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日本存亡の機に高市さん 持論曲げず難局打開を

書く書く鹿じか

自民党の新総裁に選出され、拍手を受ける高市早苗氏=4日午後、東京・永田町の党本部

国際政治学者の高坂正堯(まさたか)さんは、産経新聞の初期の正論メンバーで、駆け出し記者の頃、原稿をいただきに自宅を訪ねたことがある。保守派の論客で京大教授という肩書から、堅苦しい人物かと思ったら、やわらかい京都言葉の気さくな人柄だった。

歴代自民党政権のアドバイザーを務め、大平正芳首相が唱えた総合安全保障戦略や、中曽根康弘政権における防衛費のGNP(国民総生産)1%枠撤廃など、とくに安全保障政策で的確な指針を与えた。没後30年近くになるが、存命なら現代の日本にどんなアドバイスをしてくれるだろう。

「日本存亡のとき」(講談社)は、1991年の湾岸戦争で日本が自衛隊を派遣せず、「金は出すが人は出さない」と国際社会から非難された際の著作である。

<安全保障は軍事力だけの問題ではないという非の打ちどころのない発言のみがなされ、それがときとして軍事力の問題でもあるということを説く声はあまりにも小さい。それでは、安全保障面で日本が新しい国際秩序づくりに参加できないことになってしまう>

中国、ロシア、北朝鮮の核の脅威にさらされ、わが国の安全保障環境は厳しさを増している。前々回のコラムで自民党の総裁選を取り上げ、「『日本を守る』という背筋が伸びた姿勢」を求めたが、念頭にあった高市早苗さんが新しい総裁に決まった。臨時国会で初の女性首相に選出される見通しだ。

高市さんには、自民党が党是とする憲法改正をぜひとも実現してもらいたい。とりわけ自衛隊を明記するのは喫緊の課題だが、立憲民主党などは何だかんだと理由をつけて、憲法審査会での議論が進まない。高坂さんは日本の国会の欠陥をこう指摘した。

<野党は質問し、政府に失言もしくは矛盾した発言をさせて、政府を攻撃する機会をとらえようとする。(略)公然たる議論がないので、国民は問題を理解した後で自分なりに決断することができない>

反対はするが、主張をぶつけ合う議論はなく、政党間の根回し、言い換えれば裏取引で重要な案件が決まる。そうした国会運営が政治を衰弱させてきた。

自民、公明は衆参両院とも過半数割れの少数与党である。そこで、野党の政策も受け入れて連立拡大を模索するが、高市さんは政権維持のために靖国神社参拝などの持論を棚上げしてはいけない。

総裁選で大量の党員票を集めたのは、ぶれない姿勢が支持されたからだ。7月の参院選で「日本人ファースト」を掲げた参政党が躍進したように、保守層の広がりは一時の現象ではなく、大きなうねりを感じる。

「日本存亡のとき」には、高坂さんにサインと「難局の楽しさ」という言葉を書いていただいた。高市さんも政治家として、難局に立ち向かうのは本懐だろう。(元特別記者 鹿間孝一)

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