last update:2013
■しかく1 誤解→概説
それは「Independent Living Movement」の訳語ということになっており、「IL運動」などども略され、一九七〇年代初頭に米国(のUC(カリフォルニア州立大学)バークレー校の学生だったエド・ロバーツ(Edward V. Roberts、〜一九九五))らによって始められたとされる――彼は十三歳(文献によっては十四歳)の時にポリオに罹患、当時のポリオの人は障害が重い人が多く、「鉄の肺」と呼ばれる人工呼吸器を当初使っていた。大学で活動を始め、その後大学の外に「センター」を作った。それは全米に広がり、日本にもやってきたとされる。一九八一年が「国際障害者年」で、その前後、米国の運動家たちを呼んでセミナーなどが開催され、「自立生活」が題にはいった報告書なども出された。そうして、それは米国から輸入されたものだとされた。
それは違っている。互いに知らずに同じ頃始まった運動が日本にもある。それは福祉の政策・学問の「本流」から外れ、むしろそれに抗議する「過激」な運動とされたから、この時期のことがほとんど文献にも出てこないのだとも考えられる。その欠落を埋めようとして書いたのが、ずい分前に出してもらった『生の希望』(安積他、一九九〇、増補改訂版一九九五)でもあった。増補改訂版からでも十八年も経っている。そこで(増補改訂版を第二版として)第三版を文庫版として刊行することにした(安積他、二〇一二)。その後のことを概括しその主張が維持されるべきことを記した(立岩、二〇一二a)――その一部は、本章の草稿が先に書かれたのだが、本章の記述と重なっている――と、本章では最後の節にあたる部分をいくらか細かに追った(立岩、二〇一二b)を新たに付した。一九九五年までの比較的詳しい、そしてそれ以降はごく簡単な流れについては、この本をご覧いただければと思う。
それで、つまり「自立生活運動」とは何か。[...]
■しかく2 人を得る(ために)金をとる
今その生活のための「運動」、そして日々の生活を支援する仕事のある部分は、「自立生活センター」と呼ばれる組織によって担われている。だがそのことだけを言うと、全体と経緯を捉えそこなう。
[...]
■しかく3 組織を作り運営する
ボランティア主体の時代もその後も、多くはなんらかのグループが作られた。本人一人とボランティアたちというものもある。本人が何人かいて、支援する人たちがまた何人かいてというところもあった(今もあるところにはある)。当初は、介助について支給される金額は少なかったから、長い時間の介助にあたり、生活やときに運動の全般を支える人は生活できるだけの金を得られるようにし、それ以外の人たちは金を受け取らないようにするなど、様々な工夫がなされた。数人の(時に一人の)障害者とそれに関わる人たちが小さな会を作って、様々なことを決めたり相互の交流をはかったりした。そうして始まり今もうまくいっているところもある。ただ、人間関係が――ときに「濃い」がゆえに――うまくいかなくなり、生活もうまくいかなくなるといったことも起こった。
様々な形態が試された中で、もっとすっきりした契約の仕組みでいこうという動きが現われてきた。「自立生活センター」という言葉は、一九八〇年代の初めに米国の自立生活運動のリーダーたちを招いたセミナーなどが開催され、広く知られるようになった。普通CIL(Center for Independent Living)と呼ばれるが、ILC(Independent Living Center)とも呼ぶようだ。もう一つ、[...]
■しかく4 拡大と多様性
こうして一つの「典型」は示された。しかし実際は多様だ。JILに加盟しているCILでも規模や「乗り」がずいぶん違う。例えば兵庫の「メインストリーム協会」は随分な(というかとても大きな)規模の「事業」をしているが、それでも、東の「ヒューマンケア協会」とはなにか雰囲気が違う。
そして私たちがかつて調べて書いたのは身体障害の人たちのことだけだった。他の障害を有する人たちにも広がっていった。あるいは既に存在していた。[...]
◆だいやまーく研究・文献
二〇〇〇年以降でこれまであげてこなかったものの中からいくつかあげる。(立岩、二〇一二a)には「障害学」関連の文献を含めより多く紹介している。「研究者」によるものとそうでないものとあるが、どうでもよいことだと思う。その「運動」に関わった様々な人・組織について、当人たちが書いたものを中心にまとめられた(全国自立生活センター協議会編、二〇〇一)。府中療育センターでの抗議活動から始まり、東京都国立市に住むことになった三井絹子の本(三井、二〇〇六)、その兄でもありやはり同じセンターから北区に移り、介助保障要求の運動他を率いた一人である新田勲の本(新田編、二〇〇九)――加えて新田たちの生活・主張について深田耕一郎の研究。私たちが『生の技法』できちんと書けなかった関西での動きについて、とくに「大阪青い芝の会」について(定藤、二〇一一)、とくに「兵庫青い芝の会」やそれに関わった人たちについて(角岡、二〇一〇)。また、その地で介助や運動に関わった「健全者」たちのグループについて(山下、二〇〇八)。介助(介護)他を巡るすっきりしない様々(と、もちろん、はっきり言える諸々)について、(渡辺一史、二〇〇三)、(前田拓也、二〇〇九)、その方面での職業人でもある著者による(渡邉琢、二〇一一)。「自立生活センター」についての研究は意外なほど少ない。そのなかで、(筆者もかつていくらか関わらせてもらったことがある)「自立生活センター・立川」を調査したものに(村田、二〇〇九)。また、「センター」を使ったりそうでもなかったりしながら、それぞれに暮らす人たちの生活を追った田中恵美子の著書(田中、二〇〇九)。
■しかく文献
安積 純子・岡原 正幸・尾中 文哉・立岩 真也、一九九〇、『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学』、藤原書店。
―――――、一九九五、『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 増補・改訂版、』、藤原書店。
―――――、二〇一二、『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』、生活書院・文庫版。
角岡 伸彦、二〇一〇、『カニは横に歩く――自立障害者たちの半世紀』、講談社。
前田 拓也、二〇〇九、『介助現場の社会学――身体障害者の自立生活と介助者のリアリティ』、生活書院。
三井 絹子、二〇〇六、『抵抗の証――私は人形じゃない』、「三井絹子60年のあゆみ」編集委員会ライフステーションワンステップかたつむり、発売:千書房。
村田 文世、二〇〇九、『福祉多元化における障害当事者組織と「委託関係」』、ミネルヴァ書房。
中根 成寿、二〇〇六、『知的障害者家族の臨床社会学――社会と家族でケアを分有するために』、明石書店。
中西 正司・上野 千鶴子、二〇〇三、『当事者主権』、岩波新書。
新田 勲 編、二〇〇九、『足文字は叫ぶ!――全身性『障害』者のいのちの保障を』、現代書館。
ピープルファースト東久留米、二〇一〇、『知的障害者が入所施設ではなく地域で生きていくための本――当事者と支援者が共に考えるために』、生活書院
定藤 邦子、二〇一一、『関西障害者運動の現代史――大阪青い芝の会を中心に』,生活書院。
庄司 洋子・木下 康仁・武川 正吾・藤村 正之 編、一九九九、『福祉社会事典』、弘文堂。
田中 恵美子、二〇〇九、『障害者の「自立生活」と生活の資源――多様で個別なその世界』、生活書院。
立岩 真也、二〇〇〇、『弱くある自由へ――自己決定・介護・生死の技術』、青土社。
――――、二〇一二a、「多様で複雑でもあるが基本は単純であること」(安積他、二〇一二)。
――――、二〇一二b、「共助・対・障害者――前世紀末からの約十五年」(安積他、二〇一二)
立岩 真也・堀田 義太郎、二〇一二、『差異と平等――障害とケア/有償と無償』,青土社。
寺本 晃久・岡部 耕典・末永 弘・岩橋 誠治、二〇〇八、『良い支援?――知的障害/自閉の人たちの自立生活と支援』、生活書院
土屋 葉、二〇〇二、『障害者家族を生きる』、勁草書房。
渡辺 一史、二〇〇三、『こんな夜更けにバナナかよ――筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』、北海道新聞社。
渡邉 琢、二〇一一、『介助者たちは、どう生きていくのか――障害者の地域自立生活と介助という営み』 、生活書院。
山下 幸子 2008 『「健常」であることを見つめる―一九七〇年代障害当事者/健全者運動から』,生活書院。
横塚 晃一、一九七五、『母よ!殺すな』、すずさわ書店。
――――、一九八一、『母よ!殺すな 増補版』、すずさわ書店。
――――、二〇〇七、『母よ!殺すな 新版』、生活書院。
全国自立生活センター協議会 編、二〇〇一、『自立生活運動と障害文化――当事者からの福祉論』、全国自立生活センター協議会、発売:現代書館。
■しかく文献(リンク付)
◆だいやまーく安積 遊歩・野上 温子 編 19990520
『ピア・カウンセリングという名の戦略』,青英舎,231+14p. ISBN:4-88233-045-8 1600
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[kinokuniya]/
[bk1] ※(注記) d
◆だいやまーく安積 純子・尾中 文哉・岡原 正幸・立岩 真也 1990
『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学』,藤原書店〈?V:
●くろまる〉
◆だいやまーく――――― 19950515
『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 増補・改訂版』,藤原書店,366p.,4-89434-016-X 3045
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[kinokuniya] ※(注記)〈?V:
●くろまる〉
◆だいやまーく――――― 2012 『生の技法――家と施設を出て暮らす障害者の社会学 第3版』,生活書院〈?V:
●くろまる〉
◆だいやまーく樋口 恵子 19980205
『エンジョイ自立生活――障害を最高の恵みとして』,現代書館,198p. 4-88233-045-8 1575
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[kinokuniya] ※(注記)
第6章 ピアカウンセリングは自分探しの旅
◆だいやまーく角岡 伸彦 20100921
『カニは横に歩く――自立障害者たちの半世紀』,講談社,509p. ISBN-10:4062164086 ISBN-13:978-4062164085 2310円
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[kinokuniya] ※(注記)
◆だいやまーく前田 拓也 20090930
『介助現場の社会学――身体障害者の自立生活と介助者のリアリティ』,生活書院,369p. ISBN-10:4903690458 ISBN-13: 978-4903690452 2940円
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[kinokuniya] ※(注記) c04 ds
◆だいやまーく三井 絹子 20060520
『抵抗の証 私は人形じゃない』,「三井絹子60年のあゆみ」編集委員会ライフステーションワンステップかたつむり,発売:千書房,299p. ISBN-10: 4787300466 ISBN-13: 978-4787300461 2100
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[kinokuniya]
◆だいやまーく中根 成寿 20060601
『知的障害者家族の臨床社会学――社会と家族でケアを分有するために』,明石書店,277p. ISBN: 4750323535 3360
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[kinokuniya] ※(注記), b
◆だいやまーく中西 正司・上野 千鶴子 20031021
『当事者主権』,岩波新書新赤860,214+2p. 700
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[kinokuniya] ※(注記) d
◆だいやまーく新田 勲 編 20091110
『足文字は叫ぶ!――全身性障害のいのちの保障を』,現代書館,270p. ISBN-10: 476843486X ISBN-13: 978-4768434864 2200+
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[kinokuniya] ※(注記)
◆だいやまーく定藤 邦子 20110331
『関西障害者運動の現代s史――大阪青い芝の会を中心に』,生活書院,344p. ISBN-10: 4903690741 ISBN-13: 9784903690742 3000円
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[kinokuniya] ※(注記) dh. ds.
◆だいやまーく庄司 洋子・木下 康仁・武川 正吾・藤村 正之 編 19990515 『福祉社会事典』,弘文堂 [了:19980716],弘文堂,1352p. ISBN4-335-55077-4 C1536 15750円
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[kinokuniya] ※(注記)
◆だいやまーく田中 恵美子 20090707
『障害者の「自立生活」と生活の資源――多様で個別なその世界』,生活書院,443p. ISBN-10: 4903690393 ISBN-13: 978-4903690391 3570円
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[kinokuniya] ※(注記) ds
◆だいやまーく田中 耕一郎 20051120
『障害者運動と価値形成――日英の比較から』,現代書館,331p. ISBN: 4768434509 3360
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[kinokuniya] ※(注記) d
◆だいやまーく立岩真也 2000年10月23日
『弱くある自由へ――自己決定・介護・生死の技術』,青土社,357+25p.,2940
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[kinokuniya]/
[kinokuniya]/
[bk1] ※(注記)〈?T:73,181,182,215,218,?U:304,332〉
◆だいやまーく立岩 真也・堀田 義太郎 2012年06月10日
『差異と平等――障害とケア/有償と無償』,青土社,342+17p. ISBN-10: 4903690865 ISBN-13: 978-4903690865 2200+110
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[kinokuniya] ※(注記) w02, f04
◆だいやまーく土屋 葉 20020615
『障害者家族を生きる』,勁草書房,259p. ISBN-10: 4326652705 ISBN-13: 978-4326652709 2940
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[kinokuniya] ※(注記) ds s
◆だいやまーく渡辺 一史 20030331
『こんな夜更けにバナナかよ――筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』,北海道新聞社,463p. ISBN:4-89453-247-6 1890
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[kinokuniya]/
[bk1] ※(注記)
◆だいやまーく渡邉 琢 20110220
『介助者たちは、どう生きていくのか――障害者の地域自立生活と介助という営み』,生活書院,420p.,ISBN-10: 4903690679 ISBN-13: 978-4903690674 2415円
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[kinokuniya] ※(注記)
◆だいやまーく山下 幸子 20080930
『「健常」であることを見つめる―一九七〇年代障害当事者/健全者運動から』,生活書院,243p. ISBN-10: 4903690253 ISBN-13: 978-4903690254 2625
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[kinokuniya] ※(注記) d00
◆だいやまーく全国自立生活センター協議会 編 20010501
『自立生活運動と障害文化――当事者からの福祉論』,全国自立生活センター協議会,発売:現代書館,480p. ISBN:4-7684-3426-6 3675
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[kinokuniya] ※(注記)