津久井やまゆり園事件は、日本の社会において重度のハンディがある人たちが差別を受けている状況をあらわにしました。私たちは、この事件が持つ問題を話し合い、その問題の解決のために取り組むべきことを確認するために話合いを重ねてきました。
この事件を考え、重度のハンディがある人たちへの差別をなくすために、重度のハンディがある当事者とその人に寄り添う人が、声を上げ行動するべきだと考えています。そして、重度のハンディがある人があたりまえの人として生きることに共感を寄せる人を増やすことによって、やまゆり園事件をもたらせた問題を解決していきたいと思います。
共に考えるためにご参加ください。
2016年7月26日早朝に殺人事件が発生しました。19人もの重度の知的ハンディがある人たちが殺されました。傷を負った人は23人(他に職員の3人が負傷)です。重度の知的ハンディがある人たちの生存を否定する考えでの行為でした。
この事件にかかわる問題点は上記のほか、?@大規模収容施設ゆえに大量の殺人事件がもたらされた。?A事件の被害者は匿名にされ、社会的存在として認められなかった。?B安倍首相は、この事件を「精神病者によるもの」とし、対策の強化を指示し、法律の改定が図られた。?C設置者の神奈川県当局は、早々に80億円をかけての建替え方針を打ち出しました。
地域生活の実践を行う人たちは、やまゆり園事件がはらむ問題点の解決のために、各地で議論が起こり、たくさんの集会が開催されました。
神奈川県自立生活支援センターは、県議会に陳情書を提出しました。これは継続審議とされました。津久井やまゆり園事件を考える集会実行委員会は、2月27日に、神奈川県知事に対して、やまゆり園の建替えをやめ、跡地を慰霊のための施設を含めた公園を整備するとともに、地域生活のモデルとなるような建物整備を提言しました。
今日、重度の知的ハンディがある人を含めて、地域生活を営むことについての支援が制度化されています。日本も誰でも地域生活が可能な制度となっています。
早稲田大学教授の岡部耕典さんは、息子さんが14才の時から取組んで、自立生活を実現しました。津久井やまゆり園のような事件が起こらないための解決は、重度の知的ハンディがある人たちがあたりまえに地域生活を行えるような日本の社会になることです。
日本で実現してきた自立生活は世界的な潮流でもあります。
一方、私たちは、津久井やまゆり園の家族会前会長の尾野剛志さんとの懇談を重ねました。尾野さんの体験を聞くとともに、地域生活に向けての取り組みの必要性を尾野さんに語りかけました。尾野さんは、私たちに一定の理解を寄せました。しかし、息子さんの20年に及ぶやまゆり園での生活から、園への思い入れは強いものがあります。当事者やその家族にとっては、やまゆり園はよりどころでありました。津久井やまゆり園で生活をしていた人たちは、大半が長期に施設で生活してきた人たちであり、何十年も慣れ親しんできた施設に戻ることへの希望があります。再び、施設での平穏な日々が続くことを望んでいます。この人たちに、「園を出て地域生活を始めましょう」と語りかけても、その話が心に届くものではありません。それぞれの事情があって、津久井やまゆり園への入所となったものです。
その立場を尊重したうえで、何より当事者がより良い人生を築いていくために、どのような生活のあり方を目指すべきかを考え続けることによって、津久井やまゆり園事件がはらむ問題の解決を見出すことを私たちは期待しています。