全世帯の1割が要介護者を抱える時代
長寿社会となれば当然、問題となってくるのが介護です。厚生労働省の調査によると、平成29年3月末時点での要介護認定者数は632万人(※(注記))。この数字は、全世帯数の約1割に介護が必要な人がいることを示しています。
さて、まず介護にはどんな費用が発生するでしょうか。主なものとしては介護サービス費、住宅改修費、そして介護用品購入費の3つ。そして、それらに対して、備えのベースとなるのは「公的介護保険」です。
公的介護保険は40歳になった時点で、健康保険の加入者すべてが自動的に被保険者となり、要支援、要介護の認定を受けた場合、介護サービスを受けられるというもの。65歳以上(第1号被保険者)であれば、介護状態となった原因を問わずサービスを利用できますが、40〜64歳の被保険者(第2号被保険者)は、認定された16の疾病が原因で介護が必要になった場合に限られます。
要支援、要介護と認定されると、ケアマネージャーと相談し、具体的なケアプランを作成します。
被保険者はそのケアプランに即して、訪問介護や介護福祉施設などでのデイサービス、ショートステイ、あるいは入所による入浴や食事、リハビリ等の生活援助を受けることができます。これら介護サービスにかかった費用は、要介護度ごとに公的介護保険による1カ月の上限が決まっていますが、その範囲内であれば自己負担額は1割、2割、3割(年収等によって異なる)のいずれかで済みます。加えて、福祉用具の購入費は年間10万円、介護のための住宅修繕費は同一住宅に対して1人1回20万円をそれぞれ上限として、その1割〜3割が自己負担額となります(上限を超えた金額については全額自己負担)。
公的介護保険を利用してもかかる介護費用は小さくない
それでも、実際の介護費用負担は、決して小さいものではありません。
公的介護保険の受給額の上限を超えれば、超過分は自己負担となります。
たとえば、厚生労働省「介護給付費等実態統計月報(令和2年12月審査分)」によると、要介護3の介護保険受給者の介護サービス費用額は平均月額22万6,400円(表参照)。この全額が介護保険適用の介護サービスであれば、受給限度額内ですから、実際の自己負担額は2万2,640円(1割負担の場合)となります。しかし、保険適用外の費用が含まれていれば、その分、自己負担額は増えます。しかも、一般的に数年間、継続的にかかる費用ですから、家計にとってはけっして小さな負担ではありません。
そういった自己負担額については、貯蓄もしくは民間の介護保険でカバーしていくことになります。
ただし、民間の介護保険で注意したいのは、公的介護保険での介護認定とは別の認定基準を設けているケースがあること。事前に確認しておかないと、保険金の支払に影響が出ることもあります。
(※(注記))令和3年1月分「介護保険事業状況報告(暫定版)」より。要介護(要支援)認定者とは「要介護1〜5」および「要支援1〜2」と認定された第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40歳〜64歳)の合計
■しかく公的介護保険の支給限度額と介護サービス、介護予防サービスにおける平均費用額(月額)
| 要介護(要支援)状態区分 | 支給限度額(※(注記)1) | 受給者1人当りの介護サービス、 介護予防サービスにおける平均費用額(※(注記)2) |
|---|---|---|
| 要支援1 | 5万320円 | 2万2,200円 |
| 要支援2 | 10万5,310円 | 3万1,800円 |
| 要介護1 | 16万7,650円 | 7万4,184円 |
| 要介護2 | 19万7,050円 | 10万398円 |
| 要介護3 | 27万480円 | 15万6,289円 |
| 要介護4 | 30万9,380円 | 19万492円 |
| 要介護5 | 36万2,170円 | 23万6,498円 |
(※(注記)1)介護保険による区分支給限度基準額(2019年10月以降)
(※(注記)2)厚生労働省「介護給付費等実態統計月報(令和2年12月審査分)」より。要支援1〜2の受給者は介護予防サービス、要介護1〜5の受給者は介護サービスの費用における平均月額