電気自動車(EV)やエアコンなどに使用されている電動モータには、耐熱性向上のためディスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)などの重レアアースを用いたネオジム磁石が使用されています。自動車のEV化の加速に伴い、これらの重レアアースは大幅な需要増が見込まれています。しかし重レアアース資源は希少でかつ特定国に偏在しており、近年の世界情勢の不安定さもあいまって、その供給リスクは深刻な問題になってきています。
本事業では、鉱石並びに廃EV、廃家電等に含まれるネオジム磁石廃棄物から、ディスプロシウム、テルビウム等を純度良く相互分離し、さらにコスト競争力を有するような回収技術を開発し、日本国内で事業化することを目標としています。
特定国の製造技術や資源政策に依存しない「重レアアース資源循環および資源確保」を国が主導する形で進めていき、日本の素材産業の安定化と将来の供給リスク不安を解消することが、本事業の狙いとなります。
レアアースを含む天然鉱物に含有することが多いウランやトリウム等の放射性元素、磁石製造時の端材などの屑や不用な金属夾雑物を含む未利用資源から、ディスプロシウムやテルビウムのような重レアアースのみを選択的に回収する手法を開発します。
ディスプロシウム/テルビウムの分離工程に関して、広大な敷地を必要とする従来法(ミキサーセトラーを用いた溶媒抽出法)と比較して、設備規模の削減(省面積化)、および処理速度の向上を実現する、両者の高精密相互分離技術とこれを用いた分離精製プロセスを確立します。
さらに、この分離精製プロセスの後工程となる精錬工程についても、省電力化のため、従来法と比較してより低温下でテルビウムの精錬を可能にする技術を開発します。また、本事業で開発するこれらの技術は製造コスト評価を行い、事業終了後、日本国内での事業化へと着実に繋げていきます。
「2050年カーボンニュートラル」の実現には、電動モータの普及がカギだと言われている。この電動モータに使用されているネオジム磁石には、ネオジム以外にもディスプロシウムやテルビウムがレアアースとして使用されており、その資源問題は、近年、看過できない状況となってきた。本事業で開発される技術によりディスプロシウムやテルビウムのサプライチェーンが強靱化され、今後の日本の産業の成長に大きな貢献をもたらすものであると期待している。
事業期間・予算額 | 事業期間:2023年度〜2027年度、予算額:3.0億円(2024年度) |
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技術・事業分野 | 材料・製造 |
プロジェクトコード | P23006 |
担当部署 | バイオ・材料部 (TEL:044-520-5220) |
最終更新日:2024年9月25日