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『改正生活保護法――新版・権利としての生活保護』

森川 清 20140625 あけび書房,232p.

last update: 20140815

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しかく森川 清 20140620 『改正生活保護法――新版・権利としての生活保護法』,あけび書房,232p. ISBN-10: 4871541274 ISBN-13: 978-4871541275 2300円 [amazon]/[kinokuniya]


しかく内容(あけび書房HPより)

生活保護法はどう変わったのか、逐条的に分かりやすく解説。憲法25条に保障された生存権を一層狭める「改正」生活保護法。しかし、権利と救済のためにこの「改正」生活保護法をどう活用したらいいのかを徹底解説する。実務書決定版。最新の判例・事例満載。
好評を博した前書の全面改定版。
著者は元ケースワーカーで現弁護士。日弁連貧困問題対策本部運営委員、首都圏生活保護支援法律家ネットワーク事務局長。
1984年、東京大学法学部卒。


しかく著者紹介(本書より)

森川 清(もりかわ きよし)
1961年東京都に生まれる。
1984年東京大学法学部卒業。
1984年から1986年まで川崎製鉄株式会社勤務。
1988年から2002年まで葛飾区福祉事務所にてケースワーカー。
2003年弁護士登録。
日弁連第49回人権擁護大会シンポジウム「現代日本の貧困と生存権保障」実行委員、同第51回人権擁護大会シンポジウム「労働と貧困」事務局次長、同第53回人権擁護大会シンポジウム「子どもの貧困」事務局長を務める。
現在、日弁連貧困問題対策本部運営委員、首都圏生活保護支援法律家ネットワーク事務局長、東京災害支援ネット代表等。

著書(ともに共著)
『3・11福島から東京へ広域避難者たちと歩む』(東京災害支援ネット編、山吹書店)、『検証日本の貧困と格差の拡大――大丈夫?ニッポンのセーフティネット』(日弁連編、日本評論社)、『生活保護法的支援ハンドブック』(日弁連編、民事法研究会)、『労働と貧困――拡大するワーキングプア』(日弁連編、あけび書房)、『新・社会福祉士養成講座19権利擁護と成年後見制度』(社会福祉士養成講座編集委員会編、中央法規出版)、『知財20講』(青山紘一編、経済産業調査会)、『知的財産法基本判例ガイド』(青山紘一編、朝倉書店)


しかく初版(2009)・増補改訂版(2011)・新版(2014)

だいやまーく森川 清 20090901 『権利としての生活保護法 初版――その理念と実務』,あけび書房,221p. ISBN-10:4871540888 ISBN-13: 978-4871540889 2200円 [amazon]/[kinokuniya]
だいやまーく森川 清 20110220 『権利としての生活保護法 増補改訂版――その理念と実務』,あけび書房,240p. ISBN-10: 4871540987 ISBN-13: 978-4871540988 2300円 [amazon]/[kinokuniya]
だいやまーく森川 清 20140620 『改正生活保護法――新版・権利としての生活保護法』,あけび書房,232p. ISBN-10: 4871541274 ISBN-13: 978-4871541275 2300円 [amazon]/[kinokuniya]


しかく目次

はじめに――「義務」としての生活保護法 (あけび書房HPにて公開中)
初版はじめに――ケースワーカーから弁護士へ
増補改訂版刊行にあたって

第?T編 理念と現実――生活保護法改正の衝撃

1章 生存権とはなにか...19
1節 生存権とはなにか...19
2節 生活保護の目的・機能...20

2章 生活保護をめぐる状況...24
1節 被保護者の増加とその内容...24
2節 福祉事務所の状況...25
3節 生活保護法の基本原理...29
4節 生活保護財政...31
5節 生活保護制度の運用...32
6節 違法な運用とそれに対抗する活動...35
7節 基準引き下げと関連2法成立...42

第?U編 要件・効果からみた生活保護

1章 開始の要件...53
1節 日本国民であること、又は一定の範囲の外国人であること...53
2節 申請権者から申請がなされていること(又は急迫した状況の存在)...57
3節 保護を要する状態であること...66
4節 能力・資産の活用がなされていること(又は急迫した事由の存在)...80

2章 開始の効果...103
1節 居宅保護の原則...103
2節 保護費請求権...105
3節 被保護者の権利...121
4節 被保護者の義務...124
5節 その他の効果...126

3章 典型的な変更の例...129
1節 定型的な保護費の変更...129
2節 ホームレス状態からのアパート入居...133

4章 停廃止の類型...135
1節 被保護者の死亡...135
2節 被保護者の失踪...137
3節 保護が必要なくなったとき...137
4節 不利益処分による停廃止...138
5節 保護の辞退と問題点...140
6節 移管の手続...142

5章 法63条に基づく返還...144
1節 法63条に基づく返還請求権の法的性質...144
2節 資力の発生時点...146
3節 返還の対象とならないもの...148
4節 返還の免除...150

6章 法78条に基づく費用徴収...152
第?V編 生活保護の手続

1章 開始の手続...157

2章 相談・助言...158
1節 相談の効果(申請援助義務)...159
2節 入院患者から相談を希望する旨の連絡があった場合...160

3章 申請...162
1節 申請の効果...162
2節 申請の取下げ...164

4章 調査...166
1節 行政調査一般...166
2節 家庭訪問と立入調査...169
3節 検診命令...171
4節 関係先調査(法29条に基づく調査)...171

5章 保護の決定...173
1節 申請時の助言指導と保護の決定...173
2節 決定調書・ケース記録の起案・決裁...173
3節 保護決定通知...177
4節 保護費の支給...178

6章 申請・届出等に基づく変更・停廃止の手続...179
1節 申請に基づく変更手続...179
2節 届出・職権に基づく変更・停廃止手続...179

7章 不利益処分...181

第?W編 援助と救済

1章 福祉事務所の違法な対応への法的救済...186
1節 法律家への相談...186
2節 申請同行・申請代理...190
3節 不利益処分に至る手続への関与...193
4節 審査請求...194
5節 抗告訴訟...197
6節 国家賠償請求訴訟...201
7節 当面の生活の確保...203

2章 被保護者への一般的な法的救済の要点...207
1節 債務整理と生活保護...207
2節 交通事故と生活保護...209
3節 刑事手続と生活保護...210
4節 成年後見と生活保護...211

3章 要保護者への援助...215
1節 ソーシャルケースワークとはなにか...215
2節 類型別の援助...217

初版 おわりに――Fighting Poverty
増補改訂版 おわりに――End Poverty
改正法護法 おわりに――ニーズ、共感、連帯、権利 (あけび書房HPにて公開中)


しかく書評・紹介


しかく引用

・扶養は保護開始の要件ではない(森川 2014:98-99)

「民法に定める扶養義務者の扶養は、生活保護に優先して行われる(法4条2項)。
扶養義務者とは、民法上の扶養義務を負う者である。直系血族及び兄弟姉妹である(民法877条1項)。特別の事情があるときは、三親等内の親族間においても扶養の義務を追わせることができるとされているが(同法877条2項)、家庭裁判所の調停・審判を経ない限り、扶養義務者とは言えない点に留意を要する。[...]
資産・能力活用要件(法4条1項)と異なり、扶養を求めること及び扶養がなされることは保護開始の要件となっておらず、同上2項は、現実に援助を受けている扶養が生活保護に優先することを定めているにすぎない。福祉事務所には、扶養義務者に対して扶養料を徴収する権利があるし(法77条1項)、扶養料を確定するため、家庭裁判所に対する扶養処分の申し立ての権限もある(同条2項)。だから、福祉事務所が扶養義務者に対し、どうしても扶養を求めたければ、法77条によって扶養処分の申立をし、扶養料の確定している範囲内で請求すればよいのである。
ただし、当事者間で協議・調停が可能な場合にそれを排除するものではない。むしろ親族間の問題は私的に解決がなされるならば、公的な介入より望ましい。であれば原則として申請者が扶養義務者であれば、応分の扶養義務を果たすべく助言し検討をうながすべきであるし、申請者が要保護者であれば、扶養<0098<義務者に扶養義務を果たさせるべく協議‘調停手続きをとるよう助言すべきである(助言そのものが公妬介入にならない程度にしなければならない|)|人妬な関詣で処理が難しいところもあるし‖扶養がなされることは要保護者の意志‘行動によって鍛成できるものでもないことを肝に命ずるべきである|要保護者本人に扶養義務者に扶養義務を果たさせるべく努力を求めることは助言の域を出るものではないし‖助言を超えて不利益処分の対象とすることはできない|
なお、2008年度実施要領改正により、「扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行い、その結果、保護の申請を諦めさせるようなことがあれば、これも申請権の侵害に当たるおそれがある」(課問第9の2)と示されて、扶養が保護開始の要件でないことが明記された。
」(森川 2014:98-99)

・扶養義務の事実上の強化、そしてその果てはどうなるのか(森川 2014:99-100)

「改正法24条8項及び改正施行規則2条は、保護開始申請があったときに、以下の?@〜?Bのいずれもを充たす場合に、扶養義務者に対して、申請者の氏名及び保護開始申請日を通知することとした。
?@扶養義務者に対して法77条1項の費用徴収を行う蓋然性が高いと認めた場合
?A配偶者暴力防止法1条1項の暴力を受けているものでないと認めた場合
?B通知をすることで申請者の自立に重大な支障を及ぼすおそれがないと認めた場合
また、改正法28条2項及び改正法施行規則3条は、法77条費用徴収のため必要があると認めるときは、扶養義務者が扶養義務者に対して、報告を求めることができると規定した。
これらの通知や報告の求めは、上記?@〜?Bによる厳格な要件による運用となったが、実際には違法な運用が行われたり、?@〜?Bを充たさないのに通知や報告の求めを行う旨伝えて申請を萎縮させることも考えられるので、留意が必要である。
改正法29条2項は、法77条の費用徴収のために必要があるときに扶養義務者についてなされた調査について、多数の官公署にさまざまな回答義務を課して<0099<いる|特に‖都道府県知事‘市町村長に対して地方税の斯定した税額とその斯定の基礎となる事項に関する情報の回答義務を課したことは大きな影響を与える|
従来は回答義務が課されていなかったことから、第三者である扶養義務者について回答がなされなかった。今回、回答義務が課されたことによって扶養義務者の収入や不動産所有まで明らかにされることとなる。このことは、さまざまな事情を度外視して、扶養義務者に収入や財産があるから援助してもらうようにという硬直的な運用を生み出すおそれがあるので、留意を要する。
将来的な危惧としては、自由民主党の憲法改正草案(平成24年4月27日決定)24条1項の「家族は、互いに助け合わなければならない」という改正がなされると、憲法25条が改正されなくても、扶養義務者による「助け合い」を重視して、韓国の国民基礎生活保障制度(日本の生活保護制度に当たる)の「扶養義務者基準」と同様の制度が導入されるのではないかということがある。扶養義務者基準は、本人の所得認定額が最低生計費以下であっても、扶養義務者(本人の直系血族及び配偶者)が存在していて(同一生計でない)、その扶養義務者が一定所得以上であれば、申請者は受給権者となることができないというものだ。扶養義務の強調の果てには、おそろしい事態が待っているかもしれない。

韓国における雇用安全網関連の法令・資料(2)(脇田滋著、龍谷法学第45巻1号)」(森川 2014:99-100)


*作成:中村亮太 UP: 20140815 REV:
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