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養護学校や在宅での吸引行為の担い手について

谷博之国会活動報告 参議院決算委員会
2002年10月2日 養護学校や在宅での吸引行為の担い手について
154閉-参-決算委員会-8号 2002年10月02日(未定稿)
http://www.tani-hiroyuki.com/kessan021002.html

last update: 20160125


*以下は上掲のページの一部を省略したものです。直接谷さんのページをご覧ください。

しろまる谷博之君 民主党・新緑風会の谷博之でございます。
[略]

しろまる谷博之君 この議論はこれからの秋の臨時国会等の中でも議論がされていくと思い
ますし、大臣の言葉の端々の中に大臣の考え方もよく酌み取ることができます。そう
いう点で、我々も一緒にこの財源問題についてはこれからも一生懸命勉強していきた
いというふうに思っております。
具体的な次に質問に入ってまいりますが、特に、医療施設の外の医療的ケアの在り
方についてということで何点かお伺いしたいと思っておりますが。
まず、例えば養護学校などの現場で現在行われている医療的ケアという言葉があり
ます。これは、たんの吸引とかあるいは酸素吸入とか、そういういろんな行為を手助
けをするというか、そういうことを医療的ケアというふうに呼んでおりますが、これ
は特に法律用語ではないというふうに聞いております。この言葉の定義と、それか
ら、医師法の第十七条に「医師でなければ、医業をなしてはならない。」というこの
条文がありますけれども、この医業とはどういう関係があるか、お伺いしたいと思い
ます。

しろまる政府参考人(篠崎英夫君) ただいま先生もお話をされましたように、医療的ケア
というのは定義はあるわけではございませんが、いわゆる医療的ケアということでご
ざいますが、私どもが今いろいろ話題になって承知をしておりますのは、例えばたん
の吸引ですとか経管栄養ですとか導尿など、患者さんの健康維持に不可欠で、かつ日
常的に必要とされるような行為を指すというふうに理解をいたしております。
医師法第十七条との関係でございますが、十七条で医師でなければ医業をしてはな
らないというふうに規定をいたしておりまして、医師の医学的判断及び技術をもって
するものでなければ、人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある医行為を
業として行うことは医師又は看護師あるいは救急救命士等にしか認められていないと
いう行為でございます。
いわゆる今申し上げました医療的ケアの例として挙げたものにつきましては、基本
的には医行為に該当するものでございまして、医師又は看護師等が行うべきものと、
そのように考えております。

しろまる谷博之君 そうしますと、ちょっと確認をさせていただきたいんですけれども、医
療的ケアがすべて医療行為ではないということでしょうか。

しろまる政府参考人(篠崎英夫君) それぞれの行為に、またその具体的な場面におきまし
てそれぞれ幅がございますので、すべてのものというわけではないと思いますけれど
も、例えば今申し上げましたようなことにつきましては、今の私どもの考え方では医
行為というふうに考えておるわけでございます。

しろまる谷博之君 現在、例えば家庭にあって、たんの吸引とかそういうものは、後ほども
ちょっと取り上げますけれども、家族の方が具体的にそういうことを行っておりま
す。今後、こういうふうな患者の方の数が増えてくる。施設の中とか在宅でもそうで
すが、どうしてもそれを、どなたかが医療的ケアをしなきゃいけない。現在は家族の
方がしている。その家族の方がしていることが認められている理由というのは、恐ら
く、何かあったときにも利害関係として訴える相手がいない、つまり患者本人の責任
というふうな形で家族も見られているということに我々は解釈をしておりますが、し
かし、いろんな医療技術の進歩によって、こういうふうな言うならば医療的ケアをす
る方々が随分私は範囲が広がってくるような気もするんですが、こういう意味で、い
わゆる医療的ケアに含まれる行為は今後どんどん拡大されていくというふうに解釈を
していいんでしょうか。重ねてお伺いします。

しろまる政府参考人(篠崎英夫君) 御指摘のとおりと思っております。医行為のその範囲
というのは、医学の進歩あるいは医療技術の向上といった、そういう医療を取り巻く
環境の変化を受けて変わり得るものというふうに考えております。
なお、その際におきましても、患者の生命、身体に重大な影響を及ぼすことがない
かどうか、そういうところは慎重な見極めが必要なのではないかというふうに思って
おります。

しろまる谷博之君 それでは、そういう前段の話を踏まえまして、具体的に文科省の方にも
お伺いしたいと思っておりますが、平成十年度から今年度まで、全国の十地域を指定
しまして文科省が行ってきた特殊教育における福祉・医療との連携に関する実践研究
事業、こういうふうな事業が行われてきております。今年度で一応終了するわけで
す。最終報告は恐らく来年度になると思いますけれども。
こういう中で、特にこの十三年、十四年度の実践研究において、先生方が実際に三
つの日常的、応急的手当てを安全に実行できる、そういうふうな事業に取り組んでい
ます。咽頭より手前の吸引とか、自己導尿の補助等々、この三つがその研究の一つの
課題になっておりますし、そしてまた看護師を配置した場合とか、教師が実施した場
合の教育的効果などについてもこの研究事業のテーマとして取り組まれてきておりま
す。
具体的に、こういうふうな研究事業は、現時点で文科省なり厚労省はどのような成
果が上がってきているというふうに考えているか、そして現時点での内容をそれぞれ
示していただきたいと思っております。

しろまる政府参考人(金森越哉君) お答え申し上げます。
平成十年度から開始をいたしました特殊教育における福祉・医療との連携に関する
実践研究におきましては、委嘱をいたしました十の県で県内の医療、福祉部局や医師
会、看護協会等の関係団体と連携を図りながら医療的ケアに必要な体制や手続等につ
いての検討を行ってきたところでございます。
その成果についてでございますが、これまでの調査研究を通じまして医療的ケアの
必要性に対する関係者の理解が得られ、教育、福祉、医療の連携体制が構築されたと
ころでございます。また、医療的ケアが必要な重度・重複障害児に食事、排せつ、呼
吸などの生活リズムや生活習慣が形成されるなど、教員が看護師との連携協力の下、
日常的、応急的手当てを行うことによる教育的効果が認められましたほか、教員や看
護師がいますことによりまして保護者が安心して日常生活を送れるようになったり、
子供に対してもゆとりを持って接することができるようになったといった効果も認め
られたところでございます。

しろまる政府参考人(篠崎英夫君) ただいまの研究の中身については文部省の方から御説
明がありましたので、私どもの方はそれを受けまして、教育関係者と看護師などが連
携を図って障害のある児童生徒に対して医療的ケアが受けられる体制、そういうもの
を整備することは、障害のある児童生徒の就学を支援し、また保護者などの負担を軽
減する上で極めて重要である、そういうように認識をいたしております。
私ども厚生労働省といたしましては、文部科学省によるこういう共同調査の研究成
果を踏まえまして、看護師による医療的ケアの実施を促進するための方策、また看護
師と教員との適切な連携の在り方などについて引き続き検討を進めていきたいと考え
ております。

しろまる谷博之君 五年間のこの研究事業が実は来年度、平成十五年度から新しい事業に変
わってくるというふうに言われておりまして、これは「今後の養護学校における医療
的ケアの実施体制整備について」ということで、平成十四年八月に文科省と厚生労働
省の両省で全国の都道府県にこういう通知が流れております。これは、従来の五年間
の研究事業を若干形を変えていく、つまり、医療外施設の、そういう医学的介護、ケ
アを必要としている人たちを、いわゆる委託先から派遣をしてもらうという、こうい
うシステムに看護師とか医師とかそういう方々を派遣してもらうという、そういうシ
ステムになってくるということであるわけでありますけれども。
その中で、私は、今度、十五年度から実施されるこの事業で、さっき申し上げまし
たように、三つの行為、先生方が行ってきたその三つの行為が今後どのようにこれが
取り扱われていくのか、その中身を重ねてちょっとお伺いしたいと思っております。
それから、もう一点は、私の手元に平成十三年の五月一日現在で、全国肢体不自由
養護学校長会が調べた数字がございまして、日常生活における医学的ケアが必要な在
学者数、これ養護学校に通っている子供たちのその数、全国で一万五千二百六人のう
ち二千二百四十六人、一四・七%が医学的、医療、そのケアが必要だというふうにこ
こに一覧表が出ておりまして、そのほかにも、例えば知的障害とか病弱児などを合わ
せると約三千人、この人たちがそういう医療的ケアが必要であるというふうにこの校
長会では指摘をしております。これは厚労省の資料ではない、あるいは文科省の資料
ではないんですが。
したがって、そういうこれから増えてくる、しかも、ノーマライゼーションの流れ
の中で普通学校にもこういう医療的ケアが必要な通学者が増えてくるというふうに
思っておりますけれども、その場合に、先ほど申し上げたような新しい研究事業の中
で現場の先生方がこういう医療的ケアがもしできなくなってしまうということになる
と、これは、非常にここのところは先生方の中にも議論のあるところでありますし、
もし何か事故があったときにどこが責任を持つかという、そういう話まで発展するわ
けですけれども。
ただ、基本的には、十分な訓練といいますか研修を受けて、最低の医療的ケアは
やっぱりその現場の先生方がやるというのも私はもうあり得るべき当然の姿じゃない
かなという気もしているんですが、そういう点も含めて、今後の新しい事業の中にお
けるそういう医療的ケア、具体的に、先生方がどこまで具体的にやることができるよ
うになるのか、この点について御答弁をいただきたいと思っています。

しろまる政府参考人(金森越哉君) 御指摘のように、近年、日常的に医療的ケアを必要と
する児童生徒への対応が課題となっておりまして、医療・福祉関係機関と密接に連携
した適切な対応が求められているところでございます。
そのため、文部科学省といたしましては、これまでの実践研究も踏まえまして、厚
生労働省と連携を図りながら、医療的ケアの適切な実施のための組織体制の整備や看
護師の配置、教員の研修など、養護学校における適切な体制整備を図ることといたし
まして、平成十五年度、来年度概算要求に必要な経費を盛り込むなど、所要施策の取
組を進めることとしているところでございます。
養護学校における医療的ケアを適切に実施する上では、教員と看護師の適切な連携
が重要でございますが、その中で、教員が行う医療的ケアの内容や条件等につきまし
ては厚生労働省と検討を進めているところでございまして、できる限り早く結論が得
られるよう努力してまいりたいと考えております。

しろまる谷博之君 ちょっと、時間があれば更にお伺いしたいことがあるんですけれども、
ちょっとほかの質問もありますので先に行かせていただきますが。
いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、「今後の養護学校における医
療的ケアの実施体制整備について」という、平成十五年度からのそういう事業の中
で、私は一つ、厚生労働省が概算要求もしておりますけれども、訪問看護サービス特
別事業、これは正に、従来の在宅のそういう障害を持つ医療的ケアの必要な子供たち
とは別に、少なくともこうした医療外施設の訪問看護サービスの特別事業を行うとい
うことで、従来、先ほど申し上げましたように在宅のみにしか認められてこなかった
この訪問事業を、例えば養護学校など通学、通所先において行えるようにするとい
う、そういう取組になってきたわけですから、それはそれなりに一定程度評価したい
というふうに考えておりますが。
問題は、こうした事業がすべて予算補助事業の形で行われているということで、例
えばこうした事業が一定程度の期間で終わってしまうとか、あるいはその規模が縮小
されるんではないかとかという、非常に関係者の親御さんたちも大変心配をしている
向きもあるやに聞いておりまして、そういう点ではこれを医療保険の対象にしていく
ということも私は非常に大きな課題だというふうに思っておりますが、この点につい
ての保険局長の御見解をいただきたいと思います。

しろまる政府参考人(真野章君) 訪問看護制度につきましては、在宅療養の推進を図ると
いう観点から、疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある者
であって、主治医が訪問看護の必要性を認めた者を対象といたしておりまして、こう
いう養護学校における医療的ケアは対象にならないというふうに考えております。
現在、先生御指摘のように、そういうような状況の、しかもなおかつやっぱり養護
学校における児童生徒への医療ケアをどうやって確保するかということから、文部科
学省との協議を重ねた結果、先生今御紹介をいただきました訪問看護特別事業を平成
十五年度概算要求に盛り込むと、そういう言わば、なかなか公的医療保険制度では対
応が難しいので、言わば特別な事業を組んでこれに必要な対応をしようとしているわ
けでございまして、なかなか医療保険制度においてこれを対象とするということは非
常に難しいんではないかというふうに考えております。

しろまる谷博之君 ちょっとつれない御答弁ですが、いずれにしましても、検討課題として
是非ひとつ御検討いただきたいと思っています。
この問題の最後ですけれども、ALSという筋萎縮性側索硬化症、これは難病患者
の、もう難病中の難病と言われておりますけれども、この患者さんの御家族の方が、
人工呼吸器を設置している患者さんに対する介護を、吸引等を家族の方がやっておら
れます。これを、家族の方が非常に介護に負担が重いということで、できれば介護す
るヘルパーの方々にもこういうふうな吸引行為を認めてほしいというふうなことが要
望として出ているわけでありますけれども、現在の医師法上の医行為、こういうこと
が抵触するということも聞いておりますけれども、この部分から外して、こうした行
為を一定程度の研修を前提にして広く一般にその行為を行うことを認めさせることが
できないかどうか。
過去の国会の政府答弁書にもこれはできないというふうにもうつれなく書いてあり
ますけれども、この辺のことについて再度検討していただけないかどうか、御答弁い
ただきたいと思います。

しろまる国務大臣(坂口力君) 吸引の問題は、これ何度か委員会でも御指摘を受けている
ところでございますし、現場におきましてもいろいろ御要望の多いところでございま
す。
それで、今までのいわゆる割り切り方からいいますならば、この吸引というのはこ
れは医療行為の範疇に入るといったことで、これはほかの業種の皆さん方におやりい
ただくことは難しいと、こういう割り切り方になっているわけでございますが、どこ
までが医療行為に入るかといったようなことにつきましては、これは時代とともに若
干やはり今までからも変化をしてまいりました。例えば血圧計なら、血圧を測るとい
うのは医療行為で、ほかの人はしてはいけないと、こういうふうに言っていた時代も
あったわけでございますが、最近ではもう家庭でどこでも血圧計は存在するという時
代になってまいりました。
そうしたことを考えますと、この口腔内におきます吸引の問題等につきましても、
今までどおりそうしたことでいかなければならないのか、それとも関係者の皆さん方
のお話合いの中で、それは一方そこは変化をさせることができ得るのか、やはり検討
をする時期に来ていると私個人は思っております。したがいまして、関係者の間でよ
く議論をさせていただきたいと存じます。

しろまる谷博之君 大臣、どうもありがとうございました。是非検討をお願いしたいと思い
ます。
時間がございません。最後に一問だけ、簡単に御答弁をそれぞれいただきたいと思
います。
[略]

UP: 20021006 REV: 20160125
ALS 2002ALS全文掲載
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