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夢を叶えて成長する!

とある作業療法士の自分用の勉強の記録などなど。

このブログは、ほとんどがインプットの記録と自分の考えのメモで、ときどき少し頑張ったアウトプットが記録されています。毎週金曜日に定期更新される予定。
2013年02月05日16:27
臨床での悩みや困っている課題を乗り越えるために、
どんな作業の知識があればよいのか考える課題を
作業学特論で出されたときの提出課題の一部です。
論文の要旨を読み、自分の課題に対する答えを考えるところまでが課題なため
論文自体は読んでいない場合があります。
作業がどのように障害受容につながるのでしょうか
それがもう少しつかめたら、臨床に役立つのではないかと思い
作業と障害受容の関連性について考えてみました。


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障害受容に対し日本という文化では、「作業」がどのように影響しているのか知りたいと思い、日本語で書かれた文献を対象に検索した。検索用語は「障害受容/経験」「作業/障害受容」等を用い、作業療法士以外の視点からも書かれた文献も表題や抄録を一部確認した。しかしながら、作業療法士の視点から書かれていない文献では、「趣味がある」や「なんらかの新しい役割、仕事を担い活動」という質問項目を交えているアンケートによる研究はあったが、「多くの患者が障害を自分の個性の一部として受け入れ、健常者、障害者の区別なく対等に交流しており、多くが趣味を持ち、今の人生に満足していた」とのみ書かれているにとどまった。1)
一方、作業療法士の視点から、障害受容について検討された文献では、田島明子氏による「障害受容再考―『障害受容』から『障害との自由』へ」という書籍がある。この本の中では、日本における「障害受容」の研究の流れが紹介されており、臨床現場に対し「『障害受容』は支援の対象である(すべき)という確証、もう一つは『障害受容』は支援できるという確証」2)という影響を与えたと述べられている。また、「クライエントにとっての『障害受容』の問題が『訓練の流れ図』への適応問題としてすり替えられてしまう」2)と、障害の段階理論やモデルに対し、問題点を述べている。合わせて、「障害受容」は一度したら不変なのかという問いを立て、「過去の『スティグマ経験』により形成された否定感・羞恥感情については、その後肯定的自己像が形成されたとしても『スティグマ経験』に起因する場や人に対するイメージが引き金になり、そのイメージが喚起される状況設定において再燃する可能性はあること、またそれは本人の意志的行動を規定・限定する大きな要因となる」2)と述べている点が興味深い。また、同じく田島氏がインターネット上で公開しているサイト3)に掲載されている文章にて、「作業療法」に掲載されていた障害を有する人の受障後の心理過程に注目した論文2つが紹介されていた。4)5)これらの引用を読むと、クライエントに対する作業療法士の関わりと、作業への支援が、障害受容に対しなんらかの影響を与えた可能性は示唆されている。また、冨岡らによって、精神科作業療法の立場から「作業への取り組みかたの変化を詳細に吟味することは、障害受容の背後にある受傷後の自己概念や価値観の変化を理解する手がかりとなろう」6)と述べられている。鈴木も頭部外傷者の事例を通して「作業を通した関わりによって、障害者の生活の中で障害の意味や考え方を変化させる転機になり得るのではないか」と考察している。7)西野らも、脳血管障害者に対するインタビューを用いた研究を通し「作業は自己の認識と障害への適応に関わっている」と述べ、「作業が与える障害適応への影響を今後さらに追及していく必要がある」8)と提言している。しかしながら、その後「作業」と「障害受容」の関連性について書かれた文献をみつけることができなかった。
作業療法では、人が自分らしい作業に挑戦できること、すなわち「作業機能障害」に焦点をあてていると思う。機能障害にこだわらず、代償的アプローチや教育的アプローチも並行して導入していく。その実践の中では、機能障害だけでなく、現在の身体でも「できること」に興味を持ち協業していけるクライエントもいるが、機能障害にのみ固執してしまうクライエントを経験することも少なくない。機能障害にこだわりをもつクライエントに対し、クライエント中心とはいえ、生ある限り当人がそこに固執することが幸せなのだろうかと日々悩む。私は、人それぞれ障害受容に至るプロセス、また、受容から揺れ動くプロセスがあってもよいと思う。作業療法士として、障害を負ってもその人らしい「作業」が拠り所になるよう支援していきたいと思う。そのためにも、「作業」が「障害受容」に対し、どのように影響し、また影響しないのか明らかにする必要性があると思う。
今回、文献検索し抄録を中心に読んだところ、「障害受容」と「作業」の間に何らかの関連性を示唆している文献はみられた。このことから、クライエントの障害受容に、作業療法が有益である可能性があると考えられる。しかしながら、具体的にどのように「作業」を用いれば「障害受容」に影響しているかわからなければ、一歩踏み込んだ支援はできないと思う。また、他職種に作業療法士として、障害受容にどのようなアプローチができるのか十分に説明できない。さらなる研究が必要な分野だと思う。西田らの研究は「発症から現在までの様子とどのような作業を経験したか、語りの中の出来事・作業を経験した際どのように感じていたか」質問しているため、今後の研究の礎となると思う。

<文献>
1)岡本五十雄 塩川哲男,2006,脳卒中患者の障害受容(克服)−受容(克服)過程、苦悩の内容、障害を個性の一部と認める時期とそれに影響する要因―,北海道リハビリテーション学会雑誌34
2)田島明子,2009,障害受容再考―「障害受容」から「障害との自由」へ,三輪書店
3)田島明子,2005,リハビリテーションと障害受容−リハビテーション領域における障害受容に関する言説・研究の概括−,http://www5.ocn.ne.jp/~tjmkk/ta4.htm
4)遠藤てる,1996,機械操作活動が障害の受容を促進した2症例についての考察,作業療法15.03.
5)上村智子,1998,障害受容を促すための支援―身体障害によって職業を変更した2名の青年のインタビュー―,作業療法17.06.
6)冨岡詔子 吉沢真理子,1989,身体障害をもつ分裂病患者に対する作業療法の一経験信州大学医療技術短期大学 紀要 14(2), 123-137
7)鈴木達也,2011,障害経験が人生に与える意味と転機に関して―ある1名の頭部外傷者の語りから―,日本作業療法学会抄録集 45: 432-432
8)西野歩 菊池恵美子 他,2006,脳血管障害者の作業と自己認識変化の過程,日本作業療法学会抄録集 40: 726-726
タグ :
#作業
#障害受容
#障害適応

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