日本原子力技術協会:トピックス

活動状況
独立行政法人 日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル工学研究所にて
第86回安全キャラバンを実施

Contents

平成18年9月8日、茨城県那珂郡東海村にある日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル工学研究所において、第86回安全キャラバンを実施しました。

安全講演会

安全講演会の様子

安全講演会には日本原子力研究開発機構の社員および協力会社の社員139名が出席されました。

講演会の冒頭、日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル工学研究所長 大島博文様から「本日は、慶應義塾大学の岡田先生、JANTIの皆様にお越し頂き、安全を一層進めるための講演をいただくことになっております。特に、我々原子力に関する研究については、予算を含め若干上向きになっておりますが、日常的に現場が管理できて初めて有効に活用できると考えています。特に、現場を毎日運転し、核燃料物質あるいは放射性物質を確実に安全に取り扱っていくということは極めて大事であると考えています。そのような観点のもと慶應義塾大学の岡田先生には、「ヒューマンエラー・マネジメントの展開」ということでご講演いただくことになっています。 一人ひとりが、エラーを起こすという見方ではなく、きちっと見極めたうえで、しかるべき改善や、ハードウェアを含めた再発防止策をきちっとやっていくことが極めて大事かと思います。我々も、ご講演を通じて、知恵を付けさせてもらい日常業務に展開していただきたいと思います。」とのごあいさつを頂きました。

ご挨拶の後、日本原子力技術協会から活動状況を紹介し、引き続き、慶應義塾大学 理工学部 管理工学科 理工学研究科 開放環境科学専攻 助教授 岡田 有策様より「ヒューマンエラー・マネジメントの展開」と題してご講演頂きました。

講演では、
慶應義塾大学 岡田 有策 氏

安全管理や品質管理上のトラブルを引き起こす可能性があるヒューマンエラーを防止するための仕組み(ヒューマンエラー・マネジメント・システム:HEMS Human Error Management System)を確立することは、現在の企業・組織における重要な課題の一つである。そのシステムが担う役割は、過去におけるトラブルを詳細に分析し、そのトラブルの再発を防ぐ(再発防止)だけでなく、将来におけるトラブルの発生可能を抑制させる(未然防止)ことにまで拡張されなくてはならない。
再発防止においては、トラブルを導いたヒューマンエラーの発生メカニズム、すなわちヒューマンエラーの原因となったPSF(行動形成要因:Performance Shaping Factors)を的確に抽出し、分析評価することが必要である。このとき、より詳細かつ広範囲な視点からPSFを検討することが、効果的な再発防止策を導くことにつながる。PSFの抽出方法はこれまでにもいくつも提案されているが、いずれの手法においても、その利用者、すなわち解析者の技量・経験がその成果に多大な影響を与える。トラブル分析に関しては、単に手法を知れば十分であるといった認識は持たず、分析手法の経験者やヒューマンファクターの専門家のレクチャーなどを受け、原因分析・要因分析において実質的成果を得ることができるよう、各組織において分析者・評価者の教育を行うことを薦める。
一方、未然防止においては、大きくわけて二つの活動が組織において求められる。一つは、ヒューマンエラーの芽(ヒューマンエラー・シーズ)を評価し、その芽をつみ取る対策(転ばぬ先の杖)を講じることである。もう一つは、組織の風土や安全に対する意識といった、いわゆる安全文化に代表される組織風土である。もちろん、これは安全に関わらず、品質管理やサービス管理においても同様に求められるものであり、すなわちヒューマンエラーに対する認識、適切なヒューマンエラー防止活動の実施、さらにそれらの体制のマネジメントである。
などの貴重なお話を頂きました。

講演会終了後のアンケートでは、
くろまるヒューマンエラー(HE)を人的過誤(過失)として、ワンポイントで捉えるのではなく、多角的に捉える発想の転換、これをトータルに管理するHEMという枠組み、大いに賛成です。どうしても、HEは結果事象として評価し、個人の属性に帰着しがちです。そのため、作業手順、作業環境、組織要因といった本質原因、間接要因、背景要因が突き止められず、同種同類のトラブルが再発する。このため、益々リピーターとして個人の属性が原因として強く認識評価されるという悪循環を生みだすため、先生のご講演のようにDEVIATIONに基づく転換に方向付け、定着、発展させることの重要性を痛感しました。

くろまるヒューマンエラーの講演会は何度か聴講したが、今回のように要因まで分析して、やるべしことの意見にはなるほどと思った。マニュアルを理解できない作業者がいること、技術伝承にも関連して、そもそも伝承の仕方から考え直す必要があるかもしれないと感じた。

くろまるヒューマンエラーによるトラブルの再発防止策を確実に行うと共に、潜在要因を分析し、未然防止を組織の中で計画的に遂行する(マネジメントする)ことが、ポイントであるという講師の力説には説得力があった。
くろまるヒューマンエラーに対しては、本人の責任にするのではなく、グレーのもの(明らかな原因ではなく、トラブルの要因となりえる可能性がある要因)を含めた背景を解析して対策をとらなければいけないことが理解できた。大変参考になる講演であった。

くろまる戦術的な対応は各部署でやっていると思うが、戦略的という視点では十分とはいえないかもしれない。現場は、短期で解決したいという思いが強く、将来的な展望での対策を考えにくい。安全のマネジメント部署に現場とコミュニケーションの取れる戦略検討の専任者を配置するとよいと感じた。

などのご意見がありました。

安全情報交換会

(1)取組み紹介と意見交換
ニュークリア・デベロップメント?梶@村井 一夫 氏

安全情報交換会では、ニュークリア・デベロップメント(株)技術開発推進室 主幹研究員 村井 一夫 様においでいただき、ニュークリア・デベロップメント(株)における技術支援/伝承電子化活動(e−伝活動)について詳しくご紹介頂きました。
また、日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル工学研究所 保安管理部安全対策課長代理 水谷 啓一様より安全文化醸成の取り組みとして「サイクル研究所の安全活動および技術継承への取り組み」について紹介がありました。

紹介の後、上記の活動や取組みについて情報や意見の交換を行いました。

(2)その他
日本原子力技術協会 NSネット事業部の有する原子力安全文化醸成に関するデータベースなどについて紹介しました。

以 上


Copyright © 2005 Japan Nuclear Technology Institute, All Rights Reserved.

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /