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自動運転時代の"次世代の ITS 通信"研究会
(第二期)
中間取りまとめ
令和6年9月
自動運転時代の"次世代の ITS 通信"研究会
別紙1
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目次
1 はじめに .............................................................................................................................3
2 自動運転時代の ITS 通信をめぐる取組状況など ...............................................................5
2.1 本研究会(第一期)の中間取りまとめ(振り返り)..................................................5
2.2 本研究会(第二期)の論点 ..........................................................................................5
2.3 総務省における取組状況..............................................................................................8
2.3.1 自動運転の社会実装に向けたデジタルインフラ整備...........................................8
2.3.2 デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会における議論 ............................9
2.4 政府全体の動き ..........................................................................................................11
3 研究会(第二期)の論点に関する議論とまとめ .............................................................16
3.1 5.9GHz 帯 V2X 通信システムの実用化に向けた方策...................................................16
3.1.1 実証・検証環境整備をはじめとする機器開発を促進するための体制・方策...16
3.1.2 ユースケースの深掘り、通信方式/拡張方策の検討(技術的検討との連携)20
3.2 放送事業用無線局の周波数移行促進策の具体化 .......................................................25
3.3 自動運転レベル4実証に向けたデジタルインフラ整備の在り方..............................27
3.4 導入に向けた将来の課題、その他推進方策...............................................................30
4 おわりに ...........................................................................................................................32
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1 はじめに
現在、日本・米国・欧州などを中心として、世界的に自動運転の実現に向けた実証・実装
が進められているところ、
自動運転車両の円滑な分合流や遠隔監視等の実現には、
カメラや
レーダー等の車載センサーに加えて、
周囲の車や路側インフラ等と情報交換するために、専用周波数帯を使用する V2X(vehicle to everything)通信や携帯電話網を使用する V2N 通
信(vehicle to network)が重要な役割を担うことが見込まれている。
我が国では、V2X 通信システムとして、世界に先んじて平成 27 年に 700MHz 帯高度道路交
通システムの実用化した一方で、
世界的には 5.9GHz 帯を活用した V2X 通信システムの実証・実装が進められている。国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)においても、
「主管庁は現
在及び将来の ITS アプリケーションにおいて、
5,850〜5,925MHz の全て又は一部の使用を考
慮する必要がある」
(ITU-R 勧告 M.2121-0)、「主管庁が進化する ITS アプリケーションの計
画・展開を行う際は、
世界的又は地域的に調和された周波数帯又はその一部の使用を検討す
る」
(ITU-R WRC 勧告 208)等が勧告されており、国際的な周波数調和を考慮していく必要が
ある。
上記背景を踏まえ、総務省では、5.9GHz 帯の V2X 通信への追加割当てに向けて、令和5
年2月に「自動運転時代の"次世代の ITS 通信"研究会」を立ち上げ、同年8月、
「国際的
な周波数調和や既存無線局との干渉などを勘案し、
5,895〜5,925MHz の最大 30MHz 幅を目途
に V2X 通信向けの割当を検討する」旨の中間取りまとめ(第一期)を策定した。
中間取りまとめ(第一期)に基づき、総務省においては、令和5年度補正予算において、
5.9GHz 帯 V2X 通信の早期導入に向けた環境整備(既存無線局の周波数変更)などとして、
デジタルインフラ整備基金に 205 億円を拡充するなど、5.9GHz 帯 V2X 通信の導入に向けた
取組を進めている。
また、政府全体としても、
「モビリティ・ロードマップ 2024」
(令和6年6月 21 日 デジ
タル社会推進会議決定)や「デジタルライフライン全国総合整備計画」
(令和6年6月5日
デジタルライフライン全国総合整備実現会議決定、令和6年6月 18 日 デジタル行財政改
革会議決定、令和6年6月 21 日 デジタル社会推進会議決定)などの政府戦略が策定され
るとともに、当該戦略を踏まえた自動運転インフラの在り方を検討することを目的として、
国土交通省道路局、
警察庁交通局と連携して
「自動運転インフラ検討会」
を立ち上げるなど、
自動運転の社会実装に向けて、
関係省庁・ステークホルダーが連携しながら取組を推進して
いるところである。
本報告書は、昨年8月の中間取りまとめ(第一期)を踏まえ、5.9GHz 帯 V2X 通信向け割
当方針案、導入ロードマップ案の具体化に向けて、
1 5.9GHz 帯 V2X 通信システムの実用化に向けた方策
2 放送事業用無線局の周波数移行促進策の具体化
3 自動運転レベル4実証に向けたデジタルインフラ整備の在り方
などについて、学識経験者、放送事業者、通信事業者、自動車メーカー、機器メーカー等の
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参画の下、議論を進めてきた結果をまとめるものである。
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2 自動運転時代の ITS 通信をめぐる取組状況など
2.1 本研究会(第一期)の中間取りまとめ(振り返り)
5.9GHz 帯の具体的な利用方策等について検討するため、総務省において、令和5年2月
に「自動運転時代の"次世代の ITS 通信"研究会」を立ち上げ、
1 "次世代の ITS 通信"の活用を想定するユースケース
2 V2X 通信と V2N 通信との連携方策など
3 5.9GHz 帯 V2X 通信向けの割当方針、導入ロードマップの検討の方向性
4 導入に向けた将来の課題、その他推進方策
の4つの論点について議論し、同年8月、中間取りまとめ(第一期)として、
「国際的な周
波数調和や既存無線局との干渉などを勘案し、5,895〜5,925MHz の最大 30MHz 幅を目途に
V2X 通信向けの割当を検討する」旨などの整理を行った(図1)1。図1 自動運転時代の"次世代の ITS 通信"研究会中間取りまとめ(第一期)の概要
2.2 本研究会(第二期)の論点
本研究会(第一期)の中間取りまとめを踏まえ、総務省は「周波数再編アクションプラン
(令和5年度版)」(令和5年 12 月 20 日公表)2
において、以下のとおりまとめている(図2)。
自動運転システム(安全運転支援を含む。
)の進展・重要性を踏まえ、既存の ITS 用周1総務省 「自動運転時代の"次世代 ITS 通信"研究会中間取りまとめ」 及び意見募集の結
果の公表(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban14_02000613.html)2総務省 周波数再編アクションプラン(令和 5 年度版)の公表
(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban09_02000500.html)
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波数帯(760MHz 帯等)に加えて、国際的に検討が進められている 5.9GHz 帯(5850〜
5925MHz)の追加割当てに向けて、
「自動運転時代の"次世代の ITS 通信"研究会」中
間取りまとめ(令和5年8月)において、国際的な周波数調和や既存無線局との干渉な
どを勘案し、5895〜5925MHz の最大 30MHz 幅を目途に V2X 通信向けの割当てを検討
することとされたことを踏まえ、具体的な検討を継続する。
具体的には、5.9GHz 帯の一部(5888〜5925MHz)について、既存無線システムの移行先
周波数の確保や移行方策の検討、5.9GHz 帯 V2X システムの隣接システム等との周波
数共用検討や実証実験等が早期に可能となる環境整備などを実施し、
5.9GHz 帯 V2X シ
ステムの導入・普及に向けた道筋を明らかにした上で、令和8年度中を目途に V2X 通
信向けへの周波数割当てを行う。
図2 周波数再編アクションプラン(令和5年度版)V2X の検討推進
上記を踏まえ、本研究会(第二期)においては、5.9GHz 帯 V2X 通信向け割当方針案、導
入ロードマップ案の具体化を目的として、
1 5.9GHz 帯 V2X 通信システムの実用化に向けた方策の検討
ユースケースの深掘り、通信方式/拡張方策の検討(技術的検討との連携)
実証・検証環境整備をはじめとする機器開発を促進するための体制・方策の検討
2 放送事業用無線局の周波数移行促進策の具体化
周波数移行促進の取組に関する地域の優先順位など移行促進策の具体化 等
3 自動運転レベル4実証に向けたデジタルインフラ整備の在り方
新東名高速道路等における実証に向けた通信(V2X 通信、V2N 通信)の役割 等
について、
学識経験者、
放送事業者、
通信事業者、
自動車メーカー、
機器メーカーで議論し、
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整理を行った。
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2.3 総務省における取組状況
2.3.1 自動運転の社会実装に向けたデジタルインフラ整備
経済産業省主催の
「デジタルライフライン全国総合整備実現会議」
における議論を踏まえ、
令和6年度より、関係府省庁連携で新東名高速道路の一部区間において自動運転レベル4
トラックの実現に向けた実証実験の実施が予定されている。
(詳細は後述)
総務省においては、
「デジタル田園都市国家インフラ整備計画(改訂版)」(令和5年4月
25 日公表)を踏まえ、高速道路上の自動運転レベル4の社会実装(分合流支援、遠隔監視
など)に必要となるデジタルインフラ整備を推進している。具体的には、1分合流円滑化の
ための 5.9GHz 帯 V2X 通信の早期導入に向けた環境整備(既存無線局の周波数変更)
、2安
定した遠隔監視のための携帯電話基地局の 5G SA 化 支援を目的として、
「自動運転の社会
実装に向けたデジタルインフラ整備事業」
として、
令和5年度補正予算で 205 億円を確保し
ている。
(図3)。図3 自動運転の社会実装に向けたデジタルインフラ整備事業の概要
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本年3月には、外部評価会における審査を踏まえ、既存のデジタルインフラ整備基金(特
定電気通信施設等整備推進基金)の補助事業者(基金設置法人)である、一般社団法人情報
通信ネットワーク産業協会に対して補助金の交付決定を行ったところであり 3
、今後、同法
人より、
図3に示す地域を対象として、
実際に事業を行う民間事業者等に対して助成が行わ
れる予定である。
2.3.2 デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会における議論
総務省では、電波の利用があらゆる空間・あらゆる社会経済活動において普及・進化して
いることを踏まえ、
今後の電波利用の将来像に加え、
デジタルビジネス拡大に向けた電波政
策上の課題並びに電波有効利用に向けた新たな目標設定及び実現方策について検討を行う
ことを目的として
「デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会」
を令和5年 11 月 15 日
より開催している。
第五回会合(令和6年2月 29 日)
において、ITS 情報通信システム推進会議より、5.9GHz
帯 V2X 通信の社会実装に向けた課題と以下の要望に関する発表があった(図4)。 今後、高速道路/一般道、合流部/交差点など各種環境での実証データ取得が重要
5.9GHz 帯 V2X 通信の実用化に向けた利用環境整備(周波数再編など)の推進
2024 年度からの実証に向けて、5.9GHz 帯 V2X 通信の実験試験局免許手続きの簡素化を
検討すべき3総務省 令和 5 年度補正予算事業「自動運転の社会実装に向けたデジタルインフラ整備
事業」 及び「国際海底ケーブルの多ルート化によるデジタルインフラ強靱化事業」に係
る 補助金の交付決定(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-
news/01kiban14_02000633.html)
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図4 ITS 情報通信システム推進会議発表資料(抜粋)4
これを受けて、
「デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会 報告書(案)」(令和6
年6月 26 日公表)に以下の内容が盛り込まれている 5。 自動運転に必要となる V2X 通信やドローンなどの国際的な周波数調和が一層求められ
る無線システムの導入・実用化に向けた周波数移行・再編・共用に係る方策の検討が喫
緊の課題である。
特に既存の無線システムの設置目的が十分果たせるような周波数移行・再編・共用の取
組については積極的に促進していくことが適当である。
周波数の移行・再編の際には、既存の各システムが使う周波数は変更しながらも、シス
テムとしては引き続き同一のものを使うこともある一方で、別のシステムに集約する
こともあり、移行・再編においてはどのように各システムを変更・集約等するかという
ことについて、個別の事情や周波数の有効利用の観点などから検討すべきである。
また、移行・再編のためのスキームについては、既に終了促進措置(電波法第 27 条の
12)や、特定周波数変更対策業務(同法第 71 条の2第1項第2号)
、特定周波数終了4総務省「デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会(第 5 回)
」資料 5-5 ITS 情報
通信システム推進会議提出資料より引用
(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/digital_business/02kiban09_04000626.html)5
総務省「デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会(第9回)
」資料9-1 デジタ
ルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会 報告書(案)より引用
(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/digital_business/02kiban09_04000638.html)11 / 32
対策業務(同条第2項)等が存在するところであるが、これらは周波数利用からの退出
や、
高度化に伴う周波数利用帯域幅の圧縮を促進するものであり、
特定のシステムを新
たに導入することを主目的としたスキームとはなっていない。前述の国際的な周波数
調和が一層求められる無線システム(例 V2X 通信など)については、公益増進の観点
から国が主体となって新たな周波数移行・再編を進めるべく、
そのスキーム等について
検討すべき。また、その際の費用負担の在り方については、国際的な周波数調和が電波
の有効利用に寄与することも踏まえて検討することが必要である。
2.4 政府全体の動き
○しろまる デジタル庁「モビリティ・ロードマップ 2024」
「デジタル社会推進会議」
(議長 内閣総理大臣)の下に設置された「モビリティワ
ーキンググループ」
(主査 森内閣総理大臣補佐官)において、自動運転等新たなデジ
タル技術を活用したモビリティサービスの社会実装に向けた議論が進められ、
「モビリ
ティ・ロードマップ 2024」
(令和6年6月 21 日 デジタル社会推進会議決定)として
まとめられている 6。当該ロードマップの概要は図5のとおりであり、
新たなモビリティサービス
(自動走
行、ドローン、サービスロボットなど)の事業化に向けた課題と対応した施策が整理さ
れている。
図5 モビリティ・ロードマップ 2024 の概要6デジタル庁「モビリティ・ロードマップ 2024 の概要」より引用
(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2415ad0
0-6a79-4ebc-8fb1-51a47b1b0552/12f4e4f4/20240621_mobility-working-
group_summary_01.pdf)
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総務省が関係する通信の観点については、
「路車協調の実現/協調制御技術・実証」
において、以下の内容が盛り込まれている。なお、下線は主担当の府省庁を意味してい
る。
<短期的に取り組む施策>
(路車協調システムの検討)
・車両側のニーズを踏まえて、自動運転の安全性・円滑性の向上のため、2024 年度か
ら路車協調による情報提供システム
(高速道路における合流支援・先読情報等の提供)
の検証を開始する。
【総務省/国土交通省】
(V2X 通信規格の検討・策定)
・路車協調による情報提供システムに必要となる V2X 通信
(車と車、
車と道路等との直
接通信)に係る通信規格について、2024 年度から同システムの検証を開始する。
【総
務省】
(V2N 通信環境の検討)
・自動運転の円滑な運行管理や遠隔監視等に必要となる V2N 通信
(携帯電話網等)
につ
いて、2024 年度から既存ネットワークを活用した実証・検証を開始する。
【総務省】
(自動運転サービス支援道の整備)
・デジタルライフライン全国総合整備計画に基づき、
自動運転車により人や物がニーズ
に応じて自由に移動できるよう、アーリーハーベストプロジェクトを通じて、ハー
ド・ソフト・ルールの面から自動運転を支援する自動運転サービス支援道の実装に向
けた取組を 2024 年度から開始する。
【警察庁/総務省/経済産業省/国土交通省】
<中期的に取り組む施策>
(路車協調システムの検討・確立)
・車両側のニーズを踏まえて、
路車協調による情報提供システム
(高速道路における合
流支援・先読情報等の提供)の検証結果を踏まえ、路車協調システムの仕様の策定を
目指す。
【総務省/国土交通省】
(V2X 通信規格の検討・策定)
・路車協調による情報提供システムに必要となる V2X 通信
(車と車、
車と道路等との直
接通信)に係る通信規格について、検証結果を踏まえ、技術基準の策定等を目指す。
【総務省】
<長期的に取り組む施策>
(V2N 通信環境の検討)
・自動運転の円滑な運行管理や遠隔監視等に必要となる V2N 通信
(携帯電話網等)
につ
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いて、
必要に応じて、
遠隔監視等のアプリケーションに応じた重要スポットにおける
通信環境整備を行う。
【総務省】
(自動運転サービス支援道の整備)
・デジタルライフライン全国総合整備計画の下、
自動運転サービス支援道について、アーリーハーベストプロジェクトの結果を踏まえ、幹線道路や先行地域と隣接する地
域へ拡大を検討する。
【警察庁/総務省/経済産業省/国土交通省】
○しろまる 経済産業省「デジタルライフライン全国総合整備計画」
「デジタルライフライン全国総合整備計画推進会議」
(議長 経済産業大臣)におい
て、ドローンや自動運転等、現実世界での活用が期待されるデジタル技術について、実
証段階から実装段階への移行を加速させ、デジタル化された生活必需サービスを中山
間地域から都市部まで全国に行き渡らせることを目的として、
「デジタルライフライン
全国総合整備計画」
(令和6年6月5日 デジタルライフライン全国総合整備計画推進
会議決定、
令和6年6月 18 日 デジタル行財政改革会議決定、
令和6年6月 21 日 デ
ジタル社会推進会議決定)がまとめられている 7。当該計画において、自動運転の社会実装に向けた必要と考えられるデジタルライフ
ラインとして、ハード・ソフト・ルールの面から自動運転車の走行を支援し、自動運転
走行の安全性を高める運行環境などを「自動運転サービス支援道」と定義され、自動運
転サービス支援道の展開に向けた計画として図6のとおり整理されている。7経済産業省「デジタルライフライン全国総合整備計画」より引用
(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/digital_architecture/lifeline.html)
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図6 デジタルライフライン全国総合整備計画の概要 8
その際、主に高速道路における自動運転(自動運転トラック)に関しては、アーリー
ハーベスト(1年目)として、新東名高速道路(駿河湾沼津 SA〜浜松 SA 間 100km)か
ら着手し、短期(〜3年目)として、東北自動車道等に展開し、中長期(〜10 年目)と
して、東北〜九州のうち物流ニーズを考慮した区間に展開することで、
「全国主要幹線
物流路における自動運転の実装」を達成することとされている。
総務省が関係する通信の観点については、
「自動運転サービス支援道の構成要素」に
おいて、以下の内容が盛り込まれている。
(自動運転サービス支援道の構成要素)
2024 年度より、上記を達成するために、特に以下に示す設備の整備を進める。
(ロ) 分合流円滑化のための V2X 通信、安定した遠隔監視・運行管理のための
V2N 通信(5G SA(スタンドアローン)等)の通信環境
後述(5.3.5 節 先行地域)に記載の地域で実施されるアーリーハーベストプロジェ
クトや関連する取り組みを中心に設備の整備・検証を進め、
関係省庁間での連携を強化
し、自動運転車の実装に向けて特に以下の項目を中心に議論を加速する必要がある。8経済産業省「デジタルライフライン全国総合整備実現会議資料(第3回)
」資料3より引用(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/digital_architecture/lifeline_kaigi/dai
3_0328/siryou_3.pdf)
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3 V2X 通信に係る通信規格の検討・策定については、内閣府戦略的イノベーション
創造プログラム(SIP)自動運転において産学官連携で策定した「協調型自動運転
通信方式ロードマップ」を踏まえ、2030 年頃から統一規格に基づく導入・社会実
装に向けた検討を進める。
具体的には、
アーリーハーベストプロジェクトにおける
V2X 通信(760MHz 帯、5.8GHz 帯、5.9GHz 帯の各方式)に係る検証結果や、総務省
「自動運転時代の"次世代の ITS 通信"研究会」での議論を踏まえ技術基準の策
定等を行う。
○しろまる 国土交通省・警察庁・総務省連携による「自動運転インフラ検討会」
自動運転の実現を支援するため、
自動運転に資する道路構造や路車協調システム、道路交通情報の収集・提供に関する体制や情報通信インフラなど、
インフラの在り方を検
討することを目的として、
国土交通省道路局、
警察庁交通局及び総務省総合通信基盤局
が連携して、
「自動運転インフラ検討会」を設立 9
した。9総務省 「自動運転インフラ検討会」の設置・開催について
(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02kiban14_04001134.html)
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3 研究会(第二期)の論点に関する議論とまとめ
3.1 5.9GHz 帯 V2X 通信システムの実用化に向けた方策
3.1.1 実証・検証環境整備をはじめとする機器開発を促進するための体制・方策
5.9GHz 帯 V2X 通信システムを実用化に向けては、機器開発を促進するために、高速道路
/一般道、合流部/交差点など様々な環境における実証実験を通じたデータ取得が重要で
あり、今後、実環境における実証を加速させ、データや実績等を積み重ねていくことが必要
となる。
直近では、
前述のとおり、
令和6年度から新東名高速道路の一部区間において自動運転ト
ラック実証実験が予定され、国土交通省や経済産業省、警察庁をはじめ関係省庁・団体連携
で、合流支援や先読み情報提供などに関する実証・検証を進めていく計画である。
(図7)
図7 新東名高速道路における自動運転トラック実証実験概要 10
このような実証実験において、技術基準が未策定である 5.9GHz 帯 V2X 通信システムを活
用していくためには、ITS 情報通信システム推進会議(以下、
「ITS Forum」という)が策定
する「実験用ガイドライン」
(実験参加者が参照する実験用の共通な通信仕様)が必要であ
るため、実証実験の実施に当たっては、ITS Forum との連携も非常に重要である。
(図8)10国土交通省 社会資本整備審議会 基本政策部会資料(第 82 回)資料2より引用
(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001623770.pdf)
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図8 実験用ガイドラインの検討フローと実証実験の必要性 11
他方で、実証実験の実施に当たっては、5.9GHz 帯 V2X 実験試験局の免許交付などの手続
きを進める必要があるが、その際、5.9GHz 帯 V2X 実験試験局と同一・隣接周波数を使用し
ている既存無線局免許人との事前調整(干渉検討・運用調整など)が必要となるため、当該
調整に相当程度の時間を要してしまうことに加え、特に干渉検討などについて既存無線局
免許人の負担となってしまっている課題がある。
上記のような議論・検討状況を踏まえ、実証・検証環境整備をはじめとする機器開発を促
進するための体制・方策について、以下の意見があった。
<構成員の主な意見>
5.9GHz 帯 V2X 通信の実用化に当たっては、高速道路/一般道、合流部/交差点など、
各種環境での実証実験によるデータ取得が重要であり、
フィールド実証を加速し、
広く
全国で実証実験を積み重ねる必要がある。
5.9GHz 帯 V2X 通信に係る実証実験が円滑に進められるような仕組みの整備も期待。
5.9GHz 帯 V2X 通信の実証実験の必要は理解するが、既存無線局との干渉検討等が、既
存免許人の負担になっており、当該負担軽減に資する仕組みづくりが必要。11総務省「自動運転時代の"次世代の ITS 通信"研究会(第 7 回)
」資料 7-3 ITS 情報通信
システム推進会議提出資料より引用
(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/Next_Generation_ITS/02kiban14_04001
096.html)
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新東名高速道路で実験ができるように、
現在、
放送事業者としても最大限御協力させて
いただいている。
検証環境の整備が必要だということは十分理解しているが、
目的の明
確化など計画的な環境構築をお願いしたい。
5.9GHz 帯 V2X 通信の実験試験局免許に係る調整等に関して、既存免許人にご尽力を賜
っている認識。当該負担を軽減し、かつ 5.9GHz 帯 V2X 通信の実験局免許を簡易に取得
する方策があるとよい。
<まとめ>
また、5.9GHz 帯 V2X 実験試験局免許交付までの手続きの迅速化・円滑化イメージについ
ては、図9に示すとおりであり、実験試験局の免許手続きの簡素化の例(特定実験試験局制
度)は図 10 のとおりである。
図9 5.9GHz 帯 V2X 実験試験局免許交付までの手続きの迅速化・円滑化イメージ
実用化に向けて、様々な環境での実証実験を通じたデータ取得が必要であり、新東名
高速道路をはじめとする実験等の実施に向けて、
5.9GHz 帯 V2X 通信システムに係る実験
試験局の免許交付までの手続きの迅速化・円滑化を図るべき。
その際、放送事業者などの既存無線局免許人の干渉検討などに係る負担軽減を図るべ
き。
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図 10 特定実験試験局制度の概要
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3.1.2 ユースケースの深掘り、通信方式/拡張方策の検討(技術的検討との連携)
我が国では、平成 26 年より、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(Cross-
ministerial Strategic Innovation Promotion Program;SIP)自動走行システム(第1期)
及び自動運転(第2期)
)において、産(自動車業界、電気通信業界等)
、学(大学などの学
識経験者等)及び官(内閣府、デジタル庁、警察庁、経済産業省、国土交通省、総務省等)
の産学官連携によるオールジャパン体制で自動運転の実現に向けた検討が進められてきた。
特に SIP 協調型自動運転通信方式検討 TF においては、通信を用いた協調型自動運転の実
現に向けた検討が進められ、令和2年には、自律型自動運転では実現困難な 25 のユースケ
ースとして「協調型自動運転ユースケース」12
(図 11)を整理している。
図 11 「協調型自動運転ユースケース」の抜粋
また、本研究会(第一期)の中間取りまとめにおいて、ユースケースに関しては、図 12
のまとめを行ったところであり、特に、拡張方策については、
「車載器の普及や将来に渡っ
て長く使うためには、発展性や拡張性も重要であり、安全・安心を最優先としつつ新たなユ12SIP 自動運転(システムとサービスの拡張)協調型自動運転通信方式検討 TF「SIP 協調
型自動運転ユースケース」より引用(https://www.sip-adus.go.jp/rd/rddata/usecase.pdf)
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ースケースの出現にも柔軟に対応できる工夫(OTA 技術など)が必要。
」との方向性が示さ
れていたところである。
図 12 "次世代の ITS 通信"の活用を想定するユースケースのまとめ
関連して、同中間取りまとめにおいて、V2X 通信と V2N 通信との連携方策に関しては、図
13 のまとめを行ったところである。
2040 年頃の自動運転車の合流支援などの実現には、
車載器の普及が不可欠であることを念
頭に置き、
導入期:協調型自動運転以外のユースケース(交通弱者の保護を含む安全・安心や交
通流円滑化など)
普及期:協調型自動運転も含めたユースケース(上記のユースケースに加え、路車間
通信による調停、
車車間通信によるネゴシエーションを用いた自動運転車両の合流支
援など)
に取り組むべきであり、その検討に当たっては、既存 ITS 無線との連携やインフラ整備など
の方策についても深堀りが必要。
また、車載器の普及や将来に渡って長く使うためには、発展性や拡張性も重要であり、安
全・安心を最優先としつつ新たなユースケースの出現にも柔軟に対応できる工夫(OTA 技術
※(注記)など)が必要。
※(注記) 無線通信を経由してデータを送受信することを指し、ソフトウェアの更新による機能追
加などを行う技術
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図 13 V2X(V2I、V2V)通信、V2N 通信の役割分担・連携イメージ
なお、
経済産業省・国土交通省連携による
「モビリティ DX 検討会」
(座長 高田 広章 名
古屋大学 未来社会創造機構 モビリティ社会研究所 所長・教授)
において、
令和6年5月、
「モビリティ DX 戦略」13
が策定され、
当該戦略において、
以下の記載が盛り込まれており、
今後、クルマのソフトウェア化(SDV:ソフトウェア・ディファインド・ビークル)の進展
に伴い、制御系ソフトウェアを含む車内ソフトウェアをアップデート可能な、OTA 技術の搭
載が進むことが示唆されている。
SDV の意義は、自動車の性能向上や機能の追加・拡充と、従来の自動車に閉じないサ
ービスなど、新たな付加価値の提供が SW アップデートを通じて、継続的かつスピー
ディーに実現可能となることと考えられる。13経済産業省「モビリティ DX 戦略」より引用
(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/automobile/jido_soko/index.html)V2X 通信、V2N 通信の特徴(通信エリア、遅延など)を踏まえ、相互補完しながら活用する
ことが重要であり、商用車(サービスカー)/自家用車(オーナーカー)それぞれについて
連携・役割分担を検討すべきであり、
自動運転/通信技術の進展を踏まえ、将来的には QoS を考慮したネットワークアーキテクチ
ャの検討なども必要
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他方、SDV 化の流れには、通信機能、OTA 機能、ビークル OS の搭載など、複数の段階
が存在。また、BEV のみならず、ICE も含めた全てのパワートレインの SDV 化が進ん
でいく。
こうした背景の下、
ターゲットの市場や我が国の強み
(パワトレの多様性や乗り心地
等)を踏まえ、パワトレ・機能・価格面での「多様な SDV 化」を目指すことが重要。
図 14 SDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)の推進
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上記のような検討状況を踏まえ、
ユースケースの深掘り、
通信方式/拡張方策の検討につ
いて、以下の意見があった。
<構成員の主な意見>
内閣府 SIP「協調型自動運転通信方式ロードマップ」が策定されているが、状況の変化
も踏まえて、その内容をブラッシュアップする形で、今後、誰が、何を、いつまでに決
めていかなければいけないのか、等を検討してはどうか。
ユースケースに応じて、V2N 通信でやるべき、或いは 760MHz 帯、5.9GHz 帯でやるべき
ものが整理ができると思うので、
そういう整理を行ったうえで、
全体最適ができると良
い。
自動運転レベル4車両はセンサーの塊であり、走行した周辺の交通環境データは非常
にリッチなデータが集まると認識。当該データを交通/道路管理者にフィードバック
し、一般車両にも環流されるような仕組みがあるとよい。
通信方式によって、
提供できる機能やサービスといった点でも特徴が変わってくる。各方式の特徴や国際調和を踏まえて議論が深まると良い。
(第一期でも議論したとおり)5.9GHz については自動運転のためだけに使うのは効率
的ではなく、
自動運転だけではなくて一般車の安全確保という観点で、
安全支援にも使
えるようなインフラとして整備できればと思っており、その点も含めてロードマップ
の具体化や通信方式の検討ができれば良い。
SDV による機能の追加・拡充は万能ではなく、ハードウェア性能要件の制限によって追
加・拡充できない機能があり得る。
<まとめ>
ユースケースについては、欧米など諸外国における最新の検討状況や、自動車の SDV
(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)化の動向※(注記)
等を踏まえつつ、
「協調型自動
運転通信方式ロードマップ」の精緻化・具体化に向けて、改めて関係省庁・団体の連携
を図るべき。
その際、実験等を通じた既存 ITS 無線(760MHz 帯など)や V2N 通信との最適な組合
せ、取得したデータの利活用方策も検討に含めるべき。
※(注記) ただし、SDV による機能の追加・拡充は万能ではなく、ハードウェア性能要件の制限に
よって追加・拡充できない機能があり得ることに留意が必要
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3.2 放送事業用無線局の周波数移行促進策の具体化
2.3.1 節のとおり、総務省においては、
「デジタルライフライン全国総合整備実現会議」
における議論を踏まえ、
自動運転の社会実装に向けたデジタルインフラ整備事業」
を活用し、
新東名高速道路をはじめとする自動運転トラックの実証実験対象地域である、
東北、
関東、
東海、近畿総合通信局の管轄区域を基本的な対象として、5.9GHz 帯 V2X 通信の早期導入に
向けた環境整備(既存放送事業用無線局の周波数移行)を推進する予定である。
また、
2.3.2 節のとおり、
総務省では、
「デジタルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会」
において、国際的な周波数調和が一層求められる V2X 通信の導入・実用化に向けて、公益増
進の観点から新たな周波数移行・再編スキーム等や費用負担の在り方についての検討の必
要性が示されている。
上記のような検討状況を踏まえ、放送事業用無線局の周波数移行促進策の具体化につい
て、以下の意見があった。
<構成員の主な意見>
本研究会の中間取りまとめのパブリックコメントにも、
適切な移行先周波数を確保した上で、
移行の手順、
期限や費用負担などの実務面で
既存事業者の不利益が生じないよう所要の措置を講じる必要があること
周波数移行には放送事業者側で多くの労力を要し、無線設備の製造や工事などに
かかる時間も考慮する必要があるため、短期間で容易に実現できるものではない
こと
放送事業者の様々な事情に配慮した移行方策を講じる必要があること
を述べさせて頂いた。
具体化に向けて、
コストや業務負荷など放送事業者の地域ご
との事情を考慮頂き、十分に話し合いながら進めていきたい
移行促進策は、周波数の移行方策と費用負担の考え方が整理されたうえで検討すべき。
現在、
周波数の移行方策は具体的な検討に着手したばかりであり、
費用負担に関しては、
議論は進みつつあるものの、
もう少し時間がかかると思っている。
いずれ必要になる議
論ではあるものの、慎重に進めていただきたい
5.9GHz 帯 V2X 通信の実用化に当たっては、全国における利用環境整備(周波数再編な
ど)の推進が必要
放送事業者としては、
最終的に北海道も含めた全国的な周波数移行をする際にも、
コス
トや業務負荷、
機器調達のリードタイムなど、
放送事業者の地域ごとの事情に配慮いた
だきながら移行を実現するようにお願いしたい。
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<まとめ>
また、
自動運転トラック実証に向けた 5.9GHz 帯 V2X 通信環境の拡大イメージは、
図 15 に
示すとおりであり、論点1の「5.9GHz 帯 V2X 実験試験局免許交付までの手続きの迅速化・
円滑化」についても、当該イメージを踏まえ、周波数移行や V2X 実証等の進展に合わせて、
対象範囲を順次拡大する形で制度設計すべきである。
図 15 自動運転トラック実証に向けた 5.9GHz 帯 V2X 通信環境の拡大イメージ
自動運転トラック実証のための通信環境整備に向け、東北、関東、東海、近畿総合通
信局の区域において、放送事業用無線局の周波数移行等が開始されたことを踏まえ、全
国的な周波数移行による 5.9GHz 帯 V2X 通信の実用化に向けて、新たな周波数移行・再
編スキーム等を検討すべき。
(新たな周波数移行・再編スキーム等については、
「デジタ
ルビジネス拡大に向けた電波政策懇談会」における検討スコープに含まれる)
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3.3 自動運転レベル4実証に向けたデジタルインフラ整備の在り方
2.4 節のとおり、
令和6年度から新東名高速道路の一部区間において自動運転トラック実
証実験が予定され、国土交通省や経済産業省、警察庁をはじめ関係省庁・団体連携で、合流
支援や先読み情報提供などに関する実証・検証を進めていく計画である。
(図 16)
図 16 新東名高速道路における自動運転トラック実証実験概要(再掲)
総務省は、本研究会(第一期)の中間取りまとめにおける V2X 通信と V2N 通信との連携方
策や「モビリティ・ロードマップ 2024」をはじめとする政府戦略を踏まえ、当該自動運転
トラック実証実験において、V2X/V2N 通信の両面から実証・検証に取り組んでいく予定と
している。
(図 17)
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図 17 自動運転トラック実証に向けた総務省としての取組
また、
当該自動運転トラック実証に関する具体的な計画などについては、
国土交通省道路
局、警察庁交通局、総務省総合通信基盤局が連携して設立した「自動運転インフラ検討会」
において、今後、検討が進められる予定である。
上記のような検討状況を踏まえ、自動運転レベル4実証に向けたデジタルインフラ整備
の在り方について、以下の意見があった。
<構成員の主な意見>
業務用車両を先行させて自動運転を展開していくストーリーは諸外国の動向から考え
ても妥当。
自動運転レベル4実証については自工会としても協力しており、その走行区間内で
様々なデータを取得いただきたい。
一般道についても、
自動運転バスの走行区間内で、
例えば交差点におけるデータなどを取得いただきたい。
V2X 通信、V2N 通信の役割分担を含め、実証を交えて議論されていく方向性に賛同。V2N
通信は不安定な場合もあるため、自動運転のための通信要件なども今後明らかになっ
ていくことを期待。
自動運転レベル4実証において、
大量のデータを収集しようとすると、
長期に大規模な
実証が必要になると思う。
新東名高速道路以降の実証実験に際しても、
実証インフラの
整備に当たっては政府の支援をお願いしたい。
自動運転は関係省庁が連携して検討しないと実現できない。連携をさらに深化すべく、
省庁だけでなく、関連団体レベルでの連携も含め検討頂きたい。
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<まとめ>
自動運転レベル4トラック実証に向けて、自動運転に必要となる通信環境整備の観点
から、V2X/V2N 通信の両面について取組を推進すべき。その際、ITS 情報通信システム
推進会議と連携した V2X 通信(760MHz 帯、5.8GHz 帯、5.9GHz 帯)の特性評価や、既存
ネットワークを活用した V2N 通信の実証・評価なども検討に含めるべき。
また、自動運転レベル4トラック実証に係る具体計画については、関係省庁・団体連
携による「自動運転インフラ検討会」において更に検討を深化すべき。
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3.4 導入に向けた将来の課題、その他推進方策
本研究会第一期及び第二期における議論を通じて明らかとなった、導入に向けた課題や
その他推進方策については、
以下のとおりであり、
今後の実証実験に向けた検討等の際の参
考とすべきである。
<構成員の主な意見>
車に搭載した通信システムは長く使うものであり、車ユーザーが安定して通信を使う
ことのできる環境が確保されていることが重要であり、
その際、
異なる通信方式が混在
することや世代交代にどのように対応するか等の観点を考慮すべき。
歩行者やそのほかの交通参加者
(電動キックボード等)
の安全確保も重要。
欧州では CPS
(Collective Perception Service:協調認識)
というテーマで検討がされ始めており、
この点に関する議論も重要。
車同士のネゴシエーション(相手を特定した通信)の際、これまで以上に高精度な車両
位置情報等が必要。
仮に 5.9GHz 帯放送事業用無線局を周波数移行することになった場合、移行先の周波数
を確保し、V2X 通信用のサービス提供主体を明らかにしたうえで、移行期限や費用負担
など、既存事業者の不利益にならないような検討をお願いしたい。
また、
移行先で既存サービスを安定して提供できることも重要であり、
移行先の他の
無線システムとの周波数共用や再編などを踏まえ、検討が二度手間にならないように
してほしい。
また周波数移行はかなりの労力を要し、
短時間で簡単にできるものではな
いことに注意が必要。
出会い頭事故や右折時衝突事故の防止は、カメラなどの自律系の安全技術では防止が
難しく、V2X 通信の活用が期待されるところ、日本の車両アセスメントとして V2X 通信
を対象に含める検討が開始されている
(欧州、
中国で先行して検討が進められている)。 V2X の導入・普及に必要なプロセス(対応車の投入時期等)について自動車業界による
協調的・一体的な取り組みを一層強化するとともに、
政府として普及に向けた取組を進
めることが重要。
(V2X システム導入による)安全性、円滑な交通流、カーボンニュートラル、エネルギ
ーの省力化等への効果を見える化も併せて考えるべき。
V2X は普及させてこそが重要。既存 760MHz 帯 ITS 無線との連携や路側インフラの整備
などに関して、今後、深掘りすべき。
将来に渡って長く使うことを考慮して、発展性や拡張性を持たせることはとても重要。
将来的には、QoS を考慮したネットワークアーキテクチャが必要。自動運転の進展など
を考慮し、
適材適所で無線システムの組合わせるなどを検討すべき。
具体的には、
5G の
SA 構成によるネットワークスライシングなどを通じた QoS 保証なども考えられるので
はないか。
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通信障害が発生することは前提として、最低限のバックアップを確保する通信の在り
方をどう実現するかなどについて議論していくべき。
自動車業界、
通信業界、
ユーザー企業や関係省庁が継続的にフラットに議論できる場が
あるとよい。
民間事業者による 760MHz 帯 ITS 無線路側機の利用拡大も、安全・安心な社会の構築に
寄与できると思うので、是非進めて頂きたい。
無線システムの周波数や通信方式もグローバルスタンダードと整合させていくという
ことが非常に重要。
周波数移行する側の放送事業者が納得できるよう、5.9GHz 帯 V2X システムの主体やユ
ースケースの明確化も重要。
短期的な取り組みについて、デジタル庁の「モビリティ・ロードマップ」との整合・連
携を図っていくべき。
周波数があっても、どのように利用するかということが大事。そのためにも、第二期の
検討では、様々なステークホルダーを巻き込みながらフラットに議論していくことも
必要。
これまでの ITS 通信はブロードキャスト型通信だったが、これからは合流時などにネ
ゴシエーション型通信が必要になってくることも挙げられており、これらが混在する
ような通信プロトコルが必要となるのではないか。
V2X 通信は、車両側だけでは信頼性を担保できないものになっていくと考えており、社
会実装に当たっては、どのように信頼性を担保できるかを検討することも重要。
技術開発だけではなく、
誰がどう投資していったら良いのか、
それを継続するためには
どういうシナリオを実現していくべきかというような点を並行して検討すべき。
昨今、
サイバーセキュリティーの重要性は大きくなっている。
特に V2X 通信は車が外部
と通信するため、他の ECU に比べてより高度なセキュリティー対策が重要ではないか
車両がそれぞれ通信するときにベースとなるのが自己位置標定だと思うので、ユース
ケースの深掘りに当たっては、自己位置標定精度を絡めて議論すべき。
理想環境以外のユースケース(例:トンネル、大規模ジャンクション等)を想定した検
討も重要。
まず私たちがどういう社会を創るかという点を検討、共有することが大事である。
技術を突き詰めていくことは重要だが、社会受容性も併せて検討していく必要がある。
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4 おわりに
本中間取りまとめは、本研究会(第一期)における検討を踏まえ、5.9GHz 帯 V2X 通信向
け割当方針案、導入ロードマップ案の具体化に向けて、5.9GHz 帯 V2X 通信システムの実用
化に向けた方策や放送事業用無線局の周波数移行促進策の具体化、自動運転レベル4実証
に向けたデジタルインフラ整備の在り方などに係る検討の方向性をまとめたものである。
「デジタル田園都市国家構想総合戦略」においては、
地域限定型の無人自動運転移動サービスを 2025 年度目途に 50 箇所程度で実現
高速道路上のレベル4自動運転トラックを 2025 年度頃に実現
とされているところであり、これら政府目標の実現に向けては、本研究会に限らず、関係省
庁・団体連携の下で、引き続き関連の取組を推進することが重要である。
以上