(萩原)・・・僕がダム巡りを始めた10年、11年ぐらい前は、全くネット上にダムの情報がなかったんで、地図を見て調べたりとか、自分でどんどん情報を漁っていかないと、どこにどんなものがあるか全然わかんなかったんですけど、今「ダム便覧」があるので、どのダムがどこにあって、どのくらいの大きさでどんな役割でということが簡単に分かるんで、すごく、ダム巡り人気に火をつけた、みんながダム巡りに行きやすくなったと思うんですよね。
(Dam master)ごもっともなんですが、逆に、何こんな所にダムができたのって言う、あの頃の感動って言うのが無くなったんですよね。昔は、地図を見てね・・・
(萩原)確かに、行ってみたらここはアーチだったんだっていう驚きとか、ありますよね。
(Dam master)こんなに高いんだー、とかね。
(酒井)贅沢ですねー。(笑)
「ダム年鑑」は日本のダムに関するデータなら全て載っていると言っても過言ではない書籍で、(中略)一時は「ダム好きのバイブル」とまで形容されました。もっともそんなユーザーは想定されていないため非常に高価で、またB5サイズながら厚さが約10cm、重量約3kgというヘビーなものです。一時代前までは、これとカメラやレンズ、それに地図を入れた重たい鞄を肩から下げ、三脚を持って一般車通行止の場所にある小さなアースダムを目指して炎天下数キロ歩く、といった、ある種苦行とも呼べるようなダムめぐりを行なっている人が何人もいました。そして、この続きのような鋭い質問があった。
この先人たちの苦労を一気に解消してしまったのが「ダム便覧」です。これはダム協会のホームページ内に作られた「デジタルダム年鑑」とも呼べるもので、位置情報やスペック、トピックスといったダムめぐりに必要な情報だけに特化し、様々なジャンルで検索もできる非常に便利なサイトです。「ダム便覧」の登場によって、肩から重い鞄を下げた古いスタイルのダム探訪者たちは、デジカメとノートパソコンという軽い装備に駆逐されるかたちとなり、今では一部のマニアを除いてほとんど姿を消しました。(「はじめてのダムめぐり〜ダムに出かけてみよう〜」)
(萩原)「ダム年鑑」という本がありまして、(中略)それが、今はもうネット上のダム便覧でほぼ手に入ってしまうんで、ダム年鑑の存在価値を揺るがしてしまっているんじゃないかなと言う、そういう意見って、ダム協会内であったりしないんですか。
(酒井)本当はですね、ダム年鑑とダム便覧はだいぶ違うんですよ。ダム年鑑に載っかっている情報と、ダム便覧に載っかっている情報は、ダブっているのはダムの堤高とか、いわゆるダムの諸元と言われるものだけであって、それ以外の部分が年鑑にも、便覧にも実は非常に多いんです。ダム便覧は諸元が載っかっているものだという理解もあるんですが、私は、ダム便覧は総合的なダムの情報サイトですよと言っています。昔から「テーマページ」という読み物があり、最近は「このごろ」というブログみたいなものとか、「ダム事典」とか、いろんなことがあって、世界のダムもある。ダム年鑑は日本のダムだけですから。一部ダブってるけど、大部分はダブってない。だから、そういうことはないのではないかなと、反論しているんです。
(萩原)ダム便覧はダム年鑑と競合しているんではなくて、堤高とか、そういうものも含めた総合的な情報データベースとして作っているというお話ですが、それはつまり、僕らがやっているホームページと競合しちゃっていると言うことですよね。僕らが一生懸命ダムのデータベースサイトを作っていたのが、中の人が本気出してちょっとやっちゃったら、総なめになって、シェアー全部奪っちゃった、そういうような状況になっている、ということですかね。質問を受けるばかりでは面白くないと、逆にこちらから質問してみた。以前から知りたいと思っていたことだ。
(酒井)そういう面はあると思いますけど、ただね、ダムって言うのは、いろんな側面があるんですよね。今個人のサイト、ダムマニアさんのサイトを見てみると、いろいろある側面のうち抜け落ちてる部分があるんではないかという気がするんです。ダムマニアさんのサイトは、どちらかというと技術的な面とか、写真撮るとか、そんな面に重きが置かれているように思うんです。そうじゃなくて、そこの文化とか、最近ですと地域振興にダムを使おうみたいなこともある。今回日本画が出ていますが、そういう芸術とか、あるいは、小説なんかも、そういうものの舞台になったり対象になったりもする。そんなことも含めて、ダムマニアさんより広い観点でダムをとらえているというつもりではいるんです。
(萩原)なるほど。
(Dam master)ちなみに、酒井常務はダムマニアですか。
(酒井)ダムマニアになりたいなーと思っている。仕事辞めたら、ダムマニアになりたいなーと。先輩のダムマニアを見習って。
(酒井)萩原さん、質問なんですけど、「ダムマニア」っていう言葉はいつからあります?こんな風に、予定時間をだいぶオーバーして延々と続く。しかも、内容のある質問ばかりで、答えるのに正直やや手こずった感があるが、いい勉強になった。萩原さんも Dam master さんも、楽しそうに話している姿を間近に見て、もしかしたらトークマニアではないのか、ダム&トークマニア誕生かもしれない、などと思ってしまった。
(萩原)うーん、どうなんでしょうねー。具体的にいつって言うのが。
(酒井)宮島さんのサイトが「ダムマニア」ですよね。宮島さんは、ダム便覧を作った当時サイトを持っていたんですが、あれがダムマニアだったかどうかが記憶がないんです。
(Dam master)「ダムマニア」って言うホームページ、元々私のホームページ、「Dam master」ていう前に「ダムマニア」というホームページだったんですよ。ダムマニアってそのまんまだから面白くないなと、「Dam master」っていうホームページに改名した。その後に、宮島さんがダムマニアって言うホームページを立ち上げた。
(酒井)と言うことは、その当時もうダムマニアという言葉があった。あったか作ったか。
(Dam master)誰でも思いついたような言葉ですからね、別に誰が作ったというような言葉じゃないんですけどね。
(萩原)でも、結果的に10年経って考えると、検索ワードとしては、宮島さん大勝利。(笑)
(Dam master)いやいや、Dam master というブランドは守りますよ。
(萩原)僕も宮ヶ瀬ダムを見て、その帰り道に「ダムサイト」っていう名前を思いついたときはすごっくドキドキしましたからね。