2025年11月07日 ON AIR
ダウンホーム・ブルーズって何や その2
ON AIR LIST
1.Rhythm Rockin’ Boogie/John Lee Henry
2.I Just Keep Loving Her (Take 1)/Little Walter&Othum Brown
3.Money Taking Woman (Take 1)/Johnny Young&Johnny Williams
4.Let It Roll/J.B. Lenoir
5.On The Road Again/Floyd Jones
先週のダウンホーム・ブルース特集ではシカゴ・ブルーズの有名なジミー・リードやジミー・ロジャースなどを聴いてもらったのですが、今日は更にダウンホームを深く掘ってみたいと思います。更にイナたい、更に南部の匂いを放っているブルーズを聞いてもらいます。
1940年代50年代は南部の畑仕事から解放されたいと思った黒人たちが大挙して北部へ 特に大都会シカゴに移り住みました。ギターやピアノなど楽器をできるものは一旗揚げにシカゴに向かったのですが、音楽で生きていけるものはほんの少数で他の仕事をやりながらのミュージシャンの方が多く、故郷の南部に帰る者もたくさんいました。最初に聞いてもらうジョン・リー・ヘンリーというあまり名前の知られていないブルーズマンも少しの録音を残しただけで消えています。
曲はなかなかファンキーなダンスチューンでもやっぱりイナたいダウンホームです。
1.Rhythm Rockin’ Boogie/John Lee Henry
後ろのコーラスの"All Night Long"とみんなで歌っているのがいなたいです。本人もハーモニカソロで「オー、イェー」なんて言うてますが、酔っ払ってますよ、これみんな。
50年代に入るとマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフ、サニーボーイを擁したチェス・レコードがシカゴ・ブルーズに火をつけて全国区のレコード・レーベルになっていくのですが、その前夜40年代後期のシカゴで南部から出てきたブルーズマンたちが日銭稼ぎにストリートで演奏していた場所がマックスウェル・ストリート。まあ日用雑貨から衣服から電気製品などいろんなものを売っている市場みたいなところですが、とにかく当時人がたくさん集まる場所だったわけです。そこでまあ投げ銭みたいな感じで演奏してウケるとそこそこの金になったわけです。そこで楽器とかギターの弦とかハーモニカとか売っていたバーニー・エイブラムスというおっさんが「こいつらを録音してレコード売ったら売れるやろ」とオラネリというレーベルを作り、商売にしたのが次に聞いてもらう1947年ののちに有名になる素晴らしいハーモニカ・プレイヤー、リトル・ウォルター17歳の初録音。
2.I Just Keep Loving Her (Take 1)/Little Walter&Othum Brown
ギターはオッサム・ブラウンというこの録音でしか聞いたことがない人。
次はマックスウェル・ストリートのライヴの顔役であり常連だったジョニー・ヤング。ジョニー・ヤングはマドリンでブルーズを歌った人ですが、見事なマドリン・プレイです。ギターのジョニー・ウィリアムスもビートがステディでなかなかの腕達者ですが、このあと牧師さんになってしまったらしいです。なのでほとんど録音が残ってません。
3.Money Taking Woman (Take 1)/Johnny Young&Johnny Williams
前のリトル・ウォルターといい、今のジョニー・ヤングといい、ブギの曲なのはやはりストリートで集まってくる人たちを踊らせなければいけなかったからでしょうね。故郷の南部にいた頃もこんな感じのデュオでやってたんだと思います。
さて次はシカゴ・ダウンホーム・ブルースといえばぼくの中では外せないJ.Bレノア。彼の弾き語りを何度も特集していますが、やはり歌もギターも個性的で曲が始まるとすぐにわかります。曲調も歌もギターもダウンホームでなんかホットします。
4.Let It Roll/J.B. Lenoir
シャツフルのリズムがゆったりしていていいですよ、L.B.レノア。
次のフロイド・ジョーンズもダウンホーム・ブルーズの極地みたいな曲なんですが、今日聞いてきたリトル・ウォルターやJ.B.ルノアのようにファンキーさはなく、ダークです。重いです。ダークなダウンホーム・ブルースです。
「泣くのはもう疲れた。また旅に出るんだ。雨と雪の中、大変な思いをして旅をしたこともあったなぁ。お袋は俺が小さい頃に俺を置いて出て行った。ママ、もう泣かないで。泣かないで、ママ」
5.On The Road Again/Floyd Jones
コードひとつ。ワンコード裏声を使うところなんかはハウリン・ウルフを思い出します。
こういうテンポでこういうリズムでこういうグルーヴ感を出すのは僕なんかには本当に難しいです。このフロイド・ジョーンズという人の心と体の中にある個人的な感じが前面に出ているのでぼくがやってもこんな感じにはならない。でも、これもダウンホーム・ブルーズのひとつだと思います。つまりブルーズのブルー(憂鬱)を重く持っている南部の広い土地を感じさせるダウン・ホーム・ブルーズです。