NEDO水素・燃料電池成果報告会2024
団体名:
発表日:2024年7月 日
発表No.
NEDO水素・燃料電池成果報告会20218燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/燃料電池の多用途
活用実現技術開発/商用運航の実現を可能とする水素燃料電池船とエネルギー供給システムの開発・実証
P1-36
連絡先:岩谷産業株式会社 岩谷水素技術研究所 牧平尚久
E-mail: makihira@iwatani.co.jp
岩谷産業株式会社、関西電力株式会社、株式会社 名村造船所、国立大学法人 東京海洋大学
連絡先:○しろまる○しろまる○しろまる
○しろまる○しろまる○しろまる○しろまる○しろまる○しろまる○しろまる○しろまる
実施項目1)トータルエネルギーマネジメントシステムの開発
実施項目3)船体構造の開発
研究の目的
実施項目2)エネルギー供給インフラの開発
実施項目4:実証運航
大阪・関西万博での運航、将来の水素燃料電池船普及を見据え、以下の開発と実証運航を行なう。
・充填/充電の比率やタイミングに係るマネジメントシステムの開発 (関西電力、東京海洋大学)
・エネルギー供給インフラ(水素と電気のバンカリング設備)の開発 (岩谷産業、関西電力、東京海洋大学)
・船体構造の開発 (燃料電池等設置区画の標準化に向けた検討) (岩谷産業、名村造船所、東京海洋大学)
これらを通じ、コストの低減や、複数隻の水素燃料電池船に滞りなく充填/充電できるシステムの提案を行なう。
〇研究目的
現時点で事業化、商用運航している水素燃料電池船は我が国にほとんど存在していない。
・充填/充電の比率やタイミングに係るマネジメントシステム
商用化、普及を目指す上では複数隻の運航を想定し、燃料供給をタイミング良く行うこと、
各水素燃料電池船が絶え間なく運航できることが重要だが、そのための仕組みが整っていないのが現状である。
(例えば、本事業で開発する、船舶・バンカリング設備間での通信を含むトータルエネルギーマネジメントシステム)
・エネルギー供給インフラ(水素と電気のバンカリング設備)
液化水素型燃料電池船の開発検討や水素混焼(軽油)船の運航といった状況変化、あるいは、
従前よりある実証試験艇等も存在するが、それらへの水素バンカリング施設については検討が未成熟であり、
普及型のステーションの開発やそれに伴う法規制に係る対応は未だ完了していない。
・船体構造(燃料電池等設置)
2021年8月に内航船について国土交通省海事局より「水素燃料電池船の安全ガイドライン」が公表されたが、
日本国内において、現時点ではこれに従って建造された船舶は少ない。
同等安全証明により適用基準緩和が可能とされているものの、
現実的には、内航船建造の小型造船所ではそこまでの対応は困難であり、実績が必要である。
本研究では 日本国内で水素燃料電池船と供給システムを建造・建設した上で、複数隻が絶え間なく運航できる
トータルエネルギーマネジメントシステムの構築を三位一体で開発することを目指す。
2023年度は、エネルギー搭載量配分等モデルケースの提案に向けて
実際の船舶のデータの入手調整を実施。
いくつかのタグボートの運航データを入手し、それ以外の船種(例えば屋形船や
フェリー)のデータ入手について調整を継続中。
2024年度は、年度半ば以降に建造を完了する水素燃料電池船へ
水素および電気バンカリングを行ない、総合試験を実施する予定である。
大阪湾での実証運航イメージ(CG)
水素ステーション(トレーラー置場、圧縮機、蓄圧器など) ディスペンサー収納庫、ノズル収納庫
<水素バンカリング設備>
水素バンカリング設備と電気バンカリング設備の建設を完了。
<電気バンカリング設備>
ノズル収納庫
充填アーム
蓄圧器(×ばつ3)
圧縮機
トレーラー置場
管理棟
ディスペンサー 充填アーム、ノズル収納庫 充填アーム(概略構造)
受配電設備(40ftコンテナ内収容)
急速充電器(盤収容)
蓄電池およびPCS(20ftコンテナ2基内収容)
ケーブルマネジメントシステム(ガイドローラー方式)
水素バンカリング設備・技術
◇ 耐塩化
塩水暴露を行ない、塩害の影響を確認。さらに、ディスペンサー
およびノズル・ホースは雨水や塩害対策のため、収納庫に格納。
◇ 係留中の波の影響や潮位差による船体の揺動への対応
充填アームおよびホースにて潮位差や揺動を吸収する構造。
意図せぬ船舶の離岸によるホースの破損を防止するための
措置として、アーム・ホース接続部に緊急離脱カプラーを設置。
◇ 単一設備・船舶による運用リスクへの対応
圧縮機等の設備トラブルに備えた、バックアップラインの設置など。
◇ 船舶(海域)への充填対応
FCV向けの一般的な水素ステーションとは異なる対応として、
護岸敷使用許可、水域占有許可申請など。
電気バンカリング設備・技術
◇ ロードバランシング
陸上蓄電池からの電力供給により、水素バンカリング設備や
急速充電器稼働時にピークとなる系統受電電力の低減制御。
◇ 耐塩化
重耐塩仕様のコンテナや収容盤により対策。
◇ 係留中の波の影響や潮位差による船体の揺動範囲拡大対応と干渉回避
急速充電器のケーブルマネジメントシステムをアーム方式から
ガイドローラー方式に変更。
◇ 長時間の充電対応(255分以上)
急速充電器(CHAdeMO)の上位制御として、最大充電時間後の
充電再開制御をTEMSに実装。
<各バンカリング設備・技術の特徴>
船舶の基本設計 ■しかく:水素、■しかく:蓄電池
水素タンクモジュール
2月頃の建造状況(※(注記)発表時現在はほぼ完成)×ばつ全幅約8m
搭載エネルギー:
圧縮水素及び
リチウムイオンバッテリー
想定航路長
必要エネルギー量(水素&電気)
シーマージン
巡航速度
巡航時間 消費電力
機関推定出力と
巡航速度の関係
実験船による
試験航路運航
風や潮汐、海流、天候等の
多数の外乱の影響考慮
<船側必要エネルギー量の推測手法策定>
船側の必要エネルギー量(水素&電気)は、実験船*の試験航路
での運航によりエネルギー消費量を取得してシーマージンを求め、
本船想定航路での運航速度・時間より推測。
*)東京海洋大学「らいちょうN」
運航形態による必要エネルギー量を求め、水素あるいは電気主体の
運航可否を明らかにし、それらのエネルギー配分を示した。
必要エネルギー量 推測フロー
バンカリング
頻度
運航必要
エネルギー量
[kWh]
エネルギー
仕様
消費エネルギー
内訳
運航の特徴
水素[%]電気[%]毎日 960
水素主体 100 0 水素のみで運航可能
電気主体 2 98 電気のみでは若干不足
3日毎 2,600
水素主体 77 23 電気の残量に余裕あり
電気主体 64 36 電気の不足分が多い
1週間毎 5,100
水素主体 - - 不成立
電気主体 - - 不成立
想定航路の運航形態による必要なエネルギー量の検討結果
(船舶の使用可能エネルギー量:水素2,015kWh、電気934kWh)
<TEMSシステム開発>
◇ バンカリング設備の適切な稼働計画
i) 運航に必要なエネルギー量供給
船舶側より情報を取得し、船舶および陸上
蓄電池の充電電力の制御により充填・充電
時間を確保
ii) 系統受電電力抑制
陸上蓄電池からの電力供給による
ピークカット
iii) コストやCO2排出量削減
目的関数として設定
システム構築し、機能検証実施
TEMSシミュレーション結果例
(3日毎バンカリング、2,600kWh、水素・電気:現状料金)
契約
電力
系統からの受電電力が契約電力を超える期間に陸上蓄電池より
電力供給し、契約電力以下に抑制。出航までに必要な
エネルギー量のバンカリングを完了させるスケジューリング可能。
基本設計を完了し、 2023年6月より
詳細設計ならびに船体建造を開始した。
<船体の建造>
安全ガイドラインへの対応、リスク評価の実施、
電気推進システムの細部仕様検討、制御システムの
仕様検討(特に水素充填中の安全対策)について
検討を進めつつ、船舶の建造を進めており、完成間近。
<実証運航>