NEDO水素・燃料電池成果報告会2024
団体名:
発表日:2024年7月 日
発表No.
NEDO水素・燃料電池成果報告会202181-8
連絡先:国立大学法人山梨大学 水素・燃料電池ナノ材料研究センター
(fcnano-as@yamanashi.ac.jp)
(大)山梨大学、パナソニックホールディングス(株)、タカハタプレシジョン(株)、日本化学産業(株)、富士電機(株)
燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業
/研究開発項目II 水素利用等高度化先端技術開発
/アニオン膜型アルカリ水電解セルの要素研究と実用化技術の確立
1.事業概要
事業期間:2023年6月1日〜2025年3月31日
事業目的:アニオン膜型アルカリ水電解装置は、アルカリ水電解の利点(貴金属触媒が不要、大規模化が容易)と高分子膜型水電解の利点(高電流密度が可能、再生エネル
ギー変動に対する応答性が高い、得られる水素が高純度)を併せ持ち、現在実用化が進められているプロトン膜型水電解膜装置に比べて高効率化と低コスト化を両立できる高いポ
テンシャルを持っている。 しかし、これまで耐久性に優れるアニオン膜およびそれと組み合わせて高性能を発揮できる非貴金属系触媒がなく、水電解装置としてその利点と特徴が十分
に発揮できていない。 本研究ではこの課題を解決してアルカリ水電解セルの高性能化と高耐久化を達成し、我が国の水素社会実現を見通すための基幹技術として大きく貢献するこ
とを目的としている。具体的には産学で共同しながら、アニオン膜型アルカリ水電解セルに関する以下の重要課題に取り組む。
1 アニオン膜・イオノマーの高性能化・高耐久化と量産技術(山梨大学、タカハタプレシジョン)
2 非貴金属触媒の高性能化・高耐久化と量産技術(山梨大学、日本化学産業)
3 アニオン膜型アルカリ水電解MEAの設計と高性能化・高耐久化(山梨大学、パナソニック ホールディングス)
4 アニオン膜型アルカリ水電解セルの構築とスタック化の検討(富士電機、山梨大学)
2.研究開発の進め方
1〜4の研究開発項目は上記のように分担して実施するが、1アニオン膜・イオノマーや2非貴金属系触媒の開発・改良と
並行して、これまでのNEDO水素利用等先導研究開発事業で我々が開発した標準材料を用いて3界面設計と高性能・高
3.研究成果
1 アニオン膜・イオノマーの高性能化・高耐久化と量産技術
2 非貴金属触媒の高性能化・高耐久化と量産技術
3 アニオン膜型アルカリ水電解MEAの設計と高性能化・高耐久化
4 アニオン膜型アルカリ水電解セルの構築とスタック化
の検討
TaをドープしたTiO2(連珠構造を有する)粒子に着目し、これと我々が開発
したアニオン膜QPAF-4との複合膜を作製し、各種膜物性評価を行った。
QPAF-4
• ダイコート法およびキャスト法による製膜を検討したところ、ダイ
コート法でより均一な複合膜が得られた。
• Ta-TiO2担持量を最適化することにより、機械強度(破断伸
びおよび破断強度)とアニオン導電率を向上させることに成功
した。
• QPAF-4の量合成および製膜を検討し、ロールトゥーロール法
によりQPAF-4膜を製膜することが可能となった。
耐久化、4水電解セルの構築とスタック化の検討 の項目を進める。このような進め方により、新規材料が開発され次第、適切な方法で速やかにセル評価を実施できるだけでなく、ベン
チマーク材料で得られた知見を開発材料の改良にフィードバックできるため、2年間という短い開発期間にもかかわらず効率よく成果を挙げることができる。なお、1〜4の各触媒、電解
質材料、膜電極接合体開発およびセル、スタックの開発は、相互のフィードバックを実施しながら全事業期間で推進する。
NiCoOまたはNiFeOをアノード触
媒, QPAF-4を電解質膜とイオノ
マーに用いたAEMWEセルの起動
停止模擬性能評価(4 A cm-
2, 10 sec.⇔0.1 V, 10 sec、
2000 cycles)と2000サイクル
後のTafel plots(挿入図)
NiCoOをアノード触媒、NiFeOをカソード触媒、QPAF-
4を電解質膜とイオノマーに用いた貴金属フリーAEMWE
セルの初期IV性能およびアイオノマー/触媒比(I/C)の効
果。(a)両極KOH水溶液供給、(b)アノードのみKOH
水溶液供給1.41.51.61.71.81.92.02.12.20.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5CellVoltage
(iR-included)/V
Current density / A cm-2
両極KOH給水
カソードKOH給水
アノードKOH給水
• 多 孔 性 の 連 珠 構 造 か ら 成 る NiFeO 触 媒 に お い て 、 最 表 面 に 非 結 晶 相 が あ る
Ni0.88Fe0.12O-1が市販のIrO2触媒よりも優れたOER活性を示すことを見出した。In situ
ラマンスペクトルとDFTにて、O2生成反応の活性化エネルギーが低いことが明らかとなった。
• 最表面に高結晶相があるNi0.88Fe0.12O-2が、優れたHER活性を示すことを見出した。
今後は、貴金属触媒と同等な活性を目指す予定である。
• NiCoO系へのMo置換により、OER活性が向上する新たな知見も見出した。これらの各触
媒は数十グラムレベルでの量合成にも成功した。
• NiFeOアノード触媒を用いたセルはNiCoOよりも耐久
性が優れており、起動停止模擬試験2000サイクル
後も高いI-V性能を示した。
• 両極貴金属フリーのAEMWEの運転に成功、カソー
ドI/Cが大きくなるほど電解性能が向上することを見
出した。
• 電極触媒インクの調製方法(溶媒, イオノマーIEC,
分散方法など)を検討し、アプリケータで均質な触媒
層作製を可能とした。スプレー法で作製したCCMと同
等の初期性能を得ることができた。1.41.51.61.71.81.92.02.12.20.001 0.01 0.1 1 10CellVoltage
(iR-included)/V
Current density / A cm-2
20cc/min
10cc/min
5cc/min
• 中規模サイズ(25cm2)MEA面内のKOH流速を流体シミュ
レーションにより評価し、電極面内でのKOH水溶液流速が均
一になるような流路改良セパレータの設計につなげた。
• 改良セパレータを用いたAEMWEセルにおいてKOH水溶液の
偏流が緩和される効果を確認、アノードのみKOH水溶液給
水条件で両極KOH水溶液供給条件と同等以上のセル特性
を得ることができた。
• 生成ガス気泡によって拡散過電圧が懸念される高電流密度
領域において、KOH溶液低供給速度で高性能を維持できた。
中規模サイズ(25cm2)の面内流速比較(左:改良前、
右:改良後).
NiFeOをアノード触媒、QPAF-4を電解質膜とイオノマーに用い
た中規模サイズMEAの初期IV特性とKOH水溶液供給方法の
効果

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