安全キャラバン

活動状況 安全キャラバン

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中国電力株式会社島根原子力発電所にて
第75
回安全キャラバンを実施

平成17年9月7日 島根県松江市鹿島町にある中国電力(株)島根原子力発電所において、第75回安全キャラバンを実施しました。

安全講演会

安全講演会には、中国電力 (株)及び協力会社の社員105名が出席されました。


講演会の冒頭、中国電力(株)島根原子力発電所長 福島直樹様より「今、我々の身の回りは、『失敗をしない』『失敗をさせない』ための教育、訓練、マニュアル、手順書等の種々のシステムが構築され、ややもすると、それに黙って従うことが正しいような雰囲気に感じられます。しかし、それは錯覚であり、求められているのは『真に自らが考え、正しい、安全最優先の行動をする。』ことであります。本日の講演は「事故はなぜ起こる?事故に学ぶ先進国の取り組み」と題し、海外の事故事例と安全の取り組みを紹介いただけると聞いています。ぜひ自らの経験にしていただきたいと思います。」とのご挨拶をいただきました。

安全講演会の様子

ご挨拶の後、NSネット事業部より日本原子力技術協会設立の基本的考え方や活動方針、NSネットの活動状況などを紹介し、引き続き、日本システム安全研究所 代表取締役社長の吉岡律夫様 より、「事故はなぜ起こる?事故に学んだ先進国の取り組み」と題して、ご講演いただきました。

吉岡 律夫 氏

講演会では、

事故の根幹原因とは何か。また、その分析手法などについて、先進国における取組みを交え、以下の通りご講演頂きました。

くろまる事故の根幹原因とは「安全文化の欠陥」「組織構造の問題」「技術活動の問題」の三つで、一番重要だと考えられるものは「安全文化の欠陥」である。さらに「安全文化の欠陥」の一番大きなものは「自信過剰と自己満足」であり、その要因は「リスクの過小評価」「冗長性に頼りすぎる」「非現実的なリスク評価」「低確率で過酷な事象の無視」「リスクの経年減少を仮定」「ソフトウエア関連リスクの過小評価」「早期の警報や兆候の無視」の7項目である。
くろまる重大な事故が起こる原因は、人的要因(コンピテンシー)、技術要因、組織要因の三つである。この三種類の要因は、すべての組織に共通した二つの目標、つまり経済性と安全性によって支配されている。安全性と経済性は車の両輪でありバランスしなければならない。
くろまるリスクゼロ、絶対安全はない。許容範囲外のリスクを許容範囲内に抑えることが重要である。
くろまるシステムの安全を守る安全系が正しく機能する、作動することによってリスクを許容目標に軽減するという設計思想を「機能安全」という。これは「絶対安全は存在しない」という考えに基づき、安全装置などによりリスクを相対的に軽減させ、安全達成機能により一定の安全を確保する仕組みである。
くろまる安全な製品は安全な組織からしか生まれない。そして、組織を構成し運営しているのは人間である。すなわち、事故が起きるのは技術的な問題だけではなく、組織と個人が根本原因となっている。だからそれを規定しなければ安全を守ることができない。これが機能安全規格の基本思想である。

とのお話をいただきました。

講演会終了後のアンケートでは、

くろまる

JEAC4111に基づく品質保証活動の中で、活動の要の一つである不適合の原因究明(真因追求)において、ヒューマンエラーに係わる不適合の原因究明を充実させる上で、「根幹原因」に関する説明は大変参考になりました。ありがとうございます。

くろまる
安全は機器側だけの問題では無く、個人・組織の健全性が安全につながると思いました。今後、発電所の安全・安定運転に高い使命感・情熱を持ってあたっていきたい。
くろまる
安全と品質を作りこむことができるのは人であり組織であり、これ無くしては原子力の安全文化は成り立たない。
くろまる
機能安全という新しい言葉に興味を持った。従来から「人」と「組織」の大切さを言われているが、結果としては製品で評価されているのが現状です。品質保証という体系も証拠ばかりに重点が置かれているという感です。
くろまる
重大事故の起因は、人的・技術・組織の3つの要因。この3つの要因は総ての組織に共通した2つの目標(経済性と安全性)をバランスさせる事の重要性はわかったが、どこまでバランスしているかの判断は難しく、悩むところと思います。

などのご意見をいただきました。

安全情報交換会

安全情報交換会の様子
平澤 明彦 氏
安全情報交換会では、「美浜3号機二次系配管破損事故を踏まえた今後の課題と取組み」について、中国電力(株)島根原子力発電所 保修管理課 副長 西本伸二様より「島根原子力発電所における安全文化の醸成」と題してご紹介いただきました。また、東北電力(株)女川原子力発電所 副調査役 平澤明彦様にもおいでいただき「原子力安全文化醸成に資する情報の紹介」と題してご紹介いただき、あわせて、美浜事故から学んだ教訓として協力会社とのコミュニケーション、工事受注者との責任分担・協力体制などについて意見交換を行いました。

主な情報・意見交換として、

くろまる

危険を認識し、判断するためには、それに関する情報がきちんと上がり、みんなで議論し、その上で判断することが重要である。

くろまる 横並びで全プラント見ることができれば減肉の傾向が分かるだろう。ただし当然、サイト毎に点検する人は違う。ひとつのサイトでもユニットが増えることで点検する人も変わってくる。こういうところから情報の伝達漏れが起きやすい。美浜の場合は協力企業と電力のコミュニケーションの問題がクローズアップされているが、電力の中だけ見ても十分起き得る話。我々は2ユニットしかないため相互に情報共有できているが、今後、ユニット数が増えた場合、いかに安全な組織を継続していくかは重要な課題である。
くろまる 『多数の中の同調実験』のように、管理者・同僚など大多数が問題ないと判断すれば、担当者が危ないと思ってもそう言えない。トップから担当者までが安全の重要性を十分に理解し、組織の文化が全体として向上していけば正しい判断ができる。それでも、事故はゼロにはならない。その判断が間違うかもしれない。でも、人間ができることはトップから担当者まで安全に関する知識・文化を持った形で決定するということである。
くろまる INPOの概念としてSCWE(Safety Conscious Work Environment)というのがある。これは『安全に関する懸念があったら懲罰の恐れなしに自由に言える環境が大切である』ということ。協力企業や電力の方も何か気づいたら自由に言える風土ができていないとダメ。また、そういう風土ができていないと安全文化も構築できないといえる。

などがありました。

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以 上

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