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ききみみ 音楽ハンター

スタレビ根本要が語る がんで声帯切除したメンバー・VOH林への思いと、あふれて止まらぬ音楽愛

[ 2025年2月26日 22:00 ]

「スターダスト☆レビュー」の(左から)柿沼清史、根本要、寺田正美、林"VOH"紀勝
Photo By 提供写真

【ききみみ 音楽ハンター/根本要インタビュー<3>】人気バンド「スターダスト☆レビュー」が26日に発売した4年半ぶりのオリジナルアルバム「星屑冒険王」。そこには休養中のメンバー、林"VOH"紀勝(65)の名もしっかりと刻まれている。リーダーでボーカル&ギターの根本要(67)はスポニチのインタビューに、大切なメンバーへの思いや音楽愛を語った。(萩原 可奈)

スタレビはボーカルと楽器のバンド形式に加え、全員でのアカペラという武器を持つ。バンドではパーカッション、アカペラやコーラスでは突き抜ける美しいファルセットで高音部を担ってきたのが林だ。22年10月、喉頭がん治療のため休養を発表。24年1月には「別のがんが見つかった」として声帯切除することを明かした。

根本は言う。「アイツは自分の命綱というべき声を失うわけだから、よっぽどショックだったと思う。おそらく辞めるとこまで考えてたと思うのね。でも彼はパーカッショニストでもあるし、何より演奏しなくてもメンバーはメンバー。辞めさせるつもりは全くないから」。

林の居場所を確保しながらバンド活動を継続。ステージに林の等身大パネルを置いたり、かつて録音された林のコーラス音源を使用するなど、随所に現役メンバーとしての存在を感じさせる演出がなされた。24年5月、長期ツアー最終日のアンコール後、林が姿を見せるサプライズが!同年9月の大阪での野外ライブではパーカッションで1曲参加し、ファンを熱狂させた。

「これからも体力的な限界を考えると、長いツアーをすべて回るのは無理。でも脱退じゃなく、来られる時に来たらいい。頑張って時には戻れるっていう彼の姿は、ファンもうれしいし励みになると思う」と期待。「VOHにとっても、やっぱりお客さんの拍手ってある種の治療薬ですよ」と語った。

新譜の2曲目「星屑兄弟」の作詞には、根本と林の名が並ぶ。「大半の下地は僕が書いて、"この辺だけ埋めてこい"って感じのやり方。あんまり思い悩ますよりはそれがいいかなと思った。そしたら、やっぱりいいのが出てきたからね」。

林の活動を本人もメンバーもファンも楽しく、より良い形になるよう考える。「彼の不在を損失と憂うんじゃなく、笑いに持ってかなきゃ。だからこそ出てきてくれた時の喜びも大きいと思うから。絶えずスタレビは前向きでいたい。VOHには大変なことだけど、離脱があったからこそ何かができて、戻ってきたらさらに良くなったっていうやり方をしないと」。そんな思いが、今のスタレビを突き動かしている。

メンバーは60代後半だが、今もバリバリのライブバンドだ。長い長いツアーを行い、全国各地をめぐる。今作のツアーも3月1日の神奈川公演を皮切りに、27年まで3年にまたがる予定で、"デビュー45周年"の冠も付く。

今さらながら聞いてみた。自宅で寝られる日は年にどれくらいか、と。「年の3分の2くらいはいますよ。ライブは土日だけだからね。金曜と月曜は移動日だったりするけど、やりたくてやってるから全然苦じゃない。もう慣れっこ」とさらり。「昔は20日ぐらい家空けると、帰ってちょっと嫁さんが俺を人見知りしてたんだけど。妙な距離感があって"どうも"みたいな感じになっちゃってさ」と笑った。

体力も気力も音楽愛も、とどまることを知らない。「大変だと思ったこともないし、しんどいってこともない。ひたすら楽しいんですよ。ギターがホテルの部屋にあると、寝なきゃなと思いながらずっと弾いたりね。寝るの下手なのかもしれないけど、不思議なくらい元気。ギターで遊んでるのも楽しいんだもん。まさに、冒険王の歌詞の通り"歳の数だけ楽しい"ですよ」。

ツアーが終わる27年には70歳を迎える。スタレビ、そして人生をさらに楽しむ70代の根本要を見るのが、とても楽しみになってきた。<了>

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