滝沢ダムの建設事業の経過は次のとおりである。
昭和44年4月 建設省滝沢ダム調査所開設
49年12月 荒川水系 水資源開発水系に指定
51年10月 建設省から水資源開発公団に事業継承
63年12月 移転者(104戸)と損失補償基準妥結
平成元年3月 水源地域整備計画に指定
4年11月 移転者(8戸)と損失補償基準妥結
10年10月 一般国道140号大滝道路全線開通
11年3月 ダム本体工事着手
13年7月 ダム本体コンクリート初打設
16年3月 付替道路中津川三峰口停車場線開通
9月 ダム本体コンクリート打設完了
17年10月 試験湛水開始
20年3月 ダム完成
滝沢ダム建設によって、大滝村の廿六木、滝之沢、浜平、塩沢地区112戸が移転を余儀なくされた。その人たちの移転まで追った滝沢ダム水没地域総合調査会編・発行「興懐」(平成5年)、新井靖雄写真集「奥秩父−ダムで移転した人びと」(埼玉新聞社・平成19年)がある。新井靖雄写真集の表紙をめくると、洗濯物が干してあり、その前に老女が座り込んで秩父の山々を眺めている。この老女から
「明日、荒川村に引っ越すので、この風景は今日までです。ああ、良いところへ来てくれたね」と言われ、そのあとに撮影されたものである。滝之沢地区を離れがたい老女の心理状況がこの1枚の写真に見事に表現されている。新井靖雄さんは、水没地区の光景を17年間にわたってシャッターを押し続けていたが、シャッターを押せなかった苦しみもあったという。