申告や納付などの期限を延長したり、納税を一定期間猶予する制度があります。
災害等の理由により申告・納付などをその期限までにできないときは、その理由のやんだ日から2か月以内の範囲でその期限を延長することができます。
届出書や申請書等の提出期限も同様に延長することができます。
災害等により財産に相当の損失を受けたときは、所轄税務署長に申請をすることによって次のとおり納税の猶予を受けることができます。
1 損失を受けた日に納期限が到来していない国税
猶予の対象となる国税 | 猶予期間 |
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〈イ〉損失を受けた日以後1年以内に納付すべき国税 |
納期限から1年以内 |
〈ロ〉所得税等の予定納税や法人税・地方法人税・消費税の中間申告分 |
確定申告書の提出期限まで |
注:〈イ〉、〈ロ〉とも災害のやんだ日から2か月以内に申請する必要があります。
2 既に納期限の到来している国税
猶予の対象となる国税 | 猶予期間 |
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一時に納付することができないと認められる国税 | 原則として1年以内 |
災害により相当な損失を受けたことにより、その復旧に必要な資金の借入れのために使用する場合には、納税証明書の交付手数料は必要ありません。
所得税の軽減免除は、最終的には翌年の確定申告で精算されますが、予定納税や源泉徴収の段階でも、その減額又は徴収猶予を受けることができます。
所得税法や災害減免法による所得税の軽減免除は、最終的には、翌年の確定申告で精算されますが、災害等が発生した後に納期限の到来する予定納税や給与所得者の所得税等の源泉徴収税額などについて、確定申告の前にその減額又は徴収猶予などを受けることができます。
予定納税の減額 | 給与所得者の源泉所得税の徴収猶予など | ||||
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所得税法 | 災害等を受けた日の区分 | 1月1日〜6月30日 | 6月30日の現況によって、その年の所得金額と税額を見積もり、原則として7月15日(令和6年分は、7月31日)までに第1期分及び第2期分の減額を申請してください。 | 災害減免法 |
左記〈イ〉、〈ロ〉のいずれにも該当するときは、所得金額の見積額に応じて所得税等の源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けることができます。 〈手続〉
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7月1日〜10月31日 | 10月31日の現況によって、その年の所得金額と税額を見積もり、原則として11月15日までに第2期分の減額を申請してください。 | ||||
災害減免法 | 7月1日から12月31日までの間に災害を受けた場合で、次の〈イ〉、〈ロ〉のいずれにも該当するときは、その年の所得金額と「所得税の軽減額の計算」による税額とを見積もり、災害のあった日から2か月以内に減額を申請してください。
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注:相続税・贈与税や酒税なども、災害により損害を受けた場合、税額が免除されるなどの取扱いがあります。
災害により住宅や家財などに損害を受けた場合は、確定申告を行うことで所得税法の雑損控除又は災害減免法の適用を受けることができます。
地震、火災、風水害などの災害によって、住宅や家財などに損害を受けたときは、確定申告で?@「所得税法」による雑損控除の方法、?A「災害減免法」による所得税の軽減免除による方法のどちらか有利な方法を選ぶことによって、所得税の全部又は一部を軽減することができます。これら2つの方法には、次のような違いがあります。
なお、令和6年能登半島地震により被害を受けた方については、令和5年分又は令和6年分のいずれかの年分を選択して、これらの軽減等の措置を受けることができます。
1 所得税法(雑損控除) | 2 災害減免法 | ||
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損失の発生原因 | 災害、盗難、横領による損失 | 災害による損失 | |
対象となる 資産の範囲等 |
住宅や家財を含む生活に通常必要な資産(※(注記)1) | 住宅又は家財の損失額(※(注記)2)が、その価額の2分の1以上である場合 | |
控除額の計算 又は 所得税等の軽減額 |
控除額は次の1と1のうち、いずれか多い方の金額です。
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軽減額等は次のとおりです。 その年分の所得金額
所得税等の軽減額
500万円以下
全額免除
500万円超 750万円以下
2分の1の軽減
750万円超 1,000万円以下
4分の1の軽減
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参考事項 | その年の所得金額から控除しきれない金額がある場合には、翌年以後3年間(※(注記)3)に繰り越して、各年分の所得金額から控除することができます。 災害関連支出の金額に係る領収証は、申告書に添付するか、申告書を提出する際に提示する必要があります。 災害関連支出のうち、1災害により生じた土砂などを除去するための支出、1住宅や家財などの原状回復のための支出(資産が受けた損害部分を除きます。)、1住宅や家財などの損壊・価値の減少を防止するための支出については、災害のやんだ日から1年(やむを得ない事情がある場合には3年)(※(注記)4)以内に支出したものが対象となります。 |
原則として損害を受けた年分の所得金額が、1,000万円以下の方に限ります。 減免を受けた年の翌年分以降は、減免は受けられません。 |
※(注記)1 棚卸資産や事業用の固定資産、山林、生活に通常必要でない資産は、雑損控除の対象にはなりません。
なお、生活に通常必要でない資産とは、別荘等の主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する資産や競走馬、1個又は1組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨とう等をいいます。
※(注記)2 資産に生じた損害金額から保険金や損害賠償金などによって補てんされる金額を控除した金額をいいます。
※(注記)3 令和5年4月1日以後に発生した特定非常災害として指定された災害(令和6年能登半島地震災害を含みます。)や東日本大震災により、住宅や家財などについて生じた損失について、その年分の所得金額から控除しきれない金額がある場合には、翌年以後5年間になります。
※(注記)4 東日本大震災に関連する1から1までの支出について、東日本大震災からの復興のための事業の状況その他やむを得ない事情により、災害のやんだ日から3年以内にその支出を行うことができなかった場合には、その事情がやんだ日から3年以内に支出したものも対象とみなされます。
所得600万円、夫婦子供2人の場合で災害による損害がないときの所得税等の額が25万9,800円とした場合、所得税等の額は下の表のように軽減されます。損害額が100万円の場合は災害減免法を適用した方が有利になりますが、200万円、300万円の場合は所得税法の雑損控除を適用した方が有利になります。
損害額 | 所得税法(雑損控除)適用による所得税等の額 | 災害減免法適用による所得税等の額 |
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100万円 | 207,700円 | 129,900円 |
200万円 | 105,600円 | |
300万円 | 51,500円 |
災害により住宅用家屋が被害を受けた場合に、適用できる特例があります。
住宅ローン等で住宅用家屋の取得等をした場合には、一定の要件を満たすことにより、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができますが、災害により住宅用家屋が被害を受けた場合には、以下の特例の適用を受けることができます。
災害によって被害を受けたことにより居住の用に供することができなくなった住宅用家屋(以下「従前家屋」といいます。)については、居住の用に供することができなくなった年以後の残りの適用年においても、引き続き、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。
適用期間の特例を受けるための手続は、通常の確定申告又は年末調整と同じです。
新たに取得等をした住宅用家屋について住宅借入金等特別控除等の適用を受ける(※(注記))など一定の場合には、適用期間の特例の適用を受けることはできません。
※(注記)以下「重複適用の特例」の適用を受けることができる被災者生活再建支援法の対象となる再建支援法適用者は除きます。
被災者生活再建支援法が適用された市区町村の区域内に所在する住宅用家屋を、その災害により居住の用に供することができなくなった場合には、その従前家屋に係る住宅借入金等特別控除と新たに住宅用家屋の再取得等をした場合の住宅借入金等特別控除又は認定住宅等新築等特別税額控除を、重複して適用することができます。
重複適用の特例を受けるためには、従前家屋及び新たに再取得等をした住宅用家屋について、住宅借入金等特別控除の適用を受けるために必要な書類のほか、被災の事実等を明らかにする次の書類を確定申告書に添付する必要があります。
※(注記)「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」に不動産番号を記載することなどにより、その添付を省略することができます。
重複適用の特例を受ける場合には、それぞれの控除額の限度額のうち最も高い金額が控除限度額となります。
住宅取得の際の贈与税の特例(詳しくは、「住宅取得の際の贈与税の特例」をご参照ください。)について、災害によって住宅用の家屋に被害を受けた場合等には、次のとおり、その適用要件が緩和されます。
財形住宅(年金)貯蓄を行っている方が居住する家屋で、その方又はその方と生計を一にする親族の方が所有するものが災害により全半壊などの被害を受けたことにより、財形住宅(年金)貯蓄を払い出す場合において、所轄税務署長からその払出しがその災害により被害を受けたことによるものであることに係る確認書の交付を受け、その確認書を金融機関等に提出したものについては、その財形住宅(年金)貯蓄に係る利子等について課税されません。
手続の詳細については、国税庁ホームページの「A2-28勤労者財産形成住宅(年金)貯蓄契約に係る災害等の事由についての確認申出」をご覧ください。
災害により損失が生じた場合に、法人税などが還付される場合があります。
災害により生じた損失の額は、その損失が生じた日の属する事業年度の損金の額に算入されます。また、確定申告や中間申告を行うことで、過去に納めた法人税や源泉徴収された所得税等が還付される場合があります。
災害のあった日以後1年以内に終了する事業年度において、災害損失欠損金額がある場合には、その事業年度開始の日前1年(青色申告書の場合には2年)以内に開始した事業年度の法人税額のうち災害損失欠損金額に対応する部分の金額について、還付を請求することができます。
注:災害損失欠損金額とは、棚卸資産や固定資産などについて災害のあった日の属する事業年度において災害により生じた損失の額のうち欠損金額に達するまでの金額をいいます。
確定申告で繰戻しを請求する場合 図災害のあった日以後6月以内に終了する中間期間において、災害損失金額がある場合には、仮決算の中間申告において、控除しきれなかった所得税等の額の還付を受けることができます。
注:災害損失金額とは、棚卸資産や固定資産などについて災害のあった日の属する事業年度において災害により生じた損失の額をいいます。
特定非常災害として指定された災害について、その発生日から同日の翌日以後5年を経過する日までの期間内に、被災代替資産等の取得等をして事業の用に供した場合には、特別償却をすることができます。
災害により被害を受けた事業者が受けられる特例があります。
災害等が生じたことにより被害を受けた事業者が、当該被害を受けたことにより、簡易課税制度の適用を受けることが必要となった場合、又は受けることの必要がなくなった場合には、承認申請書(提出期限:災害等のやむを得ない理由がやんだ日から2月以内)を税務署長に提出し、承認を受けることにより、当該災害等の生じた日の属する課税期間から、簡易課税制度の適用を受けること、又はやめることができます。この特例を受けるためには、承認申請書と併せて「消費税簡易課税制度選択(不適用)届出書」を提出する必要があります。
・このほかにも災害に関する税制上の措置がありますので、詳細については、国税庁ホームページの「災害関連情報」をご覧ください。
・法人税、所得税の措置に限らず、登録免許税や印紙税の措置など、掲載されている措置以外も活用できる場合があります。
・ご質問・ご不明な点がありましたら、最寄りの税務署にお尋ねください。