?@施工面では事業者間で工事受託・委託の手続が必要で、経理面においても会計が別々で年度ごとに行われる工事費の受託・委託の手続が極めて複雑であった。32年度国家予算でダム特別会計が承認される見込みとなったことを受けて、政府は河川法の特例を定める法律として「特定多目的ダム法」を制定したのである。
?A管理面でも、河川管理者が一元的に管理するには他の事業者の同意が前提とされていた。
?B農業関係団体など水利事業者の共有持分についての登記や担保の方法がなく財産管理上の位置付けが明確ではなかった。
?@従来の受託・委託の方法ではなく、建設大臣(当時)が多目的ダムを建設する。同時に「特定多目的ダム建設工事特別会計法」が制定された。これはその後道路、港湾、治水でも採用された特別会計の先駆けをなすものである。同法による多目的ダム建設事業の第一号は、美和(みわ)ダム(天竜川支流三峰川、重力式コンクリートダム、堤体高69.1メートル、旧建設省)であった。同ダムは治水効果とあわせて最大1万2200キロワットの発電を行い、さらには長野県河南土地改良区2709ヘクタールに農業用水を提供した。(同ダムは、今日堆砂量が計画の約2倍に達し土砂放出用バイパストンネルの建設工事が行われている)。美和ダム以降、33年に大野ダム(由良川)、市房ダム(球磨川)、目屋ダム(岩木川)、大倉ダム(名取川水系大倉川)、鹿野川ダム(肱川(ルビひじかわ))が建設され、特定多目的ダム事業は軌道に乗った。
?A建設大臣が多目的ダムの建設に関する「基本計画」「操作規則」を定め、多目的ダムの計画及び管理を一元的に行うことが出来る。
?B建設費を負担する上水道、工業用水道、発電事業者の権利として「ダム使用権」を創設し、各事業者の投資を財産的権利として明確化。