初 音 1 200句
初音して鴬下リぬ臼のもと 几董
初音かな森の奥へと踏み入れば
小澤克己
遠嶺
199805
初音して海ひらけくる切通し
水原春郎
馬醉木
199904
よき朝やほろほろほけきよの初音聴き
林翔
沖
199905
耳遠き妻が言ひけり初音すと
林翔
沖
199905
牧の空しんと初音の次を待つ
和田敏子
雨月
199905
ひと声の糺の森の初音かな
阪上多恵子
雨月
199906
初音きく大観覧車回り出し
河井富美子
ぐろっけ
199906
奥の院歩き残して初音径
禰寝瓶史
京鹿子
199906
妻の留守米研ぐ朝や初音聞く
神田惣介
京鹿子
199907
初音かな海の深さのやりきれない
河野志保
海程
199908
復興の街を見下ろし初音聞く
稲畑廣太郎
ホトトギス
200002
初音聞く一瞬話題途切れけり
稲畑廣太郎
ホトトギス
200002
東司借り申してをれば初音かな
鷹羽狩行
狩
200002
初音聞く六甲指呼に引き寄せて
稲畑廣太郎
ホトトギス
200002
初音聞く事に都心の朝ぼらけ
稲畑廣太郎
ホトトギス
200002
木洩日の揺れて初音となりしかな
稲畑汀子
ホトトギス
200002
山荘を訪ふは久しき初音かな
稲畑汀子
ホトトギス
200003
願ひごと叶ひし今朝の初音かな
小川昭江
沖
200004
初音山暗きところに仏たち
柴田由乃
風土
200004
朝靄にとぎれとぎれの初音かな
内藤順子
酸漿
200005
ゆたかなる世に来てひたと初音なり
保坂さよ
いろり
200005
初音聞くスカーフを吹きなびかせて
小林光美
春耕
200006
初音聞く佳きことあるや散歩道
茂木とみ
いろり
200006
鎌倉や初音の中に母とゐて
中村洋子
風土
200006
初音かな雪囲より撞木出て
田中佐知子
風土
200006
二の替初音の鼓ひびきけり
三村純
ホトトギス
200006
初音かな小屋より茅を運び出し
田中佐知子
風土
200006
初音かな夫を起こしてより鳴かず
小島とよ子
新樹光
200007
どうしても躓きやすき初音かな
西美知子
円虹
200007
被災地になほ初音きく山手あり
柏井幸子
円虹
200008
初音聞くこれより虚子のメッカかな
稲畑廣太郎
ホトトギス
200009
信長を祀れる杜の初音かな
久保田雪枝
雨月
200104
初音来と耳を疑ふ朝まだき
寺田きよし
酸漿
200104
裏山のけはひにをはる初音かな
鷹羽狩行
十三星
200105
高箒ひやりと持てば初音かな
林翔
沖
200105
藪深く調はねども初音かな
和田敏子
雨月
200105
初音けさ子に妹に知らせけり
青木政江
酸漿
200106
初音して天狗岩より榛名山
郷田健郎
百鳥
200106
初音問ひ初花を問ひ日々閑居
村越化石
濱
200106
空海のひらきし山の初音かな
小林たけし
狩
200106
初音きく絵本作家の原画展
米須あや子
遠嶺
200106
何もかも忘れ来て野に初音聞く
富田志げ子
酸漿
200106
生垣の朝を揺らせし初音かな
塩野きみ
遠嶺
200106
赤き日のはなるる地平初音あり
東芳子
酸漿
200106
ふたこゑのあとの続かぬ初音かな
今成公江
狩
200107
指月廟に初音聞き分け如来さま
田中干鶴子
狩
200107
初音かな嶺より雲のはなれゆく
今井松子
遠嶺
200107
甲斐も端初音てふ里小鳥来る
守屋井蛙
酸漿
200201
初音聞く日も近からん祝を待つ
稲畑汀子
ホトトギス
200202
稜線を滑べり下り来し初音かな
稲畑汀子
ホトトギス
200202
六甲のふところ深く初音かな
稲畑汀子
ホトトギス
200202
上枝より移り下枝の初音かな
鷹羽狩行
狩
200202
耳遠き父に初音の今朝届く
尾崎恭子
雨月
200204
東塔の篁に聞く初音かな
田所洋子
雨月
200204
暁の茶事待合に初音聴く
松村美智子
あを
200204
篁の少しはにかむ初音かな
川端実
遠嶺
200205
その後のしづけさを聴く初音かな
亀田憲壱
銀化
200205
林には林のにほひ初音せり
岡田房子
酸漿
200205
倶利伽羅の奈落の底の初音かな
春田淳子
雲の峰
200205
車酔ひの耳が捉へし初音かな
鳴海清美
六花句集
200205
眼前の梅に鶯初音とは
上崎暮潮
円虹
200206
囀の止つてしまひ初音かな
上崎暮潮
円虹
200206
初音聞く去年と同じ屋根と空
上崎暮潮
円虹
200206
今日庵の結界奥に初音聞く
池田加代子
風土
200206
明けそめて藪の中より初音かな
高梨美佐子
遠嶺
200206
つとめてを初音に覚めし旅枕
松村富子
苑
200206
深苑の結界よりの初音かな
花島陽子
遠嶺
200206
浦安の舞に加はる初音かな
進峰月
円虹
200207
校庭にうすき日のある初音かな
丸山分水
槐
200207
初音聞く思ひ遥けくありしとき
今井千鶴子
ホトトギス
200207
口笛の初音を妻に持ち帰る
小山徳夫
遠嶺
200210
東京に公園多し初音聞く
稲畑廣太郎
ホトトギス
200302
みよし野の初音魁けをりし宿
稲畑汀子
ホトトギス
200302
風化せぬ初音たふとし法然院
本山卓日子
京鹿子
200304
初音聴くリユツク夫より大きくて
竹田圭子
帆船
200305
あともどりしても初音の一度きり
谷口みちる
沖
200305
初音聞くけふ退院のこの家に
水原春郎
馬醉木
200305
芝川町字大晦日初音せり
勝亦年男
濱
200305
祈りゐる朝日の中の初音かな
花島陽子
遠嶺
200305
きりぎしに日の斑の跳ねて初音かな
伊藤葉
雲の峰
200305
料峭や初音小路を僧一人
佐藤佐代子
朝
200305
里にきて止る木決めて初音かな
井関祥子
酸漿
200306
初音して熊笹に風およびけり
中谷葉留
風土
200306
初音せり川のむかうに摩崖仏
中村洋子
風土
200306
初音きく鎮守に近き宿りかな
中谷葉留
風土
200306
遙かより近む初音の起伏かな
林裕子
風土
200306
やはらかき河畔を踏めば初音あり
小林優子
酸漿
200306
庭に聞く初音に夫も声おとす
大房帝子
酸漿
200306
あめつちの恵み祝ぐ初音かな
邑橋節夫
遠嶺
200308
神住まふ洞へ鳴き継ぐ初音かな
伊藤以玖子
対岸
200403
初音して五浦の海の潮ぐもり
清水伊代乃
酸漿
200404
まなざしの谷うぐひすの初音かな
石脇みはる
槐
200405
こんもりと菜屑捨てあり初音かな
風間史子
鴫
200405
遠初音納屋となしゐる産屋かな
北吉裕子
雲の峰
200405
初音聴く熊野古道に佇んで
楠木君子
築港
200405
初音してタオルに嬰をもらひけり
廣島泰三
沖
200405
積まれある藁ぐつたりと初音かな
浜口高子
火星
200405
二度三度初音きこゆる寺の森
村田さだ子
酸漿
200406
初音きく水音絶えぬ峠茶屋
佐々木ひさこ
築港
200406
帰るさの峡の初音に歩をとどむ
村田さだ子
酸漿
200406
かたくなな蕾うながす初音かな
荻野千枝
京鹿子
200406
ふたたびの木喰生家初音かな
林裕子
風土
200406
対岸の周防のくにの初音かな
八染藍子
狩
200406
初音きく縁に日だまりある処
山村桂子
遠嶺
200407
初音聞く山にジャンボの温度計
藤田京子
ぐろっけ
200407
初音聞くとは思はずに来し山路
稲畑汀子
ホトトギス
200502
待たるるは初音よ巡る一周忌
稲畑汀子
ホトトギス
200502
ヒヨドリの初音横切る太極拳
橘高絹子
集
200503
初音せりエアコン止めし無音界
林翔
沖
200504
初音聞き一日豊かにすごしけり
河野政恵
酸漿
200505
初音きき釦一つを掛けちがふ
織田みさゑ
万象
200505
城山へ男坂がかりの初音かな
淵脇護
河鹿
200505
人力車行きあふ小径初音せり
荒井書子
馬醉木
200505
せつかちの初音も聞かず逝きにけり
岩井泉樹
春燈
200505
弔ひのおほぜいへ声初音かな
定梶じょう
あを
200505
初音なか運ばれきたる手桶膳
浜口高子
火星
200506
初音して紫式部の屋敷跡
竹内喜代子
雨月
200506
初音あり墓苑に子らを待ち居れば
国分七穂
酸漿
200506
こめかみに合はぬ料理に初音して
丸山佳子
京鹿子
200506
初音聴き気持昂ぶる日となりぬ
山崎泰世
苑
200507
初音聞く河の蛇行を遠く見て
松本鷹根
京鹿子
200507
浮舟の聞きし初音と聞きにけり
磯野しをり
雨月
200507
麦飯の匂ふ朝の初音かな
中島伊智子
酸漿
200507
南禅寺界隈にして初音かな
桑田青虎
ホトトギス
200508
初音かな茶碗を洗ふ手を止めて
大谷美保子
栴檀
200508
初音かな都離れて一陋居
佐々木恭子
遠嶺
200508
鶯の恋の初音を漏らしけり
島谷征良
風土
200602
こほろぎの初音をしばし聞きゐたり
赤司美智子
酸漿
200602
初音待つ枝ぶりよけれ園の梅
林翔
沖
200604
里人も初めてと言ふ初音かな
久保田ヤスエ
酸漿
200605
灰のみの初音茶屋にて鶯聞く
松崎鉄之介
濱
200605
初音あり顔を上げたる庭の夫
川原典子
酸漿
200605
初音聞き愁ひの心消えゆくか
南原正子
酸漿
200605
岬山の裏へ回れば初音かな
辻恵美子
栴檀
200605
人の世話やくに初音を聞きのがす
太田絵津子
濱
200605
山近き街に住む幸初音かな
浜田南風
苑
200606
避病院ありたる山に初音かな
阿部澄
万象
200606
初音して森に明るさ甦る
綿谷美那
雨月
200606
鶯の初音のあとの朝餉かな
名取すみ子
酸漿
200606
六甲山の初音を今日の土産かな
青山丈
朝
200606
饒舌の初音に目覚む果報かな
三由規童
雨月
200606
仏間の戸おほきく開く初音かな
太田慶子
春燈
200606
初音聴く身に静脈と動脈と
小澤克己
遠嶺
200607
一声は空耳二声めは初音
山本晃裕
ホトトギス
200610
初音聞く朝風新たなるものに
山本晃裕
ホトトギス
200610
句碑の辺に初音整ひつつありぬ
稲畑廣太郎
ホトトギス
200703
遅れ来て初音を聞けり遺髪塚
中山フジ江
濱
200703
悲しみはいつか思ひ出初音聞く
稲畑廣太郎
ホトトギス
200704
姿なき初音に首右左
本藤みつ
峰
200704
初音すや白杖の歩のはたと止む
本藤みつ
峰
200704
鶯の初音が近し庭焚火
阿部文子
酸漿
200704
嵯峨日記ひもとく窓の初音かな
山口順子
馬醉木
200705
山路来てこよなき風の初音かな
大西裕
酸漿
200705
幣の縄真四角に張り初音かな
浜口高子
火星
200705
疑ひもなく初音なり朝の空
山村修
酸漿
200705
♭のつんのめりたる初音かな
片山タケ子
鴫
200706
初音して明智一族眠る墓
伊藤稔代
苑
200706
真上より初音かぶさる波浮港
手島靖一
馬醉木
200706
空の青嶺に谺す初音かな
齋部干里
ぐろっけ
200706
竹林の揺れの深さに初音かな
布川直幸
峰
200706
竹林をころがりぬける初音かな
倉谷紫龍
万象
200706
日の出はや向ふ山より初音かな
山本とく江
万象
200707
しばらくは散歩の犬と初音聴く
中野英歩
八千草
200708
ホウのなくケキヨももたつく初音なり
伊藤白潮
鴫
200805
訃報来るあたかも初音聞く朝
水原春郎
馬醉木
200805
今年はも待ちし初音を墓地にきく
綿谷美那
雨月
200806
突然の初音や疎き耳を過ぐ
田中峰雪
雨月
200806
癒さるる庭の古木の初音かな
塩路五郎
璦
200806
その妻となりて添ひたき初音かな
小山徳夫
遠嶺
200806
硝子戸の引くをためらふ初音かな
林いづみ
風土
200806
吊橋の谷の深さに初音かな
八木岡博江
酸漿
200806
初音聴く今日は佳き日になりさうな
千加田寿子
遠嶺
200807
初音聞く山ふところに風の無き
家塚洋子
酸漿
200807
初音聞く耳を残して句会へと
安田久太朗
遠嶺
200807
ある日ある処の初音なりしかな
松野睦子
遠嶺
200808
聞きとめしことまなざしに初音かな
片山由美子
狩
200903
目の前の二羽の初音の未だ出ず
和田政子
峰
200904
ゆうるりと回す石臼初音かな
奥田茶々
風土
200905
神杉の鉾高きより初音かな
佐治奈津
雨月
200905
ふるさとの地縁血縁夕初音
柴崎富子
春燈
200905
際やかに姿見せくれ初音かな
山田夏子
雨月
200906
補聴器に初音の届く朝かな
苑田ひろまさ
苑
200906
初音せり来てはひとりの原城址
上柿照代
馬醉木
200906
ひと節をうたひ切れざる初音かな
竹下陶子
ホトトギス
200906
残りたる里山に聞く初音かな
阿部文子
酸漿
200907
合宿の寝足りぬ朝の初音かな
西山春文
狩
200907
沢音に初音重ねて大落暉
川口襄
遠嶺
200907
風柔らかくやはらかく初音聞く
稲畑廣太郎
ホトトギス
200908
笹藪に馬場行き止り初音かな
柿沼盟子
風土
200911
極めても風雅は魔物初音聴く
小澤克己
遠嶺
201001
一列に登る墳丘初音かな
坂上香菜
璦
201004
聞き留めし初音の径を戻りけり
三橋玲子
末黒野
201004
礼参り宮居の奥の初音聞く
禰寝瓶史
京鹿子
201004
初音聞く朝の厨の明るくて
舩越美喜
京鹿子
201004
空音でも初音としたき日のこぼれ
豊田都峰
京鹿子
201004
山水の静寂揺るがす初音かな
田中浅子
璦
201005
初音して知つたか振りの男かな
折橋綾子
鴫
201005
初音聞く永久の足音石仏
中根健
笹
201005
上々の音程朝の初音かな
井田実代子
雨月
201005
胸はづむ初音は少し舌たらず
河野政恵
酸漿
201005
2021年4月19日
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