澤村和宏(酉島製作所)
株式会社酉島製作所
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
国立大学法人京都大学
公立大学法人山陽小野田市立山口東京理科大学
国立研究開発法人物質・材料研究機構
2024 年 7 月 18 日
競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業
/大規模水素サプライチェーンの構築に係る技術開発
/大流量・高圧・高効率な液化水素昇圧ポンプの開発
NEDO水素・燃料電池成果報告会2024
発表 No.B1 - 11
連絡先:
株式会社酉島製作所
https://www.torishima.co.jp/
事業概要
1. 期間
開始 : 2023 年 8 月
終了(予定): 2028 年 3 月
2. 最終目標:
大規模水素サプライチェーン構築に貢献するため、
大流量・高圧・高効率な液化水素昇圧ポンプを開発する
3. 成果・進捗概要2SG
本事業を実施する背景・目的
GI 基金事業「大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクト」
>大規模水素サプライチェーンの構築には液化水素昇圧ポンプが必要不可欠である。
将来の水素コスト低減に、大流量・高圧・高効率なポンプで寄与する。31.事業の位置付け・必要性
出典:日本水素エネルギー株式会社/川崎重工業株式会社 グリーンイノベーション基金事業「液化水素サプライチェーンの商用実証」「水素液化機向け大型高効率器の開発」2023 年2 月13 日より
ポンプ4研究開発対象
開発
Step 構成イメージ 流量比 圧力比
サプライチェーン
のターゲット
大流量・高圧力・高効率なポンプの開発
水素発電向け液化水素昇圧ポンプ Step 1
中流量・中圧力1(基準)1(基準)
商用化実証
〜2030 年
Step 2
中流量・高圧力1 3商用化(1st)
2031 年~
Step 3
大流量・高圧力8 3商用化
複数チェーン
〜2050 年
経済性、品質、市販性の付加価値を高めた
超電導モータの開発と実機適用性検証
Step 4 Step 1 ポンプに搭載して試験する 1 1 -
研究開発の目標設定と方針
・開発対象は水素発電向け液化水素昇圧ポンプとする
・3 つのステップ(Step 1, 2, 3)で、大流量・高圧力・高効率なポンプの開発を行う
各 Step において、大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクトにおける
商用化実証や商用化のサプライチェーンへのポンプを開発のターゲットにする
・Step 4 として、経済性、品質、市販性の付加価値を高めたモータを開発し、Step 1 のポンプに搭載して試験する
2 .研究開発マネジメントについて1
水素ガスタービン
気化器
BOG 圧縮機
ローディングアーム
ポンプ
研究開発のスケジュールと研究開発体制
・JAXA 能代ロケット実験場にて、Step 1, 2, 4 を試験する(Step 3 は液化窒素試験まで)
・京都大学にて、各ステップに対する超電導モータを開発、支給する
・山理大にて低損失巻線を開発する
・NIMS にてより経済性、品質、市販性の付加価値を高めた超電導線材、低損失巻線材を開発する
2 .研究開発マネジメントについて2
大流量・高圧力・高効率
ポンプの開発(Step1〜3)SG
モータ
(Step4)5開発要素と実施内容
2 .研究開発マネジメントについて3
【モータ】
・超電導モータによる高効率化
その他、開発要素
【ポンプ】サブマージド構造
・真空断熱
・高速回転
・水力設計
加振力が小さい、高効率
低温機器メーカと協議し、
断熱の仕様を決定した
【試験設備】
・入熱が小さく、ポンプの
性能測定が可能な設備 6
低温機器メーカと協議し、
仕様や設計を決定した
その他、液化水素や材質の
物性を調査し、ポンプ全体の
設計を進めた
酉島のノウハウを活用、
ブラッシュアップ
共同研究先との協業
毎月の打合せを実施、etc...
超電導モータによる高効率化
・超電導モータの採用
2 .研究開発マネジメントについて4
・BOG 量を減らすために、ポンプ+モータで
高効率を達成したい
高効率なモータ ⇒ 超電導モータ
【超電導モータのメリット】
・小型化可能:
流体損失が減る、軸を短くできる。
・液化水素(-253 °C)で利用可能:
没液させて積極的に冷やして使える
効率のメリットだけでなく、
ポンプ設計で見てもメリットがある。
極低温流体との相性◎にじゅうまる
固定子コア
固定子巻線
回転子コア
高温超電導
かご形巻線
高温超電導誘導同期モータの概略図
かご形誘導モータの特長
「単純な構造で堅牢」を
活かしつつ、超電導化する
京大の独自技術
⇒ ポンプへの搭載に適している
液化窒素試験設備 液化水素試験設備
(設計コンセプト)
目標達成に向けたアプローチ
・液化窒素試験設備を建設 @酉島製作所 本社工場
2023 年 11 月に Step 1 ポンプの低温流体での動作確認のため、液化窒素での試運転を実施した
・液化水素試験設備を開発、建設 @ JAXA 能代ロケット実験場
2024 年 3 月にポンプ運転による液化水素試験設備の有用性確認、 Step 1 ポンプの信頼性、
性能、機能確認のため、液化水素での試験を実施した83.研究開発成果について1
循環
(液水)
供給
(液水)
排気(水素ガス)
流量の関係
供給 = 排気 < 循環
研究開発の成果
・ポンプの開発:液化水素実液試験@JAXA
最大回転速度 : 5,000 min-1
最大流量 : 30.5 m3/h (24,000 Nm3/h)
最高圧力 : 1.6 MPa
最大電動機出力(換算) : 30 kW
・試験目的の達成
〇ポンプ設計の妥当性を確認した
〇試験設備の有用性(循環による大流量運転)を確認した
〇性能予測に対する有用な実測データを得た93.研究開発成果について2
超電導モータをはじめて産業機械に搭載し*1、
世界初の仕様を達成!
*1:2024年3月現在、当社調べ
・経済性、品質、市販性の付加価値を高めたモータ
山理大 :理論解析モデルの構築完了
NIMS :候補材料の選定完了103.研究開発成果について3
成果の意義:次のステップに向けて
大流量・高圧力・高効率ポンプの開発
・成果)Step 1 ポンプの各要素の設計と製作を行い、実液試験にて有用な計測データを得た
⇒ 課題を整理し、設計中の Step 2 に向けたポンプ設計に反映する
・成果)超電導モータの設計と製作を行い、ポンプに搭載しての運転のノウハウを得た
⇒ 課題を整理し、設計中の Step 2に向けたモータ設計に反映する
経済性、品質、市販性の付加価値を高めた超電導モータの開発
・成果)理論解析モデルの構築完了 ⇒ 低損失巻線の設計と評価へ
・成果)候補線材の選定完了 ⇒ 各線材の評価へ
全体
・成果)各分野のスペシャリストと協力関係を築いて、ひとつの開発・実験を完遂した
⇒ 更に関係を強固にし、次のステップを乗り越えていく
実用化・事業化に向けた具体的な取り組み
・水素サプライチェーン適用に向けて本事業で確立された技術を製品化する
・水素サプライチェーン向けポンプの仕様について情報収集し、中流量・高圧ポンプ、
および大流量・高圧ポンプの設計に反映し、2026 年、および2027 年に実サイズでの
検証試験を実施して、技術を確立する114.今後の見通しについて
水素ガスタービン
気化器
BOG 圧縮機
ローディングアーム
ポンプ12ご清聴ありがとうございました
記者発表動画
(試験時の様子は52分あたり)