひ出づ
阿部ひろし
酸漿
200005
糸桜狛犬の顔撫でてをり
石塚ユリ
春耕
200005
濃き黒子このごろ太る糸桜
塩見恵介
虹の種
200005
天衣よりほつれ出でたる糸桜
森麟
銀化
200006
一枝もおろそかにせず糸桜
吉原一暁
狩
200007
糸櫻くぐりて天女遊びかな
野口香葉
遠嶺
200007
風孕み鵬となる糸櫻
小山徳夫
遠嶺
200007
しかと杖突きうち仰ぐ糸ざくら
大橋宵火
円虹
200007
糸ざくら大揺れの止みさゆれ尚
大橋宵火
円虹
200007
遠ざかるほど糸ざくら風の見え
阪上多恵子
雨月
200007
噴きあげてしつとり流る糸桜
丸井巴水
京鹿子
200007
糸ざくら種子曼茶羅の謝恩の碑
横林誠二
濱
200007
結び文揺るる氷室の糸桜
谷野由紀子
春耕
200007
糸ざくら湖愁に胸を揺らされて
小澤克己
遠嶺
200008
月据ゑし円蔵院の糸櫻
小澤克己
遠嶺
200008
狛犬の背を掃く風の糸桜
遠藤アサ子
赤井
200103
屈む背にはらりと触れて糸ざくら
高垣和恵
雨月
200105
糸ざくら大寺に月まどかなり
益本三知子
馬酔木
200107
虚子の忌や翳蒼ざめて糸ざくら
安達実生子
苑
200107
人のすれ違ふにも揺れ糸桜
丁野弘
狩
200204
深閑と真昼の寺や糸桜
阿部文子
酸漿
200206
琴糸の白のはなやぎ初ざくら
高橋さえ子
朝
200206
水底の日のほのかなり糸櫻
土岐明子
遠嶺
200207
糸桜糸の一葉をはなしけり
阿部ひろし
酸漿
200211
夕日さす身延枯糸ざくらかな
阿部ひろし
酸漿
200302
糸ざくら風ある如くなき如く
稲畑汀子
ホトトギス
200303
この樹下にわが揺籃期糸ざくら
岡本眸
朝
200304
月揚ぐる円蔵院の糸櫻
小澤克己
春の庵
200305
衣擦れの音とも風の糸桜
岩月優美子
槐
200306
佇めば紅さし初むる糸櫻
吉村春風子
遠嶺
200306
玉音を聴きしあたりの糸ざくら
中島あきら
沖
200306
大櫛を入れたるごとく糸桜
小黒加支
酸漿
200306
糸桜かがよひ垂るる糸の雨
大島寛治
雨月
200307
朝に黒服夕に黒帯糸ざくら
山崎靖子
鴫
200307
糸櫻きらりきらりと陽のあふれ
吉野のぶ子
遠嶺
200307
別の世の扉ありけり糸櫻
清水晃子
遠嶺
200307
糸櫻影を地上に垂らしけり
森ふみ子
遠嶺
200307
夕波に影を遊ばせ糸ざくら
橋本良子
遠嶺
200307
真砂女逝く風の抱きよす糸桜
大島翠木
槐
200307
糸櫻閼伽井の水の薄濁り
竹中一花
槐
200307
糸桜真下に佇てば個室めく
稲田節子
朝
200307
糸桜仰げば顔の誰も佳き
稲田節子
朝
200307
散るほかはなき糸桜雨上り
稲畑汀子
ホトトギス
200404
糸ざくら一枝揺るればことごとく
岡本眸
朝
200405
根を剪られ血の気さしたる糸桜
品川鈴子
ぐろっけ
200405
枝先のからまる大糸桜かな
日余敏子
雨月
200406
糸桜の傘の内なる空揺るる
星野淑子
濱
200406
糸桜水面に垂れて細字書く
磨家泉
築港
200406
音なにもなき夜の冷や糸桜
永田二三子
酸漿
200406
咲き満ちて静けさのあり糸桜
鈴木幾子
酸漿
200406
山の気のかすかに動き糸櫻
挾川青史
馬醉木
200407
しなやかに風受けながし糸桜
福田千代子
築港
200407
糸桜見てよ見てよと揺れゐたり
福田千代子
築港
200407
糸櫻夜の古木に憑かれける
大島翠木
槐
200407
きざはしは二百八十七段糸桜
中村洋子
風土
200407
それぞれの糸に地あり糸桜
城孝子
火星
200408
糸桜しだるる奧も糸桜
橘澄男
山景
200408
昨夜よりもけふの寂しき糸桜
徳田千鶴子
馬醉木
200506
小江戸へと時空の舟を糸ざくら
津田礼乃
遠嶺
200506
糸桜風の道なる土手の下
山口秀子
酸漿
200506
子が泣くやたちまち回る糸桜
寺門丈明
あを
200506
あめつちへ噴きあふれたる糸ざくら
太田寛郎
狩
200507
欄干の湿りし夜の糸桜
奥田茶々
風土
200507
糸桜支柱に支柱ありにけり
中里とも子
百鳥
200507
絲ざくら夕べは鏡のぞきこむ
佐藤喜孝
あを
200507
糸ざくら人におくれ毛ありにけり
小澤克己
遠嶺
200606
糸桜くぐりて見れば幹のあり
松山直美
火星
200607
手を打てばはらりはらりと糸櫻
高尾幸子
遠嶺
200607
糸ざくら解き放たれし誕生日
井内佳代子
遠嶺
200607
園児らの手を触れゆけり糸桜
中島伊智子
酸漿
200607
近く寄り見よとばかりや糸桜
守屋井蛙
酸漿
200607
傘なして大糸桜八ヶ岳の前
守屋井蛙
酸漿
200607
地に刷きし影淡々と糸桜
大竹淑子
風土
200607
一斉に揺れいつぽんの絲桜
鈴木多枝子
あを
200607
遠くより見つつ来て立つ糸桜
阿部ひろし
酸漿
200705
糸桜川原の径は行き止まり
東福寺碧水
万象
200706
しばし見て離りて仰ぐ糸桜
下川智子
濱
200706
悠久の高麗の郡や糸櫻
鈴木清子
遠嶺
200707
寺町の猫とじやれ合ふ糸櫻
星野道子
遠嶺
200707
橋の名で道教へらる糸桜
服部早苗
空
200707
いましがた雨の過ぎたる糸桜
内山芳子
雨月
200707
ふれあはぬ縁いくつや糸ざくら
鷹羽狩行
狩
200805
糸桜幼木ながら垂れをり
阿部ひろし
酸漿
200805
糸桜ゆれて女性の墓と知る
服部早苗
沖
200806
写真家の立てし三脚糸ざくら
吉沢陽子
峰
200806
天からの花の椎や糸桜
浅野恵美子
酸漿
200806
天界にあそびしここち糸櫻
邑橋節夫
菊揃へ
200806
糸ざくら地につくまでをしだれけり
藤井昌治
朝
200806
水晶のブレスレットや糸桜
庄司久美子
槐
200807
揺れ足りぬおもひに暮れて糸ざくら
八染藍子
狩
200807
闇を梳くライトアップの糸桜
次井義泰
苑
200807
糸桜見上ぐ反り腰一歩二歩
岡野峯代
ぐろっけ
200807
雨あとの空匂ひたつ糸ざくら
高橋さえ子
朝
200807
糸ざくら咲き満ちて空濁りなし
高橋さえ子
朝
200807
しなやかな風かはしけり糸桜
井口初江
酸漿
200808
風よりも灯色にこぼれ糸桜
水田むつみ
ホトトギス
200809
小鳥にも好きな枝あり糸桜
小島左京
ホトトギス
200809
今一度逢ひたし祇園の糸桜
大橋敦子
雨月
200905
夜の水のひたに沈める糸桜
山尾玉藻
火星
200905
風あらば風に素直や糸桜
田下宮子
璦
200906
病みてなほ潰えぬ命いとざくら
小澤克己
遠嶺
200906
大空に吊られて咲けり糸櫻
小峯千枝子
遠嶺
200906
しなやかに浮世に生くる糸櫻
小峯千枝子
遠嶺
200906
一糸より揺れの広ごる糸桜
北川英子
沖
200906
影もまたまどかに揺ぎ糸桜
舛田初惠
酸漿
200906
糸さくら百八号の保護樹木
村高卯
鴫
200907
川風をゆつくり紡ぐ糸ざくら
長谷川友子
春燈
200907
夕されば幽花となりぬ糸桜
長戸路子
春燈
200907
方丈のやさしき説話いとざくら
小澤克己
遠嶺
200907
糸ざくら座禅の僧の影淡し
小澤克己
遠嶺
200907
たましひの抜けゆく揺れを糸櫻
小澤克己
遠嶺
200907
糸桜去りゆく人を見送りぬ
内藤秀子
笹
200907
比丘尼寺散り萎れたる糸桜
壁谷猪一
笹
200907
青天に咲き満ちてをり糸桜
山崎澄子
酸漿
200907
糸桜くぐりてゆける風のあり
岸野美知子
酸漿
200908
糸ざくら都落ちせし表札よ
八田木枯
晩紅
200908
ますらをの松たをやめの糸桜
竹内すま子
狩
200909
那智石の濡れてゐるなり糸桜
山尾玉藻
火星
201004
山風をひと日纒へる糸桜
辻知代子
璦
201006
四阿にあまた人呼ぶ糸桜
西田史郎
璦
201006
年経れど変わらぬ樹齢糸桜
鈴木阿久
峰
201006
一族の墓を被へり糸桜
須賀敏子
あを
201006
家系図のなき家系なる糸櫻
吉弘恭子
あを
201006
魂を天にゆだねし糸ざくら
橋添やよひ
風土
201007
頬にふれ胸へしだれて糸桜
千坂美津恵
苑
201007
風生の句を彷彿の糸桜
河本利一
苑
201007
夕暮の道ばかりなり糸桜
柴田佐知子
空
201007
もつれてはするりとほぐれ糸桜
井田実代子
雨月
201007
糸ざくらを散華となして磨崖仏
笠井清佑
璦
201106
糸桜心の揺れと共に揺れ
中村喜美子
春燈
201106
糸桜この急坂を登り来て
青木政江
酸漿
201106
おばしまに凭たるる肩の糸桜
吉弘恭子
あを
201106
繚乱の大糸桜風を呼ぶ
山口順子
苑
201107
また訪ねん夫の背丈の糸桜
北村和代
ぐろっけ
201108
子を攫ふ魔女のごとくに糸桜
竹田ひろ子
ろんど
201108
糸桜のんどり空を廻しをり
樽井明子
京鹿子
201201
絲ざくら指をからめてみたくなり
佐藤喜孝
あを
201204
御佛のおよびのやうに絲ざくら
佐藤喜孝
あを
201204
岬の日に力収めし糸桜
服部鹿頭矢
馬醉木
201206
喉ごしの御薄まつたり糸ざくら
益本三知子
馬醉木
201206
糸ざくら天幕を張る露天商
森理和
あを
201206
料亭へ入る細露地糸桜
田中藤穂
あを
201206
糸ざくらの覆ふ十六羅漢かな
五十嵐勉
璦
201207
ままごとの客は母御や糸桜
山田春生
万象
201207
青き闇より一本の糸ざくら
岩月優美子
槐
201207
糸桜のうちより仰ぐ翁がほ
深澤鱶
火星
201207
糸桜満開の下客となる
濱田ヒチヱ
ぐろっけ
201207
糸ざくら崩れ土塀の城下哉
三枝邦光
ぐろっけ
201207
何時になく胃薬ききぬ糸桜
加藤八重子
末黒野
201207
糸桜不意打ち鯉の跳ね上り
森理和
あを
201305
糸桜風に遊ばれ枝垂れけり
大湊栄子
春燈
201306
糸桜砂利に一筋轍かな
和田勝信
かさね
201306
芽吹き初め中将姫の糸桜
磯野しをり
雨月
201404
微風に送り出さるる糸桜
斉藤裕子
あを
201405
篝火の煙残れり糸桜
石川かおり
璦
201406
糸桜蒼天に色解れ初め
塩見英子
雨月
201407
天を衝く枝もありけり糸桜
石川賢吾
集
201602
天を衝く枝もありけり糸桜
石川賢吾
集
201602
暮れ際の灘のいろ帯び糸桜
石本百合子
馬醉木
201606
糸桜揺れてブラジル便りかな
岡田桃子
槐
201607
帯低く結ぶ齢や糸桜
深川淑枝
空
201608
糸さくら地に一面のいとさくら
杉本薬王子
風土
201611
風吹くと命の揺らぐ糸さくら
杉本薬王子
風土
201611
円周率ここで切り上げ糸桜
町山公孝
沖
201706
枝先にただ一つ咲く糸桜
出口誠
六花
201707
糸桜風のもつれを風の解き
森清信子
末黒野
201708
鳥ごゑのゆさぶつてゐる糸桜
西住三惠子
空
201707
白髪となる糸桜くぐるたび
遠山陽子
面
201805
地に触るるばかりに揺らぎ糸ざくら
秋葉雅治
沖
201806
大樹なす宙いつぱいに糸桜
山下健治
春燈
201906
山風のこぼしてゆきぬ糸桜
大谷満智子
春燈
201906
ウェハースしゃぶる赤ちゃん糸桜
大槻春美
瓔
201907
山寺の甍をしのぎ糸桜
森清堯
末黒野
201908
ひと枝も天に向かはず絲ざくら
佐藤喜孝
あを
201909
糸桜「令和」へ向けて咲かんとす
佐々木麻里
船団
201910
糸桜風しなやかに受け流す
高木邦雄
末黒野
202007
糸桜婆の出てくる曲がり角
江見巌
六花
202007
透明になつてゆく吾糸ざくら
沼田巴字
京鹿子
202104
枝垂れつつ光を零し糸桜
池乗恵美子
末黒野
202104
糸桜雨の重みを負ひにけり
山田正子
空
202112
夕風のしみる灯影や糸桜
木村傘休
春燈
202206
桜餅売る境内の糸桜
小池一司
やぶれ傘
202206
糸桜鰐口細き音色引き
升田ヤス子
六花
202207
閑けさや雨に打たるる糸桜
村田敦子
末黒野
202208