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「公衆衛生情報」9月号 武智技師長の記事全文

更新日:2013年9月27日

泌尿器科医から転身した私が感じる保健所勤務医のやりがいと可能性

群馬県伊勢崎保健福祉事務所、安中保健福祉事務所、藤岡保健福祉事務所(兼務)技師長 武智 浩之

(経歴)
平成10年群馬大学卒、泌尿器科医として県内各地で勤務。平成20年群馬大学大学院卒業。県立病院から保健福祉事務所に異動。平成25年より現職。

(本文)
私は大学卒業後12年間泌尿器科医として勤務した後、公衆衛生の分野に異動しました。今年で4年目になります。この異動は自分から希望してかないました。かなったというのは、異動するまでに1年以上かかったからです。

公衆衛生医と臨床医

公衆衛生医の定着が難しいといわれています。皆さんご存知のとおり、行政と臨床での医師の立場が異なることは明らかです。でも、それは初めからわかっているはずです。職場を変えるという人生の大きな分岐点にいるとき、新たな職場について情報を得ないではいられないと思うからです。実際、今年度群馬県に入職した医師から公衆衛生医の業務内容などさまざまな質問、相談を受けて感じたのは、事前情報の重要性でした。ですが、こう書いている自分はまったく事前調査をしていませんでした。というよりだれにどうすれば情報を得られるのかがまったくわかりませんでした。公衆衛生の分野があると気がつくきっかけは、自分が携わっていた前立腺がん検診でした。しかし、県の保健所がまったく関与していないことを知らなかったくらい把握していませんでした。そんな私を見かねてか、勤務していた県立病院の院長が「医師が保健所で勤務するということ」を何時間もかけ、説明してくださいました。この院長は保健所長から異動されてきた大先輩でした。当初は「臨床から離れてはだめだ」「泌尿器科の後輩をきちんと育成・指導するのが先だ」と悟されましたが、しつこく粘って保健所勤務への異動をお願いしていましたら、すてきな応援団長になってくださいました。私はこうして1年以上をかけて公衆衛生医になったのです。

公衆衛生医と臨床医という分け方がされますが、私はいつも違和感を覚えます。確かにお客さん(県民)の話を聞くのと患者さんを診るというのは別物です。ですが、保健所で勤務しているときと病院で勤務しているときと、自分の心持ちはまったく一緒です。たとえばHIV、性感染症の相談・検査をしていますと、公衆衛生は泌尿器科の一部で、泌尿器科も公衆衛生の一部だと確信します。もしかしたら、私だけが感じているのかもしれません…。公衆衛生の一部分しか見えていないとも自覚しています。

研修や資格を貪欲に習得

保健所に勤務してまず教わったのは、業務をするためにいろいろな研修を受ける必要があることでした。しかも、臨床医時代には考えられない、業務としての研修派遣というものでした。私は、臨床研修が制度化される前に医師になっていましたので、研修医と呼ばれた時期はありましたが、研修と名のつくものを受けたことがありませんでした。研修は当然、業務に穴を開けてしまいますが、それにもかかわらず、県外への宿泊を伴うものから数多くの研修に参加することができました(図参照)。この研修派遣については、群馬県、特に早乙女千恵子群馬県保健所長会長に心から感謝しています。

研修を受けることにより、保健所業務がしやすくなるというのはもちろんですし、当然そうなるように研修を受けなければなりません。私がいつも意識するのは、研修で学んだことを実際の自分の業務に生かすだけではなく、保健所職員の皆さん、県民の皆さんのために活用できるようにしたいということです。そうすれば、担当の方の業務をよく理解したうえで一緒に課題を検討できるようになりますし、保健所外では、できる限り最新で適切な情報提供ができるようになります。

また私は、臨床医のときに取得した泌尿器科専門医・指導医、産業医、がん検診認定医、がん治療認定医に加えて、保健所勤務医に有用な資格の取得を心がけています。昨年度は結核・抗酸菌症認定医、今年度はICD(インフェクションコントロールドクター)を申請中、来年度は公衆衛生専門家認定の取得をめざしています。資格の取得難易度は異なりますが、同じ資格をもつ医療関係者とは話が進みやすいと思っているのが取得理由です。資格の有無で対応のしやすさに違いを感じる経験もしました。そこを県も理解してくださり、全面的に協力をいただいております。

兼務になってわかること

保健所勤務2年目から保健所を2か所兼務になり、今年度は3か所兼務しています。保健所勤務で気がついたことのひとつは、担当ごと、業務ごとに行い方が異なっていることです。改善してよいものであれば、ほかの担当が行っていることを応用できます。保健所ごとの違いも同様です。そういう点も、自分が兼務しているので見えるようになりました。兼務は大変ではありますが、こういう環境であることで改善点に気づけるのだと学びました。皆さまがお感じのとおり、一筋縄ではいきませんが…。

また、私は保健所で勤務しているいろいろな職種の方と交流しています。可能な限り勉強会に顔を出したりして、職場では聞けない、業務それぞれの本音を教えていただいています(自分はお役に立てないと思いながら…)。

現在、群馬県は県型保健所のすべての保健所長が兼務しています。全国のどの自治体よりも医師の確保が喫緊の課題です。ですから今年度、群馬県ホームページの医師募集の内容を充実させました。県の担当と保健所医師が一体となって作成しました。作業の中でさまざまな自治体のWebサイトを拝見しました。参考となるところは貧欲に取り入れながら、群馬県の特徴も引き出す工夫をしました。

今年度、代表の宇田英典先生にお誘いいただき、地域保健総合推進事業「公衆衛生に係る人材の確保・育成に関する調査および実践活動」の研究班に入りました。その研究班を通じて群馬県ホームページ改変での経験と集めた情報を、ほかの自治体の皆さまが公衆衛生医師を募集する際、少しでも作業がしやすくなるように内容を紹介したいと思っています。

研修先の先生方や一緒に受講した全国の方々には、職場で困った事案があったときには、いまでもよく直接お聞きしてご指導していただいています。この場をお借りして感謝申し上げます。今回、この原稿依頼をいただきましてとても戸惑いました。ですが、この機会にいろいろな人・事・場所に思いを巡らせることができました。大きい目標を立てず、自分がいま存在している職場を大切にして、自分の後輩が増える努力をし、さらには後輩が自分より先に辞めない環境づくりをしていきたいと改めて思いました。自分の事としては、最近お仲間に入れていただいている地域の活動(自治会・青年会・育成会・地域の少年野球など)を自分のペースで継続していきたいと思っています。これこそ公衆衛生と信じながら。

図 受講した代表的な研修の一部
日程 内容 場所
平成22年4月7日〜7月16日 専門課程1保健福祉行政管理 分野分割前期(基礎) 国立保健医療科学院
平成23年5月30日 東日本大震災救護活動シンポジウム 国立保健医療科学院
平成23年10月5日〜7日 (短期研修)健康危機管理研修(実務編) 国立保健医療科学院
平成23年10月24日〜28日 (短期研修)たばこ対策の推進(企画・調整)に関する研修 国立保健医療科学院
平成23年11月7日〜11日 (短期研修)感染症集団発生対策研修 国立保健医療科学院
平成23年12月5日〜9日 (短期研修)エイズ対策研修 国立保健医療科学院
平成22年10月19日〜22日 胸部X線読影コース研修 結核研究所
平成23年6月6日〜10日 医学科「医師5日間コース」 結核研究所
平成26年1月20日〜31日(予定) 結核対策総合コース 結核研究所
平成24年3月2日 全国結核対策推進会議 東京
平成22年11月19日
平成23年7月9日
財団法人日本公衆衛生協会地域保険総合推進事業
「地域保健推進検討会(関東甲信越静・東京ブロック)」
東京
熱海
平成23年1月27日 全国保健所長会研修会 東京
平成23年5月26日 けし・大麻実地研修会 独立行政法人医薬基盤研究所
薬用植物資源研究センター
平成24年12月2日 小児保健医療のトピックス研修会 母子愛育会
平成24年12月11日〜13日 司法精神医学研修 精神保険研究所
平成25年3月6日〜8日 放射能測定指導者講習会 放射線医学総合研究所

(出典)
期待の若手シリーズ 私にも言わせて!第15回
「月刊公衆衛生情報」2013年9月号、日本公衆衛生協会

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