10年に1度渇水年レベル以下の利根川利水安全度
わが国の水利用の基本となるものが河川の流水であることは前回記したとおりであるが、実際に水利用を行うときの大原則は"先者優先"である。
後から利用しようとする者は、すでに利用している者の権利を侵してはならないのだ。したがって、すでに農業用水として利用し尽くされている川から新たな取水を行うことは基本的には不可能で、それを可能にしたのがダムによる水資源開発だった。
すでに農業用水として利用し尽くされているといっても、河川水にまったく余剰がなかったわけではない。日本の河川は、季節的にも時間的にもその流量の変動が極めて大きいが、この大きく変動する部分は簡単には使えず未利用のままであったから、その部分をダムに貯留しておいて、河川水が不足する時に補給できれば、その分だけは新たに使えることになる。
これがダムによる水資源開発の原理であり、既存の農業用水と共存しつつ新たな水利用を可能にしたことから、急増する都市用水の需要を賄うためにダムによる水資源開発が多用されることになった。