2024年4月
「エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」終了テーマ終了時評価について
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術研究開発機構は、
「エネルギー・環境新技術先導研究プロ
グラム」において採択した先導研究テーマのうち、終了したテーマに対して、終了時評価を実施してお
ります。
本終了時評価は、先導研究テーマの研究開発成果、今後の取り組みの検討状況や実施期間のマネジメ
ントを確認するとともに、今後の研究開発に役立てて頂くことを目的に実施しております。
この度、2021及び2022年度に採択し、事業が終了した先導研究テーマ全40件についての終
了時評価を終了致しましたので、下記のとおり公表いたします。記1.終了時評価実施テーマと評価実施時期
・2021年度採択テーマのうち、2023年で終了したテーマ・・・33件
・2022年度採択テーマのうち、2023年で終了したテーマ・・・7件
※(注記)終了時評価を実施した先導研究テーマは別紙1のとおり。
2.終了時評価の方法
(1)終了時評価の手順
各テーマに対して当該技術分野を担当する複数の評価委員により、以下12に基づき評価を実施し
た。
1委託業務成果報告書(業務委託契約約款(一般用、大学国研用)第24条に基づき提出されたもの)2補足資料(委託業務成果報告書の要約や補足資料)
(2)終了時評価項目と評価基準
以下の評価項目と基準に基づき、各項目を4段階(A・B・C・D)で評価した。
評価項目 評価基準
1)研究開発成果 【1】研究開発成果の価値の見極め
・研究開発成果の価値について競合技術と比較し優位性があり、成果
の波及効果が適切に検討されているか。
・今後の課題は明確か。
(新たな研究開発課題等も含み、その根本原因
分析及び解決方針を明確にしているか。)【2】成果の権利化
・知的財産は、適切に権利化されているか又は権利化を進めている
か。
2)今後の展開 【1】今後の展開の妥当性
・社会実装に向けた、計画・道筋が検討され、競合技術・製品と比較
して性能面・コスト面等で優位を確保する見通しはあるか。
【2】今後の展開に向けた取組
・産学連携体制も含む今後の展開に向けた体制やネットワーク作りが
進められているか。
3)マネジメント 【1】実施体制
・指揮命令系統及び責任体制は明確で、研究開発の進捗状況に応じた
適切な対処が行われたか。
【2】研究開発計画
・研究開発の進捗を管理する手法は適切であったか。
・研究開発課題の解決に向けた研究開発計画に沿って、意義のある研
究開発成果を見いだせるようにマネジメントできたか。
4)総合評価 上記1)〜3)の評価項目を踏まえての総合的な評価。
3.終了時評価結果
各評価委員の「4)総合評価」について、A=3、B=2、C=1、D=0 と数値に換算し、終了時評価を実施し
た複数の評価委員の平均評価点を算出し、当該テーマの評価点とした。この評価点に基づき、当該テー
マに対して、以下の4段階の評価を決定した。
評価点(a) 評価
2.6≦a≦3.0 評価基準に適合し、非常に
優れている
2.0≦a<2.6 評価基準に適合している
が、より望ましくするため
の改善点もある
1.0≦a<2.0 評価基準に一部適合してお
らず、改善すべき点がある
0≦a<1.0 評価基準に適合しておら
ず、抜本的な改善が必要で
ある
終了時評価結果の4段階評価による内訳は以下の通り。また、各テーマの評価は別紙1のとおり。
【終了時評価】
(全40件)
評価 件数
評価基準に適合し、非常
に優れている11評価基準に適合している
が、より望ましくするた
めの改善点もある19評価基準に一部適合して
おらず、改善すべき点が
ある10評価基準に適合しておら
ず、抜本的な改善が必要
である0終了時評価の委員については別紙2のとおり。
(別紙1)
研究テーマ名: 電力・エネルギー分散化加速に向けた高耐圧SiC-IGBTシステムの開発
委託先:
株式会社日立製作所、
国立研究開発法人産業技術総合研究所
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に一部適合しておらず、改善すべき点がある
コメント:
世界情勢に左右されやすい当該分野において、様々な技術課題に取り組みその影響を最小限に留める工夫などを講じて計画修正し、研
究開発を進め最大限の成果を出された点は優れている。
本研究開発は、高耐圧SiC-IGBTとSiC-PNダイオードを用いたSTATCOMの実現を目標に掲げていたものであるが、今後は当該最終目標ま
での道筋と達成度をわかりやすく示した上で、研究開発を進めることを期待する。
研究テーマ名: バナジウム代替新型レドックスフロー電池の研究開発
委託先:
国立研究開発法人産業技術総合研究所、
三菱ケミカル株式会社、
小西化学工業株式会社
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合し、非常に優れている
コメント:
進捗に応じてより高い目標を設定しそれを達成するという研究開発の進め方は非常に優れている。また、得られた成果を積極的に
公表し、当該分野の活性化に努めた点は評価出来る。
研究テーマ名: 電力貯蔵用高安全・低コスト二次電池の研究開発
委託先:
一般財団法人電力中央研究所、
学校法人工学院大学、
一般財団法人ファインセラミックスセンター、
株式会社豊島製作所
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
目標値を大幅に上回る成果を達成しており、当初想定していなかった技術を取り入れて目標達成を図るといった研究開発の進め方
は優れている。
一方で、長期的な展開に関する議論が十分ではないため、今後は実用化までのプロセスを明確にすることを期待する。
研究テーマ名: 革新的酸素富化TSAによる低環境負荷燃焼技術
委託先:
国立大学法人金沢大学、
西部技研株式会社、
国立大学法人信州大学、
国立大学法人九州大学、
国立大学法人長崎大学、
大阪ガスケミカル株式会社、
国立大学法人大阪大学、
国立研究開発法人産業技術総合研究所、
株式会社トヨタエナジーソリューションズ、
中外炉工業株式会社
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
基材レスハニカム状CMSの製造法を確立したことや、小型の試験機による実証及びその技術を利用する機器の検討を並行して実施
した点が評価できる。実用化に向けた課題は明確になっているので、基礎研究と共に、耐久性についての検証やTSAに必要な冷却、
加熱エネルギーの定量評価や、燃焼装置と一体化した場合のシステム設計の検討等、社会実装に向けた実証試験、研究開発を並行し
て進めていただきたい。
研究テーマ名: 革新的ハイブリッド分離膜と酸素富化プロセスの開発
委託先:
国立大学法人信州大学、
トヨタ自動車株式会社、
三和油化工業株式会社、
株式会社アドマテックス、
国立大学法人大分大学、
日本製鉄株式会社、
学校法人早稲田大学、
国立研究開発法人産業技術総合研究所、
株式会社SEPINO
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
分離膜材料から膜製造技術の開発、酸素富化プロセスの設計・評価まで、一貫して取り組み、目標以上の成果が得られており、製
造ノウハウの蓄積、その課題の明確化、知的財産の権利化を着実に行っている。社会実装に向けては、本テーマの開発成果を工業炉
や燃料電池車等に実装した際のシステム設計、システム全体の省エネ性評価について具体的に検討し、運転コストや装置コストの利
点を示す必要がある。
■しかく評価実施テーマと評価結果
研究テーマ名: 表面・構造機能化による新コンセプト熱物質交換器開発
委託先:
国立大学法人東京大学、
学校法人早稲田大学、
株式会社UACJ、
日本エクスラン工業株式会社、
一般社団法人日本アルミニウム協会、
国立大学法人東京工業大学、
国立研究開発法人産業技術総合研究所、
中外炉工業株式会社
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合し、非常に優れている
コメント:
自動車の技術を給湯器の熱交換器に展開するなど、業界・学会を超えた取り組みで成果が出ている。
SiC熱交換器の製造についての技術的課題を解決し、フルスケール器の製作、実機試験などに今後取り組むとともに、長期的視点
での展開を検討していただきたい。
研究テーマ名: 相界面制御による熱・物質移動促進プロセス技術開発
委託先:
国立大学法人九州大学、
国立研究開発法人産業技術総合研究所、
株式会社UACJ、
ダイカテック株式会社、
株式会社長峰製作所、
国立大学法人徳島大学、
国立大学法人山形大学
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
新しい熱・物質移動促進方法のメカニズムを解明するなど、学術的な成果を出せた点は評価できる。社会実装に向けては、次段階
の技術課題を明確化したうえで、本技術の特徴をはっきり打ち出す必要があると思われる。また、ユーザーとなるメーカー企業を巻
き込むなどの体制作りを含め、開発した材料が実用化へうまくつながるような具体的な検討が望まれる。
研究テーマ名: 革新的アンモニア燃焼による脱炭素工業炉の開発
委託先:
国立大学法人大阪大学、
中外炉工業株式会社、
国立大学法人東京大学
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
アンモニアのみを燃料とする燃焼技術の課題解明・解決に挑戦し、次期開発ステージに向けて、重要な知見が得られた点は評価で
きる。次期プロジェクトであるGI基金事業では、参画機関同士の連携をより一層強め、本テーマで抽出された課題解決を目指して取
り組むことを期待する。特に、アンモニア改質や、後段未燃アンモニア除去をした場合の燃焼装置全体の効率の検討やコスト試算も
必要になると思われる。
研究テーマ名: アンモニアを燃料とした脱炭素次世代高性能工業炉の基礎研究
委託先:
国立大学法人北海道大学、
ロザイ工業株式会社、
三建産業株式会社、
国立大学法人東北大学、
国立大学法人広島大学
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合し、非常に優れている
コメント:
マイクロスケールからサブスケールまで、数値解析や実験を行い、実施項目全てにおいて目標を達成した。次期プロジェクトであ
るGI基金事業では、実施者同士の連携をより深めて研究開発を実施していただきたい。
研究テーマ名: マリンバイオマスの多角的製鉄利用に資する研究開発
委託先:
日本製鉄株式会社、
日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、
一般財団法人金属系材料研究開発センター
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に一部適合しておらず、改善すべき点がある
コメント:
マリンバイオマスの多角的製鉄利用を推進するための3つのサブテーマを計画通りに進め、概ね目標をクリアしたことは評価でき
る。
今後はマリンバイオマスの生産速度データ見直しによる栽培面積試算、海洋独占による漁業権の扱いなどを検討し、開発した要素
技術を一つの技術パッケージとしてまとめ、社会実装を見据えた取り組みを進めて欲しい。
研究テーマ名: 機械負荷制御導入による電動農機・農業ロボットの最適エネルギー・作業管理技術の開発
委託先:
国立大学法人愛媛大学、
井関農機株式会社、
愛媛県農林水産研究所
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に一部適合しておらず、改善すべき点がある
コメント:
農機の電動化の検討に進展が見られ、園地整備と連携した取り組みは社会実装に向けた現実的なものと評価できる。
一方で、提案技術の有効性と課題解決による技術成否のイメージが明確とは言い難く、農地での充電インフラ確保についてもより
検討が必要である。今後の研究開発の進捗予測や社会動向も踏まえ、大学と企業の有機的な連携により具体的な社会実装に向けた検
証や課題解決が望まれる。
研究テーマ名: 農業用途を視野に入れた波長選択型有機太陽電池の研究開発
委託先:
国立大学法人大阪大学産業科学研究所、
国立大学法人大阪大学
大学院工学研究科、
石原産業株式会社、
公立大学法人公立諏訪東京理科大学
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合し、非常に優れている
コメント:
植物が利用しない波長を発電に使うこと(ソーラーマッチング)にフォーカスした研究開発であり、緑色の吸収波長で外部量子効
率70%を超える性能を達成などユニークな成果が創出され、太陽光発電と農作物栽培の両者に活用できる点は評価でき、将来性もあ
る。
今後の課題は、温度や光照射による劣化対策、植物種毎の最適な透過波長や光強度について明確にすることであり、実際に農業に
活用していくことを念頭に実施内容を検討して欲しい。
研究テーマ名: 植物工場向けDR・生育維持システムの基礎技術開発
委託先:
一般財団法人電力中央研究所、
株式会社ネクステムズ、
国立大学法人佐賀大学
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
離島を対象に植物工場のエネルギーマネジメントとDRを組み合わせて実証したことは価値がある。植物に対する影響の詳細データ
が得られ、需給調整への寄与の可能性も定量的に調査されており評価できる。また、社会実装面において全体システムやコスト面を
考慮した評価がされており、将来性が期待できる。
一方で、実用化・海外展開を見据えて栽培植物の少量多品目化と栽培技術の高効率化が必要とされているが、消費者ニーズ確認や
実際の事業イメージ検討などより具体的な検証が必要である。
研究テーマ名: 農山村の森林整備に対応した脱炭素型電動ロボットの研究開発
委託先:
国立研究開発法人森林研究・整備機構、
ソフトバンク株式会社
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に一部適合しておらず、改善すべき点がある
コメント:
海外の優れた4足ロボットを活用し、利用技術の向上は図れた。必要な通信技術や位置情報取得技術に関しても一定の成果が得ら
れ、今後の導入に向けて課題や対策が明確に整理された。
他方で、既製品の利用技術獲得にとどまり、独自技術の開発や改良といった成果が乏しい。電源確保や異なるタイプのロボット等
についても検討すべきであった。また、技術やノウハウのマネタイズや国内ロボットメーカへの技術提供に関しても検討を進めて欲
しい。
研究テーマ名: 畜産系バイオガスのメタノール・ギ酸変換技術の開発
委託先:
エア・ウォーター北海道株式会社、
国立大学法人大阪大学
実施期間: 2021年4月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に一部適合しておらず、改善すべき点がある
コメント:
バイオガスをメタノールとギ酸に変換するというユニークな技術をラボレベルからプラントレベルで検討を加えた。各レベルの実
験結果の相関性の把握を行うことで今後の取り組むべき課題が抽出された。エネルギー収支等を見積もり、将来の社会実装に必要な
性能を検討した。
得られる生成物の濃度が極めて低いことは今後に向けた大きな課題である。改善には、ラボレベルでデータ検証による根本的な原
因追及が必要である。
研究テーマ名: 4端子タンデム太陽電池用トップセルの開発
委託先:
国立研究開発法人産業技術総合研究所、
株式会社東芝、
国立研究開発法人物質・材料研究機構、
国立大学法人鹿児島大学
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
東芝の独自技術であるCu2O太陽電池の最高効率達成は特筆すべき成果である。更にデバイスシミュレーションを駆使し変換効率向
上の要因分析を行い、今後の研究開発の方向性を明確にしていることは評価できる。
今後の課題は、Cu2O太陽電池(トップセル)だけではなく、シリコン太陽電池(ボトムセル)と多接合型にした場合の高変換効率
の達成である。多接合型太陽電池の性能シミュレーションも活用し、具体的な製品開発に繋げて欲しい。
太陽電池の原料調達が懸念される中、CZTS等レアメタルを使用しない代替技術の研究継続も期待する。
研究テーマ名: 高効率シースルー有機薄膜太陽電池を用いた革新的発電窓の研究開発
委託先:
国立大学法人広島大学、
東レ株式会社
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
有機薄膜太陽電池の性能向上ならびに透過型太陽電池の開発の両面において当初の目標を上まわっており、シースルー型有機薄膜
太陽電池を窓に応用する上で重要な成果が得られている。
今後の課題は、産学連携による実用化や社会実装する上での道筋とその課題を明確にすることであり、将来、窓製品として上市す
ることを期待する。
研究テーマ名: 次世代高効率モータを実現する革新的モータプラットフォームの開発
委託先:
株式会社アスター、
国立大学法人茨城大学
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に一部適合しておらず、改善すべき点がある
コメント:
本研究開発のモータ単体の要素技術に関して、砂塵防水性能I67 を確保した、高出力密度6 kW/kg の目標が達成でき、かつ3 0kW
の机上検討が出来たアプローチ、ならびに成果ともに優れている。また今後の研究開発の準備や事業化に向けた取り組みが明確化さ
れており評価できる。
一方で、製造プロセスや量産化に向けてのノウハウが不十分であり、今後は機体との一体開発に向けた機体メーカとの積極的連携
やモータ単体に留まらずシステム技術を志向、および量産化に向けた信頼性・均一性の向上を期待したい。また大容量化(3 0kW
級)の実現、ならびに一体成型コアの検証をやりきり、優れた技術にしていただきたい。
研究テーマ名: 車載向け超高速光通信システムの標準化に向けた研究開発
委託先:
矢崎総業株式会社、
国立大学法人宇都宮大学、
株式会社ファイ・マイクロテック、
AGC株式会社
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
世界で初めて車載対応の10Gbps 光通信システムを実現し、国際標準化活動においても具体的な動きを開始して道筋をつけている
点は評価できる。また、本技術は車体の軽量化にも大きく貢献するものであり、車載技術の高度化だけでなく、カーボンニュートラ
ルへも大きな期待ができる。
一方で、成果の社会実装に向けた具体的な計画とアクションが期待される。すぐに次世代技術への開発競争へシフトするので、今
後も継続して最先端の技術開発を推進できる体制の構築を進めてほしい。
研究テーマ名: 低騒音ダクテッドロータへのバイオミメティクスの応用
委託先: 川崎重工業株式会社
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
低騒音ダクテッドロータを開発し、本事業の騒音低減目標 -20dBA を達成できたことは優れた成果である。MOGA(多目的遺伝的ア
ルゴリズム)とCFD(流体解析)で得られた低騒音と高推力を両立した翼は、これまでの翼の設計概念を覆す革新的成果になる可能
性が期待される。
一方で、実機レベルでの評価や考察でないため、成果が限定的である。そのため、今後は、ニーズを踏まえ実用に近い環境で性能
検証することを期待したい。
研究テーマ名: 異なるスケールで収集したデータの階層的構造を考慮したモデル化手法の構築
委託先:
株式会社ザクティ、
国立大学法人東京大学、
株式会社ザクティエンジニアリングサービス、
株式会社パスコ
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
本研究開発のマルチスケール階層データのモデル化手法において、各階層のデータを多次元的に活用できる基盤を構築し、その可
能性と課題点を明確にしたことを評価する。またマルチスケール階層データのモデル化手法、深層学習のモデル化手法、階層化活用
手法、リモートセンシングシステムの4 つテーマについて、多くの研究成果と知見が得られているのも高く評価する。階層相互作用
を自動的に拡張していく重要技術の先駆けになる研究開発である点も優れている。
一方で、様々なフィールドにおける提案モデルの適用可能性、汎化性能、ならびに信頼性の定量的な評価手法については、まだ検
討の余地が残されており、継続的な検討を促したい。また優位性を確保するために、ユーザビリチティに優れたハードウェア・ソフ
トウェアのパッケージ化の開発も検討していただきたい。
研究テーマ名: 液体水素を用いた航空機用電動推進システムの研究開発
委託先: 株式会社IHIエアロスペース
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
全体として、目標を達成できていると判断される。先導研究としての成果は十分に得られている。
液体水素貯蔵用複合材タンクを開発するために、樹脂・プリプレグ・成形・設計・評価まで一気通貫で取り組み、未知の使用領域
である極低温での構造実証試験まで達成できたことは革新的であり高く評価できる。また海外の認証動向を踏まえた技術課題の整理
ができており、今後の展開に期待が持てる。一方で、詳細な構造要素の技術検討についてはやや不十分な点も見受けられ、特に異材
接合を伴うボス部の設計などは今後注力すべき技術課題であると考えられる。また、社会実装に向けて機体への実装を含めた構造検
討や、実スケールにむけた設計・製造上の予備検討なども平行して進めていると更に良かった。
航空機材料は様々な環境で使用されるため、その特徴についてどのように評価・解析して理論武装していくのかが重要である。O
EMやコンポーネントメーカー等も含めた様々な意見交換を行い、研究開発を促進して頂きたい。
研究テーマ名: 水素を活用した航空機のための境界層制御技術の研究開発
委託先: 川崎重工業株式会社
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
いずれの研究開発項目においても、目標は達成されており、先導研究の成果として十分であると判断される。
重量インパクトが小さく、大きな性能向上が実現するとのことから、将来有望な要素技術であると思われる。成果の権利化も進め
ており、知財マネジメントも適切である。また先行研究例のない遷音速領域において、CFD・風洞実験・機体コンセプト検討により
壁面冷却による層流域拡大を確認できたことは、新規性が高く学術的にも有意義な成果である。一方で、検討がやや不十分な点も見
受けられ、例えば知財の基本となる冷却システムや翼構造の研究開発に関する課題抽出をしておくことが望ましかったように思われ
る。また今後の技術開発については、大学連携や機体OEMとの情報交換を行う等、システム的見地からブレークダウンされた具体
的な計画を示すと更に良かった。
社会実装のためには機体OEMとの情報交換などを行い、具体的な水素航空機の機体形状を検討しながら進めると良いと考えられ
る。また信頼性を念頭に置いたモノづくり体制の構築、さらには全体像がわかるような「技術の見える化」についても取り組んで頂
きたい。
研究テーマ名: ゼロエミッションに向けた内燃機関の革新的摩擦損失低減技術
委託先:
自動車用内燃機関技術研究組合(*AICE)、
学校法人五島育英会東京都市大学、
学校法人東海大学、
国立大学法人千葉大学
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合し、非常に優れている
コメント:
NEDOグリーンイノベーション基金事業に繋がる優れた成果が得られており、今後の研究開発の方向性についても明確なビジョンを
有し、同基金事業の最終目標を高いレベルで達成できる要素技術として今後も活用が期待される。また、今回研究開発されたSト
レース法によるLOCマップとPNマップの相関図やフォトクロミズム、蒸発LOC計算モデルなどの新規要素技術は、今後の企業への展
開、実用化・社会実装化においても重要な役割を担うものと期待できる。更に、個々の大学で進める基礎研究において、研究成果の
相互共有と統合試験のフィードバックを密に行い、1つの統合した研究成果としてまとめ上げていった点は、研究マネジメントの観
点から非常に優れた取り組みと言える。
研究テーマ名: エンジン排出ガス後処理装置のコンパクト化に関する技術開発
委託先:
自動車用内燃機関技術研究組合、
学校法人早稲田大学
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合し、非常に優れている
コメント:
排気後処理システムのコンパクト化につながる各要素技術の開発において優れた成果が得られており、次のGI基金事業において優
位性の高い機能統合されたコンパクト化技術開発が行われる可能性が期待される。多層触媒、低温化でのNO、HC吸着材量の特性解
析、貴金属触媒での低温活性化の3項目とも新規性があり、極めて重要な結果が得られている。特に熱劣化の物理モデルを含む3次
元触媒反応、触媒粒子メンブレン構造の構築及び触媒粒子のメソポーラス化は特筆すべきである。量産移行を見据えた研究課題を設
定し、課題解決に向けた研究が行われている点、引き続きGI事業にて研究が進められる点は特に優れていると言える。
研究テーマ名: 自動車用炭素繊維サーキュラーエコノミー・プログラムの研究開発
委託先:
旭化成株式会社、
独立行政法人国立高等専門学校機構北九州工業高等専門学校、
学校法人東京理科大学
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
研究開発成果について、CFRP 製の圧力タンクやフィラメントワインダー成型サンプル等を対象に、樹脂分を電解硫酸法によりCO2
と水に分解して除去し、バージン材同等の強度の連続炭素繊維について、フィラメントワインダー成型サンプルで目標を大きく上回
る70m 以上回収することに成功し、他の競合技術への高い優位性を示した点は評価でき、本成果により差別化された炭素繊維の循環
システムの構築が期待される。
今後の展開について、社会実装に向けた後継プロジェクトが現在も進行中である点、マネジメントについては、研究開発推進委員
会等での外部有識者の助言に対して事業者間でサポートして課題解決するなど、適切に研究進捗管理が行われた点は評価できる。
一方で、処理対象品目は限定的で、今後、CFRP は様々な製品での利用が想定されることから、処理対象品目を拡大し、自動車
用・航空用CFRP 等といった他製品への適用可能性について検証を進めることを期待したい。また、分解槽から発生するCO2 も含め
た実証プラントレベルでのLCA 的な評価の実施や、電解硫酸処理を長時間施した炭素繊維の構造解析及び基礎物性評価の実施、電極
メーカー等との連携体制の構築の検討、海外での社会実装を見据えた展開を検討するなど、今後も引き続き、研究開発に取り組んで
いただきたい。
研究テーマ名: 排ガス・廃水中希薄有害物質の無害化・利用技術開発
委託先:
国立研究開発法人産業技術総合研究所、
国立大学法人神戸大学、
国立大学法人東京工業大学、
住友化学株式会社、
栗田工業株式会社
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合し、非常に優れている
コメント:
適切なマネジメントの下で各研究開発項目が達成されており、先導研究として優れた成果が得られたと評価される。社会実装に向
けた展開が具体的にある研究開発項目がある一方で、企業との共同研究段階に留まる項目もあり、社会実装に向けた課題の抽出と対
応が必要である。今後、具体的なシナリオを想定した上で、要素技術を組み合わせた実証研究を展開し、社会実装に向けて研究開発
をさらに進めていただきたい。
研究テーマ名: 絶縁基板上大面積高品質グラフェン成膜技術の開発と光デバイス応用
委託先:
国立研究開発法人産業技術総合研究所、
浜松ホトニクス株式会社、
国立大学法人三重大学
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
コールドウォール型CVD 装置を導入し、500°Cで基板上に大面積グラフェンの成膜を実現し、得られたグラフェンを一部用いて、
光電子増倍管、熱発生素子、深紫外光LED など、光学素子の応用に関する、当初立てた具体的な目標値を達成した。具体的には多結
晶多層グラフェンの大面積化技術が進展し、高移動度を必要としない光デバイス応用での素子性能、特に光センサの量子効率の大幅
なアップと発光効率の向上がみられた。また、グラフェンを剥離層(犠牲層)としてAlN の剥離・転写を実証し、得られたAlN 紫外
LED の良好な特性が得られた点が評価できる。
低温で合成されたグラフェンの結晶性は、熱CVD などで得られる結晶性より良くないことは予想できるが、報告書において今回の
装置を導入した意義や、従来の同様の装置と比べどういう点が改善されたのかなどの具体的な記述が十分ではない点、また、達成し
た技術のすごさが報告書からはあまり伝わらない点が複数の委員から指摘された。特に、今回開発したグラフェン成膜技術を三重大
が活用するに至っていない点や、浜松ホトニクス社の赤外光源の性能改善に、成膜技術が活かせていない点など、産官学の研究協業
体制における技術の受け渡し、相互の連携の方法にさらに改善すべき点があると考える。
研究テーマ名: 高機能テープを用いた二次元材料の革新的転写法の開発
委託先:
国立大学法人九州大学、
日東電工株式会社
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合し、非常に優れている
コメント:
紫外光を照射することで粘着度を弱くできる粘着テープを用いて、グラフェンの転写技術の開発に成功した点が評価できる。すべ
ての研究開発項目において、目標を達成または上回る成果を得ている。目標の達成においては、学と産の各プレイヤーが有機的に協
働して、シナジー効果を発揮したと評価できる。また、転写の成功率を上げるために、専用のロボットを開発し、転写をプロセス技
術の一つまでに発展したのは、将来性を十分期待できるものになっている。さらに、グラフェン以外の二次元物質の転写にも応用す
るなど、展開の波及効果が大きい。
転写技術の開発という、かなり実用的技術ノウハウに近い領域の研究課題であるからやむを得ないことかもしれないが、論文発表
(採択1件)、学会発表0 件、知財件0 件(準備中)など少ない点は、改善すべき点である。粘着の微視的理解を科学的に検証する
ことが今後の発展に必要である。また、今回の成果が産業応用の観点だけでなく、国内の基礎研究の発展にも貢献できるように、開
発段階からテープが試用できるような対応があることが望まれる。
研究テーマ名: サステナブルな鋼構造系インフラ用の高性能鋼材と利用技術の研究開発
委託先:
国立研究開発法人物質・材料研究機構、
株式会社竹中工務店、
国立大学法人大阪大学、
国立大学法人北海道大学
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合し、非常に優れている
コメント:
2年間という短い期間で新材料の創出など、提案された各目標の個別要素についてきちんとエビデンスを出し、いずれもが適切な
成果目標を達成したことは高く評価される。
また、中間評価での指摘事項に対しても明確に対応しており、「A1:革新的な耐食耐疲労鋼の開発」と「B:インフラ用鋼材の革
新的摩擦接合技術の開発」の成果の権利化も優れている。
一方で、鋼構造系インフラ構造物の超長寿命化を実現するためには、本研究開発項目だけでは不足しており、それをどのようにし
て補うかの基本的な考え方を示す必要がある。
具体的には、ミクロスケールの成果について建設物スケールへの適切な適用の考察や全体を組み合わせた際に一つの製品として成
立するための全体構想、溶接割れの数の多さや活荷重・風荷重による疲労特性の評価、ステンレス・クラッド鋼との競合など、今後
の実用化と市場に関する検討を行うことで、実用化に向けた具体的なシナリオやマネジメント上のKPIが一層クリアになり、今後の
展開や研究開発方針が見えやすくなると思われる。
研究テーマ名: 動的熱制御のための潜熱・伝熱ハイブリッド固体材料の研究開発
委託先:
国立研究開発法人産業技術総合研究所、
太陽鉱工株式会社
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
目標以上の除熱能力(熱流束と持続時間)を達成するなど、目標を達成し実装開発に向けた成果が十分得られている。熱的性能の
みならず耐久性や製造プロセスについても検討がなされている点で評価に値する。固固相転移を用いて高熱流束環境をマネジメント
する技術について、熱的な特性としては目標を達成し素晴らしい成果である。数値計算や材料評価も産業技術総合研究所でノウハウ
を確立していることも評価できる。テストプラントの結果から固体PCM 原料の大量生産への見通しも立ち、ユーザーとの開発ステー
ジが始まる状況にあり、今後の実用化に向けた状況として評価できる。Cu との複合化まで含めて企業側は大量生産ノウハウ(1ton/
年)を確立し、ユーザーとの開発ステージが始まる状況まで成果を挙げていることは総合的に見て極めて優れていると評価できる。
知財確保が行われている点も評価したい。
本NEDO 事業による特許出願がないことは、それだけ基本特許が強い知財であったと考えるが、一方で、競争が激しい分野なの
で、今後の特許出願を期待する。今後の開発担当が産業技術総合研究所のみとなっているが、企業も参加していくことが望ましく、
最終的に製品を生産する事業者を明確にしてほしい。今後の実用化に向けた活動に対して、産業技術総合研究所、太陽鉱工株式会
社、ユーザー、それぞれの役割分担と担当する技術課題を明確にする必要がある。ユーザーとの開発連携がより早く進められていれ
ば、更に良かった印象がある。敢えて改善すべき点を挙げるとすれば、機械的材料強度の目標値を達成できなかったことである。転
移温度70°C〜120°C対応組成において熱伝導率が低くなるメカニズムの解明と解決策の検討も鋭意進めて戴きたい。ヒートシンクな
ど具体的な応用先まで挙げられるだけの成果が挙がっており、社会実装を急ぐべきである。今後、複合化技術の進展とともにより良
いものができる可能性があり、諦めることなく開発を進めて頂ければと考える。実装できそうなところから、早く進めていただきた
い。
研究テーマ名: リグノセルロースのワンステップ3成分分離と化学品変換の概念実証
委託先:
国立大学法人神戸大学、
国立大学法人金沢大学、
関西化学機械製作株式会社
実施期間: 2021年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合し、非常に優れている
コメント:
バイオマス3成分を有機酸で分離する技術とそれを連続的に処理する装置の開発は優れており、既にユーザー企業との事業化検討
など次の段階の研究計画を進めている点は高く評価できる。
今後はユーザー企業との協議をさらに進めて製品化に至る研究開発シナリオを設定し、従来品との機能比較やコスト比較、LCA評
価などを行って社会実装へ向けた取り組みを進めて欲しい。
研究テーマ名: 農山漁村地域のRE100に資するVEMSの開発
委託先:
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、
国立研究開発法人産業技術総合研究所、
学校法人慶應義塾、
学校法人早稲田大学、
国立大学法人東京大学、
国立大学法人京都大学、
三菱電機株式会社、
千葉エコ・エネルギー株式会社、
ジオシステム株式会社、
ホルトプラン合同会社
実施期間: 2021年6月1日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に一部適合しておらず、改善すべき点がある
コメント:
地域レベルで農業、漁業、林業のエネルギーマネージメントを目指し、具体的なデータ収集に着手したところに意義がある。多く
の研究機関と事業者が集まり、その得意分野においてデータを活用してシミュレーションレベルの検討ができている。
一方で、VEMSの導入効果を議論するためには、農林水産業特有のエネルギー需要供給源について、さらに詳しく調べる必要があ
る。年間を通したVEMSシミュレーションを行い、導入時の効果や採算性検討に活用できるシステムとなるように各機関の出した成果
を統合する必要がある。
研究テーマ名: 産業CNに向けたサーマルサーキットの開発
委託先:
国立大学法人神戸大学、
国立大学法人東海国立大学機構岐阜大学、
国立大学法人東京工業大学、
国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学、
国立大学法人岡山大学、
国立大学法人九州大学、
アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社、
株式会社ファンクショナル・フルイッド、
日新電機株式会社、
森松工業株式会社
実施期間: 2022年5月9日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に一部適合しておらず、改善すべき点がある
コメント:
システムの構想、アイディアは独自性があり、全要素技術について、試作、試験できたことは評価したい。
一方で、構成要素の各装置の原理実証や開発が十分でなかった。サーマルサーキットの構造と性能の説明も不足しており、目標温
度の達成も含め、得られる熱量、機器のサイズ等について、今後、十分に検討していただきたい。
研究テーマ名: 空飛ぶクルマの高精度飛行予測技術開発
委託先: 国立大学法人京都工芸繊維大学
実施期間: 2022年5月11日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
1年間の限られた期間で具体的な成果も出ており、成果発信にも努力している。コアとなる技術が優れており、実用化に向けたシ
ナリオが幅広く検討されている。また有識者とも必要な対話をしながら研究開発を進めている点は評価できる。
一方で、実用化に向けた課題を整理し、優先順位をつけて解決を図っていただきたい。また本技術を有用なものとするため、連携
先の選定と具体的な対話を早期に進め、将来構想等を含め検討することを期待したい。またこれまでの成果で今後の実装についての
可能性が高いとまでは言い切り難く、すでに認識されている課題解決に加え、模擬する機種の幅の拡大を期待したい。
研究テーマ名: 周波数変調・モード局在複合センサの研究開発
委託先: 国立大学法人東北大学
実施期間: 2022年5月11日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
短期間で、一定の成果が得られたことを評価する。近いうちにセンサチップというかたちで成果物が得られ、実装への見通しが期
待される。また海中の高精度航法技術等の他の応用先の検討も進んでいる点も評価する。
一方で、今後の事業展開に向けてパートナーを早期に見つけ、空飛ぶクルマだけでなく幅広く適用可能なアプリケーションを検討
すべきである。アプリケーションの特定と性能要求の確認を行い、それらを踏まえた開発を進めていただきたい。また今後、本プロ
ジェクトの成果を使ったセンサの開発が大きな課題であり、そのうえで、センサ性能の検証なども検討していただきたい。
研究テーマ名: 超極細MgB2超電導素線の研究開発
委託先:
国立研究開発法人物質・材料研究機構、
明興双葉株式会社
実施期間: 2022年5月11日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合し、非常に優れている
コメント:
外径15μmまでの加工技術を確立した点など、全体的に期待以上の成果が出ている。NIMS と明興双葉の二つのグループでそれぞ
れ当初設定の目標値を達成し、線材の長さについては目標を大きく上回る成果が出ている点は評価に値する。また、明興双葉の当該
事業部門を独立会社化させるなど事業化に向けた動きも見られており、本先導研究は高評価されるべきものと判断できる。
超極細MgB2 超電導素線は、従来の低温超電導で一般的な多数のフィラメントを銅などの安定化材に埋め込んだ多芯フィラメント
構造の単芯線の欠点を補い、機械的に脆くワインド&リアクト法でコイルを製作する必要があったMgB2 線の応用範囲を一気に広げ
ることが考えられる。扱い易く低コストで製造できる超極細MgB2 超電導素線は幅広い分野への応用が期待できる。例えば、生成AI
の普及などにより、今後の爆発的な電力の増大が懸念されるデータセンター等の情報機器分野への応用等、これまでにない分野への
応用も期待できる。
一方で、水素冷熱の有効利用という観点からは、今回開発する超電導線の冷却のみでは冷熱が余ってしまうことは明白であり、他
の冷熱利用システムとのうまい組み合わせを考える必要がある。ただ、液体水素用の超電導線材が実用化されれば応用範囲は大いに
広がることが期待できる。
今回の断面形状、加工方法などは一般的なもので、競合他社との差別化は困難であり、20K の応用を念頭に置くと、RE-123 系線
材など、高品質かつ高性能な線材が量産され上市されている状況から、この線材がゲームチェンジャーになるとは考えにくい。むし
ろ、唯一の細い形状を生かし、RE-123 では巻き線不可能なニッチな市場を形成することを目指すべきだろう。
実用化のための改善(コスト、耐久性など)、早期実用化を第一に考えた量産化の目標立案、 液化水素での基礎試験計画立案、
といった改善すべき点があり、今後の解決に期待したい。 研究テーマ名: IoTシステムを革新する酵素電池の開発
委託先:
学校法人東京理科大学、
国立研究開発法人理化学研究所、
株式会社仁科マテリアル
実施期間: 2022年5月11日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に適合しているが、より望ましくするための改善点もある
コメント:
短期間のプロジェクトであったが、多方面で酵素電池の実用性の向上に向けた成果が得られ、今後の技術的課題も明確になりつつ
ある。
多種の要因が性能に影響する複雑な技術であるが、概ね目標を達成している。酵素系の研究成果、およびその酵素反応系から適切
に電子を取り出す電子伝達分子およびポリマー材料に関する研究成果が認められる。また、液・液相分離による効率向上の成果は興
味深く、今後の可能性を感じさせる。
本先導研究事業で得られた成果を融合し、さらに研究推進体制を強化することによって、酵素電池の社会実装を進めていただきた
い。現時点で、付加価値が高いと考えられる用途に向けた検討が具体的になされていることは、本先導研究から大型国家プロジェク
トに進むための準備として期待できるものの、より現実的な計画・道筋を示すことが求められる。
長期的な研究開発テーマを計画するにあたっては、得られた研究成果を起点とした計画・道筋だけでなく、明確なビジョンに基づ
き、最終的な到達点から逆算した計画・道筋を提示することも必要である。
研究テーマ名: 太陽光発電のサステナビリティ向上に向けた革新的技術の研究開発
委託先: 国立研究開発法人産業技術総合研究所
実施期間: 2022年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に一部適合しておらず、改善すべき点がある
コメント:
有機薄膜太陽電池において、簡便なITO基板のリサイクル技術確立を目指した研究開発で、今後、研究が進展すれば太陽電池のリ
サイクルに大きな貢献をする可能性があることは評価できる。
一方で、短期間で研究機関単独で実施した本事業の成果は要素技術の確立に留まっており、今後は表面処理法等の基礎的研究を積
み重ねる必要がある。
ITO回収技術を如何に有機薄膜太陽電池へ適用するかを含め、他の研究機関や事業者と連携し、今回得られた成果を有効活用した
太陽電池の実現を期待したい。
研究テーマ名: バネフィルタによる有価金属採取技術の開発
委託先: 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
実施期間: 2022年5月12日〜2023年3月31日
総合評価: 評価基準に一部適合しておらず、改善すべき点がある
コメント:
吸着剤を作製し、その性能を評価し、プロセスとして成立することが実証できたことから、本事業の目的である先導的な研究実績
は達成できたものと評価できる。また、研究開発推進委員会を組織して客観的な評価と柔軟な計画変更をしながらも当初の目標値を
クリアしている。
一方で、バネフィルタ自体の性能、強み及び技術制約に関わる情報が少なく、省スペース化の設計原理や全プロセスに対する空間
速度の目標値の重要性が不明確である。油脂からのBDF 化については、市場ニーズを鑑みた転換率90%の目標設定の必然性の説明が
明らかではない。総じてCO2 削減効果の検討が不足しており、具体的なシステム設計への展開を想定した上で、社会的なインパクト
を定量化することが求められる。また研究発表・講演、特許出願等の実績が無いのも残念である。民間企業等と連携し、具体的な対
象やスケールアップ検討等を経て社会実装に繋がることを期待する。
(別紙2)
終了時評価委員名簿(敬称略、順不同)
氏名 機関名 役職
青木 雄一郎 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 航空技術部門 航空機DXチーム 研究領域主幹
青木 義満 学校法人慶應義塾 電気情報工学科 総合デザイン工学専攻科 教授
赤津 観 国立大学法人横浜国立大学 大学院工学研究院 知的構造の創生部門 教授
秋永 広幸 国立研究開発法人産業技術総合研究所 総括研究主幹
阿部 雅人 株式会社ベイシスコンサルティング 研究開発室 チーフリサーチャー
井藤 幹夫 学校法人金井学園 福井工業大学 工学部 機械工学科 教授
伊庭 健二 学校法人明星学苑明星大学 教授
岩田 拡也 国立研究開発法人産業技術総合研究所 インダストリアルCPS研究センター 主任研究員
岩本 学 株式会社日本政策投資銀行 企業金融第2部 航空宇宙室 調査役
江面 浩 国立大学法人筑波大学 教授
遠藤 哲郎
国立大学法人東北大学 工学研究科 国際集積エレクトロニクス研究開発セ
ンター
教授 / センター長
大谷 繁 一般社団法人地球温暖化対策技術会 技術顧問
大林 茂 国立大学法人東北大学 流体科学研究所 教授
大矢 晃久 国立大学法人筑波大学 教授
大和田野 芳郎 福島県ハイテクプラザ 所長
岡田 道哉 国立研究開発法人産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 連携推進室 チーフ連携オフィサー
小笠原 俊夫 国立大学法人東京農工大学 大学院工学研究院 先端機械システム部門 教授
影山 裕史 学校法人金沢工業大学 大学院工学研究科 高信頼ものづくり専攻 教授
亀山 秀雄 国立大学法人東京農工大学 名誉教授
河本 桂一 みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社 上席主任コンサルタント
北﨑 智之 株式会社AIST Solutions プロデュース事業本部 事業構想部 Well-being事業プロデューサー
久保内 昌敏 国立大学法人東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 教授
後藤 勝久 トスク株式会社 アクアシステム事業部 部長
齋川 路之 一般財団法人電力中央研究所 グリッドイノベーション研究本部 首席研究員 研究アドバイザー
齋藤 理一郎 国立大学法人東北大学 名誉教授
堺 和人 学校法人東洋大学 理工学部電気電子情報工学科 教授
佐藤 信太郎 富士通株式会社 富士通研究所 量子研究所長
地下 大輔 国立大学法人東京海洋大学 准教授
首藤 登志夫
東京都公立大学法人東京都立大学 大学院都市環境科学研究科 環境応用化
学域
教授
白�� 良太 特定非営利活動法人 ITS Japan 常務理事
鈴木 真二 国立大学法人東京大学 未来ビジョン研究センター 特任教授
千田 二郎 学校法人同志社大学 理工学部 機械理工学科 教授
田岡 久雄 学校法人西大和学園大和大学 教授
高倉 秀行 学校法人立命館 立命館大学 名誉教授
高田 広章
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 未来社会創造機構 モビリティ
社会研究所
所長 / 教授
高田 保之 国立大学法人九州大学 カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 特命教授
髙野 滋 株式会社ANA総合研究所 顧問
(別紙2)
高野 浩貴 国立大学法人東海国立大学機構岐阜大学 准教授
竹内 敬治 株式会社NTTデータ経営研究所 シニアマネージャー
田中 健一 元三菱電機株式会社 開発本部 技術統轄
田中 俊輔 学校法人関西大学 環境都市工学部エネルギー・環境工学科 教授
田中 誠 太陽光発電技術研究組合 事務局長
段野 孝一郎 株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 戦略企画部 部長/プリンシパル
張 莉 一般財団法人電力中央研究所 上席研究員
辻上 博司 岩谷産業株式会社 岩谷水素技術研究所 部長
都留 稔了 国立大学法人広島大学大学院 教授
寺嶋 光春 公立大学法人北九州市立大学 国際環境工学部エネルギー循環化学科 教授
飛野 智宏 国立大学法人東京大学大学院 工学系研究科 都市工学専攻 准教授
虎谷 大地
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 電子航法研究所 航空交通
管理領域
主任研究員
中井 智司 国立大学法人広島大学 大学院先進理工系化学研究科 教授
中島田 豊 国立大学法人広島大学 教授
中田 敏是 国立大学法人千葉大学 大学院工学研究院 准教授
中野 冠 学校法人慶應義塾 大学院 システムデザイン・マネジメント研究所 顧問
西 順也 電力研究国際協力機構 部長
庭野 道夫 国立大学法人東北大学 名誉教授
野波 健蔵 一般財団法人先端ロボティクス財団 理事長
波多野 邦道 一般社団法人日本自動車工業会 自動運転部会 部会長
平瀬 祐子 学校法人東洋大学 准教授
藤田 淳一 国立大学法人筑波大学 数理物質系 電子・物理工学専攻 教授
松井 康弘
横河電機株式会社 エネルギー&サステナビリティ事業本部 エネルギービジ
ネス開発センター 水ビジネス開発部
副部長
松尾 亜紀子 学校法人慶應義塾 機械工学科 教授
松田 浩 国立大学法人長崎大学大学院 工学研究科 システム科学部門 名誉教授
丸山 一平 国立大学法人東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 教授
三戸 利行
大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所 研究力強化戦
略室
特任教授
宮﨑 康次 国立大学法人九州大学 工学研究院 機械工学部門 教授
森川 健志 株式会社豊田中央研究所 シニアフェロー
山口 有朋 国立研究開発法人産業技術総合研究所 研究部門長
山田 明 三菱重工業株式会社 顧問
山村 寛 学校法人中央大学 理工学部 人間総合理工学科 教授
山本 秀樹
日本電信電話株式会社 NTT物性科学基礎研究所 多元マテリアル創造科学研
究部
部長 / 上席特別研究員
湯木 将生 三菱UFJキャピタル株式会社 執行役員 / 戦略開発部長
吉岡 俊彦 国立大学法人京都大学 特定教授
吉本 貫太郎 学校法人東京電機大学 未来科学部ロボット・メカトロニクス学科 教授
渡辺 和徳
一般財団法人電力中央研究所 エネルギートランスフォーメーション研究本
部 プラントシステム研究部門
部門長
※(注記)所属・役職は評価実施時点のもの。