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ニーズに応えるソリューションを迅速に提供する
〜統計学的手法を活用した材料配合〜

NOKは長年、時代の変化に合わせてニーズに応えてきた経緯から、計8万8000種類ものゴム材料の配合レシピを蓄積している。現在はそのデータを元に統計学的手法を活用し、新しい材料配合の最適化を行っている。この手法は、開発期間の短縮に繋がり、自動車の燃費性能向上や電動化といった激しい環境変化の中でも、ニーズに迅速に対応できる武器となっている。

多彩な性能の製品を量産する力が強み

NOKは1941年の創立当初からゴムの研究開発を進めており、その成果を示す積み重ねた数字がある。取り扱うゴムや加硫剤、補強材、充填剤などの原料は約5500種類あり、量産するゴム製品を作るために検討したり実際に量産したりした材料のレシピは8万8000種に上る。NOK R&D 材料技術部材料開発一課の古川智規氏は、NOKの強みは「5500種類の原料を安定供給できる調達力」のほか、「多くの機能性原料を発掘できる調査力」、「配合ノウハウと原料の特性を理解し、使いこなす配合技術」にあると胸を張る。

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[画像:NOKで取り扱う原料は5,500種あり、これを基にNOKで検討・量産した材料は88,000種になります。左側には「数多くの機能性原料を発掘できる調査力」と記載され、右側には「5,500種の原料を安定供給できる調達力」の説明があります。中央には「顧客の様々な要望に沿った材料開発」と記されており、下方には「長年の蓄積された配合ノウハウ」と「原料の特性を正確に理解し、適用する配合技術」と記載されています。さらに下部には「顧客のニーズに合わせた材料を安定して供給できる事がNOKの強み」と強調されています。]

ニーズの多様化や、研究開発人員の増加に伴い、材料レシピの数は増え続けている。材料技術部の阿部克己氏は、ここ5年ほどは毎年4000から4500種ペースで配合レシピが増えていると話す。阿部氏は「近年はニーズが多岐にわたり、基本的な機能にプラスアルファの機能が求められている」と研究開発の難易度も上がっていることを説く。例えば、省エネルギー、低燃費のために、オイルシールのシール機能を持つことと同時に摩擦力を抑える、というニーズを満たした低フリクション製品「Le-μ's(レミューズ)」はその典型だ。開発の難易度アップにより、材料技術部の技術者も増えているという。

開発スピードアップも重要

NOKの材料開発は、顧客からの製品機能要求の収集から始まる。まず、すでに量産している材料からニーズを満たすものを選定する。そこで適したレシピがあればそれを採用する。適したものがない場合、材料開発の出番となる。要求事項を満たし、安定した品質で大量に製造できる材料の開発を進める。

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[画像:顧客からの製品機能要求の収集から始まる材料開発プロセスのフローチャート。プロセスは以下のように進行します:1. 顧客から製品機能要求の収集。2. 量産材からの選定:要求満足 → 量産。要求不満足 → 製品機能の材料特性への落とし込み。3. 要求事項に合わせた材料開発:配合/ノウハウの活用。統計的手法による配合設計。要求満足 → 量産。最下部には「蓄積された配合ノウハウ+統計的手法」の活用により「スピーディーな材料開発の実現」と記載されています。]

古川氏によると、開発テーマは年間200ほど。そのうち160ほどが材料開発となる。迅速な対応が必然となっており、これまでは技術者の経験に基づいて開発を行っていたが、現在は統計学的手法を導入し、材料開発のスピードがアップしたという。
統計学的手法とは、複雑なパラメーター(変数)があり、本来は数多くの実験が必要なものを、必要最低限の実験だけで最適値を導き出すものだ。例えば、低フリクション(摩擦)のオイルシール材料を開発する際、配合量の異なる充填剤5種を使うとする。摩擦係数や硬さなどを満たす最適な配合量を算出するため、一つの充填剤に対して3パターンの配合量を選定した場合、35=243と単純計算で200を超える数の実験が必要となる。これに統計学的手法を使うと、30の実験に減らすことができる。実験は通常、時間がかかるため200の実験だと1カ月ほどかかる。それを5日に短縮できるという。NOKは統計学的手法の活用に解析ソフトを利用している。材料技術に携わる技術者は日々、統計学的手法を勉強しており、全員が解析するスキルを持っている。

[画像:低フリクション(トルク)なオイルシール材料開発に関する検討図。蓄積されたノウハウより、適用する充填剤を選定。各充填剤の配合量(重量部)は以下の通り:充填剤A 10〜50、充填剤B 10〜45、充填剤C 0〜20、充填剤D 0〜30、充填剤E 2〜10。各充填剤を均等な3点で選定し、実行すると35〜243通りの実験が必要になると記述。開発の時間及びコストを多く要する。統計的手法により、最適な充填剤の組み合わせ及び配合量を決定し、開発目標を満足するように計算する。統計ソフトの使用により、実験点を30水準に限定し、相関性から要求を満足する最適点を計算。応答目標値(最大、最小、75±5)に合わせた最適配合部数は、充填剤A 10部、充填剤B 23部、充填剤C 8部、充填剤D 3部、充填剤E 2部。スピーディーかつ低コストで材料開発が可能であると強調されています。]

阿部氏によると、材料開発でもデジタル変革(DX)を推進している。これまで紙で管理していた測定結果の一部を、すぐにデータ入力される仕組みにした。基礎特性はすでにデータ連携し、今後は摩擦係数や伸び強度、圧縮永久歪みなどの結果も即時にデータ化できるようにするという。また将来的には、「開発に必要な条件や要求を入力すると適したレシピを提案してくるような仕組みを作りたい。だが、自動化は難しく、量産性や加工の容易さなどを考慮するのは技術者の仕事として残るだろう」と見ている。これからも技術者たちの材料開発への挑戦は続く。

(写真左)

阿部 克己

NOK株式会社 NOK R&D 材料技術部 部長

NOK入社後、オイルシールの配合設計、接着剤、表面処理剤などの開発に携わる。2015年よりThai NOKに出向し材料管理業務全般に従事。2018年に材料技術部に復帰し、2023年より材料技術部の部長として56名のチームを率いる。

(写真右)

古川 智規

NOK株式会社 NOK R&D 材料技術部材料開発一課

2008年に入社し、オイルシール関連の材料開発に従事。2016年より混練拠点であるNOKエラストマーに出向し、量産混練についてのスキルを習得する。2018年にNOKに復帰し、高圧水素シールや電子部品関係の材料開発に従事した後、2023年7月よりオイルシール、ガスケット、船舶関連の業務に携わる。

記事内のデータ、所属・役職等は2023年8月現在です。

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