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平成25年6月
東京国税局

平成24年度 査察の概要

適正公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的として、査察部に配置されている国税査察官は、厳正な査察調査に基づき、悪質な脱税者に対する刑事責任の追及を行っています。

今般、平成24年度の査察調査の結果がまとまりましたので、その概要を報告します。

1 着手・処理・告発件数、告発率の状況

平成24年度において査察調査に着手した件数は69件でした。

平成24年度以前に着手した査察事案について、平成24年度中に処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)した件数は65件、そのうち検察庁に告発した件数は45件であり、その結果、告発率は69.2%となりました。

年度 平成 21 22 23 24
項目 20
着手件数
70 70 62 70 69
処理件数(A) 70 71 70 70 65
告発件数(B) 52 49 50 42 45
告発率(B/A) % % % % %
74.3 69.0 71.4 60.0 69.2

[画像:平成20年度から平成24年度の査察の着手件数、処理件数、告発件数、告発率を表したグラフ]

2 脱税額の状況

平成24年度に処理した査察事案に係る脱税額は総額で69億円、そのうち告発分は59億円となりました。

告発した事案1件当たりの脱税額は、平均で1億3,000万円でした。

告発した事案のうち、脱税額が3億円以上のものは3件、うち5億円以上のものは1件でした。

年度 平成 21 22 23 24
項目 20
脱税額 総額 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
20,028 15,186 10,521 7,809 6,931
同上1件当たり 286 214 150 112 107
告発分 12,484 13,825 9,136 6,379 5,863
同上1件当たり 240 282 183 152 130

(注) 脱税額には加算税額を含む。

(参考)大口事案の推移

年度 平成 21 22 23 24
項目 20
告発件数
52 49 50 42 45
うち脱税額が3億円以上 7 8 5 6 3
うち脱税額が5億円以上 5 4 3 2 1

(注) 脱税額には加算税額を含む。

3 税目別告発事案の推移

平成24年度においても、従来どおり、所得税、法人税事案に取り組むとともに、相続税、消費税、源泉所得税事案についても積極的に取り組みました。

(1) 税目別の告発件数

年度 平成20 21 22 23 24
区分 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
所得税 % % % % %
14 27 15 31 8 16 12 29 6 13
法人税 34 65 27 55 33 66 29 69 33 73
相続税 - - - - 2 4 - - 2 5
消費税 内 2 内 1 内 2 内 0 内 1
4 8 6 12 7 14 1 2 3 7
源泉所得税 - - 1 2 - - - - 1 2
合計 52 100 49 100 50 100 42 100 45 100

(注) 消費税の内書は、消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)の告発件数である。

(2) 税目別の脱税額

年度 平成20 21 22 23 24
区分 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合
所得税 百万円 % 百万円 % 百万円 % 百万円 % 百万円 %
1,614 13 3,342 24 819 9 2,050 32 836 14
法人税 10,445 84 9,477 68 5,107 56 4,230 66 4,454 76
相続税 - - - - 2,649 29 - - 330 6
消費税 内 46 内 36 内 52 内 0 内 36
425 3 788 6 561 6 99 2 195 3
源泉所得税 - - 218 2 - - - - 48 1
合計 12,484 100 13,825 100 9,136 100 6,379 100 5,863 100

(注)

  • 1 脱税額には、加算税額を含む。
  • 2 消費税の内書は、消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)の脱税額である。

4 告発事件の概要

平成24年度に告発した査察事案で多かった業種・取引は、近年の経済社会情勢を反映し、「情報提供サービス」を含むインターネット関連業種の告発が際立ちました。

脱税の手段・方法としては、これまでに引き続き、売上除外や架空の原価・経費の計上がありました。また、複数の納税者に脱税を持ち掛け成功報酬を得ていた、いわゆる脱税請負人関与事案がありました。

脱税によって得た不正資金は、現金や預貯金として留保されていたほか、国外の不動産の購入、美術品の購入、遊興費に充てるなどの例が見られました。

脱税によって得た不正資金の隠匿事例としては、従業員名義で借りたトランクルーム内に現金を隠していたものなどがありました。

(1) 告発の多かった業種(3者以上)

平成22 23 24
業種 者数 業種 者数 業種 者数
不動産業 10 情報提供サービス 4 情報提供サービス 9
人材派遣業 3 食料卸 3 クラブ・バー 4
飲食料品小売業 3 建設業 3 畜産農業 3
出版・印刷関連業 3 - - - -

(注) 同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は、1者としてカウントしている。

(2) 脱税の手段・方法

脱税の手段・方法としては、情報提供サービスでは架空仕入の計上が多く見られたほか、

  • 消費税事案では、架空資産の購入を装い課税仕入を計上したもの
  • 国際事案では、売上を英領ヴァージン諸島に設立した法人の取引に仮装し、同法人名義の海外の預金口座に振り込ませて除外していたもの、中国の取引先に対し水増しした経費を送金し、水増し分をバックさせて国外預金で留保していたもの
  • 複数の納税者に脱税を持ち掛け成功報酬を得ていた、いわゆる脱税請負人関与事案では、架空の事業損失を計上して所得を少なくする方法を給与所得者等に指南して還付申告を行わせていたもの

などがありました。

(3) 不正資金の留保状況及び隠匿場所

脱税によって得た不正資金については、

  • 銀行の貸金庫内の現金
  • 国外の預金口座

などで留保されていた事例や、

  • ハワイの不動産を購入
  • 美術品を購入
  • 高級腕時計などの貴金属又はブランド品を購入
  • 多額の飲食代などに費消

していた事例がありました。
また、脱税によって得た不正資金の隠匿場所は様々でしたが、

  • 従業員名義で借りたトランクルーム
  • 物置の蚊取り線香の缶

に現金を隠していた事例がありました。

5 査察調査の状況

平成24年度に着手した査察事案では1事件当たり、着手日に延223名を動員し、75箇所を調査しました。

平成24年度に告発した査察事案では1事件当たり、着手から告発まで6か月の調査期間を要しました。

国際取引を利用した事案に的確に対応するため、査察国際課による調査支援及び租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換制度を積極的に活用しました。

経済取引等のICT化に的確に対応するため、査察開発課による調査支援及びデジタルフォレンジック(電磁的記録の証拠保全・解析技術)用機材を活用し、電子機器等の電磁的記録の証拠保全及び解析を行いました。

(1) 動員人数及び調査期間

平成24年度に着手した査察事案では1事件当たり、着手日に延223名を動員し、75箇所を調査しました。
平成24年度に告発した査察事案では1事件当たり、着手から告発まで6か月の調査期間を要しました。
また、調査期間が1年を超えた事件は5件ありました。

(2) 国際化への対応

国際取引を利用した事案に的確に対応するため、査察国際課による調査支援及び租税条約等の規定に基づく情報交換制度を積極的に活用しました。
平成24年度に処理した事案では、4事件で外国税務当局に情報提供を要請し、このうち、査察官を外国税務当局に直接派遣して事案の概要を説明した上で要請を行った結果、海外の貸金庫に保管されていた相続財産が判明したものなどがありました。

(3) ICT化への対応

経済取引等のICT化に的確に対応するため、査察開発課による調査支援及びデジタルフォレンジック用機材を活用し、電子機器等の電磁的記録の証拠保全及び解析を行いました。
平成24年度に処理した事案では、削除されていたメールデータを復元し脱税スキームを解明したものなどがありました。
また、米国内国歳入庁(IRS)のデジタルフォレンジック担当部署への現地視察を行いました。

6 査察事件の一審判決の状況

平成24年度中に一審判決が言い渡された件数は45件であり、うち44件について有罪判決が出され、実刑判決が1人に出されました。
出された実刑判決は、懲役2年8月でした。

項目 1 2 3 4 5
年度 判決件数 有罪件数 有罪率
(2/1)
実刑判決人数 1件当たり犯則税額 1人当たり懲役月数 1人(社)当たり罰金額
平成 % 百万円 百万円
22 42 42 100.0 3 116 12.9 28
23 60 60 100.0 4 131 16.9 28
24 45 44 97.8 1 97 12.8 21

(注) 実刑判決人数及び3〜5は他の犯罪との併合事件を除いてカウントしている。

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