発表者名 盛山浩司、大森一幸、後藤直哉
団体名 本田技研工業株式会社
株式会社トクヤマ
三菱商事株式会社
発表日 2024年7月19日
水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発/
副生水素と車両からのリユースを想定した定置用燃料電池電源の
データセンター向け実証
NEDO水素・燃料電池成果報告会2024
発表No.B2‐6
連絡先:
三菱商事株式会社
地球環境エネルギーグループ
後藤 直哉
naoya.goto@mitsubishicorp.com
事業概要
1. 期間
開始 : 2023年8月
終了(予定) : 2026年3月
2. 最終目標
3.成果・進捗概要1地方展開に適した分散型データセンターを用いて、自治体や地元企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献す
るとともに、副生水素と車両からのリユースを想定した定置用燃料電池電源を用いて、データセンターの低脱炭素化(GX)
にも貢献することを目指す
• 山口県周南市に於いて、トクヤマの食塩電解事業から生成される副生水素を活用し、本田技研工業が燃料電池車から
のリユースを想定して開発する定置用燃料電池電源から、三菱商事が運用する分散型データセンターに電力供給を行う• 燃料電池の特性を活かしたデータセンター及び需給調整市場向けの活用可能性、また燃料電池と水素供給を組み合わ
せたビジネスモデルの経済性・事業性を検証する
• 本実証で得られる知見をもとに、同地域におけるクリーンな電力を用いたデータセンターの導入・拡大や国内外での
ビジネス展開の検討を進める
1 車両用燃料電池モジュールのリユースを想定した定置用燃料電池電源の開発
リユースを想定した定置用燃料電池電源およびエネルギーマネジメントシステムの開発を実施し、設備仕様を検討し
た。これに基づき、工事仕様作成、設計、調達先など工事に必要な作業を開始した
2 想定ビジネスモデルの経済性・事業性検証
想定ビジネスモデルのトータルコスト(TCO; Total Cost of Ownership)分析のために各種データ収集や分析シミュレーショ
ンツールの設計・開発
3 各種調査関連
水素関連の政策動向調査、データセンターの成⻑性及び消費電力の現状調査、燃料電池の導入状況調査、実証地域に
於けるデータ処理ニーズに関する需要家ヒアリングを実施
4 地域ステークホルダーとの連携とHFC‐GDX検討会の開催
第1回 HFC‐GDX検討会(有識者・関係者による本プロジェクトについての検討会。検討委員の他、山口県・周南市(藤井
市⻑他)・大学関係者も出席)を2023年9月4日に開催し、副生水素を活用したデータセンターによるGDX(DX+GX)の可能性
を議論した
• 2021〜2022年度「副生水素等による大規模水素供給・
利活用モデル(周南モデル)の構築と定量化に関する調
査」(トクヤマ・テクノバ)では、港湾エリアと学研エリ
アでの水素利活用でデータセンターの可能性が指摘さ
れている。
• 山口県・周南市・山口大学の地域ニーズ(水素利活用、
デジタル拠点化)に同時に応えることが可能。
(山口県・周南市・山口県産業技術センター・山口大
学・周南公立大学の協力を得ている)
1. 事業の位置付け・必要性
2021〜2022年度「副生水素等による大規模水素供給・利活用モデル
(周南モデル)の構築と定量化に関する調査」より
水素利活用
エリア
の設定
学研エリア
港湾エリア2事業の背景
• IT情報の管理やネットワークを活用したコンテンツ・サービスの普
及などにより、データセンターの市場規模は拡大
• 脱炭素社会実現のために、様々なアプリケーションの脱炭素化を進
める必要があるが、今後消費する電力量の増加が見込まれるため、
データセンターの脱炭素化は急務
需要想定例:
• 山口県・山口県産業技術センター: バイオマスの利活用・分布解析、
気象データ解析、再エネ利活用分析
• 周南市: バイオマス利活用・緑山バイオマス材生産モデルの分析
• 山口大学: 医療データ、衛星データ解析(JAXAと連携)、デジタル・
AI大学教育
• 周南公立大学: ビジネス戦略、デジタル・AI大学教育、周南コンビ
ナートの改善3データセンター市場概況 実証地域に於けるデータセンター需要
1. 事業の位置付け・必要性
他脱炭素オプションとの比較 燃料電池電源システムの優位性
1. 事業の位置付け・必要性
• 導入する定置用燃料電池電源システムは電力の安定供給が可能(蓄電池
システム・内燃機関+カーボンクレジットなど他脱炭素オプションとの
比較の中でも環境性能、ノイズ・振動、起動時間のバランスの観点で優
位姿勢があると想定している)。
• 燃料電池電源システムは、対電化・対蓄電池で優位性を持つ領域で
導入が進むことを想定している。
• 実証を推進するデータセンター領域では、電力が途絶えることに
より甚大な経済的損失が生じるミッションクリティカル系のセク
ターであり、電力のレジリエンス・BCPという要件が求められる。
燃料電池電源システムの訴求価値
内燃機関
蓄電池
燃料電池電源システム
ディーゼル
リチウムSOFCPEFCx〇
△しろさんかく〇環境性能
(エミッション)
基本特性〇〇
△しろさんかく
△しろさんかく×ばつ〇△しろさんかく×ばつ〇〇〇ノイズ・振動
○しろまる
△しろさんかく
○しろまる
○しろまるBCP(災害対応力・
地政学リスク)×ばつ〇起動時間
非常用
電源従来機能〇〇
△しろさんかく×ばつ
△しろさんかく
導入コスト〇〇
△しろさんかく〇応答速度
系統
平準化拡張機能〇△しろさんかく
△しろさんかく〇耐久性〇△しろさんかく×ばつ
△しろさんかく
導入コスト4リユースを想定した燃料電池を低負荷(高効率)運転で行うことにより、CAPEXを抑えつつ、OPEXも抑える制御技術を開発し、
TCO削減を実現する [例] 性能の異なる4つの燃料電池とバッテリーによる協調制御による低燃費・高効率発電技術
FC ECU FC ECU FC ECU FC ECU BMS
MG ECUPLC出力が低いところで使用することにより,
劣化後のFCでも出力可能
さらに高効率運転により燃料消費量削減
出力が低いところで使用することにより,
さらなる劣化を抑制
IV特性1 IV特性2 IV特性3 IV特性4
(例) 80kW
(例) 18kW (例) 18kW (例) 18kW (例) 18kW
出力 [kW]
出力 [kW]
耐久時間
効率[%]2. 研究開発マネジメントについて
技術開発内容5Step1: 既存データセンター、エッジデータセンターの負荷プロファイルを追従できる燃料電池を机上検討に基づいて設計
Step2: ミッションクリティカルであるデータセンターへの接続前に燃料電池負荷プロファイルをロードバンク(負荷装置)プロファイルとして与え・
消費して事前検証
Step3: スイッチやデータセンターUPSを含めた実機システムで起動時間、含めた動作実証・総コストを算出
Step1 Step2 Step3
机上検討による設計 負荷装置を活用した事前検証 実機を利用した検証
データセンター負荷
再エネ発電
燃料電池負荷
(ロードバンク負荷)
[検証対象]
燃料電池の出力応答性(直流電力)
[検証手法]
数値シミュレーションによる検証
[検証対象]
スイッチ,プラントコントローラーの応答性,
交流電源の品質
[検証手法]
ロードバンク(負荷装置)による検証
[検証対象]
実使用環境による燃料電池追従性
実運用による経済合理性
[検証手法]
実機による検証
実機シミュレーション
机上シミュレーション 実機検証
2. 研究開発マネジメントについて6JR
●くろまるトクヤマ文化体育館
●くろまる従業員用駐車場
●くろまるトクヤマ工場
水素パイプライン
実証サイト 実証システム構成
• ベース電源、バックアップ電源、分散電源、電力需給調整電源という複数のユースケースが実証可能なシステムを構築予定
制御盤
ガス供給設備EMSUPS
食塩水電解
再エネ
模擬電源
負荷装置 (データセンター接続前)
バッテリー
燃料電池
定置電源
データセンター
系統
PCS PCS PCS
バッテリー
2. 研究開発マネジメントについて
技術開発内容7• バックアップ電源、ベースロード電源、ピークシェービング/ベースロード電源、分散電源、電力需給調整電源という複数のユースケースを実
証し、技術・運用面、経済性・事業性を検証
• データセンター80kWに対し、燃料電池電源システム80kW X4、バッテリー(22 kWh)の使用を想定
• バッテリーを含めた他のオプションとエネルギー価格などの変動要素を考慮し、環境性能、総所有コストに加えて専有面積、重量、ノイズの評
価軸で多面的に評価
定置用燃料電池を
ベースロード電源として活用
H2 e‐
定置用燃料電池
食塩電解 データセンターH2e‐
定置用燃料電池
食塩水電解
データセンター
グリッドe‐ピークシェービング・ベースロード電源として活用
バッテリー
定置用燃料電池をオフグリッドを想定した分散電源として活用e‐e‐e‐e‐H2データセンター
太陽光
定置用燃料電池 食塩水電解
電力需給調整(kW, kWh, ΔkW市場)として活用
e‐ e‐e‐e‐H2データセンター
バッテリー
太陽光
定置用燃料電池 食塩電解e‐定置用燃料電池を
バックアップ電源として活用H2e‐
定置用燃料電池
食塩電解
データセンター
グリッドe‐グリッド
2. 研究開発マネジメントについて8他脱炭素オプションとの比較・経済合理性の検証
3. 研究開発成果について
HFC‐GDX検討会
委員
• 稲葉 和也【委員⻑】
山口大学大学院 技術経営研究科 研究科⻑ 教授
• 伊原 学
東京工業大学大学院 理工学研究科 物質理工学院 応用化学系 教授
• 東 正信
山口県産業労働部 GX統括監
• 藤本 正克
山口県産業技術センター 宇宙データ利用推進センター 副センター⻑9研究開発のスケジュール 研究開発体制
1 車両用燃料電池モジュールのリユースを想定した定置用燃料電池電源の開発
リユースの燃料電池を活用し、劣化抑制かつ高効率運転を可能とし、CAPEX・OPEX・メンテナンスコストを削減する燃料電池電源の設計を
行った。また、副生水素供給・燃料電池電源・EMS/電力制御・データセンターについて、各設備とこれらを連結した全体システムの設計
を行い、実証設備の施工の準備に着手した。また、電源に使用する燃料電池のリユース品の調達を実施した。
2 想定ビジネスモデルの経済性・事業性検証
想定ビジネスモデルのトータルコスト(TCO; Total Cost of Ownership)の分析のために、2023年度は以下を実施。2024年度以降は実際の分析を
行い、既存電源コストを比較、水素調達価格に応じた損益分岐点を算出する予定
• 電力活用パターンの設定
• トータルコストにかかわるパラメータの洗い出しとデータ収集
• 分析のためのシミュレーションツールの検討
3 各種調査関連
• ステージゲート附帯条件に関わる各種調査を実施した(主にデーターセンター関連)
• 本実証に関連する燃料電池電源の国内外需要調査を実施した(デスクトップベース)
• 近接地域を含めたデータ処理需要調査を実施している
4 ステークホルダーとの連携とHFC‐GDX検討会の開催
• 地域連携の核としてHFC‐GDX検討会を設置し、2023年9月4日に第一回検討会を周南市役所にて開催。開発の進捗に合わせて山口県・
周南市のステークホルダーに適時情報を提供のうえ、副生水素を活用したデータセンターによるGDXの可能性を引き続き議論している成果・進捗103. 研究開発成果について11山口県/周南市等、実証地域からの期待
• 今回の実証は、周南市のGXとDXの二つの重点施策を同時に推し
進める取り組みになると期待
• 本実証を通して情報技術に関する知見を蓄積し、県内企業のグ
レードアップに繋がることを期待
• 徳山下松港は実証から実装まで可能。周南市のDX・スマートシ
ティの進展や企業イノベーションにもつながる
本実証の意義
• 本実証は、中規模都市の分散型DCの実証として重要
実証地域における分散型DCのニーズ
• 大学等では計算資源が不足する可能性が高く、分散型・コンテ
ナ型DCを共同利用するニーズはある
• サイバーセキュリティの問題もあるので、自社内・コンビナー
ト内でDCを保有するニーズはある
実機実証の必要性
• DC側の出力変動とのマッチングと複数の燃料電池の発電制御に
ついての検証が重要ポイント
• ハイパー型DCと比較して、分散型DCは負荷変動が大きく、負荷
応答性が良い自動車向け燃料電池とは相性が良い
分散型データセンターの優位性
• 分散型DCの優位性は、低コスト性と高セキュリティ性
第1回 HFC‐GDX検討会(2023年9月4日)
3. 研究開発成果について
• FC EXPO Hondaブース内展示 (2024年2月28日〜3月1日)
• 週刊ブレーンズ (2024年2月28日号)
• 週刊ブレーンズ (2024年3月27日号)
• AERA (2024年4月1日増大号)
• 日刊工業新聞主催 「グリーンフォーラム」(2024年5月23日)
5月度 資源・循環技術委員会 ⻘木健
Hondaにおけるリユース燃料電池を活用したデータセンター向け
定置用燃料電池電源の取り組み123. 研究開発成果について
特許や論文、学会発表、広報などの取組
NEDO事業概要
4. 今後の見通しについて
アプローチ方針
地域の需要家
想定されるニーズ
需要家分類#研究(AI機械学習・各種シミュレーション等)におい
て大手クラウドサービスと比して廉価な計算リソー
スニーズやオンプレミスサーバーの利用ニーズがあ
りうると推定し、アプローチを実施
周南公立大学、山口大学 等
研究用計算リソース、
各種シミュレーション、
データセキュリティ、BCP大学・
研究機関1データの地産地消、サービス提供に於ける電力グ
リーン化ニーズがありうると推定し、山口県内のIT
活用や関連する協会を通じた企業へのアプローチを
実施
AI サ ー ビ ス 提 供 事 業 者 、
アプリケーションプロバイ
ダ、 ITコンサル、SIer等
大規模計算力確保、
エッジ処理、R&D用計算
リソースIT(通信除く)2自社工場等から発生するデータの処理や製造オペ
レーションのDXにおいて利用ニーズがあると推定し、
アプローチを実施
コンビナート周辺企業等
工場でのIoT処理、
データセキュリティ、BCP製造業3新規サービスの開発での検証用サーバーの利用ニー
ズがあると推定し、アプローチを実施
病院・ヘルスケアサービス
提供事業者 等
オンプレミスでのデータ
処理、データセキュリ
ティ、BCP
ヘルスケア4トラフィック量の増加に伴い、通信機器用サーバー
のニーズも増大すると目論み、アプローチを実施
ケーブルテレビ事業者等
設備更新需要、
IT負荷増への対応
通信513
大規模計算処理等のデータセンター利用ニーズがあると想定される山口県内の団体・事業者を中心に、優先度を設定した上で
アプローチを実施中
実証地域に於ける分散型データセンター導入に向けたマーケティング
• 水素の社会実装に向けては、まずは水素・燃料電池が他脱炭素ソリューションに対して経済性や定性項目で優位性・必然性を持つセグメ
ントを選定することが肝要。データセンターはレジリエンスの観点などから有望セグメントの1つ。
• 需要家が脱炭素ソリューションとして水素を活用するためには、水素・プロダクト(燃料電池)が夫々必要。水素供給はトクヤマ/三菱商事、
プロダクト提供はホンダが担い、一括したソリューションを需要家に対して提供。
将来見据えるビジネスモデル
4. 今後の見通しについて
水素調達 水素輸送
水素
ステーション
需要家
データセンター、物流・倉庫、スーパーマーケット事業者、など
1 水素供給(含、インフラ)
物流車両
2 定置用燃料電池電源/燃料電池車両供給
サービス統括会社
水素調達
プロダクト
(燃料電池)調達
再エネ
化石
燃料
定置型14