異人館壁炉の虚青葉冷え
中川濱子
ぐろっけ
199908
幕すすむ石の桟敷の青葉冷
村田近子
遠嶺
199909
青葉冷えなるB階のバー「トトロ」
小山徳夫
遠嶺
199909
玉の緒の涙を拭ふ青葉冷
能村研三
沖
200107
瞑れば君在り寝屋の青葉冷
林翔
沖
200108
高倉のねずみ返しや青葉冷
近藤暁代
馬醉木
200110
覚めて灯の消し忘れあり青葉冷え
鷹羽狩行
狩
200207
白鷺の脛の二本の青葉冷え
飯塚ゑ子
火星
200207
独り居の閂下ろす青葉冷
西村博子
馬醉木
200208
青葉冷舞妓姉妹の安息日
前田倫子
百鳥
200208
青葉冷看護疲れの胃の痛み
片山喜久子
雨月
200208
蝋燭は絶やさずにおく青葉冷え
柴田朱美
京鹿子
200209
繋船に刻のとどまる青葉冷
公山礼子
朝
200209
沈金の文箱からつぽ青葉冷
高橋あゆみ
沖
200307
ベスト着て夜は山住みの青葉冷
名取袿子
苑
200308
青葉冷笛一管を柩へと
高橋照子
雨月
200308
青葉冷こつと骨鳴る朝の肩
櫻井幹郎
百鳥
200308
映る灯の窓に浮きたつ青葉冷
仲村青彦
朝
200308
青葉冷天のクルスに鳩の糞
丸山分水
槐
200309
打ち減りし魚板の疵や青葉冷
広瀬長雄
沖
200408
花時計遅々と狂へる青葉冷
長沼冨久子
馬醉木
200409
青葉冷玻璃の明るき斜陽館
向井芳子
春燈
200507
青葉冷え箸にとろりと治部煮鴨
塩沢とき子
対岸
200508
青葉冷えさらに奥には蔵座敷
館容子
狩
200509
黒楽の底に潜みし青葉冷
河内桜人
京鹿子
200509
饒舌に誇張もありて青葉冷え
三浦澄江
ぐろっけ
200509
今日外は青葉冷よと見舞客
香月公恵
朝
200509
登呂の世の赤米今に青葉冷
水原春郎
馬醉木
200607
CDの裏は銀色青葉冷
白井友梨
馬醉木
200608
石ひとつ失せたる指輪青葉冷
高橋道子
鴫
200608
青葉冷え紙燭ともして書庫文庫
大西八洲雄
万象
200608
したたかに雨したたかに青葉冷
小澤克己
遠嶺
200609
湖も比叡も青葉冷えのまゝ
山田六甲
六花
200706
赤ん坊は火種のごとし青葉冷
辻美奈子
沖
200708
天井に天女舞ひゐる青葉冷
奥田順子
火星
200708
青葉冷え蛸やきの香のいづくから
荻野千枝
京鹿子
200709
青葉冷「強気でゆけ」と父遺し
杉山哲也
馬醉木
200807
火入れ待つ窯へ神酒撒く青葉冷
山口順子
馬醉木
200808
何も彼もオートロックや青葉冷
藤見佳楠子
璦
200808
横降りの雨に御母衣の青葉冷
遠藤真砂明
沖
200809
魚の腹あらふ渓川青葉冷
浜口高子
火星
200809
父祖の田を埋め新道青葉冷
岸本久栄
雨月
200809
青葉冷己が骨壺焼く話
松原智津子
万象
200809
削られし鋼の匂ひ青葉冷
小山徳夫
遠嶺
200810
一雷のあとの風音青葉冷
渡辺昭
沖
200907
天空に鉄接ぐ火花青葉冷
上谷昌憲
沖
200907
青葉冷え釜鳴りに身をゆさぶらる
須賀允子
万象
200907
あらためて習ふ折紙青葉冷
高橋道子
鴫
200908
祖師堂へ登る回廊青葉冷え
小林武弘
笹
200908
玻璃越しの太刀の抜き身や青葉冷
小山徳夫
遠嶺
200909
行者らと見上ぐる塔や青葉冷
小林成子
璦
200909
青葉冷要心もまたわが山居
浅井青陽子
ホトトギス
200910
美しき地球の狂ふ青葉冷
中村喜美子
春燈
201007
痛む肩を摩ればまとふ青葉冷
伊東和子
璦
201009
てのひらに丸薬の粒青葉冷え
西村博子
馬醉木
201009
夫留守は仮の独居ぞ青葉冷
木下もと子
鴫
201009
約款にルーペを這はす青葉冷
中島霞
ぐろっけ
201109
萩焼に薬湯そそぐ青葉冷
大村かし子
万象
201110
青葉冷吉野に薪のある暮し
牧田澄子
雨月
201208
子規の机撫でうべなへり青葉冷
山尾玉藻
火星
201306
傘もたぬ男に摩耶の青葉冷
山田六甲
六花
201406
ぼろぼろの零戦に触れ青葉冷
坂上香菜
璦
201408
青葉冷ゆ人工骨の膝抱けば
玉置かよ子
雨月
201409
フラスコは火を待つかたち青葉冷
林昭太郎
沖
201409
目つむりて出を待つ木偶や青葉冷
綿谷ただ志
馬醉木
201608
青葉冷優待券は期限切れ
松本文一郎
六花
201608
青葉冷え検査着の母小さくて
大川ゆかり
沖
201608
列島に断層混み合ひ青葉冷
田所節子
沖
201608
雨雲のちぎれてゆくや青葉冷
松原三枝子
万象
201609
城址を騒めかす風青葉冷
森清信子
末黒野
201610
枝蛙しづくの翅を咥へをり
南うみを
風土
201708
遠拝の磨崖佛あり枝蛙
伊丹さち子
馬醉木
201708
一水の翳に動かず枝蛙
藤岡紫水
京鹿子
201709
青葉冷え足にまつはり魚板打つ
竹内弘子
あを
201806
音もなく雨降る街や青葉冷
赤羽陽子
春燈
201808
逢ふための別れもありぬ青葉冷
藤岡紫水
京鹿子
201808
睫毛なき鳥の眼光る青葉冷
井上和子
空
201811
青葉冷林不忘の本に入る
佐藤恭子
あを
201905
文豪の晩年若し青葉冷
石本百合子
馬醉木
201908
薪能般若をしのぐ青葉冷え
善野行
六花
201908
降り止みしあとのしばらく青葉冷
佐津のぼる
六花
201909
青葉冷夜は確かにやつてくる
篠田大佳
あを
202006
刃物屋の飾りは刃物青葉冷
宮内とし子
沖
202109
青葉冷小さく父の欠神ごゑ
河嵜祐二
沖
202109
茹で汁の濁りを晒す青葉冷え
井上和子
空
202112
青葉冷抱卵の鳥眼をつむり
木暮陶句郎
ホトトギス
202201
青葉冷道後の坂を上り下り
山田六甲
六花
202206
2023年6月9日
作成