糸とんぼ (とうすみとんぼ) 189句
尾を曲げて瑠璃の濃くなる糸蜻蛉 堀口星眠
糸蜻蛉風に紛れてしまひけり
生田恵美子
風土
199808
0と書きゐしはとうすみとんぼかな
岡井省二
槐
199907
水中に日の影澄めり糸蜻蛉
山田京子
俳句通信
199908
双塔の映る池畔や糸とんぼ
渡辺政子
俳句通信
199908
称名の飛沫くる道糸とんぼ
春田淳子
俳句通信
199908
葉の上の風の旋律糸とんぼ
小澤克己
遠嶺
199909
糸蜻蛉いのちの糸を浮べたる
阿部ひろし
酸漿
199909
糸蜻蛉下枝の闇に紛れけり
館林志津子
俳句通信
199909
せせらぎやつながり易き糸蜻蛉
岩田育左右
遠嶺
199910
身に余る眼をたまはりて糸とんぼ
島谷征良
風土
199911
野の中の泉溢れて糸とんぼ
田中藤穂
水瓶座
200002
秒針は飛んでみたかろ糸蜻蛉
三宅やよい
玩具帳
200004
この線を先にのばせば糸蜻蛉
松山律子
六花
200005
糸蜻蛉草に弾かれ飛びにけり
稲畑廣太郎
ホトトギス
200006
糸とんぼ居るから風も止んでゐる
宇都宮滴水
京鹿子
200008
糸とんぼ猫かも膝に来てとまる
山田六甲
六花
200008
糸蜻蛉記憶横切るやうに飛ぶ
後藤立夫
ホトトギス
200011
糸とんぼ鎖つなぎに飛んでをる
黒田咲子
槐
200012
糸とんぼ風に小骨のありにけり
七種年男
沖
200101
流木の堰なしてをり糸とんぼ
横田和
春耕
200107
糸蜻蛉水の光を出入りして
山田弘子
円虹
200108
糸とんぼ村に弘法大師の井
吉岡久江
火星
200109
つながれる瑠璃とひすいの糸蜻蛉
竹内美知子
濱
200109
餓鬼田てふ水を離れず糸蜻蛉
春田淳子
俳句通信
200109
鐘の中とうすみとんぼ昇天す
木曽岳風子
六花
200109
浮草と少し流れて糸蜻蛉
佐藤悦子
百鳥
200110
みづがらし漂ふやうに糸蜻蛉
森理和
あを
200207
糸とんぼ積みたる石の無為の色
宇都宮滴水
京鹿子
200208
石に影水に姿を糸蜻蛉
松本恭昂
火星
200209
沢風のかよふ流に糸とんぼ
内藤順子
酸漿
200209
糸とんぼ風にさからひとびゆけり
大蔵靖子
春耕
200209
凝らすほど風となりけり糸蜻蛉
豊田都峰
京鹿子
200210
糸とんぼ流れのゆるむひとところ
武政礼子
雨月
200210
一跨ぎほどの野川や糸蜻蛉
木内美保子
六花
200210
見定めてをらねば消ゆる糸蜻蛉
田邊英夫
円虹
200210
糸蜻蛉来る水亭の刀掛
田邊英夫
円虹
200210
翅たたみ一枚となる糸蜻蛉
塩川雄三
築港
200211
黒き翅黒く畳んで糸蜻蛉
塩川雄三
築港
200211
糸とんぼ一寸ほどの自己主張
大沼眞
沖
200211
糸とんぼ流れる水に生まれけり
小野れい子
六花
200211
糸とんぼ止まりて姿見失なふ
芝尚子
あを
200211
小流れの石それぞれに糸とんぼ
水田清子
朝
200212
隠沼をまほろばとして糸蜻蛉
渡辺萩風
ホトトギス
200302
糸蜻蛉生まれて水の星となる
工藤進
沖
200307
人間にお尻がひとつ糸とんぼ
山田六甲
六花
200307
三輪山へ黒雲降りぬ糸とんぼ
田中藤穂
あを
200308
童子仏を行きつ戻りつ糸とんぼ
出口賀律子
雨月
200309
尾を振りて風に吹かるる糸蜻蛉
二宮桃代
雨月
200309
川音の大きくなり来糸蜻蛉
城尾たか子
火星
200309
夕日赤々燃えつきさうな糸蜻蛉
東野鈴子
雨月
200310
糸とんぼ尻尾で話し合うてをる
山田六甲
六花
200310
渓川に風の道あり糸とんぼ
石川貞子
対岸
200310
生れてすぐ風のころもを糸とんぼ
工藤進
沖
200408
糸とんぼ引力に耐へ翔び立てり
宮川迪夫
遠嶺
200411
水口を横へ横へと糸とんぼ
名和政代
万象
200411
糸蜻蛉影絵のやうに梵字池
辻井桂子
雲の峰
200411
山寺の池を自在に糸蜻蛉
二瓶洋子
六花
200411
魚見ゆる水に尾を刺す糸蜻蛉
林敬子
酸漿
200412
墓道の右も左も糸とんぼ
辻兎夢
空
200412
草縫ふてとびゐる瑠璃の糸とんぼ
三関浩舟
栴檀
200501
無きごとき糸とんぼの翅つかみたり
高垣和恵
雨月
200509
出会ひては店先のぞく糸蜻蛉
長澤健子
酸漿
200509
湿原を飛ぶ綿菅と糸とんぼ
西山美枝子
酸漿
200510
浮島のかげより生れて糸蜻蛉
栗原公子
沖
200510
一草にあづけしいのち糸とんぼ
竹屋睦子
ホトトギス
200511
糸とんぼ釣竿の先さびしくす
戸栗末廣
火星
200511
湿原の風のまどろみ糸とんぼ
安原ときこ
遠嶺
200511
洗ひ場は百選の水糸蜻蛉
関まさを
酸漿
200511
糸とんぼ貰ひそこねしちから水
宇都宮滴水
京鹿子
200608
かそけさの瑠璃の糸曳く糸とんぼ
丸尾和子
雨月
200609
草の先高くは飛ばず糸とんぼ
松原智津子
万象
200610
湿原を先へ先へと糸とんぼ
岡本敬子
万象
200610
糸蜻蛉女院塚の辺を去らず
生田恵美予
風土
200610
糸とんぼとは藻の国のヘリコプター
蔦三郎
ホトトギス
200611
糸蜻蛉水際に細き身を反らす
木内美保子
六甲
200612
糸とんぼ葉影泳がす史跡の碑
山本正
京鹿子
200701
草の先離れたるより糸蜻蛉
稲畑汀子
ホトトギス
200706
糸蜻蛉止まりて草になりきりし
稲畑汀子
ホトトギス
200706
鈍色に光る水面を糸蜻蛉
ことり
六花
200706
糸とんぼ風の繊維となつてをり
湯川雅
ホトトギス
200710
訪ふ寺に千服茶臼糸とんぼ
瀬戸悠
風土
200710
湧水のゆるき流や糸蜻蛉
君島栄子
酸漿
200710
曇天の舳先に憩ふ糸蜻蛉
稲辺美津
遠嶺
200711
糸蜻蛉いたづら風が尻を押す
禰寝瓶史
京鹿子
200711
糸とんぼ草より細く翔ちにけり
坂口麻呂
ホトトギス
200712
糸とんぼ風あやを抜け水あやへ
豊田都峰
草の唄
200805
糸とんぼ癒ゆることのみ思ふべし
小形さとる
槐
200808
糸とんぼ節継ぎ木賊伸びてをり
梶川智恵子
沖
200809
糸蜻蛉やすやす捕へ放ちやる
小城綾子
峰
200809
糸蜻蛉生んでしづかな麓の田
内山芳子
雨月
200809
糸蜻蛉水のひかりに見失ふ
福本洋子
狩
200810
糸蜻蛉池を鏡に遊びをり
武田漣
炎環
200810
枯山水砂礫の川へ糸とんぼ
細川和子
炎環
200810
山の田の細藺に澄みて糸とんぼ
大竹淑子
風土
200810
一グラムほどもなきかな糸蜻蛉
貫井照子
やぶれ傘
200811
糸結ぶやう蜻蛉の遠く舞ひ
天野正子
鴫
200812
隠沼連なり渡る糸トンボ
長瀬節子
ぐろっけ
200812
水琴の甕を新たに絲蜻蛉
鈴木石花
風土
200908
糸蜻蛉群れ番ひたる女人寺
笠井清佑
璦
200909
糸蜻蛉生くる証の水たたく
久米憲子
春燈
200909
三尺の水芭蕉の葉糸蜻蛉
森清堯
末黒野
200910
とうすみを捕食してをる蜻蛉かな
堀志皋
火星
200910
交尾して帆掛けよろしき糸蜻蛉
渡部磐空
峰
200911
神の杜水を余して糸とんぼ
松本鷹根
京鹿子
200911
雨雫落つる葉かげのいととんぼ
天野美登里
やぶれ傘
200911
糸とんぼ生るる月山八合目
山田春生
万象
201006
水の辺の一行詩なり糸とんぼ
近藤喜子
槐
201008
糸蜻蛉小流あれば奥へ飛ぶ
阿部ひろし
酸奬
201008
糸蜻蛉まだ半分は水のいろ
市村健夫
馬醉木
201009
糸とんぼ陰をひろひて生きてけり
成瀬櫻桃子
俳句選集
201105
糸蜻蛉空き教室に迷ひ込み
笠井清佑
璦
201110
迸る取水の堰を糸蜻蛉
小泉欣也
ろんど
201110
ついと岩はなれて遊ぶ糸とんぼ
竹内喜代子
璦
201111
ひと跨ぎほどのせせらぎ糸とんぼ
松岡和子
璦
201111
糸とんぼ草から草へ遠出せず
細川知子
ぐろっけ
201111
夫のゐて子のゐて淋し糸蜻蛉
志方章子
蟋蟀
201203
木漏日となる一瞬の糸とんぼ
山田六甲
六花
201208
糸とんぼ風止む刻のありにけり
田中文治
火星
201208
糸トンボ抜きつ抜かれつ水鏡
本郷宗祥
かさね
201209
せせらぎの聞ゆる狭庭糸蜻蛉
神田千枝女
雨月
201210
吹かれ来て吹かれゆくなり糸とんぼ
尾崎みつ子
雨月
201210
杭離れすぐ見失ふ糸蜻蛉
久保村淑子
万象
201210
たゆたふる葉に睦みたる糸とんぼ
今越みち子
万象
201210
風来ては風に攫はれ糸とんぼ
上村光八
末黒野
201210
とうすみのいのちの重さ草撓ふ
北川英子
沖
201210
とうすみの糸絡ませずビオトープ
平田恵美子
ぐろっけ
201211
糸蜻蛉新体操のおはこ見す
小菅礼子
春燈
201211
糸とんぼ水の気配をはなれ得ず
島谷征良
風土
201211
風揺れの草にふるへて糸とんぼ
菅谷たけし
沖
201212
糸とんぼ息づいてをり磧石
大内佐奈枝
万象
201302
濡れ濡れし草につがひの糸蜻蛉
岡山敦子
京鹿子
201310
鮒釣の浮子にひととき糸とんぼ
松本文一郎
六花
201310
糸とんぼ御歯黒蜻蛉ありありと
井上信子
鴫
201310
幸せのすみに淋しさ糸とんぼ
片山煕子
京鹿子
201311
水の影より失せ易し糸とんぼ
金子野生
京鹿子
201401
青糸トンボもしかして水溶性
火箱ひろ
船団
201401
糸蜻蛉葉を揺らさずに止まりたる
秋千晴
空
201407
糸とんぼ尾に恋情をみなぎらす
綱徳女
春燈
201408
糸とんぼ腹こきこきと折りしまま
原田達夫
鴫
201408
糸とんぼ尾に恋情をみなぎらす
綱徳女
春燈
201408
糸蜻蛉飛び交ふさまの舞へるごと
和田郁子
璦
201409
糸とんぼ風の波長にのりきれず
村田岳洋
ろんど
201409
とびついて草と揺れゐる糸とんぼ
佐津のぼる
六花
201410
所在なき吾に寄り来よ糸とんぼ
溝越教子
春燈
201510
糸とんぼ小さき水輪の生れにけり
石原節子
春燈
201511
近づきて鼓動をきけり糸とんぼ
鈴木庸子
風土
201512
夕風や矢板にとまる糸とんぼ
秋山信行
やぶれ傘
201602
木道をこもごも渡る糸蜻蛉
箕輪カオル
鴫
201609
ひとすぢの草を争ふ糸蜻蛉
沢辺たけし
万象
201609
とうすみの草に触れずに止まりけり
今瀬一博
沖
201609
糸蜻蛉風にまかせて浮きにけり
鈴木良戈
沖
201609
とうすみや水辺やさしきものを生む
近藤喜子
槐
201609
糸蜻蛉こんな静かな生もある
有松洋子
槐
201610
糸とんぼ翅やすめゐる杭の先
岡淑子
雨月
201611
糸蜻蛉見え隠れする記憶かな
江島照美
槐
201611
木道に屈めば寄り来糸蜻蛉
成田美代
鴫
201611
糸とんぼひかりのかわく池の上
黒滝志麻子
末黒野
201611
常滑の弾く日の斑や糸とんぼ
森清信子
末黒野
201611
わが余命いくばくならむ糸とんぼ
小山田子鬼
沖
201710
糸とんぼ確と手脚を草の葉に
荒木甫
鴫
201711
流れゆく水草離れず糸蜻蛉
島田和枝
万象
201712
しなやかに草と揺れをり糸とんぼ
岡野里子
末黒野
201712
糸とんぼ風に姿をかくしけり
藤田美耶子
槐
201712
川岸の杭にとまれり糸とんぼ
伊藤更正
やぶれ傘
201710
糸とんぼ風に姿をかくしけり
藤田美耶子
槐
201808
九十をかるく生きたし糸とんぼ
岸洋子
空
201811
木道や風より軽き糸とんぼ
石黒興平
末黒野
201812
糸とんぼ鎖囲ひの井戸の跡
三井所美智子
空
201812
愛さるる為の命や糸とんぼ
?コ田千鶴子
馬醉木
201907
糸とんぼ生くるに肩の荷軽からむ
齋藤晴夫
春燈
201912
釈迦堂へ続くせせらぎ糸とんぼ
佐俣まさを
春燈
202009
糸とんぼ時折青く光りけり
志方章子
六花
202010
瑠璃色の風の分身糸とんぼ
涌羅由美
ホトトギス
202011
糸とんぼ風を残して消えにけり
笹村政子
六花
202011
せせらぎや手品めく湧く糸蜻蛉
森清信子
末黒野
202011
みづがねの重さに飛べり糸蜻蛉
栗坪和子
沖
202012
次の葉につかまり直す糸とんぼ
根橋宏次
やぶれ傘
202109
笹舟に糸とんぼ来て帆を張りぬ
笹村政子
六花
202110
一寸の命の青し糸蜻蛉
鈴木和江
沖
202111
少年の液晶地図より糸とんぼ
山中志津子
京鹿子
202201
糸蜻蛉草に命を絡ませて
稲畑廣太郎
ホトトギス
202206
姦しき鳥語に消ゆる糸蜻蛉
稲畑廣太郎
ホトトギス
202206
目で追へる幼の先の糸蜻蛉
稲畑廣太郎
ホトトギス
202206
微風に躓いてゐる糸蜻蛉
稲畑廣太郎
ホトトギス
202206
糸とんぼ翅を広げて吹かれけり
根岸善行
風土
202209
次の葉につかまり直す糸とんぼ
根橋宏次
やぶれ傘
202209
池渡る風に危ふし糸とんぼ
神谷さうぴ
末黒野
202210
湿原の水面の震へ糸とんぼ
森清信子
末黒野
202211
しなやかに風かはすなり糸とんぼ
古山智子
沖
202212
2023年8月24日
作成