船をつくる
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船を造るという仕事は、コンピュータによって情報化されたデジタルなIT技術と、アナログな人の手による匠の技とのコラボレーションにより成り立っています。
長さが東京タワー以上である船を建造するのは、巨大なプロジェクトです。この巨大プロジェクトを完成させるためには、造船所の各部門で働く一人ひとりが、計画どおりに自分の役割を果たしていくことが大切です。さらに一人ひとりが、全体のことを考えて、協力しながらバランスよく、プロジェクトを進めていくチームワークが重要です。
変化する世界の経済状況をキャッチして、時代を先取りして次に求められる新しい船を立案していく部門です。世界の経済状況、エネルギー開発、プロジェクトや資源・製品の輸送状況を調査し、見通しを立てます。調査においては、国内外の海運会社、石油会社、総合商社などの発注主が計画している船の情報を入手します。入手した情報をもとに、船の種類、大きさ、船型、速力など、建造予定の概要を確認して、技術部門(設計部門)とともに基本計画を準備し、発注主に図面を提示し、自社の船の売込みを行います。基本計画に沿って、何度も細かい打合せを行い、契約のために必要な条件、船価(船の値段)を最終的に決定して、船の建造契約に至ります。
これまでに造った船の経験を生かしながら、新たな船づくりに挑戦します。高性能、省エネなどさまざまな要素(学問分野では、材料力学、流体力学、熱力学、機械力学等が中心ですが、最近ではIT、化学や環境といった分野を生かすことが求められています)において研究を積み重ね、新しい船舶開発を進めてゆきます。特に最近では、燃料の高騰や二酸化炭素排出問題が社会的な問題となっていることから、省エネ・環境にやさしい船の開発を行う造船所が多くなっています。また、船は、国連の組織である国際海事機関(IMO)の国際ルールに適合している必要があるため、設計・開発段階から国際ルールの動きに注視する必要があります。仕事は、コンピュータを使って模型でテスト・実験等を行い、時には電機や機械メーカー、製鉄所などと共同開発・研究をすることもあります。
開発された新しい船の設計を担当する部門です。船舶の設計には、全体と重要な部分を設計する「基本設計」と、船体の各部分ごとに部材の形や、加工方法まで細かく設計する「詳細設計」があります。マーケティング・営業部門が作成した基本計画をもとにして、これまで研究開発した成果を発注主の要求に対応させるよう設計を行います。設計は、コンピュータの画面上で、最新の技術を駆使ながら進められます。安全で経済的(省エネ)、たくさんのモノ(貨物や石油)が運べる船を設計するのが設計者の腕の見せどころになります。
鋼材、パイプ、電線、塗料など船をつくるのに必要なものから、エンジン、航海機器といった船を動かすのに必要なもの、船内で生活するのに必要なものの購入から納期管理、支払い手続きまでを担当します。新しい船をつくる場合、一般的にはコスト全体に占める資材費の割合は6割〜7割で、1隻の船に使われる材料(鋼材)や機器(エンジン、スクリュー、計器)は数万点あります。優れた材料や機器を調達することも重要な仕事となります。また、顧客が満足する製品を提供するために、購入先の選定・開拓・信用調査、また各製品の在庫管理および通関業務も行います。
設計に基づき、船舶を建造する部門です。船舶の建造は、機械化、ロボット化が進んでいるとはいえ、人の手による熟練の技が活かされています。また、生産の流れを管理することも重要な仕事です。生産部門で行う仕事は、「船体ブロック建造」、「組み立て」、「ブロック搭載」、「艤装」、「試運転・引き渡し」といった工程に分けて行われています。
IT技術の利用が進んだ結果、船の設計・建造に関する情報は社内のネットワークを通じて、造船所内の建造に関わるあらゆる部署に伝えられます。船の建造は、鋼材を設計図に従って必要な形に切断し、溶接するところから始まります。平面の切断・溶接作業は、コンピュータから直接送られてきた加工情報に従って、主にロボットが行っています。曲面がある溶接作業は機械化が困難なため、人の手によって行われています。
切断された鋼材は、溶接されて、次第に小さな部品としてまとまってゆきます。この小さな部品にする過程を「小組立」と呼んでいます。小組立でできた各部品をさらに大きな部品としてまとめていく過程を「大組立」と呼び、大組立が終わると大きなブロック(巨大な積み木のようなものです)となります。
最後に巨大クレーンでブロックを吊り上げ、ドックの中で順次搭載してゆくと巨大な船の形があらわれてきます。
船の外形ができあがると、ドックに水を入れて船を浮かべます。また、船台でできあがった船は、海へ向かって傾斜した台の上を滑らせることで、海に浮かべます。人間の場合、赤ちゃんが生まれると、その誕生を祝って名前をつけます。船の場合も同じです。「進水」とは、船の生まれる瞬間のことをあらわしています。新しい船の誕生を祝うために行われる進水式では、船に名前をつけられることとなります。進水が終了した後、岸につないだ状態で、船内の内装工事やさまざまな装置の取りつけが行われます。
設計したとおりの性能が出ることを確かめるため、実際に海に出てテスト運転を行います。確認後、船を注文した船主に引き渡されます。
船は、常に船自体はもとより人や積荷の安全を守らなければなりません。そのために船は定期的に造船所で、性能や安全性をチェックする必要があります。
ペンキ塗りのような基本的な作業から、主機の交換といった大きな工事まで、次の航海が安全に行えるように修理をします。時には、用途変更の改造工事や船体延長工事など様々な工事を行います。
会社内の人々が、やりがいを感じ、いきいきと働くことができる環境を整備し、人材を育成するなど「人」に関わる業務を担っています。具体的には、労働条件・人事諸制度の立案・福利厚生制度の整備のほか、採用・異動・昇進などの人事に関する事柄や賃金計算、労働時間管理などを行っています。
作業現場の安全管理や社員の健康維持・増進を図る衛生管理の役割も担っています。