自然栽培において、まずは、茶樹がみずからの生命力で育ち続けることができる茶園環境が重要だと考えています。例えば大型重機で造成された宅地やグラウンド等は草しか生えませんが、山には樹木が育っています。そのように自然と樹木が育つことができる生育環境、すなわち茶山で茶樹が樹木として育つ環境が必要になると考えます
さらに自然界では多種多様な生き物が混在し、豊富な生態系が食物連鎖により均衡を保ち続けているように、自然栽培を営むなかで、あたり一面に茶樹だけが育っている茶園環境より、山間の森の中にポツンポツンと小さな茶園が点在しているような環境が、大切な要素であると考えます。
そのような自然環境のなか、奈良・月ヶ瀬の自然のリズムで茶樹が育つよう意識した栽培・はたらきかけを継続していくことが必要であると考えています。
いっぽうすべてを自然に委ね管理をしないことが自然栽培ではないと思います。それは茶山を放置すると次第に森へと還っていくからです。そこが「野生」と「自然栽培」とは異なる大切なところだと考えています。意識した管理が継続されてこそ、茶山の自然のリズムが構築され、維持されていくことになります。
人間は、農業の近代化という過程で、機械、設備、農薬や肥料などの技術により茶樹(農産物)の生長のリズムを変える(コントロールする)ことが出来るようになりました。そしてそのような過程を経たからこそ逆に「お茶の本質」「いつの時代になっても変わらない大切なこと」とは何かに少しずつ気づき始め、意識できるようにもなってきました。
自然栽培とは、過去に戻る農業ではありません。歴史や現状をつぶさに観察し、「お茶がお茶らしく」「人が人らしく」あることを意識し、未来のあり方を考えながら、構築されるべきものだと考えます。
昔から人間は自然と共生しながら暮らしを維持してきました。生産者みずからも自然のリズムの中で生きていることを意識し、農業(暮らし)のスタイルを構築していくこと。そして、点(つくる人)と点(飲む人)が結ばれ線となり、線と線が重なり合って面(自然環境)が育っていくためのネットワークを構築していくこと。
月ヶ瀬健康茶園では、お茶づくりという観点から、そのような役割を社会の中で果たしていけるよう自然栽培茶に取組んでいきます。