1父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等
連絡会議(第1回会議)議事概要
第1 日 時 令和6年7月8日(月) 自 午後5時00分
至 午後5時30分
第2 場 所 法務省大会議室
第3 議 事 (次のとおり)
○しろまる法務省民事局
それでは、予定した時刻になりましたので、父母の離婚後の子の養育に関す
る民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議第1回会議を開会い
たします。
お忙しい中お集まりくださいましてありがとうございます。
本日は、法務省民事局長の竹内が、副議長として、司会進行を務めさせてい
ただきます。
まず、本連絡会議の開催に当たりまして、議長であります小泉法務大臣から、
一言御挨拶を頂きたいと存じます。小泉大臣、よろしくお願いします。
○しろまる法務大臣
お忙しい中各省幹部の皆様方にはお集まりくださいましてありがとうございま
す。本連絡会議の議長を務めさせていただきます法務大臣の小泉龍司でござい
ます。国会での法案審議に当たっては、本当に各省から温かい又心強い御支援
を頂きました。大変お世話になりました。この場をお借りいたしまして心から
厚く御礼申し上げたいと思います。改正法は成立しましたけれども、丁度道半
ばだと思います。一周する半分までようやく来たと、これからがある意味本番
かもしれません。各省庁の皆様方の御協力を頂きましてこの改正法の目的が達
成されるよう、一人一人のこどもにそれが到達するように、こどもに幸せが到
達するように是非関係者の方々の御理解と御支援、連携をお願いしたいと思っ
ているところでございます。どうかよろしくお願いいたします。それでは、父
母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等
連絡会議の開催に当たりまして、一言、御挨拶を申し上げます。
父母の離婚後の子の養育の在り方は、子の生活の安定や心身の成長に直結する2問題であり、父母の離婚に直面する子の利益を確保するためには、父母が可能
な限り離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことが重要で
あります。こうした観点から、5月17日に成立しました民法等改正法は、子
の利益を確保するために、離婚後の親権、養育費、親子交流などに関する民法
等の規定を見直すこととしています。
そこで申し上げたいのが、民法等改正法を円滑に施行し、子の利益を確保する
ためには、その趣旨・内容が正しく理解されるよう、適切かつ十分な周知を行
っていくなどの環境整備が必要であるという点でございます。特に民法等改正
法の国会審議の過程では、父母双方が親権者である場合における親権行使のル
ールについて、学校や医療などの様々な場面を念頭においた審議がされました。
親権に関する民法の規定は、子を持つ父母だけでなく、子に関わる全ての方々
に正しく御理解いただく必要があり、そのため、幅広く各方面への周知活動が
求められているところでございます。
また、子の利益を確保するためには、ひとり親家庭支援、共同養育支援、裁判
手続の利便性向上のほか、DV及び児童虐待等を防止して安全・安心を確保す
ることも必要です。国会審議の過程では、こうした各種の制度に関して、子に
不利益が生じることがないかという観点に留意して、関係府省庁が連携して対
応を行うことが求められました。
こうした周知活動や環境整備に関する課題については、各府省庁等が個別に検
討するのではなく、政府が一丸となって省庁横断的に取り組むことが重要であ
ると考えております。
また、国会審議の過程では、裁判所の役割に期待する意見もありました。民法
等改正法の円滑な施行に向けて、裁判所における環境整備にも期待したいと考
えております。
この連絡会議は、以上申し述べましたとおり民法等改正法の円滑な施行に必要
となる環境整備に関し、関係府省庁等相互の密接な連携・協力を確保し、総合
的かつ効果的な取組を推進することを目的としております。各府省庁等におか
れましては、こうした趣旨を踏まえ子の利益を確保するため、是非とも御協力
を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。
○しろまる法務省民事局
ありがとうございました。法務大臣は、公務のためここで退席されます。3続きまして、私から、本会議の開催趣旨等を御説明させていただきます。
まず資料1を御覧ください。
先ほどの大臣の御挨拶にもありましたように、今般成立しました民法等改正
法を円滑に施行するためには、関係府省庁等がしっかりと連携して、周知など
の環境整備に取り組む必要があります。父母の離婚後の子の養育に関しては、
これまでも、必要に応じて、関係府省庁間において適切な連携が図られている
もの理解しておりますが、今般の法改正を機に、これまで以上に、その連携・
協力関係が重要になると考えております。
そこで、その環境整備に関し、関係府省庁等相互の密接な連携・協力を確保し、
総合的かつ効果的な取組を推進するため、この会議を開催することとし、6月
25日に関係府省庁の持ち回りにより、資料1のとおりの申合せをさせていた
だきました。
会議の構成につきましては、資料記載のとおりでして、議長を法務大臣、副
議長を民事局長である私とし、構成員を関係府省庁の局長級の職員としており
ます。また、最高裁判所にも、オブザーバーとして御参加いただいております。
また、会議の配布資料につきましては、構成員の申合せにより特別に非公開
としたもの以外は、原則として法務省ホームページで公開することとさせてい
ただきます。
議事概要につきましても、法務省民事局において作成し、関係府省庁の御確
認を頂いた後に、同様に公開することとさせていただきます。
続きまして、民法等改正法の概要と、その施行に向けた課題について御説明さ
せていただきます。資料2を御覧ください。
大臣からの御挨拶にもありましたように、民法等改正法では、離婚後の親権、
養育費、親子交流などに関する民法等の規定を見直すこととしています。
その中でも、特に国民の関心を集めている点が、資料2の第2「親権・監護
等に関する規律の見直し」の部分です。
改正前の民法では、父母の婚姻中はその双方が親権者であるものの、その離
婚後は、必ずその一方のみを親権者と指定しなければなりませんでした。民法
等改正法では、この点を改め、離婚後の父母双方を親権者とすることができる
ことと定めた上で、DV等の被害に対する懸念に対応するため、父母双方を親4権者とすることで子の利益を害する場合には、裁判所が必ず単独親権としなけ
ればならないこととしています。
また、改正前の民法では、父母双方が親権者である場合の親権行使のルール
が不明確でした。そこで、民法等改正法では、父母双方が親権者であるときは
親権を共同行使するものとしつつ、親権の単独行使が可能な場合を明確化する
こととしております。
こうした改正は、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わり、その責任を果
たすことを可能とするものであり、父母の離婚に直面する子の利益の確保に資
するものであると考えております。
このほか、民法等改正法では、資料2のとおり、親の責務等に関する規律の新
設、養育費の履行確保に向けた見直し、安全・安心な親子交流の実現に向けた
見直しなどをしているところです。
法務省としては、今後、こうした法改正の趣旨及び内容を多くの国民に正しく
御理解いただけるよう、様々な形での周知に努めたいと考えており、周知用の
素材を作成した際には、この連絡会議を通じて、関係府省庁等にも共有したい
と考えておりますので、御活用いただきたいと思います。
また、周知用の素材を作成するに当たっては、例えば学校教育の現場や医療の
現場において、どういった情報提供が必要とされているかや、ひとり親家庭支
援の現場やDV被害者支援の現場に対して、離婚を経験した父母から、どうい
った疑問や悩みが寄せられているかなどを、適切に把握することが重要であろ
うかと思います。こうした点に関する情報収集について、引き続き、関係各府
省庁等にも、御協力をお願いしたいと思います。
続いて、資料3と資料4を御覧ください。
国会における民法等改正法の審議の際には、衆議院において12項目、参議院
において15項目の附帯決議が付されました。その内容は各資料のとおりです
が、周知の必要性のほかにも、様々な課題が指摘されています。
例えば、子の意見聴取の在り方、養育費や親子交流の取決め及び履行の確保、
離婚後養育講座の受講や共同養育計画の作成の促進、裁判所における態勢の整
備、司法手続における利用者負担、DV及び児童虐待の防止、税制・社会保
障・社会福祉における連携などが指摘されているところでありますが、これら5の課題の中には、省庁横断的な連携・協力が重要なものもあると思いますので、
必要に応じて、この連絡会議の場を活用していただきたいと思います。
私からの説明は以上となります。
続きまして、各府省庁からも御発言を頂きたいと思います。まず、こども家
庭庁から、御発言をお願いします。
〇こども家庭庁
こども基本法においては、こども施策の基本理念として、
「全てのこどもにつ
いて、その最善の利益が優先して考慮されること」が掲げられており、こども
家庭庁としては、こうした理念にのっとり、こども施策を推進しているところ
です。
今般成立した民法等改正法に盛り込まれた、父母の離婚後の親権制度、養育費
の確保や親子交流の方法等に関する改正は、こうした子の利益の観点からも大
変重要な改正内容と認識しております。
こども家庭庁としては、これまで、離婚前後の親に対する支援講座、養育費に
ついての相談支援や履行確保に向けた手続支援等を進めてきたところであり、
今般の民法等改正法の施行に当たっては、こうした施策による支援も重要にな
ると考えております。
民法等改正法の国会審議の過程では、児童手当や児童扶養手当などの給付、保
育の利用などの手続において、親権は影響しないことの確認や、関連制度への
影響についての質疑がありました。また、養育費の履行確保の更なる強化をは
じめとする、ひとり親家庭支援の充実などが求められました。民法等改正法の
施行に当たっては、こども家庭庁が所管するこども政策分野における対応も必
要不可欠であると認識しております。
このため、こども家庭庁としても、本連絡会議等を通じて、法務省をはじめと
する関係府省庁等としっかり連携して、民法等改正法の円滑な施行や必要な周
知に努めてまいります。
○しろまる法務省民事局
ありがとうございました。続きまして、内閣府から、御発言をお願いします。
○しろまる内閣府男女共同参画局
内閣府からは、DV被害者支援の観点から発言させていただきます。
法務省から御説明がありましたとおり、今般成立しました民法等改正法を円滑6に施行するためには、関係府省庁等の皆様としっかりと連携し、法の趣旨・内
容の適切かつ十分な周知等に取り組む必要があると考えております。
改正法の国会における審議では、DV被害者への支援策の強化に関する御議論
や、DV被害者支援の現場において、
「これまで行われてきた支援が違法とされ
るのではないか」、「支援者が訴えられるのではないか」との不安から委縮して
しまう等の影響が生じないようにすべきなどの御議論もあったところです。
こうした国会での御議論や附帯決議等を踏まえ、今般の改正によりDV被害者
の避難や被害者支援の活動に支障が生ずることがないよう、法改正の周知につ
いては、その検討に当たって、DV被害者が直面する困難や相談・支援の現場
の状況を適切に踏まえていただくことが重要であると考えております。今後、
内閣府としては、法務省において作成されるQ&A等を活用し、警察庁、厚生
労働省などとも連携し、DV被害者支援の現場に対し、法改正の正確な趣旨や
内容について周知してまいりたいと考えております。先月決定した「女性活
躍・男女共同参画の重点方針 2024」にもこうしたことを関係各府省の施策とし
て盛り込んだところでございます。
配偶者等からの暴力は、外部からの発見が困難な家庭内において行われるため、
潜在化しやすい傾向にあり、被害者も報復のおそれや家庭の事情等様々な理由
から支援を求めることをためらうことも考えられます。そのため、被害者がた
めらうことなく相談できる環境を整備することが大変重要でございます。関係
省庁のそれぞれの施策において、それぞれの立場から、被害者支援の現場等に
おける緊密な連携に努めていただきますようお願いいたします。
内閣府としても、配偶者暴力相談支援センター等の相談窓口についてのより一
層の周知など、被害者が相談しやすい環境の整備に向けた取組を着実に実施し
ますとともに、本年4月に施行された改正DV防止法により新たに設けられる
法定協議会の積極的な活用による関係機関・団体の連携を促すなど、民法等改
正法の施行に向けた環境整備として各地域におけるDV被害者に対する相談支
援の更なる充実を図ってまいります。
○しろまる法務省民事局
ありがとうございました。続きまして、文部科学省から、御発言をお願いし
ます。
○しろまる文部科学省7今般の父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法につきましては、文部
科学省関係の制度につきましても国会審議等において御指摘を頂いたところで
ございます。
特に、今回の共同親権の制度の導入により、学校現場などにおいて父母による
具体的な親権行使を巡って混乱が生じないよう、文部科学省としては、国会審
議における御指摘等も踏まえた上で、各学校現場において適切な対応が図られ
るよう、今般の法改正の趣旨について法務省とも良く連携のうえ各教育委員会
等を通じて周知を図ってまいりたいと考えております。
また、高等学校等就学支援金については、親権者等の収入に基づき受給資格の
認定等を行っておりますが、共同親権の制度導入後も支援を必要としている高
校生等にしっかりと支援を届けられるよう、取扱いにおいて配慮すべき事項等
について検討してまいりたいと考えております。
今後、本連絡会議等を通じて法務省をはじめとする関係府省庁との連携を進め、
法律の施行に向けて取り組んでまいりたいと考えておりますので、どうぞよろ
しくお願いいたします。
○しろまる法務省民事局
ありがとうございました。続きまして、厚生労働省医政局から、御発言をお
願いします。
○しろまる厚生労働省医政局
先ほど小泉大臣の御発言にもありましたように、医療の現場における課題に
つきましても、先般の法案の審議の過程において様々な議論があったものと承
知しております。
そのため、本法の共同親権行使のルールについては、医療現場において具体的
な親権行使をめぐる混乱が生じないよう、医療機関や患者・家族など、関係す
る方々に、本法の趣旨・内容を適切に御理解いただくことが重要であると考え
ております。
厚生労働省といたしましては、今回の国会での審議事項等も踏まえ、本法が円
滑に施行され、医療現場において適切な対応が図られるよう、法務省をはじめ
皆様と連携の上、しっかりと周知等をしてまいりたいと考えておりますので、
どうぞよろしくお願いいたします。
○しろまる法務省民事局8ありがとうございました。続きまして、オブザーバーの最高裁判所から、御
発言をお願いします。
○しろまる最高裁判所
最高裁といたしましても、各裁判所において、改正民法等の趣旨・内容を踏
まえた適切な審理が着実にされることが重要であると認識しておりまして、そ
のために、各裁判所における施行に向けた準備・検討が適切に進められるよう、
最高裁として必要な情報提供やサポートを行ってまいりたいと考えております。
合わせて、裁判手続の利便性向上や事件処理能力の一層の改善・向上に努める
ことも重要であると考えておりまして、そのために必要な取組を着実に進めて
まいりたいと考えております。これらの取組につきましては、例えば、改正法
の各規定の趣旨・内容の理解に資するような情報提供等、法務省に御協力いた
だくことが少なくないと考えておりまして、引き続き、よろしくお願いしたい
と考えております。
また、我が国では、協議離婚が離婚全体の約9割を占めています。このよう
に離婚の大多数を占める協議離婚において、離婚後の父母の子の養育に関する
協議や取り決め、あるいはその後の父母の養育への関わり方がどのように変わ
っていくかということが、改正法施行後の裁判実務の在り方に少なからぬ影響
を与えるものと考えております。この会議において、そのような観点から、各
府省庁の今後の取組を知る貴重な機会になると考えています。他方で、各種の
取組について御議論されるに当たって、裁判手続までを見据えて検討される場
合もあると思われます。最高裁といたしましては、オブザーバーとして、必要
に応じて、情報提供ないし意見を述べてまいりたいと考えております。
○しろまる法務省民事局
ありがとうございました。関係府省庁等から御説明を頂きましたが、ほかの
方々からの御発言はございますか。
ほかに御発言がないようでしたら、今後の進行について御説明させていただ
きます。
今後、民法等改正法の円滑な施行に向けて、省庁横断的な連携をより一層強
化し、政府一丸となって取り組んでいく必要があると考えております。その具
体的な取組に関しては、この連絡会議に設置する幹事会において関係府省庁等
相互の密接な連携・協力を確保していきたいと思います。幹事会の構成員につ9きましては、資料1の第3項にありますように、議長に御一任いただきたいと
思いますが、いかがでしょうか。御異議ございませんか。
ありがとうございました。御異議ないものと受け止めさせていただき、今後、
幹事会においてしっかりと連携していただくことにしたいと思います。幹事会
の進行につきましては、事務的に調整させていただくと思いますので、引き続
き、よろしくお願いいたします。
それでは、これをもちまして、本日の関係府省庁等連絡会議を終了いたしま
す。どうもありがとうございました。