「 『数寄者』の現代―即翁と杉本博司、その伝統と創造」荏原 畠山美術館で12月まで
東京・白金台の荏原 畠山美術館で新館の開館1周年を記念する展覧会「 『数寄者』の現代―即翁と杉本博司、その伝統と創造」が12月14日まで開催中だ。
同館はもともと畠山記念館として大手産業機械メーカー「荏原製作所」の創設者でもあり茶人としても知られる畠山一清(号・即翁)が昭和39年に設立。国宝・重要文化財を含む古美術約1300件を収蔵する国内有数の私立美術館だ。5年間に及ぶ改修工事を経て昨年10月に荏原 畠山美術館として新しく生まれ変わった。
今回の展覧会では、同館の収蔵品と、改修に伴い増設された新館の基本設計を担当した現代美術家・杉本博司氏の作品とコレクションで構成。白眉のひとつである重要文化財の「清滝権現像」は、真言密教の護法神で水をつかさどる女神である清滝権現を畏敬の念を込めて描く。同じく重要文化財の「割高台茶碗」は戦国時代から江戸時代初期の武将・茶人である古田織部所持と伝えられ、雄大な作風が見どころ。
一方、杉本氏は自身の手によるモダンでユーモラスな「和蘭陀手鹿香合」のほか、新たに法隆寺金堂釈迦三尊像の創建当時の部材である可能性が分かった台座蓮弁などの貴重なコレクションを出品し、近代数寄者の最後世代である畠山即翁と現代の「数寄者」とも呼ぶべき杉本氏の感性の響きあいを演出する。
杉本氏は蓮弁の由来をめぐる展開に「数寄者冥利に尽きる」と感慨深げ。さらに自身が基本設計を手掛けた新館について「今回の展覧会を機に一年余り手直しもさせていただき、ようやく私として、ここで完成した、皆様にご披露目できる状態になったという気がしている」と改めて語った。
同館の岡部昌幸館長は「最初の本格的な企画展は杉本先生をおいてほかにいないと思った。展覧会の内容は当初の様々な企画案から、最終的には壮大なものとなって感慨深い」と振り返り、「現代において数寄者の精神がどのように映るのか、そしてそれを受け継いでいくべきであるということを問いかけるのが、今回の展覧会。新装開館の記念展として、最もふさわしい内容になった」と自信をみせた。