奨学金利用は十分な情報収集と話し合いを
中学受験はどのくらいの割合なのでしょうか。大手進学塾の独自調査などを総合すると、受験率は首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)では15〜20%。つまりは、クラスで5、6人に1人の割合で受験するということになります。実は、多くの家庭にとって「我が家には関係ない」とは言い切れない数字になっているのです。
では、その場合、学費はどう変化するでしょうか。平均すると、私立中学校では3年間で約400万円、私立高校では同約300万円が発生します(表参照)。6年間の学習費の総額は、公立と比較して430万円ほど多くなり、これを単純に月割りすれば約5万9,000円。つまりは中学〜高校の6年間、この金額だけ家計支出がオール公立の教育費に毎月上乗せされるというわけです。
あくまで平均値ではありますが、私立から中学を希望するなら、このくらいの教育費の準備が可能かどうかをしっかりと検討すべきでしょう。
もしも、現状では難しいのであれば、まず着手すべきは支出の削減です。大きな削減が必要なら、借り換え等による住宅ローンの支払額の軽減や保険の解約、あるいはクルマを手放すといった、思い切った固定費の見直しが必要かもしれません。また、収入アップも有効な方法。もし妻が専業主婦で今後働くことが可能ならば、教育資金不足に対して大きな改善が見込めます。
幼稚園〜高校までの公立と私立と年間学習費比較
(単位/円)
| 幼稚園 | 小学校 | 中学校 | 高校(全日制) | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 公立 | 私立 | 公立 | 私立 | 公立 | 私立 | 公立 | 私立 | |
| 学習費総額 | 223,647 | 527,916 | 321,281 | 1,598,691 | 488,397 | 1,406,433 | 457,380 | 969,911 |
| 学校教育費 | 120,738 | 331,378 | 63,102 | 904,164 | 138,961 | 1,071,438 | 280,487 | 719,051 |
| 学校給食費 | 19,014 | 30,880 | 43,728 | 47,638 | 42,945 | 3,731 | ----- | ----- |
| 学校外活動費(※(注記)) | 83,895 | 165,658 | 214,451 | 646,889 | 306,491 | 331,264 | 176,893 | 250,860 |
文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」より
(※(注記))学習塾、習い事、家庭教師などにかかる費用
奨学金利用による子どもの負担は小さくない
自前での準備がきびしければ、奨学金の利用という方法もあります。親の負担軽減に加え、子どもの自覚や自立を促すというメリットもあります。しかし、同時に子どもが背負う返済の負担は決して小さくはありません。安易に利用を決めず、無利子か有利子か、また最近は返済不要の給付型も増えつつありますので、十分な情報収集と検討を重ねることが賢明です。
ともあれ、家計や貯蓄は教育費の捻出のためだけのものではないはずです。教育資金のために無理をして、自分たちの老後資金がなくなれば、結局、子どもに負担をかけてしまうことになりかねません。進学準備をきっかけに、家族のライフプランと資金の使い方をじっくり考えてみてはどうでしょうか。