目くらまし (妖怪)
目くらまし(めくらまし)とは妖怪の一つ。名前の通り、人間の視覚に影響を及ぼし害を与えるとされている。
概要[編集 ]
人間の身体機能に関する一般的な研究では、ヒトの視界は「中心視野」と「周辺視野」に分かれると分析されている。中心視野はつまりピントの合っている部分を指し、それ以外の見えていてもぼやけている部分が周辺視野と呼ばれている。中心視野においては物の特徴が詳細にわたって観察できるが、周辺視野では色や形などがぼんやりしており、中心視野ほど対象を詳しく知ることはできない。止まっている物ならば目を向ければじっくり観察できるが、速いスピードで視界から逃げるような物に焦点を合わせるのは困難である。このため人間は、そうしたぼやけた物体を何か自分の知っているものに置き換えて理解しようとする。
妖怪「目くらまし」は常にぼやけた姿で出没していることから、意識的にヒトの周辺視野を拠点として悪行をおこなっていると考えられている。
活動[編集 ]
目くらましはドッペルゲンガーと同様、特定の実体をもたない妖怪であると考えられている。
まず攻撃対象の人間を選ぶと何らかの姿に変化し、対象の周辺視野を通り過ぎる。すると、何か自分の知っているものだと誤解した者が振り向くことがある。このような人間に対して呪いをかけるというものが、報告された事例の過半数を占めている。以上のような性質から目くらましは「目逸らし(めそらし)」とも称される。
また少数だが、「ガラス越しに目くらましが立ち止まって攻撃対象を凝視する」という現象が記録されている。
実害[編集 ]
報告事例から見て、実害は「車を運転中」という状況下で最も発生しやすく、その被害も飛びぬけて大きい。 現在も入院療養中のとある患者は「休日のドライブで直線道路を運転していたとき、道路わきの民家の中に何やら肌色の物体がうごめいていたような気がして振り向いてしまった。すると今まで何も無かった前方に電信柱が現れて正面衝突してしまった。あれは何だったのだろう」と自身の体験の奇怪さと危険性を振り返っている。このような事件が発生する可能性は日本の警察庁発表による「交通事故発生状況の統計資料」が裏付けており、「第一当事者(事故を引き起こした者)が運転者である場合」の事故原因のトップが「前方不注視(目を逸らされた)」であることから、目くらましの凶悪さ・影響力の広さが窺い知れる。
なお、実害は物理的なものに限らない。「ガラス越しに目くらましが立ち止まって攻撃対象を凝視する」事例では、シャワールームや廃屋で遭遇した者へ心的外傷を与えている。シャワールームで被害にあった女性の多くは、目くらましを「痴漢である」と誤認している。しかし、告発しようにも目くらましはその行方が掴みづらいことから法廷にひっぱり出すのは叶わない。それゆえ、たまたま近くを歩いていた人が加害者としてでっちあげられるという二次被害を生み出してしまっている。また廃屋の事例については、被害者の9割以上が「凝視していた者」の正体を幽霊であると考えており、こうした説に基づいた映画が星の数ほど作られていることからトラウマの深刻さが窺い知れる。
この他にも、以下のような事例が報告されている。
- 繁華街を歩行中、長髪でこの世のものとは思えないほど美しい女性が横を通り過ぎたような気がして後を追うと、平均的な顔の男性であったことが分かったが、不審に思ったこの男性に因縁をつけられてしまった。
- 期末試験中、それほど仲の良くない隣席の女子が何度も振り向いてくる気がして目をやると、問題文と解答用紙の間で顔を動かしているだけであることが分かったが、こちらに気づいたその女子に「せんせーい、○しろまる○しろまる君がカンニングしてまーす!」と騒がれてしまった。
- 車で走行中、横の車線で並走している運転者が知り合いだと思いクラクションを鳴らしてよく見ると、横顔すらまるっきり違う人であったうえ、ちょうど停車した高級車に衝突した。
- 目当てのものを探しにブックオフに入ると店内が目くらましにまみれており、帰宅後、余計な出費をしただけで目的のものを買い忘れたことに気がついた。