外国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクト
これまでの取り組み
王榮(木下貴雄)
多文化国際介護士・認知症介助士・心療回想士・健康介護コンシェルジュ
多文化ソーシャルワーカー・終活ケアライフプランナー
愛知県立大学・大学院非常勤講師
外国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクト 代表
あいち多文化ソーシャルワーカーの会 代表
在住外国人の高齢者人口
★高齢化に伴う課題 ☞ 介護→ 終末期ケア・看取り→ 葬儀・墓 ☞異文化「介護・終活」
★在住外国人総人口(2022年12月末現在)
194ヵ国 3,075,213人
うち、65歳以上 209,033人 6.8%
(アジア圏 177,444人 84.9%)
☛前年同期比 10,498人 増
★国籍・地域別(65歳以上の外国人高齢者人口)
1在日コリアン(韓国・北朝鮮)→ 129,840人 62.1%
2中華系(大陸・台湾) → 33,398人 12.7%
3ブラジル → 12,703人 6.1%
4アメリカ → 7,478人 3.6%
5フィリピン → 5,212人 2.5%
6ペルー → 3,955人 1.9%
外国人高齢人口の「単純」推移
★64歳〜50歳の外国人人口(2022年12月末現在)
439,329人
うち、64歳〜60歳 104,299人
59歳〜55歳 147,488人
54歳〜50歳 187,542人
★15年後(2037年)外国人高齢者人口
648,362人
だいやまーくその先の人口
45歳〜49歳 195,438人
40歳〜44歳 246,042人
35歳〜39歳 292,592人
30歳〜34歳 394,532人
��これが"多文化共生社会の先にある現実"
2014年度 トヨダ財団助成事業
 外国人の高齢化が今後も進んでいくことが予想されるが、そのため
の施策は行政においてはまだとられておらず、介護施設において
は受入体制はまだまだこれからだと言えます。
 また、介護制度に外国人がアクセスできていない状況の中、介護を
始めとする外国人の高齢化に対する課題に早急に取り組んでいか
なければならない。
 そこで、外国人と介護制度をつなぐため、3つの試みを行うこととし
た。
1介護通訳者の養成・ボランティア派遣
2外国人への介護制度周知等の働きかけ
3行政・関係機関等に対する外国人の介護問題に関
する啓発活動
外国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクト
プロジェクトの全体図
中国語介護通訳者の養成研修・V派遣
上:座学、中:ロールプレイング 下:フォロー研修 介護通訳ボランティア派遣チラシ
外国人向け介護保険制度の周知
多文化共生ワールドフェスタ2016
中国帰国者向け介護保険制度説明会
外国人の心とからだの健康相談会
異文化介護(通訳)を考えるシンポジウム・セミナー
異文化介護を考えるシンポジウム
異文化介護を考えるセミナー
異文化介護通訳を考えるセミナー
2019年度 トヨタ財団助成事業
1、国に対する介護保険法改正等への政策提言
外国人高齢者等の実態調査を踏まえたうえで、
外国人高齢者が安心して 老後を過ごせるよう、国
に働きかけ、外国人高齢者に配慮した介護保険法
の改正等を目指す。
2、自治体に対する介護支援制度構築への提案
愛知県と名古屋市に、外国人高齢者介護に対す
る支援制度の構築を目指す。
3、外国人への介護保険制度の周知
・日系南米人向け 介護保険制度説明会
・フィリピン人向け 介護保険制度説明会
4、外国人高齢者問題に対する理解啓発の強化
・外国人高齢者問題に対する理解啓発シンポ
ジウムの開催 中日新聞 2020年6月1日 朝刊
橋渡しプロジェクトとステークホルダーの相関図
相互理解をもとに、共感・協力・協働・連携しながら、ともに進めてゆく相互関係
政策提言・支援制度の構築提案
中日新聞 2022年5月27日 朝刊
2022年5月24日 厚生労働省老健局あて (衆議院議員会館にて)
2022年3月23日 名古屋市あて(名古屋市役所)
日系南米人・フィリピン人向け介護保険制度説明会
日系南米人向け(2020年8月9日)
フィリピン人向け(2021年3月27日)
中日新聞 2021年8月12日朝刊
外国人高齢者問題に対する理解啓発シンポジウム
多文化共生社会の先にある現実
外国人高齢者の老後をどう支えるかを考える
〜救いの制度に言葉の壁 尊厳ある多文化介護を実現するために〜
2021年3月21日(土) 名古屋国際センター 別棟ホール(会場&ZOOM)
中日新聞 2021年3月22日朝刊
��
2019年度
トヨタ財団
報告書
5ヶ国の異文化背景を持つ関係者が登壇
2019年度 地域と協同の研究奨励助成事業
1、テーマ
介護通訳の課題とあり方について
2、方法
1研究調査の派遣実績と、これまでのプロジェ
クトの介護通訳派遣実績を合わせて分析し、
介護通訳の課題とあり方を探る。
2介護通訳を考える公開セミナーを通じて、
介護通訳の課題とあり方を探る。
3日系南米人介護士へのヒヤリングを通じて、
介護通訳養成テキストの多言語化の可能
性を探る。
3、新たな課題として
1障がい者
2在宅看護
3終末期ケア・看取り
増刊 地域と協同の研究センターNEWS
「地域と協同」第15号(2021年11月)
2020年 愛知県外国人高齢者支援事業
外国人向け介護制度説明リーフレット
5言語(ポルトガル語、中国語、フィリピン語、韓国・朝鮮語、英語)
介護支援者向けの
多文化共生理解促進
リーフレット
愛知県多文化共生推進室HPに掲載中
愛知県外国人高齢者に関する実態調査報告書
〜ともに老い、幸せな老後を暮らすために〜
愛知県外国人高齢者支援事業
愛知県多文化共生推進室HPに掲載中
2020年 愛知県外国人高齢者支援事業
2020年〜 介護の先にある弔い
愛知県立大学との共催による
異文化「終活」を考えるセミナー・シリーズ
中日新聞 2021年9月6日
愛知県立大学
生涯発達研究所年報
生涯発達研究 第13号
特集1 多文化社会の
異文化「終活」を考える
異文化「終活」を考えるセミナー
異文化「終活」を考えるセミナー(その1・2・3)
愛知県立大学ホームページ掲載中
(生涯発達研究所)
多文化ソーシャルワークの視点から
モスク・教会・葬儀会館の視点から
異文化「終活」を考える(その2・3)
愛知県立大学生涯発達研究所
終末期ケア・看取り
ケアの視点から
異文化「終活」を考え
る(その4)
愛知県立大学ホーム
ページ掲載予定
(生涯発達研究所)
謝 謝 !
王榮(木下貴雄) ��Mail:takak888@yahoo.co.jp ��090-1758-5763
外国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクト
HP:https://kaigotuyaku.web.fc2.com/
FB:https://www.facebook.com/kaigotuyaku/
��:kaigotuyaku2015@gmail.com 89Journal of Cultural Symbiosis Research No.13
Mar. 2019
異文化 " 介護通訳 " 言葉と文化のコミュニケーター 〜外国人高齢者と介護の橋渡し役〜
研究ノート
異文化"介護通訳" 言葉と文化のコミュニケーター
〜外国人高齢者と介護の橋渡し役〜
王 榮(木下 貴雄)†要旨
在住外国人の永住化・定住化に伴い、外国人高齢者の人口は年々増えて、高齢化が進んでいる。
在住外国人高齢者の増加に伴って、身体的または知能的な衰えによって自ずと要介護者が増える。しかし、
外国人高齢者およびその家族の多くは日本語によるコミュニケーションが十分に取れず、介護保険制度にアク
セスすることが困難な状況にあるため、介護保険サービスへの利用申請や諸契約の内容の説明などのコミュニ
ケーションにあたっては理解が難しい。日本人にさえ難しいこの介護問題は、外国人高齢者およびその家族に
とってさらにそのハードルが高く、特に介護におけるコミュニケーションの問題が深刻化している。
コミュニケーションの障壁となっている「言葉の壁」を取り除くために、言葉と文化に精通し、介護の専門
知識と一定レベル以上の通訳スキルを持つ異文化 " 介護通訳 " の人材育成が必要であり、在住外国人に対する
介護保険制度の周知や行政、福祉機関、介護施設に対して異文化背景を持つ在住外国人高齢者に対する理解へ
の啓発も必要である。
異文化 " 介護通訳 " は、外国人と介護保険制度・介護サービスをつなぎ、行政や介護サービス提供事業者な
どに外国人への理解を求め、言葉と文化の架け橋として、外国人高齢者と介護の橋渡し役を果たすだけではな
く、介護分野における多文化化の推進役になることも期待できよう。
在住外国人の高齢化問題は、今後の日本の多文化化している状況において、避けて通れない問題であり、社
会全体が早急に取り組まなければならない課題である。
本稿は、外国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクトが取り組んできた介護通訳の養成研修およびボランティ
ア派遣の事業活動を通じて、多文化共生社会における異文化 " 介護通訳 " とはなにか、介護通訳として求めら
れるものはなにか、異文化介護コミュニケーションにおける " 介護通訳 " の特徴・役割について論じたうえで、
" 介護通訳 " の必要性と重要性を示唆した。
キーワード
外国人高齢者、異文化介護、中国帰国者、介護通訳、多文化共生†
外国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクト、あいち多文化ソーシャルワーカーの会、
東海中国帰国者介護支援センター代表、大学非常勤講師
1、はじめに
法務省が公表した「平成29年12月末現在における在
留外国人数について(確定値)
」によると、平成29年12
月末現在、世界195ヶ国と地域から256万人を超える
異文化背景(国籍・出身地・民族・文化等)を持つ在住外
国人が日本地域社会の一員として暮らしており、前年末に
比べて17万人ほど増加し、在留者数は過去最高となった
のである。
生活の基盤を日本に置く永住や定住が増えるなど、生活
形態が多様化しているなか、産むから弔うに至るまでのラ
イフサイクルにおいて、在住外国人の暮らしにも様々な問
題が生じて福祉サービスを必要としている。しかし、現状
では在住外国人に対する福祉サービスが十分に提供されて
1 水野真木子・内藤稔(2015)
、サンドラヘイル(2014)
、水野真木子(2008)参照
2 王榮(木下貴雄)
・渋谷努(2018)参照
おらず、サービスを提供する側が在住外国人の文化的背景
や価値観などを十分に理解していない、あるいは理解しよ
うとしていないと思われる場面も多く見受けられる。
地域社会のなかで暮らしている在住外国人の多くは、日
本語が全くわからない、あるいはある程度理解できてもコ
ミュニケーションを母語のように図ることができずに困っ
ている。そのため、コミュニティ系通訳 1
(行政・教育・相談・司法・医療など)のニーズが高まり、多くの自治体や国際
交流協会などの公的機関はコミュニティ系通訳の養成に力
を注いでいる。
短期滞在の外国人と違い、日本に永住や定住する中国帰
国者 2
をはじめとする在住外国人は、日本人の生活者と同様
に生活上の様々な問題を抱えている。そのなかの一つは介 90共生の文化研究 vol.13 2019 年 3 月
王 榮(木下 貴雄)
護問題であり、特に介護におけるコミュニーションの問題
が深刻である 3
。介護を受ける多くの在住外国人高齢者およ
びその家族は日本語によるコミュニーションが十分に取れ
ないため、介護サービスの利用にあたり、どうしても通訳
が必要となる。この介護サービス利用時における通訳(介
護通訳)は、在住外国人高齢者(要介護者)の増加に伴い、
今後、コミュニティ系通訳の新たな分野として注目される
ようになり、次第に需要も高まっていくと思われる。
本稿では、中国帰国者二世である筆者が中国引揚者であ
る父の介護経験や中国帰国者自立支援通訳、コミュニティ
通訳の経験、" 外国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクト "4
(以下介護の橋渡しプロジェクトという)が取り組んできた
介護通訳の養成とボランティア派遣の経験を基に、在住外
国人高齢者の介護におけるコミュニーションを中心に、多
文化共生社会における異文化「介護通訳」とはなにか、そ
の特徴や役割などについて論じる。
2、外国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクト
日本に暮らす在住外国人256万人のうち、65歳以上
の高齢者人口は16万8千人、前年同期に比べると8千人
ほど増えて、高齢化が年々進んでいる。かつてはニューカ
マーと呼ばれる人たちの高齢化はまだまだ先のことだと思
われていたが、永住や定住の増加に伴い、現状においては在
住外国人の高齢化は未来の話ではなくなり、介護の現場に
おいてはすでに諸問題が生じている。今後10年から20
年の間にはますます高齢化が予想されるが、行政において
はそのための施策 5
はまだ明確にとられておらず、介護施設
においても受入体制が整っていないのが現状である。また、
介護保険制度は日本人でさえ理解が難しく、外国人は制度
にアクセスすることが困難な状況にある。たとえアクセス
できたとしても、認定調査やケアプランの説明、サービス
の契約、サービス利用中の要望、コミュニケーションにあ
たっては、日常会話程度の日本語力では理解が難しいと思
われる。一方、介護施設では、在住外国人高齢者に対する
知識や理解が乏しいため、どう受入れたら良いのか、どう
接すれば良いのか、ことばが通じずどうコミュニケーショ
ンを取ったら良いのかなど、戸惑いを感じている場面も少
なくない。
在住外国人の高齢化は今後避けて通れない重要課題とし
て早急に取り組まなければならないと認識した外国人支援
NPO法人などの三団体は、" 外国人高齢者と介護の橋渡し
プロジェクト " を発足させ、2015年度から2年間にわた
り、公益財団法人トヨタ財団の助成を受けて、
「日本人も外
国人も安心して老後を暮らせる地域社会を目指して―外国
人と介護制度をつなぐ3つの試み―」をテーマに、1介護
3 木下貴雄(2003)参照4 外国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクトは、
「NPO法人東海外国人生活サポートセンター」
「医療通訳者ネットワーク東海」
「NPO法人多
文化リソースセンター東海」の3団体によって構成している(2018 年4月末現在)。5 
愛知県では「あいち多文化共生推進プラン 2022」
、名古屋市では「第2次名古屋市多文化共生推進プラン(2017-2021)
」にそれぞれ外国人
高齢者への取り組みを初めて盛り込んだ推進プランが作成された。
通訳者(中国語)の養成・ボランティア派遣、2外国人へ
の介護制度の周知、3行政・介護施設などの関係機関に対
する外国人の介護問題に関する啓発活動、の3つの取組み
を行ってきた。
3、なぜ「介護通訳」なのか
介護通訳養成のきっかけは筆者の父の介護だった。筆者は
父の介護を通して、日本語がわからず、読み書きもできな
い中国帰国者をはじめとする外国人高齢者が介護保険サー
ビスを利用するには、
「ことばの壁」があまりにも高すぎる
ことを痛感させられた。
筆 者 の 父 は 7 0 代、 旧 満 州 国 生 ま れ の 中 国 引 揚 者。
1980年代に帰国、日本語は日常会話程度、パーキンソ
ン病と認知症で要介護4、
身障者2級。母は60代、
中国籍。
日本語は日常会話程度、地域社会との付き合いが薄く、中
国で学校教育を受けていないため読み書きができない。
筆者の父のパーキンソン病は定年後病状が悪化し、認知
症状も現れ、
幻覚や幻聴がひどく、
徘徊もするようになった。
母の介護による生活が続いていたが、日々の介護に母は体
力的にも精神的にも疲れが限界に達した。母からのSOS
を受けて、筆者は地域包括支援センターに相談し、介護保
険サービスを利用することにした。 母は日本語が日常会話
程度しかできないため、関係者との面談や介護サービスな
どの説明にはすべて筆者が同席して母に通訳しなければな
らず、諸契約においてもすべて筆者が代筆しなければなら
なかった。この時に初めて、通訳なしでは外国人高齢者が
介護保険サービスを利用することは不可能と痛感し、同時
に、介護保険制度をはじめとする専門知識がなければ通訳
もできないと実感した。また、文化や生活習慣などの違い
から、デイサービスなどの介護施設での食事が口に合わな
かったり、レクリエーションに戸惑ったり、父のしゃべる
ことばが日本語であったり中国語であったりして、施設の
職員が戸惑いを感じることも多くあった。そのため、施設
の職員などの関係者に父の背景を説明し理解を求めた。こ
のことを通して、関連機関に対して異文化の背景を持つ高
齢者の介護サービス利用に関する啓発が必要だと感じた。
筆者は父の介護を通して、日本に住む異文化の背景を持
つ高齢者が安心して地域で暮らしていくためには、介護に
関する知識を持ち、言葉や文化に精通する通訳が、在住外
国人高齢者およびその家族に対して、介護保険制度や介護
サービスの周知を行う必要があると同時に、行政や福祉機
関、介護施設への理解啓発など、外国人高齢者と介護の橋
渡しを担う介護通訳の養成が必要であることを強く感じた
のであった。 91Journal of Cultural Symbiosis Research No.13
Mar. 2019
異文化 " 介護通訳 " 言葉と文化のコミュニケーター 〜外国人高齢者と介護の橋渡し役〜4、「介護通訳者」の養成研修・ボランティア派遣
介護通訳は通訳業界において新しい分野であり、介護通
訳としての定義もなければ、医療通訳のように体系的な養
成カリキュラムもなかったため、橋渡しプロジェクトは介
護通訳の「定義」から検討しなければならなかった。また、
先例がないなかで、養成カリキュラムの作成にあたっては、
医療通訳共通基準 6
を参考に、
「知識」
「技術」
「倫理」の3項
目に分けて作成した。
(表1)
1)介護通訳の定義
介護通訳は、コミュニティ系通訳のなかにおいても新し
い分野であり、
「介護通訳」という名称も今のところは、主
に中国帰国者に関わる介護のなかで使われているため、
「介
護通訳」の定義について様々な角度から検討して、以下の
ように定義した。
介護通訳とは、狭義においては、中国帰国者をはじめ、異
文化背景(国籍・出身地・民族・文化等)を持つ在住外国
人住民、または日本国籍を有するが日本語による意思の疎
通に支障がある者およびその家族が、介護保険法の規定に
基づく諸介護サービス(介護相談・要介護認定調査・居宅
介護サービス計画や契約・介護関連施設見学・福祉介護用
具のレンタル・住宅改修等々)を利用する際に意思の疎通
をスムーズに図れるように、在住外国人要介護者およびそ
の家族と行政や福祉機関担当者、介護サービス提供事業者
との間での言語サポートを行うこと、または通訳をする人
のことを指す。広義においては、高齢者介護のほかに、在
住外国人住民が知的障害者福祉法、身体障害者福祉法、障
害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための
6 医療通訳の基準を検討する協議会(2010)
、日本介護支援専門員協会「介護支援専門員 倫理綱領」参照
法律に基づく障害者デイサービス、障害者福祉サービス等
を利用する時の通訳まで含まれる。
2)養成カリキュラム
カリキュラムの構成は「知識」
「技術」
「倫理」の3項目
から成っている。 「知識」については、要介護外国人を取り巻く状況や介護
保険制度に関する専門知識のほかに、高齢者に多い病気や
医療と介護の連携、介護用語の作成などの知識も取り入れ
た。 「技術」については、通訳としての基礎知識・技術、それ
を応用するためのロールプレイを中心に実施した。
ロールプレイで使うテキストを独自に作成する必要が
あったため、筆者の父の介護実例を基に「申請代行」、「認
定調査」、「アセスメント(事前評価)」、
「サービス担当者会
議(ケアプランの説明)」、
「契約」
、サービス利用後の「モ
ニタリング」の場面を設定し、筆者の父の介護に実際関わっ
ていたケアマネジャーや介護サービス事業者(ディサービ
ス・ショートステイ・福祉用具の管理者や責任者)に実際
のやり取りを実演してもらい、そのやり取りを録画、それ
をベースにテキストを作成した。 「倫理」については、介護通訳としての心構え(介護通訳
の特徴・役割、介護通訳として倫理、介護通訳に求められ
るもの)を中心に取り入れた。
介護通訳は医療通訳以上にプライバシーに踏み込むこと
があり、生活の場に入る機会も多く、通訳の業務範囲から
逸脱してしまう可能性が高いため、倫理は医療通訳以上に
重要である。また、通訳者が倫理をしっかりと身に付けて
大項目 中項目 小項目
知識
要介護外国人を取り巻く状
況について
要介護者の生活状況、日本語理解が不十分な要介護者の介護現場で
の困難な状況などに関する知識・理解
介護保険制度について
介護保険制度の概要
介護サービスの利用について(要支援・要介護の認定・サービスの
利用方法・ケアプランなど)
介護施設について(どのようなところか、サービス内容、契約内容、
費用など)
介護施設以外のサービスについて
(サービスの種類・内容・費用など)
上記介護保険制度について中国語でまとめる
高齢者に多い病気について 高齢者に多い主な病気の概要
医療と介護の連携について 医療と介護の連携の場面
介護用語について 介護や介護制度に必要な用語の基礎知識、用語集の作成方法
技術 通訳技術 ロールプレイなど
倫理 介護通訳者としての心構え
介護通訳の役割・特徴
通訳者としての倫理
介護通訳者に求められるもの
(注記)他に、現場研修(施設見学、高齢者模擬体験、施設内における通訳実習)
、フォロー研修を実施。
表1 介護通訳養成研修カリキュラム 92共生の文化研究 vol.13 2019 年 3 月
王 榮(木下 貴雄)
いないと、介護通訳のシステムを保つこともできなくなる
し、通訳者自身の負担も大きくなってつぶれてしまいかね
ない。そのため、
「倫理要綱」7
も作成した。
3)養成研修・ボランティア派遣
養成研修全般においては、養成カリキュラムに基づき、現
役のケアマネジャーをはじめ、地域包括支援センター所長、
医師や外国人高齢者を受け入れている介護施設の管理者な
どの専門家を講師に招き、5日間にわたって、理論的体系
的に研修を行った。研修中には小テストを行い、すべての
カリキュラムが終了後に、修了試験を実施のうえ、試験に
合格した受講生に修了証を授与した。また、研修の一環と
して、デイサービスでの見学と模擬体験、通訳実習などの
現場研修も行い、修了生に対するフォロー研修も行った。
2015年度から2期にわたって27名の中国語介護通
訳を養成した。2016年4月に試験的にスタートした介
護通訳のボランティア派遣であるが、助成事業が終了する
2017年3月末までの一年間の概要は以下の通りである。1派遣実施件数 介護通訳のボランティア派遣の延べ件数は43件。 当初の目標50件に対してマイナスではあったが、その
理由としては、限られた予算のなかで、できるだけ多く
の新規利用者に使ってもらうため、重複利用者の利用回
数に制限を設けていたためであった。利用回数を制限し
なければ目標の件数を超えていたと思われる。
2依頼先の形態と件数 居宅介護支援事業所が32件、訪問看護ステーションが
4件、デイサービス(通所)が2件、ケアマネジメント
センターが2件、地域包括支援センターが2件、区役所
介護保険係が1件の順となっている。 キーマンとなるケアマネジャーがいる居宅介護支援事業
所からの依頼が多いことから、介護通訳派遣システム制
度の周知については、ケアマネジャーがどれだけその必
要性と重要性を理解しているどうかがポイントになって
いることがわかる。
3依頼内容 訪問リハビリが13件、訪問入浴が12件、デイサービ
ス(通所)の利用が10件、介護保険制度および利用申
請の説明が2件、介護認定調査が2件、サービス担当者
会議が2件、契約の説明が1件、身体状態の確認が1件
の順となっている。 依頼内容からは訪問介護(リハビリや入浴)が多いこと
が窺えるが、介護通訳派遣システム制度の周知によって
は、介護保険制度および利用申請の説明や介護認定調査、
契約の説明、サービス担当者会議などの依頼ニーズが十
分にあると考える。
4通訳の対象者 介護サービス利用者のほか、ケアマネジャー、介護職員、
認定調査員、看護師、理学療法士、福祉用具職員、医者、7 介護通訳の「倫理綱領」は、医療通訳の基準を検討する協議会(2010)
、日本介護支援専門員協会「介護支援専門員 倫理綱領」
(平成 19 年 3
月 25 日採択)を参考に作成した。
家族が対象となっている。 通訳の対象者が多岐にわたっていることが窺える。その
ため、介護に関する幅広い知識の習得が必要になり、フォ
ロー研修を通じてスキルアップを図る必要がある。
5派遣先 利用者の自宅が30件、介護施設が10件、病院が3件
の順となっている。 派遣先の件数からは訪問介護が多いことが窺える。自宅
に伺うことは利用者のプライベートスペースに入り込む
ことになるため、通訳者は介護通訳の倫理要綱に基づき、
守秘義務を厳守しなければならない。
6通訳の派遣人数 介護通訳の延べ派遣人数は15名。そのうち7回が1名、
6回が1名、4回が4名、3回が2名、2回が1名、1
回が6名となっている。 通訳の派遣においては、できるだけ多くの通訳に現場で
の経験を積んでもらいたいため、コーディネーターはで
きる限り現場経験が少ない通訳の派遣を心がけていた。
また、派遣におけるコーディネーターの役割と資質が重
要であることが改めて立証された。
7派遣時間 介護通訳の派遣時間は、最短は15分(訪問リハビリ)、最長が3時間(ディサービス)となっている。 通訳の時間についてはケースバイケースであり、短いか
らといって悪いわけでも、長いからいいというわけでも
ない。サービスの提供時間によるものもあり、サービス
担当者の裁量によるものもあると思われる。
4)派遣を通して見えてきたもの
1年間の介護通訳ボランティア派遣を通して見えてきた
ものとして、以下にまとめることができる。1確かな(潜在的)ニーズ(需要)があり、介護通訳の必
要性がある。 コミュニケーションが必要不可欠な介護(現場)において
は、通訳がいることによって利用者とその家族および介
護サービス事業者の実態(考え方・思い・要配慮事項など)
を把握することができる。利用者とその家族は通訳を通
じて自分の意思や要望を介護サービス事業者に伝えるこ
とができ、介護サービス事業者はその要望を聞く(知る)
ことによって適切なサービスを提供できる(行政や福祉
機関の場合は適切なサービスの利用につなげることがで
きる)
。また、通訳がいることによって利用者とその家族
および関係機関の担当者はともに安心感が得られる。2利用範囲が当初の想定を超えている。 当初は介護保険の利用申請や介護認定調査、契約の説明
などの利用時での介護通訳が多いだろうと想定していた
が、実際の利用ニーズを見ると、介護サービス申請など
の利用時だけではなく、そのニーズは介護現場に及んで
おり、
現場のニーズが高い(多い)ことがわかった。今後、 93Journal of Cultural Symbiosis Research No.13
Mar. 2019
異文化 " 介護通訳 " 言葉と文化のコミュニケーター 〜外国人高齢者と介護の橋渡し役〜
介護現場における介護通訳のあり方を検討していかなけ
ればならない。3より幅広い介護に関連する知識(リハビリや入浴、福祉
用具など)が必要であり、フォロー研修を通じて知識の
幅を広げる必要がある。 利用範囲が当初の想定を超えているため、研修の中で触
れていなかった分野、例えば訪問リハビリや訪問入浴な
どの知識を通訳者に学ばせて、スキルアップさせていく
必要がある。4デイサービス(通所)などの施設内での通訳の場合は、
他の利用者に対する配慮が必要。 利用者のなかには通訳が介護職員であるかどうかの区別
がつかない場合もある。そのため、通訳が一人の利用者
にずっと付きりになっていると、その利用者が特別扱い
になっているという誤解が生じてしまうからである。
5家族の誤訳を発見することができる。 介護通訳を要請に基づいて現場に派遣しているにも関わ
らず、家族の通訳を依頼者が承諾してしまうケースもあ
る。しかし、家族の日本語の理解能力によって誤訳が生
じたり、訳漏れがあったりして、意味がきちんと伝わっ
ていないようなこともある。そうした誤訳等を現場にい
る通訳が発見し、訂正したり再確認したりすることによっ
て、誤訳による問題を防ぐことができる。6通訳終了後の報告書の詳細記載(引継による情報提供)
が大事。 同一利用者には必ずしも同一通訳が派遣されるとは限ら
ないため、利用者の情報や状況、現場での出来事、決め
事などの報告の詳細記載は、次に派遣される通訳にとっ
て重要な情報源となっているため、引継による情報提供
は重要である。7無償は利用しやすいが有償は利用しにくいという課題が
ある。 通訳料金は介護保険制度対象外のため、有償は事業者ま
たは利用者の個人負担となってしまい、利用したいのに
経費負担の面で利用を諦めざるを得ないという実態が明
らかになった。今後、ますます増えていくと思われる外
国人高齢者の介護を考えると、今の介護保険サービスに
含まれていない介護通訳という言語サービスの提供を介
護保険法に取り込んでいかなければ、外国人高齢者が安
心して介護サービスを受けられない。介護通訳という言
語サービスを介護保険対象内で提供できるように国会で
議論をしてもらえるように働きかける必要がある。また、
現状に対する打開策として、自治体による介護通訳の養
成と派遣による支援制度の構築が必要と考える。
5)介護制度の周知と啓発
在住外国人への介護制度の周知については、中国帰国者
を対象とした説明会を実施したほか、複数の多文化イベン
トに出展し多言語通訳付きでの周知活動も行った。外国人
高齢者に対する理解への啓発については、地域包括支援セ
8 水野真木子(2008)コミュニティ通訳の特徴を参照
ンターへの個別訪問や異文化介護シンポジウムの開催など
を通じて行った。
5、介護通訳の特徴
中国帰国者の介護通訳経験および橋渡しプロジェクトが
取り組んできた介護通訳ボランティア派遣の経験から、介
護通訳の特徴 8
は以下のようにまとめることができる。1介護通訳の対象と内容が多岐にわたっている 介護通訳の主たる対象は、地域社会に暮らす異文化背景
を持つ外国人高齢者およびその家族であるが、本人の要
介護状態や生活状況によってはキーマンとなるケアマネ
ジャーのほかに、行政の担当者や地域包括支援センター
とケアマネジメントセンターの関係者、訪問看護・介護・
入浴・リハビリステーションなどの介護サービスを提供
する事業者なども対話の対象となり、介護通訳の対象は
実に多岐にわたっている。 また、介護通訳の内容は普遍的に共通する内容と個人に
よって異なる個別の内容の二つに分けられる。共通内容
としては、介護サービスの利用に関する相談や要介護(要
支援)の認定申請、認定調査員による聞き取り調査、介
護保険制度、ケアプラン、介護予防ケアプラン、介護サー
ビス利用内容、契約などに関する説明のほか、要介護者
本人の過去や現在の生活状況(状態)および家族の生活
状況など、プライバシーに関することも含まれている。
個別の内容としては、通所(デイサービス)や訪問看護・
介護・入浴・リハビリ、福祉用具などの実際の介護現場
に関するものが多く含まれている。2要介護者のことば・教育レベルに差がある 要介護者本人やその家族のことば・教育レベルは、学校
教育を受けていたかどうかによって様々であり、出身地
が中国のような広域にわたっている場合は、方言も多種
多様である。そのため、個々の生活背景に関する情報や
地域性に関する知識と理解がなければ、的確な介護通訳
ができなくなってしまうケースもある。 また、認知症や精神障害などの病的なものにより介護通
訳にならないような状況が発生することもある。 中国帰国者の場合は、一世の多くは幼い時に中国人の家
庭で育てられ、日常生活のなかで中国語を習得した経緯
があるため、中国語は話せるが話の内容を上手くまとめ
て話せない人もいる。また、多くは中国の東北地方で暮
らしていたため、東北の方言が多く使われている。個々
の育てられた家庭や地域の環境によって話し方や教育レ
ベルの差はかなりあるように感じられる。3習慣などの文化的要素が大きく関わっている 介護通訳は、要介護者の老後の暮らしおよびその家族の
日常生活に密着しているため、要介護者の生活の質の向
上を考える時に、要介護者本人の意思や家族の思いが大
きく絡んでくる。そのため、生活の風習や習慣、文化、
価値観などの違いによって、日本文化と諸外国文化の違 94共生の文化研究 vol.13 2019 年 3 月
王 榮(木下 貴雄)
いがそのままぶつかり合う場面にも多く遭遇する。文化
や価値観などの差異によっては介護の方法等をめぐって
大きなトラブルになる恐れもあるため、通訳となる対象
者の異文化的背景などに対する知識と理解が必要である。 介護
(医療もそうだが)
は信頼関係がなければ、
適切なサー
ビスを受けることも提供することも難しくなる。文化や
価値観などの違いによるトラブルなどは双方の信頼関係
を損なってしまい、それによってその後の介護に大きく
影響を及ぼす恐れがあるため、生活の風習や習慣、文化、
価値観などを重要な要素として理解しなければならない
のである。4プライバシーに直接関わっている 要介護度合いが高ければ高いほど介護通訳の介入度合い
の範囲が大きくなる。普段は他人には見せたくない、見
られたくない、あるいは見せられないような場に介護通
訳として直接入り込むこともある。要介護者本人および
その家族のプライバシーを守るために、介護通訳として
守秘義務を厳守しなければならないのである。
5専門的な知識の幅が広い 介護通訳の内容は介護保険制度や介護サービスに関する
専門知識はもちろんのこと、高齢者の介護は医療やリハ
ビリと平行して行われている場合も多いため、医療やリ
ハビリに関する専門知識も必要である。 筆者の父のケースを見ると、自宅からデイサービスや
ショートスティを利用する時に倒れて一般の病院に緊急
搬送され治療を受けた後に、今度はリハビリ病院に転院
し、リハビリを行った後に退院して自宅へ戻り、再びデイ
サービスやショートスティを利用する、その繰り返しだっ
た。その都度、一般病院では今後の介護に関する家族と
しての望み、リハビリ病院では病気や治療のこと、介護
の利用状況や今後の介護に対する希望などが聞かれたり、
説明されたりするようなことが常にあった。 
また、家族として父がリハビリによる回復がどこまでで
きるのか、今後における治療がどう展開されていくのか
など病状の回復や退院後の介護に関連するような質問を
したり、確認したり、相談したりもした。この時に、高
齢者の場合は医療・看護・リハビリと介護がセットになっ
ていると実感し、介護通訳は介護に関する知識だけでは
なく、医療・看護・リハビリに関する専門的な知識も必
要であることを感じさせられた。また、
入院中における
「看
護通訳」が必要であることも気付かされた。
6ケアチームの一員としてのケアワークである 介護通訳は、要介護者の介護度合いによってはかなりの
長期戦も予測される。そのため、ケアマネジャーや介護
施設管理者、介護担当者、医師、看護師、行政機関担当
者などとの連携プレーが欠かせず、単に一過性的な介護
通訳ではなく、ケアチームの一員としての介護通訳であ
るという認識を持つ必要がある。
6、介護通訳の役割
介護通訳の役割として、以下のことが挙げられる。1コミュニケーションの橋渡し(言葉の通訳) 人がコミュニケーションを図るうえで、ことばが大事で
あり、なくてはならないツールである。言葉がわからな
い者同士のコミュニケーションを通訳を介して図れるよ
うにすることは通訳の基本的な役割である。介護通訳は、
介護する側とされる側がことば(通訳)を通じてはじめ
て意思の疎通ができ、互いに理解することができること
を常に意識する必要がある。
2文化の橋渡し(文化の通訳) 異文化環境のなかでの介護通訳は、言葉のみの通訳だけ
では理解が深まらないことが多々ある。そのため、必要
に応じて諸外国や日本の文化、生活習慣、価値観などを
解釈して、さりげなく伝え、両者の文化による溝を埋め
ていく必要がある。日常的な介護生活の面においては、
言葉+文化などを通じてはじめてお互いの理解が深まる
こともあることを認識しておく必要がある。
3ケアサポート(良き理解者) 特にネイティブ通訳の場合は、二つの言語に精通している
だけではなく、双方の文化や風習などにも精通している。
また、かつて自分も同じ道を歩んできた経験があるため、
通訳対象者の気持ちや心情などを理解しやすく、良き理
解者としてのケアサポートを心がけておく必要がある。 また、ネイティブでない通訳も滞在先での生活経験によっ
ては双方の文化や風習などにも精通している場合もあり、
滞在先で経験したことを置き換えることによって通訳対
象者の気持ちや心情などを理解しやすくなっている。 ただし、いずれの場合も介護通訳の倫理要綱に反しない
範囲内で行う必要がある。
4母語による語りかけ(母語ケア) 母語しか話せない、または母語しか話せなくなった在住
外国人高齢者にとって、母語によるおしゃべりは何より
の楽しみで、精神的な安らぎが得られる。母語による語
りかけによって介護サービスの利用や施設内での生活が
楽しく感じられる。ことばができる介護通訳による介護
サービス(介護施設内含む)時での母語ケアは、在住外
国人高齢者の介護においては重要な意味を持っている。
7.介護通訳に求められるもの
以下に挙げたことは、介護通訳のみならず、在住外国人
を言語の面でサポートするコミュニティ系通訳全般に言え
ることでもある。
1気持ち・思い・ホスピタリティ 人のために役に立ちたいという温かい気持ち、私がやら
ねば誰がやるという熱い思い、そして、旺盛なサービス
精神がなければ長く継続させることは難しいと思われる。
筆者自身は「いつか来た道」
(自分より後に来た人たちの
ために)
「いつか歩む道」
(自分より先に来て年老いた人
たちのために)をモットーに通訳としての活動を続けて
いる。
2「意味が通じる」通訳でなければならない 法廷通訳はその人の人生を左右させてしまい、医療通訳 95Journal of Cultural Symbiosis Research No.13
Mar. 2019
異文化 " 介護通訳 " 言葉と文化のコミュニケーター 〜外国人高齢者と介護の橋渡し役〜
はその人の命を左右させてしまう重大な責任があると言
われるように、介護通訳はその人の晩年が楽しく幸せな
ものになるかどうかに大きく影響を及ぼすため、言葉と
文化に精通していることは必須であり、意味が通じる通
訳を常に心がけなければならない。二つのことばが話せ
るバイリンガルであるだけで良い介護通訳になれるとは
限らない。一字一句そのまま訳すのではなく、話者の意
図を絶えず考え、適切な訳語を選択し、文脈を補って、
正確に流暢に意味が通じる通訳を行うことが大切である
ことを理解しなければならない。 正確に通訳を行うことは通訳としての使命であり、通訳
の基本中の基本であることはいうまでもない。また、原
則としては個人的な意見や考え方、価値観、感情などを
直接通訳業務の中に持ち込んではならない。常に中立の
立場を保ち公平に通訳を行わなければならない。さらに、
常に自分が通訳であるというプロ意識を持って通訳を行
わなければならない。 「意味が通じる」通訳であるためには、常に通訳としての
スキルを維持向上させていかなければならない。
3豊富な専門知識と一般知識・教養が必要 介護現場での通訳において、介護通訳は医師、看護師、
医療ソーシャルワーカー、
多文化ソーシャルワーカー 9、介
護福祉士、介護支援専門員、生活相談員、福祉用具専門
相談員など実に多くの専門家と接している。通訳の内容
も多分野にわたっているため、
医療、
介護、
福祉などのソー
シャルワークに関する豊富な専門知識と専門用語が必要
なほか、
日本および通訳対象者の母国の生活や文化、
習慣、
社会制度、宗教などに関する基礎知識、教養等もなけれ
ばならない。そのため、常に自らアンテナを張って学習
の努力を続けていく必要がある。
4異文化に対する理解と認識 介護は日常生活に密着しているため、異文化的な差異が
そのままぶつかり合うこともしばしば生じる。通訳は異
文化間の橋渡し役として、文化の違いによる誤解が生じ
ないようにするために、まず自分自身の異文化に対する
理解と認識が必要となる。また、在住外国人が抱えてい
る諸問題に対して、在住外国人当事者の目線で捉えるこ
とが大事であることを理解しなければならない。
5通訳としての「倫理」への理解と遵守 法に背くことではなくても、
「人として、こうした方がい
い、しない方がいい」とい判断の基準になるのが、倫理
である。倫理遵守は職種に関わらず重要なことである。
職業における倫理は、個人だけが判断するものではなく、
組織が判断するものである。 特に介護通訳の場合は、高齢者の尊厳に関わることもあ
るため、高い意識が求められる。通訳という職業の倫理
なくしては尊厳が守られない。利用者の要求に従うので
はなく、倫理要綱に照らして判断しなければならない。
9 石河久美子(2012)参照。
10 日本社会福祉士会(2012)
、公益財団法人愛知県国際交流協会(2018)参照。 倫理遵守は、介護通訳自身を守るためでもあり、システ
ムの健全維持のためでもあり、通訳者にとって「倫理」
への理解と遵守が大事であることを強く認識しておく必
要がある。
6高度なコミュニケーション能力 通訳は人と関わる業務であり、人と人との意思疎通の橋
渡し役である。場の雰囲気を読み、双方の真意や意向を
汲み取り、適切な言葉を選び意図を伝え、円滑なコミュ
ニケーションが取れるように配慮することも重要である。
そのため、高度なコミュニケーション能力を有していな
ければならない。
7強い精神力・バランス感覚・ネットワーク 華々しく見える通訳業務は意外と体力が必要。介護通訳
の場合は強い精神力もなくてはならない。 介護の場合は直接プライベートの場に入り込むことが多
いため、通訳対象者が感情的になったり、興奮したりす
るようなことも少なくない。その感情の渦のなかで通訳
をこなしていかなければならないので、強い精神力がな
いと自分が感情的になってしまったり、押しつぶされた
りすることも生じてしまう。常に自分が通訳であること
を意識しながら、公私を峻別できるようにバランス感覚
を身に付けておく必要がある また、介護通訳は高齢者を主な対象として通訳を行って
いるため、何時どんなことが生じるかはわからない。通
訳対象者が通訳の最中に急に倒れ、意識不明になったり、
危篤状態に陥ったりすることも全くないわけではない。
そのため、常に冷静沈着に対応できるように普段から心
得ておく必要がある。 問題や悩みなどが生じた時に決して一人で抱え込まずに、
通訳の仲間に相談したりして、自分の中にストレスを溜
めないようにする必要がある。より多くの通訳仲間との
つながりを持つことを日頃から意識しながら、ネットワー
クの形成に努める必要がある。ネットワークは悩みの相
談に役立つだけでなく、仲間同士の通訳としてのスキル
アップにも大いに役立つ。
8、おわりに 「相手が理解できる言語で話しかけた時には、そ
の内容は彼の頭に届く」 「相手の国の言葉で話しかけた時に、その言葉は
彼の心に届く」
コミュニケーションのツールとしての言葉の重要性を強
調したネルソン・マンデラが遺した名言である。
外国人高齢者は高齢に伴う記憶力の低下により日本語を
忘れてしまったり、認知症などによる「母語がえり」によっ
て言葉が母語になってしまったり、生活習慣なども母国の文
化に回帰するケースが少なくない 10
。そのため、異文化環境
のなかで年老いた外国人高齢者は、
母語を聞き、
母語で語り、 96共生の文化研究 vol.13 2019 年 3 月
王 榮(木下 貴雄)
母国の文化に接することで精神的な安らぎを得て、自分ら
しく、穏やかな老後を過ごすことができる。また、高齢者
が母語を介して介護サービスを利用することによって、家
族も安心して日々の生活を送ることができる。その手助け
をできるのは介護通訳であり、多文化共生社会における異
文化介護通訳にしか果たせない重要な役割があると言える。
外国人と介護保険制度・介護サービスをつなぎ、行政や
介護サービス提供事業者に外国人への理解を求め、言葉と
文化の架け橋を務める介護通訳に対する期待は今後益々高
まっていくと思われる。そして、外国人高齢者と介護の橋
渡し役である介護通訳の活躍により、介護分野における多
文化共生の定着が加速することに期待を寄せたい。
参考文献・石河久美子 2012
『多文化ソーシャルワークの理論と実
践―外国人支援者に求められるスキルと役割』明石書店・医療通訳の基準を検討する協議会編刊 2010
『医療通訳
の共通基準』・王榮(木下貴雄)
・渋谷努 2018
「中国帰国者の介護問
題から見た在住外国人高齢者への介護支援の現状と課題〜
異文化介護の現場から〜」
中京大学社会科学研究所紀要
『社
会科学研究』
(第 38 巻第 2 号)・木下貴雄 2003
『中国残留孤児問題の今を考える―中国
「残留孤児」という名の「日系中国人』鳥影社・公益財団法人愛知県国際交流協会編刊 2018
『相談窓口
担当者のための「多文化」ってこういうこと=社会福祉編=』・
サンドラヘイル著、飯田奈美子編 山口樹子・園崎寿子・岡
田仁子訳 2014
『コミュニティ通訳―オーストラリアの
視点による理論・技術・実践』文理閣 ・日本介護支援専門員協会「介護支援専門員 倫理綱領」(平成 19 年 3 月 25 日採択)・日本社会福祉士会編 2012
『滞日外国人支援の実践事例
から学ぶ 多文化ソーシャルワーク』中央法規出版・水野真木子・内藤稔 2015
『コミュニティ通訳――多文
化共生社会のコミュニケーション』みすず書房 ・水野真木子 2008
『コミュニティー通訳入門―多言語社
会を迎えて言葉の壁にどう向き合うか...暮らしの中の通
訳』大阪教育図書
ウェブサイト・法 務 省 入 国 管 理 局 http://www.immi-moj.go.jp/toukei/
index.html・外 国 人 高 齢 者 と 介 護 の 橋 渡 し プ ロ ジ ェ ク ト http://
kibou2013.web.fc2.com/toyota.html
1 はじめに
中国帰国者の高齢化に伴い、 介護を必要とする残留孤児一世およびその
配偶者が増加し、 介護問題が深刻化している。 1980 年代からの肉親探し
によって日本に永住帰国した残留孤児たちの多くは中高年層だったため、
日本語や生活習慣などを完全に習得することが難しく、 生活のあらゆる面
において様々な問題が生じていた。 そんな環境のなか、 残留孤児たちは家
族を養うために奮闘し、 言葉では言い表せないほどの苦労と葛藤のなかで
人生の半生を過ごしてきた (木下 2003、 アジア遊学 2006)。
そして今、 人生の終着駅を前にして、 高齢となった残留孤児たちの多く
は要介護となっている。 そして、 介護サービスを受けるに際し、 ここでま
た言葉や文化の違いなどの障碍によって十分に適切な介護サービスを受け
られないという問題が生じている。
介護、 日本人でさえ難しいこの問題は中国帰国者たちにとって更にその
ハードルは高い。 高齢を迎えた中国帰国者にとって、 安心して穏やかに老18( 61 )
研究ノート
中国帰国者の介護問題から見た
在住外国人高齢者への介護支援の現状と課題
異文化介護の現場から
王榮(木下貴雄)1
渋 谷 努
後を過ごせるようになることは切実かつ重要な問題である。 そのため、 介
護サービスの利用が円滑にできるようさまざまな支援が必要不可欠であり、
早急に有効な施策を講じる必要がある。
中国帰国者だけではなく日本では 2017 年 6 月末現在で、 247 万人以上
の外国人が在住しており、 そのうち、 65 歳以上の高齢者人口は 16 万人と
全体の 6%を占めている。 この数字は日本全体の高齢化率と比べて割合が
少ないと思われるかもしれない。 しかし、 これから、 在住外国人高齢者が
さらに増加することを考えると、 介護分野における多文化化への対応は大
きな課題となるに違いない。
多文化共生推進プランが 2006 年にとりまとめられ、 多文化共生社会の
提唱から 10 年が過ぎて、 これまでにも多文化共生に関するさまざまな取
り組みが進められてきた。 川村らはいち早く 2007 年に異文化間介護の必
要性を提唱しているが (川村、 宣 2007)、 残念ながら、 それ以降在住外
国人高齢者については論じられることは多くはなかった。 かつてはニュー
カマーと呼ばれる人たちは 65 歳未満の生産年齢人口に収まり、 高齢化が
まだまだ先だという思いが雇用者側にも行政側にも強かったのが、 対応を
遅らせている要因だろう。 しかし外国人が置かれている現状はその時より
もより切羽詰まったものとなっている。
日本の高齢者福祉政策に目を向けると、 一方では日本人高齢者の施策さ
え試行錯誤を繰り返している状況がある。 他方では、 介護現場においては、
在住外国人高齢者に関わる問題がすでに発生しているという現実を直視す
ると (荻野 2006)、 在住外国人の高齢化は、 今後の日本の多文化化して
いる状況において、 避けて通れない問題である。 だからこそ政府をはじめ
社会全体が重要課題として早急に取り組まなければならないのである2。本稿では、 日本在住の外国人高齢者の置かれている状況を概観したのち、
中国帰国者二世である筆者の一人である王の実父への介護での実体験と中
国帰国者への介護支援活動からの経験を基に、 中国帰国者の高齢化に伴う
17 ( 62 )
介護問題さらに在住外国人高齢者の介護における問題点および介護支援の
あり方について論じる。
2 在住外国人高齢者の高齢化と多様化
1 ) 概要
在住外国人の永住化・定住化に伴い、 在住外国人高齢者人口は年々増え
ている。 法務省入国管理局の 在留外国人統計 (旧登録外国人統計) 統計
表 によると、 2017 年 6 月末現在、 在住外国人の総人口は 247 万人、 そ
のうち 65 歳以上の高齢者人口は約 16 万人となっており、 在住外国人の総
人口の 6%を占めており、 2015 年同期に比べると、 約 1 万人以上が増加し
ている。 以上のことから日本に住む外国人の高齢化が進んでいるといえる。
同資料に基づき在住外国人高齢者人口の主な出身国・地域別で見ると、
韓国・朝鮮出身者 (在日コリアン) が 12 万人 (74.5%)、 中国 (台湾含む)
出身者が 1 万 9 千人 (11.7%)、 ブラジル出身者が 6 千人 (4.1%)、 米国出
身者が 5 千人 (3.1%)、 ペルー出身者が 1 千 9 百人 (1.2%)、 フィリピン出
身者が 1 千 6 百人 (1%) となっている。
また、 これから 10 年、 20 年先には、 現行の在日コリアンや中国帰国者、
インドシナ難民のほかに、 日系南米人 (ブラジル・ペルー) やフィリピン
人の高齢者が増えることが予想される。 つまりこれまで以上に 「老いの多
文化化」 が加速すると予想される。 次に、 老いの多文化化の現状について
見ていきたい。
2 ) 外国人高齢者の介護現状
在住外国人に対する介護保険制度の適用者は、 平成 24 年 7 月 9 日に施
行された住民台帳基本法の改正によって、 適法に 3 ヵ月を超えて在留する
外国人で住所を有する人となり、 適用条件が緩和された。 しかし、 実際の
中国帰国者の介護問題から見た在住外国人高齢者への介護支援の現状と課題 (渋谷) 16
( 63 )
介護サービスの利用においては、 厳しい現実に直面している。
異なる文化的背景をもつ在住外国人高齢者およびその家族の多くは日本
語ができないあるいは読めない、 または母語のようにコミュニケーション
が図れず、 日本語による意思の疎通に支障がある。 また、 介護保険制度や
介護サービスに関する知識と情報が乏しいことや、 地域社会との関わりが
薄く、 日本の文化や習慣等を十分に理解していないことから、 既存の福祉・
介護サービスを十分に活用できていないという現状がある。 さらに、 母語
回帰、 母文化回帰という在住外国人高齢者特有の問題もある。 一方、 受け
入れ側である介護施設においては、 異文化に対する理解と対応が進んでい
るとは言えない現状も存在している。
在住外国人高齢者の主な国籍・出身地別における要介護の状況を見ると、
1韓国・朝鮮出身者 (在日コリアン)
在日コリアンの支援をしてきている神戸定住外国人支援センターおよび
コリアンネットあいちの関係者の話し3
では、 在日コリアンの介護はすで
に来日の一世の介護から日本生まれの二世の介護に移行しつつあり、 一世
と二世の生活歴が全く異なるため、 世代交代による介護の変化が生じている4。
2中国残留邦人等 (中国残留孤児・残留婦人およびその配偶者、 樺太残留者)厚生労働省社会・援護局が発表した 平成 27 年度中国残留邦人等実態
調査結果報告書 によると、 中国残留孤児の平均年齢は 76 歳、 残留婦人
の年長者は 90 歳を超えており、 要介護の対象になる人が年々増加してい
る。 また、 残留邦人関係で忘れてはならないのは、 樺太残留者である。 厚
生労働省の中国残留邦人等の状況に関する資料によると、 樺太からの永住
帰国者は総数で 108 人 (家族を含めた総数 273 人) いる。 樺太からの永
住帰国者が置かれる状況も中国帰国者と同様であり、 要介護に対する支援
が必要となっている。
15 ( 64 )
3インドシナ難民 (ベトナム・ラオス・カンボジア)
1978 年から日本での定住が認められるようになってから約 40 年が過ぎ
て、 この時期に来日した人たちの中には現在 65 歳以上の人も一定の人数
いる。 瀧尻と植本の神戸での調査によると、 高齢者の中で、 うつ症状が見
られることが主に報告されているが (瀧尻 植本 2015)、 中には要介護を
受けている人もいる。
4フィリピン出身者
1980 年代からフィリピンから出稼ぎで来日した女性エンターテイナー
たちの中に、 日本人男性と結婚して定住した人は多くいる。 来日当時の平
均が 20 代という年齢から考えると、 今は 50 代になっていると想定できる。
高畑は高齢のフィリピン出身者が日本で生活する上での経済的な面での問
題点を指摘している (高畑 2010)。 それに対しフィリピン出身女性たち自
身の介護はまだ先になるが、 この人たちの中には夫が高齢のため、 夫の介
護をされている人がいる。 また、 介護施設で働いている人もいる。 そのた
め、 介護に関する知識などはあると思われるが、 言葉の面ではかなりのハ
ンディがあるのではないかと思われる。
5 「外国人花嫁」 (中国・韓国・スリランカ等出身者)
農村部の花嫁として 1980 年代から中国・韓国・スリランカなどの国か
ら来日した女性も一定の人数が存在している。 来日当時の平均年齢から考
えると、 この外国人花嫁さんも今は 50 代になっている。 外国人花嫁もフィ
リピン出身女性と同じような状況にあるではないかと思われる。
6南米出身者 (ブラジル・ペルー)
1980 年代末から来日した南米日系人 (ブラジル・ペルー) は永住や定
住が増え、 なかには両親を呼び寄せて日本で暮らしている人もいる。 来日
の時期から考えると、 今は 50 代になっている。
全体的に見ると、 1〜3では介護が必要になる人が増加している。 3〜
6は要介護の予備軍として控えており、 あと 10 年もすればこのなかから
中国帰国者の介護問題から見た在住外国人高齢者への介護支援の現状と課題 (渋谷) 14
( 65 )
もかなりの人が要介護の対象になると考えられる。
3〜6は要介護の予備軍とは言え、 決して要介護のニーズが全くないわ
けではない。 愛知県国際交流協会がこのほど実施した愛知県内における外
国人相談アンケートの高齢者相談件数を見ると、 少ないだろうと想定して
いた南米日系人やフィリピン人による相談件数は、 中国系人からの相談件
数とさほど差が無かった。 この調査結果から、 要介護がまだまだ先であろ
うと思われていた3〜6にも今後目を向けて実情を把握する必要がある5。3 異文化介護における 「五つの壁」
介護保険制度は、 国籍に関係なく日本に在住している高齢者は適用対象
であり、 介護サービスを利用することができるようになっている。 しかし、
在住外国人高齢者の文化的背景や習慣等に配慮し、 介護サービスを受けら
れる介護施設は極めて少ない。 そのため、 地域社会にある既存の福祉介護
サービスを利用せざるを得ない。 在住外国人高齢者は、 日本語ができない、
または母語のように十分に意思の疎通が図れないことに加え、 介護保険制
度に関する情報や知識が乏しい。 さらに、 生活・文化・習慣・宗教などの
違いから、 介護サービスを利用するなかで様々な問題が生じている。
中国帰国者をめぐる介護の問題から在日外国人高齢者の問題を総合的に
考えると、 中国帰国者をはじめ、 在住外国人高齢者およびその家族が介護
サービスを利用するにあたっての問題は、 大きく 5 つに分けられる。 1
「コミュニケーションの壁」、 2 「識字の壁」、 3 「食 (味覚) の壁」、 4
「習慣の壁」、 5 「心の壁」 の 5 つである。 以下では、 それぞれの問題点の
特徴について論じていく。
1 「コミュニケーションの壁」
介護サービスは人対人の直接行為であり、 対面サービスであるため、 コ
ミュニケーションが欠かせない。 介護する側とされる側の人間関係の構築
13 ( 66 )
には言葉は必要不可欠である。 言葉による意思の疎通が図れなければ、 介
護サービス関係者との信頼関係が築けず、 お互いを理解することができな
い。 また、 施設内で出会う日本人利用者とのコミュニケーションが上手く
図れないため、 利用者の輪のなかに入れずに、 介護施設のなかでかえって
孤立してしまい、 サービスの利用を拒否してしまうケースも生じている。
さらに、 在住外国人は高齢になるにつれて、 後で習得した日本語という第
二言語を忘れてしまい、 母語を使うようになる傾向があることが多くの実
例で明らかになっている。 この現象は 「母語回帰」 または 「母語がえり」
と言われ、 特に認知症になった人に多くみられている。
王の父には介護サービスを利用するなかで何人かのケアマネジャーがか
かわっていた。 親身になってくれた人もいればそうでもない人もいた。 な
かには担当から外れた後も、 王とともに介護を行なっていた中国出身の母
の相談に乗ってくれた人もいれば、 母との信頼関係が築けなかった人もい
た。 また、 父も認知症の進行に伴い、 日本語と中国語が入り混じった会話
が多くなったため、 病院やデイサービスなどの介護施設のなかでは、 中国
語が理解できない介護職員がその対応に困惑していた。
筆者が関わっている中国帰国者の介護支援の中では、 日本語ができない、
ある高齢者は老人ホームに入居したものの、 介護職員とのコミュニケーショ
ンが上手く取れなかった。 そのため、 自分の意思を伝えることができず、
要望をなかなか聞いてもらえないという状態が続いた。 このようなコミュ
ニケーション不足のため、 家族が施設に対する不信感が深まり、 最終的に
はせっかく入所した老人ホームを退所し、 家に引きこもるようになってし
まったケースもある。
また、 通所リハビリテーション (デイケア) を利用している日本語がで
きない外国人高齢者を王が訪ねた時、 大勢いる利用者の輪から離れたテー
ブルにその高齢者が一人ぼっちで車いすに座って、 中国語の DVD を観て
過ごしていた。 この光景を目のあたりにして、 介護職員に聞いてみたとこ
中国帰国者の介護問題から見た在住外国人高齢者への介護支援の現状と課題 (渋谷) 12
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ろ、 この高齢者は日本語がほとんどわからないため日本人の利用者と一緒
に何かをすることもできず、 利用時間中の大半は家族が用意した DVD を
観て過ごしているという。
介護サービスの利用に際し、 在住外国人高齢者の前に立ちはだかる 「コ
ミュニケーションの壁」 は、 日本語を母語とはしないすべての在住外国人
高齢者が遭遇する問題である。
2 「識字の壁」
介護サービスは契約を交わすことによってはじめて利用できるようになっ
ている。 そのため、 日本語の読み書きができないと契約の書類を読むこと
ができず、 契約書を交わすこともできない。 契約書の内容を理解しないま
ま契約してしまうと、 トラブルが発生し、 サービス提供者との相互の信頼
関係にも大きく影響を及ぼしてしまうのである。
中国帰国者の場合は、 帰国者一世の多くは農村出身のため、 学校教育を
受けておらず、 中国語を話すことや聞くことはできても、 読み書きができ
ない人が少なくない。 また、 二世のなかにも読み書きに問題を抱えた状況
の人もいる。 さらに彼らは日本語でも読み書きが困難なものが多いため、
介護保険制度や介護サービスの資料を読むことができず、 契約書類等の記
入することが難しく、 他者の助けが必要となる。
王の父は読み書きができるものの、 パーキンソン病と認知症の進行によっ
て書類を読むことが難しくなっていた。 母は学校に通っておらず読み書き
ができないため、 父の介護サービス利用時の諸手続きはすべて筆者がその
内容を母に説明して、 母の理解と同意を確認したうえで、 契約書のサイン
を代筆したのである。
「識字の壁」 は、 インドシナ難民 (ベトナム・ラオス・カンボジア)、 フィ
リピン女性、 外国人花嫁 (中国・韓国・スリランカ等)、 南米日系人 (ブ
ラジル・ペルー) にも見られる問題である。
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3 「食 (味覚) の壁」
人は朝昼晩の 3 食を毎日とる。 食べることは健康を維持するための行為
であり、 楽しみでもある。 その家庭の味、 暮らしている地域の味、 民族の
味など、 生まれ育ったところの気候や環境によって、 食習慣や味覚はそれ
ぞれ異なる。 日本人の当たり前が異文化背景を持つ在住外国人高齢者には
当てはまらないことがある。 特に、 味覚に関してはその傾向が強く見られ
ている。 日本人が外国での旅のなかで味噌汁や白いご飯が欲しくなるのと
同じように、 中国帰国高齢者は淡白で薄味の日本料理よりもしっかりと味
付けされた中華料理のほうが美味しく、 そのような料理を希望する。 食習
慣に対する理解 (味覚の違いや宗教的な違い) がないため、 3 食の楽しみ
が失われてしまい、 トラブルになったり、 介護施設を利用しなくなってし
まったりするようなケースも生じている。
王の父は食べ物に関しては好き嫌いがなく、 出されるものは基本的に食
べるが、 薄味のものに対してはやはり抵抗があった。 また、 中国帰国者の
介護支援の現場では、 提供される食事の量が少なく、 味も口に合わないこ
とが多いため、 その改善を中国語で求め続けたものの、 声が大きいことも
あって、 精神的不安による騒ぎとして捉えられてしまい、 落ち着かせるた
めの誘眠剤を飲まされるような事態が発生したこともある。 そのため、 家
族からの不信感が生じて最終的には退所にいたってしまった。
人が年を取ると母国の味覚に回帰すると言われていることから考えると、
「食 (味覚) の壁」 もまた多くの在住外国人高齢者に共通している問題で
ある。
4 「習慣の壁」
在住外国人高齢者の特有の問題として、 高齢化とともに母国文化に回帰
する現象があると言われている。 また、 在住外国人高齢者のなかには日本
の文化や習慣などを十分に習得できていなかった人もいる。
日本国内の多くの介護施設では、 介護サービスの主な対象者が一般の日
中国帰国者の介護問題から見た在住外国人高齢者への介護支援の現状と課題 (渋谷) 10
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本人であるため、 言葉や文化・習慣などが異なる外国人高齢者のなかには
現状のサービスに適応できず、 利用を辞めてしまったりするケースも少な
くない。 このような余暇行為での無理解と反発が特にレクリエーションの
なかで生じることが多い。 日本の童謡や懐メロ、 踊り、 折り紙などの余暇
を楽しめず、 その雰囲気などになじめない在住外国人高齢者が少なからず
いる。 王の父はそのなかのひとりである。 デイサービスを利用していた時
に、 一時期はわからないことばかりやらされるためもうディサービスには
行きたくないと通所を拒むようになって、 筆者と母が父をなだめたりして
なんとか続けさせた経験がある。 また、 王は中国人の利用者がいるデイサー
ビス (日本人の利用者がメイン) にしばしば訪ねることがあった。 訪ねる
たびにやはりレクリエーションを中国人が日本人の利用者と同じように楽
しめないことを再確認している。
仮に世代は同じでも、 文化や風習、 育った国・地域によって、 子供ころ
に習った歌や踊り、 遊びが全く異なっている。 日本人にとって 「普通」 で
あっでも在住外国人高齢者にとってそれは全くの異文化である。 介護サー
ビスを提供するなかで、 在住外国人高齢者が子供のころに楽しんだことの
ある遊びや歌を取り入れることができれば、 在住外国人高齢者も楽しむこ
とができるし、 日本人の利用者にも異文化を体験してもらうことができる。
「習慣の壁」 もまた在住外国人高齢者の前に立ちはだかる大きな問題で
ある。
5 「心の壁」
在住外国人高齢者は過去の日本での生活の中で大なり小なり差別を受け
た経験がある。 中国帰国者も例外ではない。 その過去に受けた差別経験が
トラウマとなって、 年老いても消えることはない。 ことば遣いが下手なた
め馬鹿にされることを気にして一言もしゃべらずにいる人や日本人利用者
に無視されたり、 介護スタッフに軽視されたりなど、 介護の現場における
「心の壁」 もまた厚い。
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筆者の一人である王の父も日本人の利用者に 「中国人だから一緒にしゃ
べりたくない」 のようなことを言われたことがあり、 あの人がいるからも
うデイサービスには行きたくないと落ち込んでいた時期があった。 また、
しばしば訪ねていたデイサービスの中国人のなかにも日本人の介護関係者
や利用者に警戒心を抱き、 常に一定の距離をおいて接している人もいた。
逆に日本人の利用者が中国人同士の中国語での会話に嫌気をさし、 時々席
を離れていく光景も目のあたりにしたことがある。
「心の壁」 は在住外国人高齢者だけではなく、 日本人にも共通する問題
である。
4 高齢化に伴う介護支援のあり方
今後ますます進んでいく在住外国人の高齢化については、 行政における
施策はまだとられておらず、 介護施設においては、 外国人に対する知識や
理解が乏しいため、 どう受入れたら良いのか、 どう接すれば良いのか、 ど
うコミュニケーションを取ったら良いのかなど、 戸惑いを感じている場合
も多く、 受入体制が整っていない。
介護保険制度は日本人でさえ理解が難しく、 在住外国人は制度にアクセ
スすることすら難しい状況にある。 また、 たとえアクセスできたとしても、
ケアマネジャーや認定調査員、 デイサービスやショートスティ、 福祉用具
貸与などの関係者との面談、 さらには、 介護保険制度、 各種介護サービス
の内容、 施設利用などの説明、 契約に当たっては、 専門用語や制度を十分
に理解しておくことが必要となるため日常会話程度の日本語力で対応する
ことは難しいと考えられる。
特に、 長年、 生活の基盤を日本に置いてきた高齢者には、 帰国という選
択肢はほとんど考えられないため、 高齢化の問題は一層深刻になる。 介護
をはじめとする在住外国人高齢化問題の対策は早急に取り組まなければ、
中国帰国者の介護問題から見た在住外国人高齢者への介護支援の現状と課題 (渋谷) 8
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かつてニューカマーが急増したときのように、 対策が後手に回り、 大きな
社会問題となる恐れがある。
こうした現実問題に対して、 地域に暮らす住民をはじめ、 地域社会、 外
国人コミュニティ、 行政、 福祉機関、 介護施設、 大学等々が連携を図りな
がら、 日本人も外国人も安心して老後を暮らせるよう互いに協力し、 問題
の解決を推進していかなければならい。
在住外国人高齢者の介護問題の解決推進に当たり、 以下の取り組みが必
要であると考える。
1 ) 「介護状況を把握するための実態調査」
在住外国人高齢者の増加に伴い、 介護保険による介護認定者数の増加も
見込まれているが、 現状においては、 在住外国人高齢者に関する介護保険
の被保険者数の統計はあるものの、 介護の実態を把握する統計がまだない。
そのため、 在住外国人高齢者の介護状況の実態が把握できていないのが現
状である。
在住外国人高齢者における介護状況の実態を把握できなければ、 介護現
場での問題解決に対する対策が講じられず、 さまざまな障壁を取り除くこ
とができない。 そのため、 在住外国人高齢者における介護状況を把握する
ための実態調査が必要である。
2 ) 「多言語介護通訳」 の養成および制度の周知、 理解への啓発
コミュニケーションの障壁となっている 「言葉の壁」 を取り除くために、
介護の専門知識と一定レベル以上の通訳スキルを持つ 「多言語介護通訳」
の人材養成を行うとともに、 在住外国人に対する介護保険制度の周知や行
政、 福祉機関、 介護施設に対して異文化背景を持つ人々に対する理解への
啓発活動が必要である。
中国語による介護通訳の養成および制度の周知、 理解への啓発は、 「外
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国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクト」 がトヨタ財団 2014 年度国内助
成プログラムの助成を受けて、 2 年間にわたって取り組んできた経験があ
る。 この取り組みで得た経験やノウハウなどは 「多言語介護通訳」 の養成
および制度の周知、 理解への啓発活動に大いに参考になるだろう。
3 ) 「異文化介護人材の育成」
今後、 在住外国人の高齢化がさらに進むことによって 「老いの多様化」
も進むと予測される。 そのため、 「介護の多文化化」 を支える異文化介護
人材の育成が必須となる。 「老いの多様化」 介護に対応するには、 日本で
暮らす在住外国人住民を介護の担い手として活用することが日本の 「介護
の多文化化」 に必要不可欠である。 また、 行政や福祉機関、 介護施設、 大
学などが提携し、 異文化介護人材の育成を取り組むことが求められる。 在
住外国人住民の介護人材育成は、 在住外国人高齢者の介護に貢献できるだ
けではなく、 日本の介護人材不足の問題解決にも役立てることができる。
4 ) 「多文化介護施設 (入所) の設置」
介護の理念である 「尊厳の維持」 の観点から、 在住外国人高齢者の要介
護 (要支援) 者が自分らしく、 ありのままに安心して老後を送るためには、
在住外国人高齢者の要介護者を受け入れられる多文化介護施設 (入所) の
設置または指定が必要となる。 長い介護生活を考えた場合、 訪問介護や通
所介護 (デイサービス) はあくまでも通過点にしかすぎず、 身体や精神状
態の悪化によってデイサービスなども利用できなくなって、 家族介護者も
疲幣が限界に達した時に、 最終的には、 異文化に配慮し対応できる入所介
護施設 (特養や老健、 介護付き有料老人ホーム、 サービス付き高齢者住宅
など) が必要である。
各地域に在住外国人高齢者の異文化背景に配慮し、 異文化介護人材によ
る多言語サービス提供ができる多文化介護施設 (入所) があると、 在住外
中国帰国者の介護問題から見た在住外国人高齢者への介護支援の現状と課題 (渋谷) 6
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国人高齢者およびその家族が安心して介護サービスを受けることができる。
5 ) 「異文化介護ネットワークの形成」
多文化共生社会における在住外国人高齢者の介護支援においては、 地域
社会の一員であり、 生活者である在住外国人高齢者の健康と尊厳を守ると
いう視点から、 潜在的な介護ニーズを持つ在住外国人高齢者の生活を把握
し、 必要とされる適切な介護サービスが受けられるようにするにはどうす
れば良いのかなどについて、 行政をはじめ、 当事者である外国人高齢者と
その家族、 福祉・保健機関や地域包括支援センター、 医療・リハビリ機関、
大学、 介護施設、 介護サービス提供事業所、 NPO 法人支援団体などが連
携して、 異文化介護ネットワークの形成による取り組みが必要である。
上記した取り組みは、 中国帰国者の介護問題から考えられる一部分であ
り、 対応へのすべてではない。 そのため、 今後においては、 在住外国人高
齢者の要介護状況の変化に応じて見直ししながら行っていく必要がある。
5 おわりに
「相手が理解できる言語で話しかけた時には、 その内容は彼の頭に届く」
「相手の国の言葉で話しかけた時に、 その言葉は彼の心に届く」
If you talk to a man in a language he understands, that goes to his
head. If you talk to him in his language, that goes to his heart.
コミュニケーションのツールとしての言葉の重要性を強調した "ネルソ
ン・マンデラ" 氏が遺した名言である。
異文化環境のなかで年老いた在住外国人高齢者は、 母語を聞き、 母語で
語ることにより精神的な安らぎを得て、 自分らしく、 幸せな老後を過ごす
ことができる。 また、 母語を介して介護サービスを利用することができれ
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ば、 高齢者の家族も安心できる。
母語による介護サービスの提供は、 在住外国人高齢者にとって、 特に精
神面において大事なことである。 中国帰国者の例を見ると、 介護スタッフ
や日本人利用者との意思疎通が図れず、 孤立化してしまったことによって
認知症がかえって進行してしまったり、 孤立に耐え切れずにやむを得ずサー
ビスの利用を止めてしまった例がある。 また訪問介護の場合では、 日本人
のヘルパーとのコミュニケーションが上手く取れないためトラブルになっ
たり、 挙句に利用を断られたり止めてしまったりといった例が少なくない
のである。
平成 29 年度からは、 中国帰国者への新規支援事業として、 「介護支援事
業」 がスタートした。 「介護支援事業」 では、 介護事業所で孤独感を感じ
ている中国帰国者が少しでも安心して介護サービスが利用できるように、
中国語による語りかけを行う 「語りかけボランティア」 の派遣が行われて
いる。 月に 1 〜 2 回程度で介護事業所を訪問し、 身近な話題や帰国者が好
みそうな話題などを 1 時間ほど、 中国語で楽しくおしゃべりするという内
容のものである。
中国語による 「語りかけ」 は平成 20 年度から中国残留孤児援護基金も
行っていた。 語りかけの報告によると、 介護事業所に入所している中国帰
国者への語りかけによって、 精神面だけではなく、 身体面においても状態
が上向いたという事例も得られたそうである。
いずれにしても、 在住外国人高齢者が安心して老後生活を送れるように
するためには、 母語や母国文化、 風習や習慣などに配慮し、 それを介護環
境のなかに取り入れ、 在住外国人高齢者も日本人高齢者と同質な介護サー
ビスが受けられるように介護環境を整えていく必要があると考える。
今後、 介護の現場においては、 在住外国人高齢者の介護に当たり、 介護
スタッフの国籍に関係なく、 異文化を意識した多文化ソーシャルワーク7
の展開が必要であり、 在住外国人高齢者の一人一人に合った介護のあり方、
中国帰国者の介護問題から見た在住外国人高齢者への介護支援の現状と課題 (渋谷) 4
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介護サービスの多文化化が求められる。
引用文献
アジア遊学 2006 特集 中国残留孤児の叫び‐‐終わらない戦後 85 号
石河久美子 2012 多文化ソーシャルワークの理論と実践―外国人支援者に求めら
れるスキルと役割 明石書店。
荻野剛史 2017 「文献から見る高齢在日外国人等の生活上の課題」 福祉社会開発
研究 9 号、 p.115‐120。
神戸定住外国人支援センター編 2005 在日マイノリティ高齢者の生活権―主とし
て在日コリアン高齢者の実態から考える 新幹社。
川村千鶴子・宣元錫編 2007 異文化間介護と多文化共生―誰が介護を担うのか
明石書店。
木下貴雄 2003 中国残留孤児問題の今を考える―中国 「残留孤児」 という名の
「日系中国人」 鳥影社。
高畑幸 2010 「ニューカマー外国人の加齢・高齢化―在日フィリピン人の事例から」
社会分析 37 号、 p.47‐60。
瀧尻明子・植本雅治 2015 「在日ベトナム人高齢者の生活と健康状態に関する研究」
大阪市立大学看護学雑誌 11 号、 p.115‐120。
法務省入国管理局 在留外国人統計 (旧登録外国人統計) 統計表 (https://www.e‐
stat.go.jp/stat‐search/files?page=1&layout=datalist&lid=000001111233)
2018年02月05日 アクセス
厚生労働省社会・援護局 中国残留邦人等の状況に関する統計
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000171057.html 2017年12月15日 アクセス注
1 外国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクト・あいち多文化ソーシャルワーカー
の会代表
2 在住外国人の介護は、 身体的老衰によるものが一般的だが、 身体的障がいや精
神的障害によって要介護になった人もいる。 つまり、 高齢者以外にも要介護の
人がいることも念頭においていかなければならない。
3 コリアンネットあいちは 2014 年 3 月 10 日、 神戸定住外国人支援センターは
2017 年 11 月 11 日でのインタビュー。
3 ( 76 )
4 詳細は神戸定住外国人支援センター編 (2005) を参照。
5 この他に、 帰化により日本国籍となった異文化背景を持つ外国出身の高齢者や
身体的精神的障碍によって要介護の人も多く存在している。
6 ネルソンマンデラの名言
http://iso‐labo.com/labo/words̲of̲NelsonRolihlahlaMandela.html
7 詳細は石河久美子 (2012) を参照。
中国帰国者の介護問題から見た在住外国人高齢者への介護支援の現状と課題 (渋谷) 2
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