甲法人は、A土地(簿価207億円、時価122億円)及びB土地(簿価21億円、時価250億円)の2つの土地と乙法人の所有するC土地(簿価140億円、時価180億円)及びD土地(薄価41億円、時価192億円)の2つの土地とを等価で交換することとしました。
この場合、法人税法第50条((交換により取得した資産の圧縮額の損金算入))の適用要件である交換差金20%以下の要件を満たしているものとして、圧縮記帳の適用をすることができますか。
また、同条第1項の規定の適用がある場合、甲法人が交換により取得したC、Dそれぞれの土地に付すべき帳簿価額は、いくらとなりますか。
(注) AB二つの土地は従前から宅地の用に供していたものであり、交換によって取得するCD二つの土地についても同一用途に供する予定です。その他、交換に係る圧縮記帳の適用要件はすべて満たしています。
1 圧縮記帳の適用の可否
本件交換については、次の理由から圧縮記帳の適用要件である交換差金20%以下の要件を満たすことになります。
ただし、交換譲渡資産であるA土地については、時価が簿価を下回っており譲渡損が生ずることから、圧縮記帳を適用することはできず、B土地の交換についてのみ圧縮記帳の適用対象となります。
(理由)
1 本件は、甲法人のAB二つの土地と乙法人のCD二つの土地とを交換するものですが、各々時価評価を行った結果、それぞれ二つの土地の合計額が等価となったことから等価交換契約を締結するに至ったものです。したがって、交換特例適用要件の一つである交換差金20%以下であるかどうかの判定に当たっては、AB二つの土地の時価の合計額とCD二つの土地の時価の合計額との差額が20%以下となるかどうかにより判定すべきですから、本件交換は当該要件を満たしているものと考えられます。
2 交換に係る圧縮記帳の特例制度は、交換取得資産の取得時の価額が交換譲渡資産の帳簿価額を超える場合にその超える金額の範囲内において圧縮記帳の計算を行うものですから、法人税法施行令第92条第1項((交換により生じた差益金の額))に規定する差益金の算定に当たっては、譲渡益の生ずる資産のみを対象としてその資産ごとに差益金を算定することが相当と考えられます。
(図1)
[画像:複数の土地と複数の土地とを交換した場合の圧縮記帳の図1]
2 交換取得土地の圧縮後の簿価の算定
交換に係る圧縮記帳の特例制度は、交換取得資産の取得時の価額が交換譲渡資産の帳簿価額を超える場合にその超える金額の範囲内において圧縮記帳の計算を行うものですから、差益金の算定に当たっては、譲渡益の生ずる資産のみを対象としてその資産ごとに差益金を算定することとなります。
(理由)
本件交換は、AB二つの土地とCD二つの土地とをトータルとして等価で交換するものですが、A土地については時価が簿価を下回り譲渡損が計上されますから、甲法人において圧縮記帳が適用できるのはB土地のみとなります。この場合、交換取得資産であるCD二つの土地にはAB二つの土地との交換により取得した部分が平均的に含まれるものと考えられますが、例えば、次の図に示したとおり、時価相当額によりA土地とC土地の一部(Ca)とを交換し、B土地についてはC土地の残余の部分(Cb)とD土地とを等価により交換したもののごとく整理することもできます。
(注) A土地がCDいずれの土地の一部との交換とするかは、当事者間の契約等によって明確にされたところによることとなります。
(図2)
[画像:複数の土地と複数の土地とを交換した場合の圧縮記帳の図2]
本件の場合、A土地の交換については、時価が簿価を下回るため、譲渡損が生ずることとなり、A土地とCa土地との交換については交換に係る圧縮記帳の特例の適用はありませんから、交換後のCa土地の簿価はA土地の時価相当額(122億円)となり、仮に土地重課課税の適用がある場合のCa土地の取得日は交換の日となります。
B土地については、時価が簿価を上回っており、Cb土地とD土地との等価交換であるほか、交換に係る圧縮記帳の特例の要件のすべてを満たしていますから、Cb土地とD土地との時価の合計額とB土地の簿価との差額(229億円)を圧縮限度額として圧縮記帳が認められることとなります。
この場合の圧縮限度額の算定及び圧縮後のCb土地及びD土地の帳簿価額は、それぞれ以下のとおりとなります。
なお、Cb土地及びD土地の土地重課課税の適用に当たっての取得日は、交換特例の適用により、B土地の取得日を引き継ぐこととなります。
(注) 乙法人においては、CD二つの土地の交換譲渡によりAB二つの土地を取得するものですが、CD二つの土地はいずれも時価が簿価を上回り譲渡益が算出されますから、いずれの交換も圧縮記帳の適用対象となります。
法人税法第50条
法人税法施行令第92条第1項、第92条の2第1項
注記
令和6年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。