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第4回多様な「生」を描く質的研究会(2011年度第3回多様な「生」を描く質的研究会)開催報告


last update: 20111205

しかく目次

開催日等
論題
提示された論点
議論の概要


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しかく開催日等

・開催日:2011年10月26日(水)

・場所:立命館大学衣笠キャンパス創思館409教室

・参加人数:5名


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しかく論題

「養育のライフヒストリーからみる養子養育に関するニーズ:養育里親との比較から」
担当:由井 秀樹

「認められない」病の社会化 複合性局所疼痛症候群をめぐる現状と課題
担当:大野 真由子

「中年期の子が実感した父親の老い・母親の老い」
担当:谷村 ひとみ

それぞれのテーマは異なるものの、これらの研究はいずれも「語り」に基づき、経験をいかに意味づけているか/意味づけていくか、という点を明らかにすることを主眼においたものである。そのなかで、質的データを扱う上で生じる疑問や問題が共有され、解決のための方策についても議論された。


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しかく提示された論点

・特有な問題を呈示しニーズは何かということまでを言及したい。得られたデータは個別性に富み、まとめ方に悩む。
・他者にはわかりにくい主観的なもの(たとえば症状など)から、共通要素を引出し政策という話をしたい。そうなると人数ということになるのではないか。さらに何か言えるという話にしていくとして、事例をあつかうことの位置づけをどうするか?
・得られたデータ(自由記述)の特性ゆえ、回答が多様で多義的である。記述されている時間の流れや文脈に引っ張られてしまい分析および図がまとめきれない。


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しかく議論の概要

*質的データはカテゴリーにまとめるか、時間の流れにそってまとめるかということになっていく。
「質的データの分析を行う際には、「カテゴリーにまとめる」もしくは、「時間の流れに沿ってまとめる」(プロセスを明らかにする)という方法がありうる。
カテゴリーにまとめるならば、KJ法やGTAがよく用いられている方法である。
時間の流れに沿ってまとめるならば、複線径路等至性モデル(TEM)の利用などが有効であろう。

いずれにせよ、最初のステップとしては、当事者たちがどのような困難、問題をかかえやってきたのか。
まずは、当事者が何を言っているかをまとめるところからはじめることが必要になるのではないか。
そうしなければ、膨大な(語りの)データのどこに焦点を当てるべきなのか、どのように分析すべきなのか、ということが判然としない事態を招きうる。

分析方法論が問題となる一方で、サンプリング(どのような協力者に、何人アプローチするか)も議論となった。 研究結果に一般性を持たせようとするならば、人数を多めに確保することが必要となるが、たとえば1名に長期間かかわるなかで、語りを丁寧に追っていくということも、ありうる。
この場合、むしろ主観的なものだけに事例から示唆できる、転用できることがある。
個別の語りを丁寧にあぶり出し、たとえば制度でモレ落ちる部分がある。
→ケアのされ方、フォローのされ方、扱われ方という部分から、制度がこう謳っているのであるなら、これもやってくれよと言えるのではないか。

論旨の説得力という観点からも、サンプル数は議論された。確かに、政策提言等に繋げたい場合は、ある程度の「数」が要請される。しかしながら、「数」を集めると必然的にデータは抽象化、単純化され、当該研究で扱おうとする課題が潜在化する恐れがある。したがって、単純に「数」が多ければ説得力が増すわけではない。質的研究は、少数事例から課題を可視化し、一つの仮説、ないしモデルを提示できる点に意義があり、そのためには事例をいかに丁寧に、分厚く記述する必要がある。とはいえ、研究する側の心情からすると、質的研究を通しても何らかの政策提言に繋げたくなる。
こうしたジレンマをどのように解決するか、単に『質的研究は政策提言に向かない』と切り捨ててしまってよいのか、政策提言などに繋げられるような質的研究の新たな可能性はないのか、という点が課題として残された。

また、サンプリングやデータ分析を終えたとしても、その結果をどのように提示するかという問題が残されている。図示の仕方やカテゴリーのネーミングについては複数人で議論を行い、分析方法のもつ特性(たとえば、KJ法は時間を捨象し文脈にとらわれない分析方法であること。近い/遠いまたは近くないというように配置し、関連を示すものであること)に立ち返り進めていく、ネーミングの言語水準を同じにすることなど、より理解しやすいものになるように洗練していく必要が確認された。



*作成:谷村 ひとみ
UP: 20111205 REV:
多様な「生」を描く質的研究会組織
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