『働くひとのためのキャリア・デザイン』
金井 寿宏 20020129 PHP研究所,PHP新書,305p.
last update:20111226
■しかく金井 寿宏 20020129 『働くひとのためのキャリア・デザイン』,PHP研究所,PHP新書,305p. ISBN-10: 456961941X ISBN-13: 978-4569619415 819円
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[kinokuniya] ※(注記) 0r/2003er, 0r/2003e, d/cp03
■しかく内容
出版社/著者からの内容紹介
就職後の現実に失望する若者、疲れたミドルと元気なミドルの二極分化......。たった一度の仕事生活を納得して送るにはどうすればいいのか。
入社、昇進、転職......人生の節目には自分を見つめ直し将来の方向性をじっくり考える――これが本書のおすすめする「キャリア・デザイン」。これさえすれば、後は偶然に流される生き方も長期的にはプラスに作用する、と著者は言う。
心理学にも精通する著者は、経営学の中でも人間の問題に深く関わるトピックを主に研究している。本書では、自分らしく成長していくためのヒントを、代表的なキャリア研究、発達心理学の概念を通して紹介。
<主な内容>
◎にじゅうまるキャリアは働くみんなの問題
◎にじゅうまる揺れ動くキャリア観―なぜ移行期、節目に注目するのか
◎にじゅうまるキャリアをデザインするという発想―ただ流されるのとどう違うのか
◎にじゅうまる最初の大きな節目―就職時と入社直後の適応
◎にじゅうまる節目ごとの生涯キャリア発達課題
◎にじゅうまる「賢い働き方」をモノにしよう
働く自分の問題として、世代を超えて役立つ一冊。
内容(「BOOK」データベースより)
就職後の現実に失望する若者、疲れたミドルと元気なミドルの二極分化...。たった一度の仕事生活を納得して送るにはどうすればいいのか。入社、昇進、転職...人生の節目には自分を見つめ直し将来の方向性をじっくり考える―これが本書のおすすめする「キャリア・デザイン」。これさえすれば、後は偶然に流される生き方も長期的にはプラスに作用する、と著者は言う。自分らしく成長していくためのヒントを、代表的なキャリア研究、発達心理学の概念を通して紹介。働く自分の問題として、世代を超えて役立つ本。
著者略歴
金井壽宏(かないとしひろ)
1954年神戸市生まれ。1978年今日と大学教育学部卒業1980年神戸大学大学院経営学研究科修士課程終了。1989年マサチューセッツ工科大学(MIT)Ph.D.(経営学)。1992年神戸大学博士(経営学)。現在、神戸大学大学院経営学研究科教授。リーダーシップ、ネットワーキング、モティベーション、キャリアなど、経営学の中でも人間の問題に深く関わるトピックを、主たる研究分野としている。(ブックカバー略歴より)
■しかく目次
第1章 キャリアは働くみんなの問題
1 この本で言いたいこと
2 節目ではキャリアは誰もの問題となる
3 キャリアをどう理解すべきか
4 本書のターゲット
5 キャリアを考えるための問い
6 本書の限界と読み方への希望
7 本書の構成
第2章 揺れ動くキャリア観――なぜ移行期、節目に注目するのか
1 バウンダリーレス・キャリア
2 日本のニュー・キャリア
3 多重節目減少と危機の二面性
4 ブリッジズのトランジション論
5 ニコルソンのモデル
第3章 キャリアをデザインするという発想――ただ流されるのとどう違うのか
1 流されるままのキャリアでいいのか
2 個人戦略としてのキャリア・デザイン
3 「キャリア」の定義
4 日本産業社会でのキャリア
第4章 最初の大きな節目――就職時と入社直後の適応
1 就職という節目―リアリズムを大切にしよう
2 RJP電路等的なリクルーティングとどう違うのか
第5章 節目ごとの生涯キャリア発達課題
1 生涯発達という視点
2 ヤングのキャリア発達課題
3 ミドルのキャリア発達課題
4 エリクソンのライフサイクル論
5 ミドルで差が出るのはなぜか
6 シニアの発達課題
第6章 元気よくキャリアを歩むために
1 夢の現実吟味とアクション
2 もうひとつのトランジション・モデル
3 いいキャリアを歩むとは
4 キャリアについて継続して考えるために
5 キャリア発達と精神性
6 エピローグ(むすびの言葉)
■しかく概略
第1章 キャリアは働くみんなの問題
第一章では、キャリアに対する基本的な考えとその重要性が述べられており、著者の基本的な考えてである「せめて節目だと感じるときだけは、キャリアの問題を真剣に考えてデザインするようにしたい」という主張がなされており、そのような思考を助けるツールを提供することが本書の目的である。本書は、ミドルマネージャーやこれから就職をする学生、人事スタッフキャリア論に興味のある人など、一般の人を読者ターゲットにしているため、文章は専門用語などもなく読みやすい。本書は「キャリアアップ」を目的とした「ハウツー」ものではない。研究に基づく見解を本書で披露している。
第2章 揺れ動くキャリア観――なぜ移行期、節目に注目するのか
第二章では、組織の中で長く勤め上げる(バウンダリー)キャリアが普通であった。しかし、バウンダリーレスキャリア(境界のない)あたらしいキャリアが探索されつつある。これは、専門技術・知識を磨きながらどの会社にも自分を縛り付けることなくキャリアを積んでいくという動きである。バウンダリーレスキャリアというと聞きなれないが、仕事と家庭の境界が薄くなったSOHO、シリコンバレーなどで活躍する創造的な企業家やハイテク産業のエンジニアがその例として上げられる。このように時代の節目で揺れ動くキャリア観について述べた後、ブリッジズとニコルソンという二つの理論的モデルが検討している。それらに基づいて、なぜ著者が移行期や節目に注目するのか、節目に注目すれば、理論的また実践的にどのようなものが見えて来るのかが明らかにされている。
第3章 キャリアをデザインするという発想――ただ流されるのとどう違うのか
三章では、キャリアの定義やその日本的な意味合いについて議論されている。キャリアをデザインするという発想について、ただ流されるのとデザインするのはどう違うのか、ということを述べている。日本の産業社会においては、多くの人とのつながりが重要である。そのつながりによって次のキャリアが形成されることも多い。しかし、最終的に決定するのは自分だということを忘れてはならない。キャリアを人生における戦略の問題として捉え、節目、節目でそれをデザインすることが重要である。ということが3章では述べられている。
第4章 最初の大きな節目――就職時と入社直後の適応
誰もがくぐる最初の大きな節目である就職について論じている。この章は、これから就職する学生だけでなく、キャリアについて真剣に問い直そうとする中高年層にこの最初の節目について思い返し、再点検することを進めている。その際に、これから入っていく組織について現実主義的な認識を持つことの大切さを強調している。他の章では、夢の重要性を強く強調しているが、この章では、就職を、夢を現実に照らし合わせて吟味し、それに向けた行動することのステップとして捕らえること、つまり入社する人が過剰な期待や創造を抱いて失望することのないようリアリティの重要性を説いている。
第5章 節目ごとの生涯キャリア発達課題
第五章では、節目ごとの生涯キャリアにおける課題について述べている。
人間の成長発達が一生涯続くという生涯発達の考えに基づき、若年層、中年層、定年が近づいた人たちと年代別に分け、それぞれが抱える問題を提示し、解決すべき課題についての対処法にも触れている。特に、シニアについては、自分のあゆみを自己肯定できるか、ということについて主題をおいている。この年代では改めてアイデンティティが問題になってくる。自分自身であること、自分らしく 生き抜くことが主題となり、統合とアイデンティティは人生の主題であると述べられている。
第6章 元気よくキャリアを歩むために
第六章では、読者一人一人にとっていいキャリアとはなんなのかという大きな問いについて、様々な人の見解を紹介している。また、著者はいいキャリアとみなす基準が多種多様になっており、いいキャリアとは人それぞれであると述べている。楽しい人生を送るためには、夢をもつこと、仕事に対して社会に貢献しているという意識を持つことができるかということが重要である。そのためにはどうしたらよいかという指針も示している。この章では、キャリアという問題を通して、いかに良い人生を送るかという最終的な問題について議論がなされている。
・コメント
雇用と労働ということを考える時に、まず私たちは、働いて食べていかなければならないという大前提がある。しかし、豊かになった現代において、食べるために働くことが人生のすべてではない。とはいえ、多くの人にとって働くことは人生の多くの部分を占める。働き方を考えることは、生き方について考えることでもある。この本は、キャリアを単純にアップさせるという目的ではなく、人生をよりよく送るための良いキャリアの形成を目的としている。つまり、この本では、昇進や給与増加ということについてではなく、その人がいかにその仕事に満足感を得ることが出来るか、人生をとおしていかに自分らしく生きたと感じたことが出来るかということに主眼を置いている。その点において、この本は、他のハウツー本とは一線を画し、キャリア形成という現実的な問題を通して、何のためになぜ働くかという哲学的な問題にも答えている。もしくは、読者がその答えを見つける道具を提示している。最近は、キャリアアップのための本が多く出ているが、その多くは、キャリアアップのためだけの本であったり、自分探しの精神論的な本であったり、どちらかに大きく偏っていることが多い。しかし、この本は、現状を説明するだけでなく、社会学的、心理学的な側面から現代に働く人たちにより良い働き方、生き方を提案しているという点で評価できる。
・本書を選んだ理由
本を探す際に、一つ目に、理論的でなく、現実に即して労働について述べているもの、二つ目に呼んで役に立つものという視点から本を探した。本書は、労働の分配という問題からは少々それているかもしれないが、働くことと人の生き方の問題を密接に関係付け、仕事を通して人々にどう生きるかという問題を提示するだけでなく、その問題解決の手段として様々なエクササイズを用意しているという点で、非常に役に立つ。その点を非常に評価できると考え、本書を採用した。
■しかく引用
◆だいやまーく
?@自分はなにが得意か。
?A自分はいったいなにをやりたいのか。
?Bどのようなことをやっている自分なら、意味を感じ、社会に役立っていると実感できるのか。
・・・/これら三つの問いは、それぞれ自己イメージの三つの側面を照射している。
(1)能力・才能についての自己イメージ
(2)動機・欲求についての自己イメージ
(3)意味・価値についての自己イメージ[2002:36-37]
◆だいやまーく
?@自分ならではの強みはどこにあるのか。
?A自分があることをしたいとき、それをしたいのはなぜか。
?B自分はこれまでだれとつながり、その関係をどのように生かしてきたか。
/それぞれ、(1)知識と技能、(2)じぶんならではのアイデンティティ(自我同一性)や信念、仕事の場にもちこむモティベーション、(3)対人ネットワークに関連している。これら三つの問いは、
「自分についていったいなにを知っているか」という観点から、つぎのように言い換えられる。
(1)自分のノウハウを知る(knowing how)
(2)自分のノウホワイを知る(knowing why)
(3)自分のノウフームを知る(knowing whom)
[2001:41-42]
◆だいやまーく
(1)わが社が他のどこよりもうまくできることはなにか。
(2)わが社は、どこでどのような事業を営みたいのか。
(3)その背後にある事業観や理念、そこで事業することの社会的な意味や価値観はどこにるのか。
/これらの問いは、経営戦略にもかかわる問いだ。組織にとっても節目だけ決めればよいことを照射している。[2001:124]
■しかく書評・紹介
■しかく言及
*作成:N(立命館大学政策科学部2回生)・
片岡 稔