発表者名:二宮 貴之(ENEOS株式会社)
団体名:ENEOS株式会社(再委託先:千代田化工建設株式会社)
株式会社JERA
一般財団法人 カーボンニュートラル燃料技術センター(JPEC)
競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業/
大規模水素サプライチェーンの構築に係る技術開発/
大規模水素サプライチェーンの構築に係る水素品質に関する研究開発
NEDO水素・燃料電池成果報告会2024
発表No.B1-16
連絡先:
ENEOS株式会社
(https://www.eneos.co.jp/) 1
事業概要
1. 期間
開始 :2023年8月
終了(予定): 3年事業であり、 2026年3月予定
2. 最終目標
2023年度〜2024年度に実施される、
・発電用途およびその他用途における水素に求められる規格項目と閾値に関する情報収集
・各種産業用途に求められる水素性状確保への精製工程の要否と適切な精製方法に関する情報収集
・各種産業用途向けの燃料用や原料用のMCH水素(SPERA水素)性状の検討
・燃料用水素(製油所副生水素やMCH水素)を対象とした事業用天然ガス火力発電所(コンバインドサイクル)
の適用への影響評価
・(上記四点を反映した)各種産業用途における水素品質の規格項目や閾値の検討
これら五点の検討結果をベースとして、
2025年度の最終目標:各種産業用途における水素性状の業界規格化と水素の品質規格体系の構築
3.成果・進捗概要
最終目標に向けての2023年度実施項目は、実施計画書に記載のとおりに進捗
具体的な進捗内容は以下
・発電用途の水素品質策定に向けた品質規格に記すべき項目とその数値に関する情報収集
・天然ガス火力発電所での水素混焼を想定した水素ガス実ガス評価に関する試験条件の策定21.事業の位置付け・必要性3・ 2050年カーボンニュートラルの実現に向けた課題解決手段の一つとして、水素を多様な産業活動で利用することが重要課題となっており、
官民一体での水素社会の実現に向けた動きが加速している。
・ 現在、石油精製・石油化学における副生水素は、一部の工業用途では利用されるも、今後、発電や製鉄など幅広い産業燃料等の用途への
供給が求められており、MCH由来の水素も含め、これらを活用した大規模なCO2フリー水素サプライチェーンの構築に取り組むことが必要となる。
・水素供給者と水素需要家間のスムーズな水素受け渡しには、用途ごとの水素品質規格があると好ましく、水素消費拡大につながる。
石油製品の
脱硫等に利用
トルエン輸送
(ケミカルタンカー活用)
トルエン回収
グリーン水素製造
(再エネ由来)
MCH輸送
(ケミカルタンカー活用)
MCH受入
MCH製造 MCH脱水素
ブルー水素製造
(副生水素または
化石燃料改質+CCUS)
トルエン再利用
(製油所の既存設備を活用)
コンビナートの製油所
パイプライン
供給
海 外 国 内
水素、MCH製造 需要家への水素供給
海上輸送 MCH受入、水素製造・利用 陸上輸送
接触改質装置
水素製造装置H2原油
LPGなど
発電
製鉄
合成メタン
合成燃料
熱 (ボイラーなど)
化学産業
その他 ・・・
※(注記) 2022年3月29日 METI 第1回水素政策小委員会
資料6を活用
※(注記) 2022年3月29日 METI 第1回水素政策小委員会
資料6を活用
1.事業の位置付け・必要性4・ 2050年カーボンニュートラルの実現に向けた課題解決手段の一つとして、水素を多様な産業活動で利用することが重要課題となっており、
官民一体での水素社会の実現に向けた動きが加速している。
・ 現在、石油精製・石油化学における副生水素は、一部の工業用途では利用されるも、今後、発電や製鉄など幅広い産業燃料等の用途への
供給が求められており、MCH由来の水素も含め、これらを活用した大規模なCO2フリー水素サプライチェーンの構築に取り組むことが必要となる。
・水素供給者と水素需要家間のスムーズな水素受け渡しには、用途ごとの水素品質規格があると好ましく、水素消費拡大につながる。
石油製品の
脱硫等に利用
トルエン輸送
(ケミカルタンカー活用)
トルエン回収
グリーン水素製造
(再エネ由来)
MCH輸送
(ケミカルタンカー活用)
MCH受入
MCH製造 MCH脱水素
ブルー水素製造
(副生水素または
化石燃料改質+CCUS)
トルエン再利用
(製油所の既存設備を活用)
コンビナートの製油所
パイプライン
供給
海 外 国 内
水素、MCH製造 需要家への水素供給
海上輸送 MCH受入、水素製造・利用 陸上輸送
接触改質装置
水素製造装置H2原油
LPGなど
発電
製鉄
合成メタン
合成燃料
熱 (ボイラーなど)
化学産業
その他 ・・・
※(注記) 2022年3月29日 METI 第1回水素政策小委員会
資料6を活用
水素化反応
脱水素反応
2 .研究開発マネジメントについて1(採択された研究開発事業の概要)5※(注記) NEDO HP
2023年度第2回公募
テーマ概要説明資料
2 .研究開発マネジメントについて2(実施体制)6NEDO 研究開発統括責任者
ENEOS株式会社水素事業推進部
前田 征児
指示・協議
ENEOS株式会社
研究実施場所:本社(東京都千代田区)
研究項目:
1各種用途における水素性状調査と水素
品質の規格項目や閾値の検討
3各産業用途の水素性状の業界規格化と
水素品質の規格体系化
株式会社JERA
研究実施場所:本社(東京都中央区)
研究項目:
1各種用途における水素性状調査と水素
品質の規格項目や閾値の検討
2燃料用水素(副生水素、MCH水素)を
対象とした事業用天然ガス火力発電所
(コンバインドサイクル)の適用への影響評価
千代田化工建設株式会社
研究項目:
1各種用途における水素性状調査と水素
品質の規格項目や閾値の検討
(各種産業用途でのMCH水素(SPERA
水素)性状の検討)
再委託
委託
一財 カーボンニュートラル燃料技術センター
研究実施場所:本社(東京都江東区)
研究項目:
1各種用途における水素性状調査と水素
品質の規格項目や閾値の検討
3各産業用途の水素性状の業界規格化と
水素品質の規格体系化
テーマ1横串検討会(ENEOSに設置)
参画四社が参加の技術検討会
(仮称)水素品質規格体系構築に係る
委員会(学識も参加の委員会)
2 .研究開発マネジメントについて3(研究開発の計画線図)7スライド8-9で説明
スライド10で説明
スライド12-13で説明
スライド14で説明▼スライド11で説明
3.研究開発成果について テーマ1各種産業用途の水素の性状調査と水素品質の規格項目や閾値の検討8・ 水素品質規格は、FCV用途では、 ISO14687(2019)の純度99.97%以上・炭化水素2ppm以下の厳しい性状であり、今後の大規模
水素サプライチェーンの構築には、各種産業用に適切な水素品質の規格設定が必要になると考えられる。
・ 一方、製油所からの水素供給では、副生水素やMCH由来水素の供給が想定されるが、ベンゼン、トルエンやMCH等の有機物の含有が確認
されており、発電用途においてガム状物質を析出の可能性が懸念される。
・ 本検討では、各種用途(発電、製鉄、ボイラー燃料、合成メタンや合成燃料用原料等)に求められる水素性状の情報収集や、大規模な
水素需要が見込まれる発電用途に関する実ガス評価の情報を基に、各種用途に求められる水素品質の規格項目と閾値を検討する。
・ 情報収集は、需要家だけでなく機器メーカーも含め国内外に広くヒアリングする。SPERA水素の情報は、再委託先が有する情報を整理する。
【各用途で想定される課題】(一例)
(1)発 電 ・・・GT発電においてガム状物質の生成によるノズル詰まり、エロージョンの可能性
(2)製 鉄 ・・・水素還元製鉄については、課題抽出から実施予定
(3)合成メタン ・・・メタネーション反応で、触媒へのコーキングや被毒物質影響での活性低下発生の可能性
水素純度が低いことでの反応収率の低下の可能性
(4)ボイラー ・・・芳香族分が水素ボイラーに使用している部材に対して劣化を及ぼす可能性
3.研究開発成果について テーマ1各種産業用途の水素の性状調査と水素品質の規格項目や閾値の検討9a)ア)〜 エ)各種産業用途における水素の性状調査(発電に関する国内外事業者やメーカーからの情報収集)
(インタビューすべきこと)
水素専焼発電・水素混焼発電における 水素純度や水素中の微量成分 による懸念事項
(情報収集の対象者)
国内外発電事業者(4社)国内外発電機メーカー(各種発電様式)(10社)
(情報収集におけるポイント)
発生する問題の 「メカニズム」 、それを引き起こす「原因物質」と 「濃度」 が重要
= 水素品質規格案の技術的な議論が可能となる情報
(得られたトピックス)
・水素天然ガス混焼発電(ガスタービン)では、比較的低温域(200°C程度)における固形物析出の懸念
★NOxガム:酸素やNOxとオレフィンの共存による重合物(NOxガム)析出
★含硫黄化合物と酸素の共存による硫黄分析出(Claus反応)
←(対応策として)NOx濃度と炭化水素濃度について、いずれかを含まない。一社は酸素も1000volppm以下と設定
・硫黄析出やタール分析出の懸念(発電用エンジンメーカー):固形物析出によるピストンリングへのダメージの懸念
・欧州のメーカー(各種発電様式)・事業者の考え:DVGW G 260 Group A(ドイツ)やEASEE-gas CBP(欧州)
水素純度98.0mol%以上(ISO 14687 Grade A と同じ純度)
3.研究開発成果について テーマ1各種産業用途の水素の性状調査と水素品質の規格項目や閾値の検討10a)オ)各用途に求められる水素性状確保への精製工程の要否と適切な精製方法の検討(2024年度に開始)
・ 水素精製装置を用いることで、微量成分の除去・高純度化が可能であるが、設備導入に伴う水素の収率低下・経済性低下を招くおそれがある。
・ 各用途(発電、製鉄、ボイラー燃料、合成メタンや合成燃料用原料等)が求める水素性状を満足する適切な水素精製方法を検討する。
水素
MCH 原油由来
精製A
(PSA)
不要
精製B
(深冷分離)
不要
検討結果のイメージ
水素純度 :α%以上
化合物A濃度:β%以下
基準とした
水素純度までOK
水素純度 :x% 以上
微量成分濃度:y% 以下
水素純度 :A%以上
化合物B濃度:B%以下
基準とした
水素純度までOK
b)各種産業用途向けの燃料用や原料用のMCH水素(SPERA水素)性状の検討
1SPERA水素システムにおける脱水素プロセス概要(構成)
・脱水素反応器
・反応熱を供給する加熱炉ユニット
・水素とトルエンを分離する気液分離器
・必要圧力に水素を昇圧する圧縮機ユニット
2水素純度検討用の圧力・温度設定
発電用途では、大量の水素送気の観点から高圧が求められる想定
脱水素設備出口での製品水素取合圧:
(1)低圧(1MPaG未満)
(2)発電用水素送気効率向上を想定した圧力 (5MPaG程度)
温度: (1)脱水素装置出口ガスを冷却水で冷却した常温
(2)意図的に温度を下げた低温
3圧力や温度の組合せにおける水素純度等の検討(圧力・温度の四ケースの組み合わせで検討)
同じ圧力であれば、低温ほど水素純度が高く、トルエン等の微量成分濃度は低下、
同じ温度であれば、高圧ほど水素純度が高く、トルエン等の微量成分濃度は低下、
効果の程度については、温度がより支配的傾向にあることを確認
3.研究開発成果について テーマ1各種産業用途の水素の性状調査と水素品質の規格項目や閾値の検討113.研究開発成果について テーマ2燃料用水素を対象とした事業用天然ガス火力発電所の適用への影響評価12(経緯・目的)
表 代表水素性状
グリーンイノベーション基金事業にて進めている、「大規模水素サプライチェーン構築に係る水素混焼発電の技術検証」において、副生水素およびMCH
水素には、ガスタービンの運用に影響を与える可能性のある物質(BTX等)が含まれることが判明。
水素の大規模需要先となる発電事業での多様な水素の利用は、早期の水素社会実現に不可欠であるため、事業用天然ガス火力発電所(コンバイ
ンドサイクル)の適用可否を評価することを目的に、水素性状評価を行い、ガム状物質生成を確認する。なお、MCH水素にも微量物質が含まれている
ことから、併せて評価を行う。
引用:NEDO 「2019年度 NEDO次世代電池・水素成果報告会」の開催報告
(2019年7/18,19実施)資料抜粋
ノズル部や燃料流路にガム状物質が蓄積・飛来することで、
閉塞や流量偏差を誘発し失火や逆火等のリスクが高まる。
評価要否 種類 水素濃度[%] 微量物質[ppm]否液体水素 99.999 ―
LNG由来
(蒸気改質)
98.0 ―要MCH
(Case-A)99.8硫黄<0.1
MCH<130
ベンゼン<60
トルエン<400MCH(Case-B)99.0MCH<400
ベンゼン<200
トルエン<5500
キシレン<20
原油由来
副生水素90硫黄=5
ベンゼン=270
トルエン=600
キシレン=200
(試験条件の策定)
・製油所副生水素・MCH由来水素中の微量成分からガム状物質
生成に影響しそうな成分を選定し、初期の試験条件を選定。
・試験条件は、順次試験結果を評価
した上で適宜見直しを行う。
・現時点では、各物質の濃度影響
評価や複数物質の同時混入影響
評価を計画。
3.研究開発成果について テーマ2燃料用水素を対象とした事業用天然ガス火力発電所の適用への影響評価13(実施内容)
・ガスボンベを用いて微量物質を混合し、試験部にて成分濃度・温度・
滞留時間など試験条件を設定。
・フィルターを用いてガム状物質の生成を確認。
・試験結果から、副生水素およびMCH水素の発電設備への適用可
否を評価。
図 試験装置(イメージ図)
【スケジュール】※(注記)スケジュールは、原計画であり、進捗に応じて変更の可能性あり
【試験概要】
項目 2023 2024 2025
1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q
試験設備構築
試験条件策定
試験実施
影響評価
試験 評価
発電設備影響評価
試験部・ガスボンベ調達等
試験本数、温度、圧力、滞留時間の策定
GI基金事業に反映
1、2
1、234
水素性状評価に関して以下の通り進めていく。
1代表水素性状から、ガム状物質生成に寄与する微量成分を抽出。
2この微量成分に対してガム状物質の生成が評価できる条件(温度、圧力、水素濃度等)を設定。
3上記条件からガム状物質生成を確認。
4確認結果を基に、事業用天然ガス火力発電所への適用を評価する。
(現在の進捗状況)
・参画四社の技術検討会で
1水素の業界規格のアウトプットイメージ
2規格案作成に向けた委員会体制や
(用途ごとの)WG体制のイメージ を議論
・水素品質規格案や運用ガイドライン案は、
カーボンニュートラル燃料技術センター内に
委員会等を設定して議論を計画
委員会体制:学識、業界団体(※(注記))、
水素供給事業者、水素需要家、
機器メーカー 等を想定
※(注記)水素の業界団体であるJH2A(水素バリュー
チェーン推進協議会)との連携
3.研究開発成果についてテーマ3各種産業用途における水素性状の業界規格化と水素品質規格体系の構築14(規格案の作成の部分は、2024年度下期以降に実施予定の内容)
・ 水素性状に関する規格項目・閾値の情報収集や実ガス評価で得られた知見を基に各用途に応じた水素品質規格案を作成する。
・ それぞれの用途に対する水素品質規格案を作成、これらを纏めるかたちでの品質規格体系としての運用ガイドライン案を作成する。
4.今後の見通しについて15以上となります
ご清聴、ありがとうございました
・実用化・事業化のイメージ
本事業では、各種用途に対する水素品質規格案と品質規格体系としての運用ガイドライン案を作成
(本事業終了後)
2026年度以降に、業界水素品質規格化を計画
技術的な裏付けや根拠は、水素燃料品質の国際標準化(ISO 14687)に対して打ち込み
1 水素供給者と水素需要家間のスムーズな水素の受け渡しが可能となり水素消費拡大につながる
水素関連機器を扱うメーカーやエンジニアリング会社での設計検討における障害が緩和され水素関連事業の
普及拡大につながる
2 テーマ2のガスタービン条件での実ガス評価の成果は、GI基金事業での 「大規模水素サプライチェーン構築に
係る水素混焼発電の技術検証」 に活用可能であり、実証試験から社会実装につながる
これらの実現により