1第4回 統計の精度向上及び推計方法改善ワーキンググループ会合 議事概要
1 日 時 平成28年12月22日(木)10:00〜11:05
2 場 所 総務省第2庁舎 6階 特別会議室
3 出席者
【委 員】
宮川 努(座長)、北村 行伸、西郷 浩
【審議協力者】
椿 広計(筑波大学名誉教授)内閣府、総務省統計局、財務省、文部科学省、厚生労
働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、日本銀行、東京都
【事務局(総務省)】
横山大臣官房審議官
統計委員会担当室:山澤室長、上田次長、阿向次長、吉野政策企画調査官
政策統括官(統計基準担当):吉牟田統計企画管理官、澤村統計審査官
4 議 事
(1)基準の精査について
(2)試行検査について
(3)対象統計の考え方について
(4)その他
5 議事概要
(1)基準の精査について
事務局から、資料1に基づき、10月の第2回会合で議論した検査事項を精査する案
について説明が行われた後、質疑応答がなされ、案を一部修正して了承された。
主な発言は以下のとおり。
・見える化の基準(案)は米国基準等を参考にしており、それを国内に適用するとほ
とんどゼロ水準になり差がつかないとのことだが、米国では高いポイントが付く統
計もある中で日本ではゼロとなることは比較可能性の情報として大事であり、国際
的な見える化の状況に近づける点も考慮してもらいたい。
・基準(案)が日本で適用すると全てゼロになるとは意外。恐らく、文書化されてい
ないが実際は行われているものもあると思う。作成側は非標本誤差等は舞台裏のよ
うな情報なのでわざわざ文書化する意識がない、利用者側も非標本誤差を気にして
使う者は少ないという事情もあったのではないか。現時点では文書化されていない
が基準が入ることで情報開示されていくことは意義のあること。2・見える化プロジェクトと実際に内部で行っていることの間には差があると思う。た
だ、見える化の意義は、他のグッドプラクティスに学べる点が重要で、次世代にも
引き継ぎ易くなる。府省横断的に取り組んでほしい。
・これまで文書化されてこなかったこともあり定訳が決まっていない言葉もある。例
えば案では「非回答」と書いているが「無回答」や「未回答」と言う者もいる。訳
語の標準化作業で気をつけてほしい。
・非標本誤差のところは用語が何を指すのかが分かりにくいと感じた。基準を作る際
には用語の解説も付けてもらえるとありがたい。
・資料1p2「3.回収状況検査について」の「精査理由」の最後の「・」に、
「基
幹統計調査の回収率は統計調査の中では優良であり、前回WGで記載した内容では、
効果が見込まれない」と書いているが、検査を始める前の現段階で判断を示して基
幹統計調査はこういうものだとしない方が良い。非標本誤差に関する事項は予断を
持たずに精査して次回会合で提示してもらいたい。
・確かに予断を持ってこれ以上改善できないとするのは問題があり、差も全くない訳
ではないだろうから、数値は示してほしい。また、数値の差の背景にプラクティス
の差があるかどうかの確認を必ず行ってほしい。
→最後の「・」は削除する。
→精度向上に資する取組と理解するが、調査全体の回収率向上が精度向上に直接つな
がると短絡的に受け止められてしまうことを危惧。回収率が低いことが問題なのは
回収標本が偏っていることであり、全体の回収率だけを上げる話になると回収し易
い対象ばかりから重点的に回収して逆に精度が悪化することもある。
→「インターネット調査の方が、回収率が高いので精度が高くて良い」とする議論と
混乱するという指摘だろうが、元々きちんと設計して抽出した標本から回収率をど
れだけ改善できるかは努力目標として議論しても良いのではないか。それほど素人
の議論をしているつもりはない。
→過去にも議論したことがあるが、調査対象者に積極的に回収率を示すと「自分も協
力しなくてもよいのでは」と受け止められる懸念があり、web上で大々的に回収率
の数値を出していくことは疑問。現行の品質評価のガイドラインでもその考え方を
考慮し単純に「回収率」とはせずに「結果精度に関する情報」と整理している。今
回の検査でも、単に調査全体の回収率だけではなく、調査段階から集計段階に至る
ところで全体的に判断して精度確保の評価をしていただきたい。
→単純な回収率だけを評価する意図はない。総合的に評価し、最も精度が向上するよ
うな収集・作成方法を情報提供することが目的で、そのために回収率の情報も必要
ということ。また、検査は一つ一つではなく一体と捉える。回収率公表が懸念と言
うが、きちんと解説はできると思う。内閣府の研究会でもこの基準(案)で報告し
政府全体で共有されている問題意識であり前向きに検討してほしい。
→委員会の審議では回収率も議論してもらっており、申し上げた点を考慮して検査を
設計してもらえればと考えている。3・別添の新旧対照表(案)の追記はすべきことが明示されたので大きな改善だと思う。
ただ、
「情報収集方法(調査方法)
」の「3」に「回答のばらつき」という表現があ
るが、正確な回答ならばばらつきがあってもしかるべきである。聞き方により回答
が違ってくることが問題であり、
「回答誤差」と表現した方がよい。
・検査事項の精査については、本日の議論を踏まえ、別添の新旧対照表(案)は、今
指摘のあった修正を反映して了承とし、標本誤差に関する事項については、今後検
討する際に、差がつくか否かの予断を持たず、1)よりよい統計を作るために必要
な検査項目にする、2)国際標準を意識した統計作成に近づける、3)直訳ではな
く一般の方にも分かる用語の解説も含めた形で基準を作成するといった方向で、次
回会合で精査した案を提示してもらうこととする。
(2)試行検査について
事務局から、資料2に基づき、前回会合までに議論した統計精度に関する検査の内
容をもとにした試行検査の案について説明が行われた後、質疑応答がなされた。案の
とおり了承され、次回会合では、タイプや目的、使用方法が違う統計で試行した結果
を事務局から提示することとなった。
主な発言は以下のとおり。
・非標本誤差に関する事項は本日の議論も踏まえて精査するので試行では使わないが、
本番では使うという趣旨で次回会合にて精査した案を示すということでよいか。
・試行に使う統計は標本設計が違うものを選ぶなどの何か目安があるのか。具体的な
統計のイメージがあるのか。
→できるだけ分かり易い統計にしようと思っているがまだ具体的には固まっていない。
→基幹統計の中からいくつかを対象にすることを考えているが、違うタイプの統計も
混ざることになると思う。この基準(案)は一定のタイプのものを想定しているた
め非該当のものも出てくるかもしれない。それも含めて試行と考えたい。
→標本設計の思想によって回収率を高くするのが難しいものもあると思う。なるべく
違う思想で作成したものを選ぶと面白いと思うので考えてほしい。
・試行検査については、本日の議論を踏まえ、タイプや目的、使用方法が違う統計で
試行した結果を見せてほしいといった点を加えて、資料のとおり了承したい。
(3)対象統計の考え方について
事務局から、資料3に基づき、来年度からの本格運用に向け、前回会合におけるス
テークホルダーの意見や関連する研究会等の議論も踏まえた対象統計に関する考え方
の案について説明が行われた後、質疑応答がなされた。議論を踏まえ、標準検査は基
幹統計全体を対象にし、政府方針で示されたGDP統計を軸とした経済統計に対して
は標準検査にオププション検査も加えて検査を行うことで了承された。
主な発言は以下のとおり。
・経済統計の中に重点的に改善しなければならない部分があることは理解。一方で、4別途行われている品質保証の取組では、既に政府統計全体について様々な指標を公
表している。これは日常的な管理の中で、プロセス保証という行動も含め、よいも
のを共有する考えからであり、元々統計委員会の方針に基づいたもの。統計部局に
とっては、こうした指標の見える化は他のよりよい例に近づくための説明資料にな
る。オプション検査はリソースが必要というならば、標準検査は基幹統計全てにつ
いて行い、オプション検査は政府統計の中で改善が急務とされているものに限定す
るといった方法が、政府統計全体にとって望ましい。
・資料3の「2」で「統計ステークホルダーとの意見交換の場を設置」とあり我々は
ステークホルダーを利用者と考えている気がするが、参考4の基本方針の中で「ガ
バナンスを構築」としていることとは微妙に違っている。ステークホルダーがよく
出てくるのはコーポレートガバナンスの文脈であり、労働者、取引先、消費者等の
利害関係者のこと。統計利用者をステークホルダーと呼ぶのはしっくりこない。議
論が必要なのはどうガバナンスすべきかということ。諮問会議の決定に従えという
ことなのかなどガバナンス構造がどうなっているのか考える必要がある。WGで議
論している統計精度向上の取組も統計委員会としては方針を出せるが、諮問会議等
と連携する方がシナジー効果もある。また、ステークホルダーとして利用者の意見
を聞くとしても、政策目的で調査を実施し利用している者と外部で利用している者
でとは分けて考え、どちらの意見を聞いた方がよいかも検討が必要。
→参考4「統計改革の基本方針」の「2.具体的取組」を順番に追うと、
「GDP統
計等の精度向上に向けて、これらの課題やさらに取り組むべき課題について、統計
委員会で精査・具体化する」とある。具体的には基本計画の作成審議を受け皿とし
ており、最終的には統計委員会で受けるものと理解してもらいたい。
また、
「統計のステークホルダー」という言葉はユーザーを意識した言葉ではあ
るが、昨年度3月の統計委員会の報告書の中で西村委員長の提案により使った言葉
であり、諮問会議や内閣府の研究会でも反映されている。特にユーザーを視野に入
れつつ関係者の意見を聞くことだと理解してもらいたい。
→ガバナンスについては当初より議論があったが、諮問会議の方針も出たところであ
り、今一度、これまでの統計改善の動きについて、経緯等も含めて、統計委員会で
西村委員長から整理した説明をしてもらい位置づけを明らかにしてもらうこととし
たい。諮問会議の方針には我々のミッションも含まれており、従来の我々のミッ
ションがどう政府全体の方針に取り込まれていくかも明らかにしてもらいたい。
・検査対象の統計については、本日の議論も踏まえ、広く網をかけることと政府方針
で統計委員会に期待されている役割とが整合するよう、標準検査は基幹統計全体を
対象にし、政府方針で示されたGDP統計を軸とした経済統計に対しては標準検査
にオプション検査も加えて検査を行うことで、了承することとしたい。
・今後、事務局と検査を行う総務省にて、統計のステークホルダー(意味を統計委員
会でもう一度共通理解を得る)の意見や関連する研究会等の議論も踏まえ、検査の
対象とする統計、そのうちオプション検査を行う統計、行うオプション検査の内容5等について検討を行い、次回会議で経済財政諮問会議や内閣府の研究会が示す統計
改善の方針にも具体的に資する形でリストアップしてもらいたい。
・各府省には、政府全体の統計改革の基本方針の中でPDCAサイクルも位置づけら
れていることを認識してもらい、その上で、総務省が行う検査は、各府省が独自に
行ってきた統計精度向上の取組のベストプラクティスを目指すものであるので、前
向きにとらえ、検査に協力してもらいたい。
(4)その他
次回の会合は、2月1日(水)午前に開催すること(時間、場所は後日連絡予定)
が案内された。
以上
<文責 総務省統計委員会担当室 速報のため事後修正の可能性あり>