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令和5年6月
大阪国税局

令和4年度 査察の概要

査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としています。

国税査察官は、近年における経済取引の広域化、国際化及びICT化等による脱税の手段・方法の複雑・巧妙化など、経済社会情勢の変化に的確に対応し、悪質な脱税者に対して厳正な調査を実施しています。

1 査察調査の概要

【令和4年度の取組】

  • しろまる 検察庁に告発した件数は21件、脱税総額(告発分)は17億円
     悪質な脱税者に対して厳正な査察調査を実施し、21件を検察庁に告発しました。 告発した査察事案に係る脱税総額は17億円であり、1件当たりの脱税額は81百万円でした。また、告発率は84.0%と平成5年度以来の高水準となりました。
  • しろまる 消費税事案、無申告事案、国際事案のほか、その他の時流に即した社会的波及効果の高い事案を積極的に告発
     消費税事案では、輸出物品販売場を営む法人が国内で仕入れた化粧品を外国人観光客に販売したように装い架空の課税仕入れ及び架空の輸出免税売上げを計上した不正受還付事案などを告発しました。
     また、下請業者から受けた資金提供を隠匿して自己の収入としていた元請会社の従業員の無申告事案のほか、外国法人を利用した国際的な不正スキームの指南者などを告発しました。
     その他、新型コロナウイルスの感染防止用アクリル仕切板加工の受注増大により、売上高の一部を除外していた時流に即した事案など、社会的波及効果の高い事案を告発しました。
  • 【令和4年度中の主な判決】

  • しろまる 一審判決14件全てに有罪判決が言い渡され、1人に実刑判決
     実刑判決は、他の犯罪との併合されたもので懲役2年8月でした。

2 重点事案への取組

令和4年度においては、査察制度の目的に鑑み、特に、消費税事案、無申告事案、国際事案、時流に即した事案などの社会的波及効果が高いと見込まれる事案を重点事案として積極的に取り組みました。

(1) 消費税事案

消費税に対する国民の関心が極めて高いことを踏まえ、消費税事案については積極的に取り組み、令和4年度は6件を告発しました。また、消費税の仕入税額控除制度や輸出免税制度を悪用した不正受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案であることから、引き続き積極的に取り組み、令和4年度は2件を告発しました。

年度 平成 令和
30 2 3 4
告発件数
11 8 3 7 6

(注)

  1. 告発件数は、消費税不正受還付事案を含む。

(参考)消費税不正受還付事案の件数及び不正受還付額

年度 平成 令和
30 2 3 4
告発件数
1 6 2 4 2
不正受還付額 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
40 212 35 62 443

(注)

  1. 1 告発件数は、ほ脱犯との併合事案を含む。
  2. 2 不正受還付額は、加算税を除き、未遂の還付額を含む。
トピック1 輸出物品販売場を利用した消費税不正受還付事案を告発

架空の課税仕入れを計上するとともに、外国人観光客に対する架空の免税売上げを計上するなど、輸出物品販売場における輸出免税制度を悪用した不正受還付事案を告発しました。

【事例】
 A社は、日用品の輸出販売のほか、輸出物品販売場の経営等を行うものですが、取引事実がないにもかかわらず、不正加担者と共謀して、同人が主宰する法人から化粧品等を仕入れたかのように装い架空の課税仕入れを計上し、当該化粧品等を輸出物品販売場において外国人観光客に販売したかのように装い架空の免税売上げを計上する方法で、不正に消費税等の還付を受け、又は受けようとしました。

(2) 無申告事案

納税者の自発的な申告・納税を前提とする申告納税制度の根幹を揺るがす無申告によるほ脱犯について積極的に取り組み、令和4年度は1件を告発しました。

年度 平成 令和
30 2 3 4
内4 内- 内2 内- 内-
告発件数
5 5 3 4 1

(注) 告発件数欄の内書は、単純無申告ほ脱事案の件数である。

(参考) 単純無申告ほ脱犯の規定は、悪質性の高い無申告に厳正に対処するため、平成23年に創設されました。

トピック2 大手繊維会社の元従業員の無申告ほ脱事案を告発

架空の請求書を作成するほか、借名預金口座で提供資金を受領するなどの方法で所得を秘匿していた所得税の無申告ほ脱事案を告発しました。

【事例】
 Bは、大手繊維会社の従業員という立場を利用し、下請業者から資金提供を受けていましたが、親族が主宰する法人名で架空の請求書を作成し、当該請求書に基づき、下請事業者から自身が管理する借名預金口座に資金を振り込ませるなどの方法により所得を隠匿した上で、所得税の確定申告書を申告期限までに提出せずに多額の所得税を免れていました。

(3) 国際事案

国際事案 経済社会のグローバル化の進展に伴い、国境を越えた経済活動が複雑・多様化しており、国際取引を利用した脱税への対応が求められています。
 このような状況の中、外国法人を利用して不正を行っていた事案や海外に不正資金を隠しているなどの国際事案に積極的に取り組み、令和4年度は6件を告発しました。
 また、外国当局と不正事案に対する取組等について情報交換を行うなど、当局間の連携強化に取り組んでいます。

年度 平成 令和
30 2 3 4
告発件数
2 2 9 4 6
トピック3 国際的な不正スキームを考案した脱税指南役を告発

法人の元代表者との共謀による外国法人を利用した不正スキーム事案について、不正スキームを考案し、脱税を指南した者を告発しました。

【事例】
 Cは、外国法人に対して架空の手数料や研修費など送金したように装い、大半を還流させる国際的な不正スキームを考案し、法人の元代表者に持ち掛けて脱税を指南するとともに、脱税に係る報酬を受領していました。
 なお、査察調査においては、租税条約に基づく情報交換制度(要請に基づく情報交換)を活用し、外国における不正スキームを解明しました。

(4) その他の社会的波及効果の高い事案

時流に即した事案などの社会的波及効果が高いと見込まれる事案に対して積極的に取り組みました。

トピック4 新型コロナウイルス関連業者の法人税ほ脱事案を告発

新型コロナウイルスの感染防止用アクリル仕切板加工の受注増大により、多額の所得を得ていたにもかかわらず、売上高の一部を除外していた法人を告発しました。

【事例】
 D社は、プラスチック加工を営む法人ですが、近年は、新型コロナウイルス感染症の拡大とともに、感染防止用アクリル仕切板加工の受注増大により、急激に売上げを伸ばしており、売上先から受け取った手形の一部を代表者名義の個人預金口座などで取り立てる方法により売上高の一部を除外することで、法人税を免れていました。

3 不正資金の留保・費消状況及び隠匿場所

脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金として留保されていましたが、外国の不動産の購入や有価証券等への投資のほか、脱税者が費消していた事例もあり、不正資金の一部から数千万円の高級車両が購入された事例、競馬等のギャンブルや高級クラブの遊興費として数千万円が支出された事例なども見られました。
また、脱税によって得た不正資金の隠匿場所は様々でしたが、
  しろまる 居宅に置かれた金庫の中
  しろまる 金融機関の貸金庫の中
に現金を隠していた事例などがありました。

4 査察事件の一審判決の状況

令和4年度中の一審判決は14件であり、全てに有罪判決が言い渡され、そのうち1人に実刑判決が出されました。なお、実刑判決は、他の犯罪と併合されたものであり、懲役2年8月でした。

5 参考計表

(1) 着手・処理・告発件数、告発率の状況

年度 平成 令和
項目 30 2 3 4
着手件数
40 35 31 28 36
処理件数 (A)
40 40 27 29 25
告発件数 (B)
29 30 20 21 21
告発率 (B/A) % % % % %
72.5 75.0 74.1 72.4 84.0

(2) 脱税額の状況

年度 平成 令和
項目 30 2 3 4


総額 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
2,246 2,647 1,453 1,745 1,827
同上1件
当たり
56 66 54 60 73
告発分 1,355 2,298 1,173 1,307 1,705
同上1件
当たり
47 77 59 62 81

(注)

  1. 脱税額には加算税額を含む。

(3) 税目別告発事案の推移

イ 税目別の告発件数

年度 平成 令和
項目 30 2 3 4
所得税
2 7 3 2 1
法人税 15 12 13 11 14
相続税 - - - - -
消費税 内1 内6 内2 内4 内2
11 8 3 7 6
源泉所得税 - 3 1 1 -
合計 29 30 20 21 21

(注)

  1. 消費税の内書は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む。)の告発件数である。

ロ 税目別の脱税額

年度 平成 令和
項目 30 2 3 4
所得税 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
102 648 329 144 43
法人税 747 1,097 714 707 922
相続税 - - - - -
消費税 430 496 81 361 740
源泉所得税 76 57 49 95 -
合計 1,355 2,298 1,173 1,307 1,705

(注)

  1. 脱税額には加算税額を含む。

(4) 告発の多かった業種

令和2 3 4
業種 者数 業種 者数 業種 者数
不動産業 7 不動産業 11 建設業 5
建設業 5 建設業 3 不動産業 2
サービス業
(他に分類されないもの)
2 その他の小売業 2 その他の卸 2

(注)

  1. 同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は1者としてカウントしている。

(5) 査察事件の一審判決の状況

項目 1 2 3 4 5
判決 有罪 有罪率 実刑判決 1件当たり 1人当たり 1人(社)当
年度 件数 件数 (2/1) 人数 犯則税額 懲役月数 たり罰金額
令和
内1 内1 内1
2 25 25 100.0 1 55 17.1 14
% 百万円 百万円
内2 内2 内1
3 27 27 100.0 1 35 17.2 10
4
内2 内2 内1
14 14 100.0 1 52 13.1 12

(注)

  1. 1 表中の内書は他の犯罪との併合事件を示している。
  2. 2 3〜5は他の犯罪との併合事件を除いてカウントしている。
  3. 3 3〜5は2有罪件数を母数として算出している。

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