西日本新聞(2007年7月10日掲載)
ホームレスに部屋と食事を与え、生活保護費の大半を徴収する団体が東京、大阪、福岡など全国の都市部で活動する問題。生活保護費は住所不定だと受給が難しいが、これらの団体はアパートの一室などを提供してから受給申請をさせ、一括徴収している。福岡市は「保護費が受給者の生活以外に使われるのは不適切」と、受給者に指導する方針を固めた。一方で、これらの団体のうち一団体が運営する社会復帰施設に、同市が補助金を出していたことも分かった。
「本人同意、問題ない」 ホームレス生活保護費徴収、団体前代表一問一答 「適正に運営。会計公開は不要」
ホームレスに食住を与え、生活保護費の大半を徴収する団体が福岡市などで活動している問題で、こうした運営手法をとる任意団体「ひかりあれ福岡」(同市)の創設者、川上俊彦前代表(70)が西日本新聞のインタビューに応じた。川上前代表は生活保護費の徴収について「本人が同意しており問題はない」と強調。退所した人の多くがホームレスに逆戻りしている点については「ここでは手助けしかできない」などと語った。やりとりは以下の通り。
−団体設立のきっかけは。
「私もアルコールと薬物依存症で苦しんだ。それで約30年前、アルコール依存症のホームレスを救うため、今の前身の『MAC』を東京に設立した。それを2年前に今の『ひかりあれ』に改称した。現在、全国十程度の都道府県にある17施設に、約450人が入所中だ」
−運営はどういう形をとっているか。
「ホームレスが入所してしばらくすると、役所で生活保護を申請する。保護費は団体の会計に集め、全体の中から家賃や食費、交通費などを払う。余ったら次の(新しい)施設をつくったり、高齢者を温泉に連れて行ったりする。私欲でやっているのでは決してない」
−生活保護費を一括徴収し、受給者の生活以外に使うのは不適切との声がある。
「聞いてほしい。生活保護費は役所が本人と面談して、働けないと判断したから出す。役所と本人の契約だ。その本人が、ひかりあれとの契約に同意している。だから問題ない。弱い人を助けるためにお金を使っている。よく小遣いが3000円と言われるが、症状によって5000円の人も1万円の人もいる」
−札幌市は昨年、「ひかりあれ」の生活保護費の扱いが生活保護法の趣旨に合わないとして、受給申請を却下した。
「(同市に対し)訴訟をしてもいいと思っている。ほかのところ(自治体)では受給できているからだ。それに、依存症は病気でリハビリが必要なのに、施設に補助金が出ない自治体もある。それもおかしい」
−団体の会計は公開しているか。
「していない。本人がこれでいいと同意しているのだから(保護費が)どう使われているか話す義務はないし、世の中に出す必要もない。職員ももともとは依存症患者で、きちんとした会計ができない。専門職員を雇う金もない」
−リハビリの途中で施設を飛び出した退所者の多くは、路上生活に逆戻りしている。活動は自立につながっているか。
「入所者は家族との人間関係が壊れ、行き場がなく、回復できない人が多い。自立も難しい。それに、ここでは回復したい人の手助けしかできない。やめるのは本人の自由。だから、施設を出る人すべてに金を渡すなどの支援はできない。長くリハビリのプログラムを受け、自立できると判断した人には、就職先を探したりもしている。適正に運営しているつもりだ」