発表者:株式会社JERA 長尾 隆司
株式会社JERA
株式会社日本触媒
千代田化工建設株式会社
2024年7月18日
競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業/
大規模アンモニア分解向けオートサーマル式
アンモニア分解触媒の技術開発
NEDO水素・燃料電池成果報告会2024
発表No.B1-12
連絡先: 株式会社JERA https://www.jera.co.jp/contact/
株式会社日本触媒 https://www.shokubai.co.jp/ja/inquiry/
千代田化工建設株式会社 https://www.chiyodacorp.com/jp/contact/index.php
事業概要
1. 期間
開始 :2023年7月
終了(予定) :2026年3月
2. 最終目標
オートサーマル式(ATR式)アンモニア分解触媒の技術開発により
・外部加熱が不要な、独立型水素供給システムの構築
・アンモニア分解技術の高効率化・低コスト化
を行い、水素社会の早期実現を目指す
3.成果・進捗概要
➢ATR式NH3分解触媒の開発
SIPで開発した触媒をベースに成型体の基本作製法を確立。常圧での試験において、目標性能を達成。
高圧ラボ評価装置の稼働に向け、詳細設計完了。
➢ ATR式のプロセス設計
商用機概念設計:商用機のプロセスフローのベースケースを作成。
高圧ベンチ試験装置のプロセス設計図書を作成。
➢実証試験
火力発電所、敷地内にて設置検討中。23
1.事業の位置付け・必要性
➢ 政府において、大規模水素サプライチェーンの構築に資する水素キャリアについて議論されている。液化水素、
MCH、アンモニア等が検討されている中、特にアンモニアは貯蔵コストや輸送コストに優れており、長距離輸
送に対する有望な水素キャリアの1つとして示されている。
出典:SIPエネルギーキャリア パンフレット
輸送距離
輸送費用
(USD/kg-H2)
(液化・合成・分解コスト等を含む)
1:水素キャリアについて
Indicative levelized cost of delivering hydrogen, by shipping-option step and distance in
the NZE Scenario, 2030
(IEA - Energy Technology Perspectives 2023 page.321 Figure 5.23)41.事業の位置付け・必要性
➢ アンモニアクラッキング技術は外部加熱式とATR式に大別される。
⇒ 本事業では、 外部加熱用の燃焼炉が不要で、独立型水素供給システムを構築できるATR式を開発する。
➢本方式は触媒のみで酸化/分解反応(*)を行うため、外部加熱用の燃焼炉が不要
⇒ 反応器構造を簡素化することおよび熱ロスを小さくすることができる
→CAPEXおよびOPEX低減が期待
2:アンモニア分解技術について
本ATR方式の特徴
➢ 触媒のみで酸化/分解反応
を実現
➢ バーナーが不要
➢ 新規触媒で最大反応温度
が低下
本ATR方式反応器
最大反応温度
< 700°C
外部加熱式反応器NH3N2+H2 未分解NH3
最大反応温度
〜1100°CNGorNH3反応管
加熱炉
(*) 酸化反応:NH3(g) + 3/4O2(g) = 1/2N2(g) + 3/2H2O(g) + 317kJ/mol
分解反応:NH3(g) = 1/2N2(g) + 3/2H2(g) – 46kJ/mol52 .研究開発マネジメントについて
(幹事)
ATR式アンモニア分解触媒の
開発
高圧ベンチ試験装置のプロセス設計
大規模商業概念設計の検討
➢ 各社の役割
・株式会社JERA : 触媒の性能を確認するためのベンチ試験を実施し、触媒やプロセスについて
発電事業者の観点から評価を行い、社会実装に向けた課題を抽出します
・株式会社日本触媒 : アンモニアから水素を取り出すための触媒の開発に向けて、
触媒基本製法の確立などについて検討します
・千代田化工建設株式会社 : 大規模にアンモニアを分解、水素を生産するための商業機の開発に向けて、
触媒の性能を確認するためのベンチ試験の装置の設計を行い、
装置の大規模化に向けた課題を明確にしていきます
高圧ベンチ試験装置による
触媒及びプロセス実証試験
1:研究実施体制62 .研究開発マネジメントについて
2:研究開発目標及びスケジュール
事業項目 2023年度 2024年度 2025年度
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4
1ATR式NH3分解触媒の開発
・ 触媒成型体の基本仕様の確立
・高圧条件下での触媒成型体評価
2 商業機概念設計の検討
・初期商業機概念設計
・概念設計アップデート
3 試験装置のプロセス設計
・プロセス設計
4 実証試験
・設置検討
・試験設備準備
・高圧ベンチ試験
・成型体の評価(常圧) ・成型体の改良
高圧ラボ評価
・高圧ラボ評価装置の設計・作製
・安全性試験
設計進捗反映
触媒開発
状況反映
ベンチ試験
結果反映
・スケールアップ
事業期間
2023年度〜2025年度
開発目標
➢ 大規模水素製造向けのATR式アンモニア分解触媒の成形化
➢ プロセス開発(高圧ベンチ試験・商用機概念設計)73.研究開発成果について
1ATR式NH3分解触媒の開発0100200300400500600700
0 10 20 30 40
Catalyst
layer
temperature/°C
Catalyst layer position/mm
・Honeycomb size:φ49 ×ばつ40 mmL
・Air/NH3=0.75 as Volume
・Reaction Pressure:0.1 MPa
・GHSV 28,000 h-1
【ハニカム型ATR式アンモニア分解触媒の触媒層温度分布】 【日本触媒の触媒製造技術】
脱硝触媒 排ガス処理触媒
排水処理触媒 SOFC用電解質シート
➢ アンモニアクラッキングの大規模化に向けた、触媒開発のポイント
✓ 効率的にアンモニアから水素を取出せる触媒(触媒形状を含め)
✓ 触媒充填・交換の観点からハンドリングしやすいこと
➢ 日本触媒の保有技術
✓ ATR式アンモニア分解触媒(触媒をコーティングしたハニカム触媒)
✓ プロセス触媒や環境触媒などで培った触媒設計、触媒生産技術(ハニカム、ペレットなど)
ペレット形状など
生産技術確立が必要83.研究開発成果について
1ATR式NH3分解触媒の開発
➢ 触媒製造装置(ラボスケール)を用い、成型体の基本作製条件を確立
⇒ 成型体の強度は、当社製品化成型体と同等以上のレベル
➢ 作製した成型体の1,000時間の連続試験を実施(常圧)
⇒ アンモニア転化率は、安定に推移(継続中)
【ATR式アンモニア分解触媒の成型体】
【ペレット圧壊強度試験結果】
Ref.製品触媒 ATR式NH3触媒
圧壊強度[N]成型体評価装置
(常圧)
触媒充填(イメージ図)
触媒層 温度センサー
0 200 400 600 800 1000NH3転化率[%]時間 [h]
Air , NH3H2N2H2ONH3
【反応条件】
・反応管I.D.:φ60
・触媒層長 :60 mmL
【成型体の連続試験】
SIP ハニカム触媒
NH3転化率
高圧条件下へのラボ評価へ移行93.研究開発成果について
1ATR式NH3分解触媒の開発
➢ ATR式アンモニア分解設備の反応器内部はアンモニア・酸素・水が高温高圧条件下で存在
⇒ 常圧・常温におけるH2/Air、NH3/O2/N2の爆発範囲をもとに、
高温・高圧における爆発範囲の確認を行い、安全な条件下での試験を行う
空気または
高濃度酸素NH3N2,H2 , H2O
未分解NH3
触媒層
NH3 + 0.75O2 → 0.5N2 + 1.5H2O
NH3 → 0.5N2 + 1.5H2
炉内温度:700°C以下
圧力:数MPa
爆発範囲
(常圧・常温)
NH3-O2-N2 3成分混合ガスの爆発範囲図
出典:工業化学雑誌,第69巻,第7号,1966103.研究開発成果について
2商用機の概念設計
✓ 商用機ベースケースのプラント規模の検討 水素規模:数ton/h〜数十ton/h程度
✓ プロセス全体の熱マネジメントシステムの構築 反応器入口出口の熱交換Unitにより熱効率を向上
✓ アンモニア回収系のプロセス条件の検討 製品水素ガスの圧力:〜数MPaG(※(注記))
(※(注記))ユーザー側の圧力要求により今後決定
図:商用機のプロセスフロー図
➢ 商用機のプロセスフローのベースケースを作成
酸素 / 空気
製品水素
(H2 + N2)
原料NH3
リサイクルNH3Air空気分離Unit
ATR反応器
熱交換UnitNH3吸収塔NH3放散塔
NH3原料タンク
製品H2NH3排水113.研究開発成果について
3高圧ベンチ装置のプロセス設計 4実証試験
➢ 製作を行う外注先業者へプロセス設計図書の提出を完了
➢ 火力発電所敷地内での試験を検討中
図:高圧ベンチ試験機のプロセスフロー図
ATR反応器NH3吸収塔NH3放散塔
H2+N2
排水O2NH3 NH3
➢ 高温高圧条件下の安全性評価、高圧ベンチ試験を実施
⇒適切な運用条件および触媒性能の確認、評価
➢ 得られた結果を基に商業機の概念設計へ反映し、早期の商用化へ繋げる124.今後の見通しについて
事業項目 2023年度 2024年度 2025年度
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4
1ATR式NH3分解触媒の開発
・ 触媒成型体の基本仕様の確立
・高圧条件下での触媒成型体評価
2 商業機概念設計の検討
・初期商業機概念設計
・概念設計アップデート
3 試験装置のプロセス設計
・プロセス設計
4 実証試験
・設置検討
・試験設備準備
・高圧ベンチ試験
・成型体の評価(常圧) ・成型体の改良
高圧ラボ評価
・高圧ラボ評価装置の設計・作製
・安全性試験
設計進捗反映
触媒開発
状況反映
ベンチ試験
結果反映
・スケールアップ