『日記をつける』
荒川 洋治 20020205 岩波書店,169p. → 20101116 岩波書店(岩波現代文庫B179),210p.
last update:20160914
■しかく内容
人はどんな日記をつけてきたか。絵日記、交換日記、旅日記......。日付と曜日、天気を書く。そこからは自分だけの自由の世界。何を書くのも自由。
あとで忘れてしまうことを記しておく。つけたくないときにも、そばにある。忘れてしまうものも、記憶してくれる。
書きたくないとき、続けられないとき、仕事のこと、近所の様子など、身のまわりに目を向けよう。日記は長く難しく書くものではない。ちょこっと身近につけるもの。
そんな小さな積み重ねから、つける人の人生がみえてくる。
樋口一葉の夜ふかし、徳冨蘆花の赤裸々な生活、様々な文学作品から日記をめぐる情景をひきつつ、日記のつけかた、広がりかた、楽しみかたをやさしく説く。
■しかく著者略歴
1949年、福井県生まれ。現代詩作家。1972年、早稲田大学第一文学部文芸科卒業。1975年刊『水駅』でH氏賞受賞。
1980年より文筆に専念、詩、詩論、文芸時評、放送などの分野で活動。詩集『渡世』(高見順賞)、『心理』(萩原朔太郎賞)、
エッセイ・評論集『忘れられる過去』(講談社エッセイ賞)、『文芸時評という感想』(小林秀雄賞)など著書多数。
■しかく目次
1 日記いろいろ
絵日記
日記へ
働く子供の日記
働くおとなの日記
一家の日記
戦争の日記
ゴンクールの日記
ウラルを越えて
赤裸々な日記
親がつける日記
2 日記はつけるもの
「書く」と「つける」
日付と曜日
天気
時刻
食べもの
いつ、どこでつけるのか
日記の客
行商の日記
玄関先で
相手の日記をつけてみる
3 日記のことば
手書きの文字
はじめての日記
順序
一本道
一日の分量
一日の長さ
神奈川の朝
男の日記・女の日記
ひとりの「宝」
記号のない世界
文体
4 日記から始まる
まず、つけてみる
夕立の二人
疑うと、ことばが増える
ひとりの島
小説へ
詩へ
俳句へ
エッセイへ
公開する日記
杉の花火
5 あなたが残る日記
一〇大ニュースを決める
東京の日々
友だちランキング
その人のことだけになる
記録と記憶
忘れること
畳の上のスポーツ
三八歳からの日記
書きためる
一日だけの日記
ひととき
あとがき
岩波現代文庫版のあとがき
参考文献一覧
■しかく引用
4 日記から始まる
エッセイへ
日記をエッセイにすることはある意味では簡単である。その日に見つけたもの、感じたことはたいていエッセイの種になる。
幸田文などは日記そのものが随筆になるといってもいい。
『幸田文全集』(岩波書店)の第四巻〜六巻に収められた随筆を読むと、毎日したこと、見たことが、会った人のこ>148>とが、そのままエッセイに転化していることがわかる。
しかもこれを書こうと決めたらのがさない。途中であきらめたりしない。(pp.147-148)
[......]その日に会った人、聞いた話、したこと、思ったこと、つまり日記の材料がそのままエッセイになる。
ちょっとしたことでものがさない。そして必ず自分にひきよせてその意味を考える。ときには題目として浮かばないようなものにもチャレンジしていく。
この積極的な姿勢が文章を張りのあるものにしているといえるだろう。(p.149)
幸田文のエッセイに感じることは、どんなものにも興味をもつということだろう。
そしてときには「興味をもつ」ということはいったい何だろう、というような問いかけそのものにも興味をもつのである。
これはものごとが、いったん〈ことば〉になるということである。「興味をもつ」ということそのものがひとつの〈ことば〉に変わるのだ。
ものごとだけでは、じきに沈んでしまう。〈ことば〉になることで、文章は羽根をつける。四方に飛び散っていくのだ。思考もひろいところへ出ていくのだ。
読む人をうるおすものになるのだ。「身にしみる日」も「ごみ」も「包む」もそのようにして生まれている。
ことばが回りはじめると、日記は動く。エッセイになる。
というふうに、日記からいろんなものが生まれる。その人の一日が生まれるのだ。(p.150)
■しかく関連書籍
◆だいやまーく荒川 洋治 20030700 『忘れられる過去』,みすず書房.
→ 20111230
『忘れられる過去』,朝日新聞出版(朝日文庫),298p.
ISBN-10: 4022646438 ISBN-13: 978-4022646439 780+税
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◆だいやまーく荒川 洋治 20041200 『詩とことば』,岩波書店.
→ 20120615
『詩とことば』,岩波書店(岩波現代文庫B202),210p. ISBN-10: 4006022026 ISBN-13: 978-4006022020 860+税
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■しかく書評・紹介
■しかく言及
*作成:
北村 健太郎