本当に返済可能な額を見極めよう
物件価格の2割は少なくとも準備する。これがよく言われる一般的な住宅資金の目安です。しかし、低金利が進むと、仮に頭金がなくても返済額が抑えられるので、計算上はローンが組めてしまうケースが少なくありません。そのような「買いやすい状況」で注意すべきこととして以下の3点があります。
(1)物件価格とは別に購入時に諸費用が発生する。
(2)変動金利には将来返済額が上がる可能性がある。
(3)多額のローンを借りると、住宅を売却してもローンが残る可能性が高くなる。
では、具体的に考えてみましょう。まず(1)ですが、諸費用とは登記費用やローン保証料、契約手数料、印紙代などで、金額の目安としては新築物件で物件価格の3〜7%ほど。決して小さな額ではありません。まずは、これも十分考慮した上で資金計画を立てることが大切です。このような諸費用も含めてローンを組むことも可能ですが、結果的に予定よりさらに借入額が増えてしまうということは避けたいところです。
また、住宅購入後はローンの支払い以外にランニングコストが発生します。固定資産税の他、マンションであれば管理費、修繕積立金など。これらコストを住宅ローンの支払いに加算して、負担できるかどうか。
当初10年間ないし13年間(※(注記))は住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)があるものの、毎月の支払いが「家賃並み」だから大丈夫という考えには、大きなリスクがあるのです。ましてや、金利が低いと言っても、数千万円の負債を背負うことには変わりはありません。ランニングコストを踏まえ、さらには教育資金のための貯蓄等も考慮した上で返済可能な金額を割り出し、そこから借入額を決めていくようにしましょう。
(※(注記))入居時期や住宅の環境性能等に応じて、適用される住宅ローン減税の内容が異なります。詳細は国税庁ウェブサイトや国土交通省ウェブサイトをご覧ください。
低金利だからこそ固定タイプの金利を選択すべき
(2)については、ご相談者のように変動金利を利用するときの注意点となります。目先の支払額の低さについ変動金利を選択しがちですが、途中で金利が上昇すれば、当然返済額は増えることになります。借入額が大きいほど、家計負担はアップします。
しかし、変動金利と同様、固定金利のタイプも十分低金利となっています。大きい額を借り入れるときほど、全期間固定もしくは少なくとも10年以上の固定金利選択型が望ましいと考えるべきでしょう。
また、返済期間もポイントです。若くして住宅購入するメリットのひとつは、返済期間を長く設定できるということ。もちろん、40代で購入しても35年返済は可能ですが、定年を過ぎてもまだ10年、15年と住宅ローンを支払い続けなくてはいけません。若い時期に購入することで、現役時代に無理なくローンを終え、退職金は老後資金に充てることができるわけです。
ご相談者の場合、できれば完済をご主人が60歳のときにしたいところ。したがって、長期でも30年返済で組むべきだと思います。
最後の(3)については、住宅ローンの支払い途中で、住み替えその他の事情によって、自宅を手放すことになったときに備える注意点となります。売却によって手にした資金がローン残高を下回るなら、結果、ローンの支払いが残ってしまう可能性があります。その後、新たに住宅コストが発生すれば、二重のローンもしくは家賃とローンの支払いを同時に背負うことになります。そして、借入額が大きいほど、そのリスクは高くなるのです。
重要なことは、低金利だからといって借入額を大きくしないこと。希望する物件に届かなければ、住宅資金をある程度用意してからの購入にするか、あるいは物件価格を下げることが大切となります。