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金融とアカデミアとの対話
〜地球環境危機の今、どう連携するか〜
(環境省記者クラブ、環境記者会、筑波研究学園都市記者会同時配付)
※(注記)5.報告書 のリンク先の一部に修正がありました(2022年2月10日)
国立研究開発法人国立環境研究所
社会システム領域
領域長 亀山康子
地球システム領域
副領域長 江守正多
企画部特任フェローならびに
Future Earth国際事務局日本ハブ
事務局長 春日文子
1.ワークショップの背景
近年、脱炭素に向けた金融界の動きが加速しています。昨年11月に英国グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)では、世界の主要な金融セクターの連携を推し進める組織体である「ネットゼロのためのグラスゴー金融連合(GFANZ)」が設立されました。日本の金融業界も参画しています。
投資や金融において脱炭素の考えを取り入れるためには、企業にとっての気候リスクを把握する必要がありますが、そのために必要な制度や手段が十分に整備されているわけではありません。研究者からどのような科学的知見や情報を提供できれば、ネットゼロ金融が進めやすくなるのか。国立環境研究所として、日本経済の脱炭素社会に向けた動きをどのように支援できるのか。このような立ち位置から、意見交換の場として、ワークショップを開催することになりました。
Future Earthは、分野を超えた科学者の連携と社会との協働を進める国際研究プログラムです。ここでも、金融業界の役割を重視していることから、国立環境研究所と共催し、国際的にも知見を共有することになりました。
2.ワークショップの概要
ワークショップは2021年11月25日と30日の2回に分けてオンラインで実施しました。金融関連企業等から14名、行政から3名、国立環境研究所や大学などから研究者が15名参加し、そのほかにも10名の方がオブザーバとして参加しました。全員が所属組織の代表ではなく個人として参加し、率直な意見交換を目指しました。
長期的に考えれば、今後世界全体で脱炭素化が加速するため、化石燃料に依存している企業や温室効果ガス排出量が多い企業は対策を求められるリスク(移行リスク)に直面することが予想されます。同時に、気候変動が進むことで異常気象等による被害を受けるリスク(物理的リスク)が高まることも明らかです。
ESG投資やグリーンファイナンス等、環境保全と両立させる概念は広まりつつあるものの、上記の2種類のリスクに対応しながら利潤最大化も同時に目指すことが求められる状況に関して、金融関係者から悩みが共有されました。
移行リスクに関しては、脱炭素に至る社会経済シナリオや道筋に関する情報への要望がありました。特に日本国内で各業種ごとに、今後、どのような移行リスクに直面する可能性があるのか、また、国が炭素税などの政策を導入した場合の影響などに関する情報も求められました。国際的には、企業の情報開示に関して、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の動向への注目度が高いですが、日本の企業が取り入れやすい手法が提供されることへの期待が示されました。同様に、世界では、脱炭素化と自然保全(生物多様性保全含む)との両立も指摘されており、生態系に関する情報開示(TNFD)の動きについても今後対応が必要であるという指摘がありました。
物理的リスクに関しては、実際に企業ごとにリスク評価するためには、かなり細かい精度で情報が開示される必要がある一方で、そのような開示を望まない企業もあるだろうという意見が出されました。
3.今後の連携について
これまで直接話し合う機会のなかった金融業界関係者と国立環境研究所の研究者が、それぞれの取り組み、悩みや課題を共有することができました。同時に、これまで金融界と科学・アカデミアの対話や連携は国内外の様々な場面で必ずしも十分ではなく、今後の継続と強化が必要であるという問題意識を得ることができました。さらに今回参加していないステークホルダーの参画の有効性についても認識共有されました。
4.研究助成
本研究は、国立環境研究所の気候危機対応研究イニシアティブ、 Future Earth日本ハブ、並びに(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF20212002)により実施されました。
5.報告書
【タイトル】
将来のために、今できることは何か?
金融界とアカデミアの対話から
国立研究開発法人国立環境研究所、Future Earth日本ハブ共催
「地球環境に関するアカデミアと金融界のワークショップ」報告書
【URL】https://www.nies.go.jp/social/news/report202202.html
6.問い合わせ先
【報告書に関する問い合わせ】
国立研究開発法人国立環境研究所 社会システム領域
領域長 亀山康子
【報道に関する問い合わせ】
国立研究開発法人国立環境研究所 企画部広報室
kouhou0(末尾に@nies.go.jpをつけてください)
029-850-2308
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