NPOにおすすめの3つの資金調達方法とポイント

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NPOにおすすめの3つの資金調達方法とポイント

1.はじめに

NPOと言っても、その範囲や規模は様々です。ボランティア活動を中心に法人格を取得していない小規模な市民活動や地域活動団体から、福祉や教育などの事業を行う比較的規模の大きな事業型NPO法人まであります。でもNPOの活動には、規模大小にかかわらず、人件費や経費に使用する資金が必要となるのに変わりはありません。

そこで、一般にNPO には6〜8の資金調達方法があると言われている中で、NPOにおすすめの3つの資金調達方法について、そのメリット・デメリットを示し、小さな規模のNPOと事業型NPO法人について、資金調達を上手く行う際のポイントをお伝えいたします。

2.会費・寄附の特徴とメリット・デメリット

会費は、団体の活動に賛同して正会員や賛助会員になってくれた方から、毎年支払われるものです。会費は通常、団体の定款で規定されますが、団体の運営に使用され、使途の自由度が高く、一度会員になってもらえれば安定的な財源として確保できるものです。

寄附は、団体の活動に賛同し応援をする方から、見返りを期待せずに金銭や財産を提供されるものです。寄附者が団体の運営支援に提供する場合は、会費と同様に使途の自由度が高くなりますが、一定の事業や活動などを指定した場合は資金の使途が限られます。

また、寄附は通常、単発で行われることが多いのですが、毎月定額で継続寄付したり(マンスリーサポーター)、期間や金額を決めて募集を行うクラウドファンディングなどがあります。

会費・寄附はいずれも団体の活動に賛同した方から提供されるものであり、会員や寄附者が多くなると、寄附者や会員に支えられている団体として社会的信用力が増すメリットがあります。

反面、管理事務や報告事務などの手間がかかるデメリットがあります。また、正会員は団体運営の議決権を持っており、法人運営の意思決定に影響を与えるため、一定の経営リスクが生じます。

3.助成金・補助金の特徴とメリット・デメリット

助成金は、民間の基金や財団などが一定の審査を経て、団体の資金助成をするものであり、一定の要件を満たせば資金の提供を受けます。これに対して補助金は、一般に国や地方自治体が一定の審査を経て、採択された団体の資金補助をするものあり、特定の事業を支援する目的で提供されます。

このように、助成金と補助金は団体の活動の資金支援をする点で同じですが、資金を提供する側と採択の有無により異なります。特に、補助金は助成金と違って、申請しても採択されないと資金の提供を受けることができません。

助成金・補助金は比較的まとまった資金が見込めるため、団体の立ち上げ時など創業時の資金が少ない際に、投資資金として活用することができます。また、助成金や補助金を受けているということが、団体の社会的信用力の補完にもつながるメリットがあります。

反面、助成金・補助金は継続的に見込めるものではなく、特に国や地方自治体の補助金は施策が変われば、打ち切られることも多いため、安定的な財源として確保するのが難しいです。また、助成金・補助金は後払いで人件費に使えないものが多いなど使途の制約があり、さらには、申請や報告書作成事務の負担が大きいなどのデメリットがあります。

4.事業収入・借入金の特徴とメリット・デメリット

事業収入は、モノやサービスを提供して対価を得た収入であり、団体の本来の目的を達成するために行う事業収入と団体の活動のための収入を得るために行うその他事業収入に区分されます。借入金は、団体の活動のために金融機関等から提供を受けた借金であり、後日、返済の義務があるものです。

事業収入は、団体の自主財源として事業費や管理費に自由に使用できるものであり、経営の独立性が高く、行政や助成先からの制約を受けることはありません。また、事業を通じて団体のモノやサービスの購入者から賛同を得るとともに、団体で働く雇用者を増やすことができるメリットがあります。

さらに、借入金は資金が必要なのに手元資金が不足している場合、融資を受けることができれば、資金繰りの心配が当面なくなるメリットがあります。

反面、事業によっては他の事業者と競合して経営が悪化したり、事業に熱心になるあまり、本来の団体の目的との関係性が薄くなり、団体を取り巻く多様な関係者から賛同を得にくくなるデメリットがあります。さらに、借入金はいずれ返済しなければなりませんが、経営が悪化すると約定どおりに返済できなくなるデメリットがあります。

5.3つの資金調達方法にたった1つの共通のポイント

以上、NPOにおすすめの3つの資金調達方法について、その特徴とメリット・デメリットをお伝えしてきました。3つの資金調達方法はそれぞれ一長一短があり、その中で団体が持続可能な活動をしていくために、どのくらいの資金が必要であり、どの資金調達方法が団体に適しているかを充分に検討することが大切です。

その際、資金調達方法は違っても、たった1つの共通のポイントを理解しておくことが重要です。それは、NPOのビジョンミッションを明確にして、団体の多様な関係者に賛同し協力を得られるようにするための道筋を示すことです。

そして、その道筋を相手の立場に立って、よりわかりやすく説明することができれば、団体の賛同者、支援者、協力者、購入者になってくれる可能性が高くなり、資金調達がしやすくなるということです。

これは簡単に見えるかもしれませんが、それをどこまで意識して団体の方針や計画に落とし込み、具体的に行動して成果に繋げているかは、団体により温度差があるのではないでしょうか。自団体のことを思い浮かべてください。こうしたことをしっかりと内部で共有し、外部の関係者に情報発信している団体の資金調達は上手く行っていると思います。

NPOにおすすめの3つの資金調達方法とポイント(2)

1.小さな規模のNPOにおすすめの資金調達方法と3つのポイント

NPOの活動における財源として、一般的には財源の1/3を会費・寄附、1/3を事業収入、1/3を助成金・補助金で構成すると財政が比較的安定すると言われています。すなわち、自主財源である会費・寄附及び事業収入と外部財源である助成金・補助金の比率が2対1の割合です。

これらの資金調達方法の中で、ボランティア活動中心の小さな規模のNPOにおすすめなものは、何が良いのでしょうか。やはり、小さな規模のNPOは会費・寄附の資金調達を優先することが現実的だと思います。

地域に密着しているNPOは、地元の住民の顔が見える場所で活動している団体が多いです。そうした団体の活動は、地域の課題に向き合って頑張っていることが住民にも伝わりやすく、自分事と捉えて団体を応援したい、協力したいと思ってもらえる可能性が高くなります。そこで、団体が会費・寄附を受けやすくするための3つのポイントをお伝えします。

2.団体のビジョンミッションの棚卸し

まず、団体のビジョンミッションの棚卸しをします。団体の設立当初と現在とでは、団体を取り巻く環境が変化していることがあります。そうすると団体が解決したい課題も同じとは限らないこともあります。

団体が解決したい課題やその相手、団体がこうありたいという想いや使命をあらためて確認する作業はとても大事です。それが確認できれば、団体の想いがぶれることがなくなり、次の行動に自信をもって進むことができます。

3.戦略的な情報発信

次に、こうした団体の想いを多様な媒体を通じて、戦略的に情報発信する仕組みを作ることが必要です。せっかく素晴らしい活動をしているのに、それを知られていないために会費・寄附を受け損ねているとしたら、とてももったいないことだと思います。

現在は安価な費用でSNS等での情報発信が可能ですが、これを戦略的に行うことが大事です。団体内のビジョンミッションをこれから会員や寄附者になってもらうためにどのように伝えれば効果的か、団体内部での役割分担はどうか、情報発信の頻度はどれくらいかなど、団体内部で方針や具体的な計画を検討することが求められます。

4.会員や寄附者へのフォローアップ

最後に、会員や寄附者へのフォローアップです。情報発信が会員や寄附者になってもらうための入り口だとすれば、お礼や報告等のフォローアップは会員や寄附者に継続的に支援してもらうための出口です。

会員や寄附者に対するお礼だけでなく、団体のメールマガジンでの定期的な活動報告や、年次事業報告書の送付、会員や寄附者限定イベントへの招待など、いろいろな機会を通じて、継続的に支援をしたいと思ってもらえる関係を繋ぐことが大事です。

また、資金使途や目的、その成果について適切に情報開示することで、団体の活動に共感や賛同するという信頼性を確保することができます。これにより、会員や寄附者の紹介などさらなる支援者の拡大の期待もできるところです。

NPOにおすすめの3つの資金調達方法とポイント(3)

1.事業型NPO法人におすすめの資金調達方法とポイント

事業型NPO法人の活動における財源の割合はどうでしょうか。一般的には財源の1/3を会費・寄附、1/3を事業収入、1/3を助成金・補助金という構成に対して、事業型NPO法人の場合は、ほとんど事業収入で占めている団体は少なくないと思われます。それは、どうしても事業を行うことを優先するからです。

しかし、事業型NPO法人であっても、NPOのビジョンミッションを明確にして、団体の多様な関係者に賛同し協力を得られるようにする必要性は何ら変わることはありません。

事業型NPO法人におすすめの資金調達方法は、事業収入をベースにしながらも会費・寄附や助成金・補助金を獲得するのが現実的だと思います。すなわち、自主財源である事業収入と会費・寄附及び外部財源である助成金・補助金との比率が2対1の割合です。

2.事業収入の採算性確保と融資の可能性

そこで、事業型NPO法人が事業収入を基礎に会費・寄附や助成金・補助金を受けやすくするための3つのポイントをお伝えします。

まず、事業収入の採算性を確保することが大事です。事業型NPO法人の場合、介護事業など事業によっては他の事業者と競合することが少なくありません。当然のことですが、事業の採算性が確保されて初めて事業継続できますので、継続的に収支が黒字になるための戦略と計画を策定し、PDCAを実行する必要があります。

また、事業型NPO法人の創業時では助成金・補助金を活用したり、行政からの委託事業を行う場合があります。こうした助成金・補助金及び委託事業収入の外部資金は一時的な投資として位置付け、これらの資金に大きく依存しないことが大事です。それでないと助成金・補助金頼みの事業になり、外部資金の依存度が高くなり、これらの資金が打ち切られた時の対応ができなくなるリスクがあります。

ある程度事業が安定し、拡大する時期が来て、資金需要がこれまで以上に旺盛になることがあります。その場合、自己資金だけでは資金手当てができなくなることも考えられます。

そこで、新たな資金調達として、金融機関等からの融資を受けることを検討する余地が生じます。事業拡大の機会を逃すことなく、借入金という資金調達を行うことで事業展開する可能性を戦略的に検討することも必要です。

なお、事業型NPO法人向けの融資先としては、日本政策金融公庫や地域の信用金庫などがあり、そうした金融機関へ相談することで融資を受けることができます。

3.事業収入や助成金・補助金と団体のビジョンミッションとの整合性


事業収入や助成金・補助金による資金調達する際に留意すべきは、事業型NPO法人の関係者との間で、団体のビジョンミッションと整合していることを確認する必要があることです。

すなわち、団体内部では事業を行うことが団体のビジョンミッションを達成することに繋がり、メンバーが喜んで役割分担を果たすことで団体に貢献するとの意識付けを持たせることになります。団体外部では、そうした団体の活動が地域の課題解決に貢献していることに賛同し、モノやサービスの購入を通じて応援したいと思ってもらえるようになります。

また、助成金・補助金を申請し審査を受ける際には、団体のビジョンミッションを達成するためのストーリーを描きやすくなり、採択される可能性が高くなります。これにより、助成金・補助金の獲得の確度を上げることに繋がり、採択されたことが団体の信用力を高めることにも繋がります。

逆に、このような団体のビジョンミッションと整合していなければ、何のために事業を行っているかがわからなくなり、NPOとして事業を行う目的からずれてしまい、団体の多様な関係者から信用を得ることができなくなります。

このように、事業型NPO法人は常に事業収入や助成金・補助金による資金調達が団体のビジョンミッションと整合しているか、内外に情報発信することが求められます。

4.事業型NPO法人の会費・寄附の獲得に向けた対応


事業型NPO法人では、事業収入や助成金・補助金による資金調達を行うことが優先されるので、ややもすれば会費・寄附の獲得に向けた活動が後回しになることが否めないと思います。

しかし、これまで見てきたように、事業を行うことの本質的な拠り所は団体のビジョンミッションを達成するためであることがわかります。そうであれば、多様な関係者から団体のビジョンミッションに賛同と協力を得ることは、モノやサービスの購入だけでなく、会費・寄附の獲得とも密接な関係があることがわかると思います。

事業収入や助成金・補助金と会費・寄附との間には団体のビジョンミッションに賛同と協力を得ることが柱として位置付けられており、そのための活動を同時並行的に行うことは決して矛盾するものではありません。むしろ、双方を上手く結びつけることにより、団体の資金調達をより効果的に行うことが可能となります。

この活動の優先順位や割合については、事業型NPO法人の事業内容や実施体制、団体の多様な関係者との関係性など様々であることから、いろいろあって良いと思います。その団体に最も効果的と思われる活動の重点を探っていくことになりますが、必ず一体的に行うことが相乗効果を生むことに留意していただければと思います。なお、会費・寄附の獲得に向けた対応については、NPOにおすすめの3つの資金調達方法とポイント(2)をご参照ください。

5.おわりに

これまで、NPOにおすすめの3つの資金調達方法とポイントをお伝えしてきました。NPOの資金調達方法はいろいろありますが、どの方法によるにしても団体のビジョンミッションをしっかりと多様な関係者に情報発信し、彼らのココロが動いて団体のファンになってもらうことが重要です。

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